1. 企業概要

ADEKAは、化学品、食品、ライフサイエンスの3つの事業を主軸とする総合化学メーカーです。主に樹脂添加剤や半導体材料などの高機能化学品、業務用マーガリンやショートニングなどの食品素材、そして農薬といったライフサイエンス製品を提供しています。特に車載向け樹脂添加剤や半導体向けの高誘電材料に強みを持ち、海外市場の強化にも注力しています。
収益モデルは主にB2B(企業間取引)のフロー型ビジネスですが、一部特定の顧客との継続的な取引によって安定した収益を上げています。技術的独自性としては、特定の高機能化学品分野における高い開発力と、これら製品群が持つ高い参入障壁が挙げられます。

2. 業界ポジション

業界内での具体的な市場シェアデータは開示されていませんが、「車向け樹脂添加剤や半導体の高誘電材料に強み」という記述から、特定のニッチ市場で優位なポジションを確立していると推測されます。主要競合との差別化要因は、これらの高機能材料における技術力と、化学品、食品、ライフサイエンスという多角的な事業ポートフォリオによる収益安定性です。
市場動向としては、化学品事業は半導体・自動車・家電市場の需要サイクルや中国経済の減速などの外部要因に左右されやすい一方で、ライフサイエンス事業は農業環境の改善による需要の追い風を受けています。同社はライフサイエンス分野の強化により、収益多角化と安定化を図っています。
【定量比較】

  • PER(会社予想): 14.90倍(業界平均20.4倍と比較して割安水準)
  • PBR(実績): 1.27倍(業界平均1.1倍と比較してやや割高水準)
  • ROE(実績): 8.60%(同業他社比較ベンチマーク10.0%に対してやや下回る普通水準)
  • 営業利益率(過去12か月): 9.32%(業界平均のデータなし)

3. 経営戦略

経営陣の具体的な中期経営計画の数値目標は提示資料には記載されていませんが、決算短信からはライフサイエンス事業の成長が中期目標と整合していることが示唆されています。
重点投資分野はライフサイエンス事業の拡大と、化学品事業における先端フォトレジスト向け材料などの高付加価値製品です。成長戦略として、ライフサイエンス分野での国内外市場開拓が奏功しています。
最近の適時開示情報として、自己株式取得枠の設定と、中間期における実績開示があり、株主還元への積極的な姿勢が伺えます。これらの戦略は、ライフサイエンス事業の拡大によって全社的な収益安定と成長を促し、自己株式取得は株主資本利益率(ROE)の向上や市場での評価向上に寄与すると考えられます。

4. 財務分析

  • 【収益性】
  • 営業利益率(過去12か月): 9.32%
  • ROE(実績): 8.60% (ベンチマーク10%に対しやや下回る)
  • ROA(実績): 4.98% (ベンチマーク5%に対しほぼ同水準)
    利益率は改善傾向にあり、ROE・ROAともに堅調な水準です。
  • 【財務健全性】
  • 自己資本比率(実績): 54.6% (2025年3月期末、中間期は56.3%)。非常に健全な水準です。
  • 流動比率(直近四半期): 311% 。短期的な債務返済能力が非常に高いことを示します。
  • D/Eレシオ(直近四半期): 15.34% 。有利子負債が少なく、財務に余裕があります。
  • 【成長性】
  • 売上高成長率: 2026年3月期予想は前年比+8.31%の増収見込みです。直近12か月の実績では対前年同期比で-2.90%と減少していますが、これは四半期特有の要因と考えられます。
  • 利益成長率: 2026年3月期予想純利益は前年比+5.52%の増益見込みです。直近12か月の純利益成長率は+10.90%と堅調です。
  • 【キャッシュフロー】
  • 営業CF/純利益比率: 1.72 。キャッシュフローが利益を大幅に上回っており、利益の質は非常に優良です。
  • 【四半期進捗】
  • 2026年3月期第2四半期の中間進捗率は、売上高44.4%、営業利益46.0%、純利益47.1%です。例年下期に利益が偏重する傾向があるため、通期予想に対して概ね計画通りと判断されます。

5. 株価分析

  • 【現在の水準】
  • PER(会社予想): 14.90倍。業界平均20.4倍と比較すると割安な水準にあります。
  • PBR(実績): 1.27倍。業界平均1.1倍と比較するとやや割高な水準にあります。
  • EPS(会社予想): 260.15円。BPS(実績): 3,040.16円。
  • 業種平均PER基準の目標株価は5,211円、業種平均PBR基準の目標株価は3,344円であり、現在の株価3,876.0円はこのレンジの中間付近に位置しています。
  • 【テクニカル】
  • 52週高値3,949円、安値2,125.50円に対し、現在の株価3,876.0円は52週レンジの96.0%に位置しており、高値圏で推移しています。
  • 移動平均線(MA)との関係では、5日MA(3,884.20円)をわずかに下回っていますが、25日MA(3,769.88円)、75日MA(3,553.17円)、200日MA(3,081.83円)は大きく上回っており、中長期的な上昇トレンドが継続しています。
  • トレンドシグナルは直接データがありませんが、現状の移動平均線の並びから、引き続き上昇トレンドにあると見られます。
  • 【市場との比較】
  • 株式は過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年において、日経平均およびTOPIXの両指数を継続的に上回るパフォーマンスを見せており、市場全体をアウトパフォームしています。

