個人投資家の皆様へ
澤藤電機(6901)の企業分析レポートをお届けします。本レポートは、提供されたデータに基づき、企業の現状と今後の見通しについて客観的に分析したものです。投資判断の一助としてご活用ください。

1. 企業情報

澤藤電機は、日野自動車グループに属する電気機器メーカーです。主な事業は、トラックやバスなどの商用車向けの電装品(スターター、オルタネーター、HV/EVモーター、ECUなど)の製造・販売です。また、独自のブランドとして、高性能な車載用・船舶用冷蔵庫「ENGEL(エンゲル)」、および可搬式発電機「ELEMAX(エレマックス)」も展開しています。
主力製品・サービスの特徴

  • 電装品: トラック・バス用スターターやオルタネーターなどの基幹部品に加え、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)向けのモーター、バッテリーパック、電子制御ユニット(ECU)なども手掛け、自動車業界の電動化トレンドに対応しています。日野自動車を主要な顧客としています。
  • 発電機: ガソリン・ディーゼルエンジン式の可搬式発電機を「ELEMAX」ブランドで展開しており、ホンダへのOEM供給も行っています。災害時の非常用電源やアウトドア、工事現場などで利用されています。
  • 冷蔵庫: 高い冷却性能と耐久性が特徴のポータブル電気冷蔵庫「ENGEL」ブランドは、レジャー用途だけでなく、業務用や医療用など幅広い分野で利用され、特に豪州市場を主要な拠点としています。

2. 業界のポジションと市場シェア

澤藤電機は、日野自動車グループの一員として、商用車用電装品市場において安定した供給実績と信頼性を基盤としています。これは強固な顧客基盤を背景とした競争優位性と言えます。また、可搬式発電機や車載用冷蔵庫といった独自ブランド製品は、ニッチ市場で高いブランド認知度とシェアを確立しています。
業界全体の課題としては、主要顧客である日野自動車の業績や戦略に左右される側面があること、そして自動車業界全体の電動化への移行が、従来のエンジン関連部品中心の電装品事業に構造転換を求めている点が挙げられます。
市場動向と企業の対応状況

  • 市場動向: 東南アジアの自動車市場の低迷や商用車の電動化ペースの不透明さが需要面に影響を与えています。また、為替変動(特に豪ドル、米ドル)と原材料価格の高騰がコスト面での圧力となっています。
  • 企業の対応状況: 電動化に対応したHV/EVモーターやECUの開発を進め、将来的な需要変化への適応を図っています。発電機事業では受注回復により販売を強化し、冷蔵庫事業では販路拡大と合理化による収益性向上に注力しています。会社全体としては、下半期での販売回復とコスト削減・価格転嫁により、通期での黒字化を目指しています。

3. 経営戦略と重点分野

経営陣は「チャレンジ2030」と題する中期経営計画を掲げ、企業基盤、環境戦略、財務戦略の3つの柱でサステナビリティ経営を推進する方針です。
中期経営計画の具体的な施策や重点分野

  • 電装品事業: 自動車の電動化トレンドに対応した製品開発(HV/EVモーター、ECUなど)を強化し、主要得意先の需要変動への対応力を高めることが重点分野です。
  • 発電機事業: 受注回復を背景に、「ELEMAX」ブランドの販売強化と仕入コスト上昇への適切な価格転嫁を進めています。
  • 冷蔵庫事業: 販路の拡大と製造原価の低減による収益性の向上が図られています。

新製品・新サービスの展開状況
決算短信には具体的な新製品・サービスの詳細な記載はありませんが、HV/EVモーターやECUを手掛けていることから、電動化に対応した技術開発は継続していると推察されます。

4. 事業モデルの持続可能性

澤藤電機の収益モデルは、日野自動車を中心とした商用車向け電装品のOEM供給が基盤です。これに加えて、自社ブランドの可搬式発電機や車載用冷蔵庫が収益源の多様化に貢献しています。自動車業界の電動化は大きな市場ニーズの変化であり、同社は電動化関連製品を手掛けることで適応を図っていますが、主力事業からの転換が今後の持続可能性を左右します。
売上計上時期の偏りとその影響
直近の中間期決算では、主要得意先の在庫調整などにより電装品事業の売上が減少し、全体として減収減益となりました。通期黒字化の目標達成には下半期の販売回復が不可欠とされており、売上や利益が下期に偏重する傾向が見られます。下期の回復が計画通りに進まない場合、通期目標達成にリスクが生じます。

5. 技術革新と主力製品

長年にわたる電装品開発で培われた技術力を基盤に、HV/EVモーターやECUといった電動化関連製品の開発に注力しています。特に日野自動車グループとの密接な連携により、商用車のニーズに合致した製品を生み出せる点が強みです。可搬式発電機や車載用冷蔵庫においても、独自の技術とブランド力で差別化を図っています。
収益を牽引している製品やサービス

  • 電装品事業: 連結売上高の63%を占める最大の主力事業です。スターター、オルタネーター、HVモーターなどが主要な収益源ですが、直近では主要顧客の在庫調整の影響を受けています。
  • 冷蔵庫事業(ENGEL): 連結売上高の20%。合理化策が奏功し、売上は微減ながら増益を達成しており、安定した収益貢献が期待されます。
  • 発電機事業(ELEMAX): 連結売上高の16%。受注回復により売上が増加し、セグメント損失も縮小傾向にあります。

6. 株価の評価

現在の株価は1,298.0円です。

  • PER(会社予想): 20.74倍
  • PBR(実績): 0.45倍
  • EPS(会社予想): 62.57円
  • BPS(実績): 2,858.51円

業界平均との比較

  • 業界平均PER: 12.9倍
  • 業界平均PBR: 0.8倍

当社のPERは業界平均と比較して割高ですが、PBRは業界平均の約0.56倍と割安水準にあります。PERの高さは、来期の予想利益がまだ低い水準であることに起因している可能性があります。

7. テクニカル分析

直近の株価は1,298.0円で、年初来高値1,314円に迫る水準にあり、年初来安値682円から大きく上昇しています。52週レンジ内位置は97.5%であり、現在の株価は高値圏にあると評価できます。
出来高・売買代金から見る市場関心度
直近の出来高は27,100株で、3ヶ月平均出来高14,280株を上回りますが、10日平均出来高73,560株を下回っています。12月23日の急騰時の出来高356,400株と比較すると、足元の出来高は落ち着いており、高値圏での市場の関心はやや一服している可能性があります。
長期トレンド分析

  • 株価リターン: 1ヶ月 (+28.39%)、3ヶ月 (+22.22%)、6ヶ月 (+36.49%)、1年 (+42.79%) といずれの期間でも高いリターンを示しており、明確な上昇トレンドにあります。
  • 相対パフォーマンス: 日経平均およびTOPIXに対しても、全ての期間で上回るパフォーマンスを発揮しています。
  • 移動平均線: 現在株価は5日移動平均線1,298.00円(ほぼ同水準)、25日移動平均線1,090.56円、75日移動平均線1,044.65円、200日移動平均線961.89円の全てを上回って推移しており、強い上昇トレンドを示唆しています。短期移動平均線が長期移動平均線を上回る「ゴールデンクロス」の状態が続き、上昇基調を維持しています。
  • サポート・レジスタンス: 現在株価は1ヶ月および3ヶ月レンジの高値圏(レジスタンスレベル: 1,314円)にあり、短期的な上値抵抗となる可能性があります。サポートレベルは1,000円前後と見られます。

8. 財務諸表分析

過去数年間の売上高は減少傾向にあり、それに伴い利益も変動しています。直近の過去12ヶ月では、売上高22,963百万円に対し、営業利益△494百万円、純利益△248百万円と赤字に転落しており、ROE(-2.23%)、ROA(-1.25%)も大幅に悪化しています。
四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年3月期第2四半期(中間期)の連結実績は、売上高10,952百万円、営業損失△526百万円、親会社株主に帰属する中間純損失△431百万円でした。
会社が修正した通期予想(売上高25,000百万円、営業利益350百万円、純利益270百万円)に対し、中間期の売上高進捗率は43.8%とやや遅れが見られます。中間期で大幅な赤字を計上しているため、通期の黒字予想を達成するには下半期の大幅な回復が不可欠となります。

9. 財務健全性分析

  • 自己資本比率: (連)50.1% (中間末: 49.1%)と、一般的な目安である40%を大きく上回っており、非常に良好な水準です。
  • 流動比率: 1.32 (約132%)と、短期的な支払い能力も健全です。
  • D/E (Total Debt/Equity): 45.75%と、負債は自己資本に対して適度な水準に抑えられています。