6. リスク評価

  • ベータ値は0.60であり、市場全体の値動きに対して比較的感応度が低い(ディフェンシブな)銘柄です。
  • 決算短信に記載されている主なリスク要因は、為替変動、原材料価格の変動、中国経済の停滞や米国関税などの貿易環境変化、半導体・自動車・家電市場の需要サイクル、および価格競争の激化による利益率低下です。
  • 事業特有のリスクとしては、化学品事業が世界経済や特定産業(半導体など)の需要変動に大きく左右されること、食品事業における中国市場の低価格志向、そして技術革新への対応遅れや技術陳腐化の可能性が挙げられます。
  • 現在株価は52週レンジの96.0%に位置しており、高値圏での推移に伴う短期的な調整リスクには注意が必要です。

7. 市場センチメント

  • 信用買残は145,600株、信用売残は21,000株であり、信用倍率は6.93倍です。信用買残が売残を大きく上回っており、買い方が多い状態を示すため、短期的な需給面では売り圧力が発生しやすい状況と言えます。
  • 株主構成を見ると、日本マスタートラスト信託銀行、日本カストディ銀行などの信託銀行や、朝日生命保険、全国共済農業協同組合連合会、農林中央金庫などの安定株主が上位に名を連ねています。また、事業会社である日本ゼオンも主要株主の一角を占めており、安定した株主基盤を持つことが伺えます。
  • 経営陣の持株比率は個別データがありませんが、自社(自己株口)が2.74%保有しています。

8. 株主還元

  • 配当利回り(会社予想)は2.68%です。
  • 配当性向(会社予想)は40.72%と、利益に対する株主還元意欲が高い水準にあります。
  • 配当は2022年3月期以降、年間配当額が70円から104円(2026年3月期予想)へと継続的に増配傾向にあり、安定した株主還元の方針が見られます。
  • 自社株買いについては、上限1,000万株(180億円)の取得が決議されており、中間期までに1,406,300株(45億8,900万円)を取得済みです。これは株主還元の重要な施策として継続的に実施されています。

9. 総合評価

  • 【投資ポイント】
  • 農薬等のライフサイエンス事業が好調に推移し、全体の業績を下支え・牽引していること。
  • 盤石な財務健全性(高自己資本比率、高流動比率、低D/Eレシオ)が事業の安定性を確保していること。
  • 継続的な増配傾向と積極的な自己株式取得による株主還元方針。
  • 【強み】
  • 化学品、食品、ライフサイエンスの多角化された事業ポートフォリオ。
  • 高機能化学品分野における技術的優位性と参入障壁。
  • 非常に高い財務健全性と利益の質の高さ。
  • 【弱み】
  • 化学品事業がグローバルな産業サイクルや需要変動の影響を受けやすい点。
  • 中国市場における価格競争の激化。
  • 原材料価格や為替レートの変動による収益性への影響。
  • 【機会】
  • ライフサイエンス事業のさらなる海外展開と製品ポートフォリオの拡充。
  • 半導体など先端産業における新たな高機能材料需要の取り込み。
  • 環境・サステナビリティへの意識向上に伴うプラントベース製品などの需要増。
  • 【脅威】
  • 世界経済の想定以上の減速や地政学リスクの高まり。
  • 競合他社による技術革新やサプライチェーンの変化。
  • 予期せぬ輸入規制や関税政策の変更による事業環境悪化。
  • 【注目すべき指標】
  • 化学品事業(特に樹脂添加剤、半導体材料)の売上高及び営業利益の推移。
  • ライフサイエンス事業の海外市場における具体的な成長率と地域別収益貢献度。
  • ROEの継続的な10%以上への改善。

10. 企業スコア

  • 成長性: B (売上高成長率 8.31%)
  • 収益性: B (ROE 8.77%、営業利益率 9.32%)
  • 財務健全性: A (自己資本比率 54.6%、流動比率 311%)
  • 株価バリュエーション: C (PERは割安だが、PBRが業界平均の115%でやや割高)

企業情報

銘柄コード 4401
企業名 ADEKA
URL http://www.adeka.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 素材・化学 – 化学

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 3,876円
EPS(1株利益) 260.15円
年間配当 2.68円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 12.0% 17.1倍 7,850円 15.2%
標準 9.2% 14.9倍 6,024円 9.3%
悲観 5.5% 12.7倍 4,312円 2.2%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 3,876円

目標年率 理論株価 判定
15% 3,004円 △ 29%割高
10% 3,751円 △ 3%割高
5% 4,734円 ○ 18%割安

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

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By ジニー

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