財務安全性は高い水準にありますが、直近の中間期では営業キャッシュフローがマイナスであり、投資を賄うために借入金が増加しています。これにより現金及び現金同等物残高も減少傾向にあり、資金繰りに関しては借入れへの依存が高まっている状況が窺えます。金利費用も増加傾向にあり、今後の金利動向によっては負担が増す可能性があります。

10. 収益性分析

  • ROE (過去12ヶ月): -2.23%
  • ROA (過去12ヶ月): -1.25%
  • Profit Margin (過去12ヶ月): -1.08%
  • Operating Margin (過去12ヶ月): -4.10%

一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%)と比較して、全ての収益性指標がマイナスであり、過去12ヶ月間の収益性は著しく悪化しています。
2025年3月期に黒字転換の予想ですが、中間期の状況からは、電装品事業の販売回復、原材料価格高騰への価格転嫁、およびコスト削減といった一層の経営努力による改善余地が大きいと考えられます。
利益の質分析

  • 営業キャッシュフロー (過去12ヶ月): -186百万円
  • 純利益 (過去12ヶ月): -248百万円

営業キャッシュフロー、純利益ともにマイナスであり、現金の創出能力に大きな課題があります。キャッシュフローが利益を下回る状況は、利益の質において「D(要注意)」と評価されており、会計上の利益と実際の現金の流れが乖離していることを示唆しています。

11. 市場リスク評価

  • ベータ値 (5Y Monthly): 0.87と1を下回るため、市場全体の動きに対する株価の連動性は比較的低いと言えます。
  • 52週レンジ内位置: 現在株価は52週高値1,314.00円に近く、レンジの97.5%の位置(高値圏)にあります。

決算短信に記載のリスク要因

  • 主要顧客の需要動向: 日野自動車を中心とした主要取引先の生産動向や在庫調整の影響を大きく受けます。中間期業績悪化の主因となっています。
  • 為替変動: 特に豪ドルや米ドルなどの変動は、海外売上や原材料仕入コストに影響を与えます。
  • 原材料・エネルギー価格の上昇: 製造コストに直結し、収益性を圧迫する要因となります。
  • 商用車の電動化の進展遅延: 長期的には自動車産業の電動化シフトへの対応が重要ですが、その不確実性がリスクとなります。
  • 資金繰り/借入依存度の上昇: 営業キャッシュフローがマイナスである中での借入増加は、金利上昇局面においては財務負担を増大させる可能性があります。

12. バリュエーション分析

  • 業種平均PBR基準の目標株価: BPS 2,858.51円 × 業界平均PBR 0.8倍 = 2,286.81円(約2,287円)。現在の株価と比較して大幅な上値余地があるという判断になります。
  • 業種平均PER基準の目標株価: EPS 62.57円 × 業界平均PER 12.9倍 = 807.45円(約807円)。現在の株価と比較して大幅な割高感があるという判断になります。

PBR基準では割安、PER基準では割高という異なる評価となります。直近の業績が赤字であるにもかかわらず、来期の黒字化予想と現在の株価高騰がPERを高くしています。PBRから見た資産価値の割安感と、足元の利益水準の不安定さを踏まえると、現在の株価は業績回復への期待をある程度織り込んでいる水準と判断できます。

13. 市場センチメント分析

  • 信用取引の状況: 信用買残99,000株に対し信用売残1,500株、信用倍率は66.00倍と非常に高い水準です。これは、株価上昇を期待する買いが積み上がっている一方で、短期的な需給悪化リスク(信用買いの反対売買)が潜在的に存在することを示唆します。
  • 株主構成: 日野自動車 (30.24%)、デンソー (9.25%)、本田技研工業 (6.02%) など、事業上の関係が深い企業が大株主を占めており、安定株主比率が高いです。経営の安定性につながる一方、市場での流通株数が少なくなることで流動性に影響を与える可能性があります。

14. 株主還元と配当方針

  • 配当利回り(会社予想): 1.23%
  • 1株配当(会社予想): 16.00円 (年間32.00円)
  • 配当性向(会社予想EPS基準): 約51%

配当利回りは市場金利を考慮すると限定的ですが、中間期に赤字を計上しながらも配当を維持する方針は株主還元への意欲と見られます。ただし、この配当水準が持続可能であるかは、今後の利益回復にかかっています。自社株買いなどの追加的な株主還元策に関する情報は記載がありませんでした。

15. 最近のトピックスと材料

  • 2026年3月期第2四半期(中間期)決算: 直近の決算では、主要得意先の在庫調整による電装品事業の販売減が響き、減収減益(営業損失および純損失)となりました。しかし、会社は下半期での販売回復、原価低減、販売価格への転嫁などにより、通期での黒字化を目指すとしています。
  • 業績予想の修正: 通期業績予想は既に修正されているとされています(詳細な修正内容は提示されていませんが、決算短信の業績予想は修正後のものと推測されます)。

これらの情報は、すでに市場に開示されており、現在の株価に織り込まれている可能性があります。下半期の業績回復が計画通りに進むかどうかが今後の株価に影響を与える主要な材料となるでしょう。

16. 総評

澤藤電機は日野自動車グループの中核電装品メーカーとして、安定した事業基盤を持つ一方で、独自ブランドの発電機や冷蔵庫で収益の多角化を図っています。しかし、自動車産業の電動化という大きな変化への適応、および主要顧客の需要変動が直近の業績に大きく影響を与えています。

強み:

  • 日野自動車をはじめとする安定した顧客基盤と高いOEM取引実績。
  • 「ENGEL」「ELEMAX」といった独自のブランド製品を持ち、特定の市場で強みを発揮。
  • 財務健全性は高い(自己資本比率、流動比率)。

弱み:

  • 直近の業績は売上減少と営業損失・純損失に転落しており、収益性が低迷。
  • 資金繰りが借入に依存する傾向にあり、有利子負債が増加している。
  • 利益の質が低く(営業CFがマイナス)、現金の創出能力に課題。

機会:

  • 商用車の電動化トレンドへの対応(HV/EVモーター、ECU開発)。
  • 発電機事業の受注回復や冷蔵庫事業の合理化による収益貢献。
  • 下半期での販売回復およびコスト削減・価格転嫁による業績改善の可能性。

脅威:

  • 主要顧客の需要変動や在庫調整の影響。
  • 為替変動(特に豪ドル、米ドル)と原材料・エネルギー価格の動向。
  • 自動車産業の構造変化(電動化)への対応遅れや電動化シフトの不確実性。
  • 金利上昇局面における借入金利負担の増加。
  • 信用買残が高水準であり、短期的な需給悪化リスク。

投資判断の参考となるポイント

  • 業績の不安定性: 直近の中間期で大きな赤字を計上しており、通期黒字化への下半期の回復状況が焦点。
  • バリュエーションの乖離: PBRは割安感があるものの、PERは予想利益が低いため高めに出ており、総合的な判断が必要。
  • テクニカルの強さ: 直近の株価は強い上昇トレンドにあり、年初来高値圏で推移しているが、急騰後の調整リスクも考慮すべき。
  • 財務の健全性: 自己資本比率や流動比率は安定しているが、営業キャッシュフローのマイナスと借入れ増加は注意が必要。

17. 企業スコア

  • 成長性: C
  • 売上高は減少傾向にあり、直近中間期も減収。電装品事業の主要得意先からの受注が不安定。発電機事業は回復傾向にあるものの、全体では受注動向に不透明感が残る。新製品展開は電動化対応を進めているが、具体的な貢献はまだ見えにくい。
  • 収益性: D
  • 過去12ヶ月のROE、ROA、営業利益率がいずれもマイナスであり、収益性は極めて低い。中間期も大幅な営業損失を計上。一般的なベンチマークを大きく下回っている。
  • 財務健全性: A
  • 自己資本比率が50.1%と高く、流動比率も132%と健全な水準。D/Eレシオも低く、財務安全性は高い。ただし、営業キャッシュフローのマイナスと有利子負債の増加傾向には留意が必要。
  • 株価バリュエーション: B
  • PBRは業界平均0.8倍に対し0.45倍と割安感がある一方、PERは業界平均12.9倍に対し20.74倍と割高。業績の回復期待を一定程度織り込んでいると見られるが、判断は分かれるため「平均並み」と評価。

企業情報

銘柄コード 6901
企業名 澤藤電機
URL http://www.sawafuji.co.jp/
市場区分 スタンダード市場
業種 電機・精密 – 電気機器

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 1,298円
EPS(1株利益) 62.57円
年間配当 1.23円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 0.0% 22.5倍 1,408円 1.7%
標準 0.0% 19.6倍 1,224円 -1.1%
悲観 1.0% 16.6倍 1,094円 -3.3%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 1,298円

目標年率 理論株価 判定
15% 612円 △ 112%割高
10% 764円 △ 70%割高
5% 964円 △ 35%割高

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

関連情報

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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.6)」によって自動生成されました。

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企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。

By ジニー

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