1. 企業概要

中央倉庫は、京都を地盤とする内陸総合物流の大手企業です。国内物流、国際貨物、不動産賃貸の3つの事業セグメントを展開しています。主力サービスは、倉庫保管、陸上運送、通関、梱包など多岐にわたり、保税倉庫や定温・定湿、危険物倉庫といった特殊なニーズにも対応可能です。収益モデルは主に企業顧客向けのB2B型であり、物流サービス料金や倉庫・不動産賃料などによるストック型およびフロー型で構成されています。長年にわたる物流ノウハウと全国に広がる拠点ネットワーク、さらに安田倉庫との連携による国際貨物対応力が、技術的独自性と参入障壁となっています。

2. 業界ポジション

同社は国内の内陸総合物流においてトップクラスの地位を占めています。主要競合他社と比較した差別化要因としては、京都を中心とする強固な顧客基盤と地域特性、多様な物流ニーズに対応できる総合的なサービス提供能力、および安田倉庫との連携による国際貨物取扱いの強化が挙げられます。現在の市場は燃料費や人件費の高騰、貨物需要の伸び悩みが課題となっていますが、同社は賃料の適正化、新規営業開発、愛知県あま市の新物流拠点建築といった設備投資により、競争力強化とコスト効率改善に取り組んでいます。【定量比較】において、PER(会社予想)は14.69倍と業界平均の14.8倍とほぼ同水準ですが、PBR(実績)は0.55倍と業界平均の1.1倍に対して約50%であり、資産面からは大幅に割安な評価を受けています。

3. 経営戦略

経営陣は第8次中期経営計画「NEXT CS-100」(2025年度〜2027年度)を推進しており、創業100周年に向けた事業構造改革と成長戦略の実行をビジョンとしています。重点投資分野は、愛知県あま市での新物流拠点整備に代表される拠点ネットワークの拡充、輸送付随業務(機工)体制の強化、化学原料取扱いの拡大、情報システム投資による物流効率化とサービス品質向上です。直近の適時開示情報(2026年3月期第2四半期決算短信)では、愛知県あま市の新物流拠点建築が着手され、設備投資が着実に進んでいることが報告されています。これらの戦略は、将来的な取扱貨物量の増加、物流効率の向上、新たな物流需要の取り込みによる業績拡大に寄与すると期待されますが、初期投資負担やコスト増が短期的な利益を圧迫する可能性も内包しています。

4. 財務分析

  • 収益性:
  • 営業利益率(過去12か月): 7.06%
  • ROE(実績): 3.49% (過去12か月: 3.95%) → ベンチマーク10%に対し低水準
  • ROA(実績): 2.20% → ベンチマーク5%に対し低水準
  • 財務健全性:
  • 自己資本比率(実績): 77.7% (直近四半期: 78.1%) → 非常に高く、極めて健全
  • 流動比率(直近四半期): 197% → 良好な水準
  • D/Eレシオ(直近四半期): 13.36% → 非常に低く、負債依存度は低い
  • 成長性:
  • 売上高成長率(通期予想に基づく): 約2.37% (2025年3月期実績27,840百万円から2026年3月期予想28,500百万円)
  • 営業利益成長率(通期予想に基づく): 約16.3% (2025年3月期実績2,189百万円から2026年3月期予想2,250百万円)
  • 純利益成長率(直近四半期、前年比): 83.90%(ただし前年同期の投資有価証券評価損等が影響)
  • キャッシュフロー:
  • 営業キャッシュフロー(過去12か月): 3,050百万円
  • 営業CF/純利益比率: 1.66 → 1.0以上で非常に優良(キャッシュフローが利益を大幅に上回る)
  • フリーキャッシュフロー(過去12か月): 280.75百万円
  • 四半期進捗:
  • 2026年3月期第2四半期(中間期)において、売上高進捗率49.6%、営業利益進捗率50.0%、純利益進捗率54.0%といずれも通期予想に対し約50%水準で推移しており、概ね順調です。ただし、中間純利益の大幅な増加には、前年同期に計上された一時的な評価損益の解消が大きく寄与しています。

5. 株価分析

  • 現在の水準:
  • PER(会社予想): 14.69倍(業界平均PER 14.8倍と比較してほぼ同水準)
  • PBR(実績): 0.55倍(業界平均PBR 1.1倍と比較して約50%と大幅に割安)
  • 現在株価1,438.0円は、EPSベースの理論株価(PER基準1,447.44円)では適正水準、BPSベースの理論株価(PBR基準2,864.11円)から見ると大幅に割安な水準にあります。
  • テクニカル:
  • 52週高値1,578円、52週安値1,190円に対し、現在株価1,438.0円はレンジの62.5%の位置にあります。
  • 移動平均線との関係では、5日移動平均線1,440.20円をわずかに下回っていますが、25日移動平均線1,389.60円、75日移動平均線1,368.01円、200日移動平均線1,399.49円は全て上回っており、中期・長期的な上昇基調を示唆しています。トレンドシグナルの明確な記述はありませんが、主要移動平均線の上で推移していることから、堅調な動きと言えます。
  • 市場との比較:
  • 過去1ヶ月では日経平均・TOPIXを約5%上回るパフォーマンスを見せていますが、1年間のリターンでは日経平均を大きく(約37%ポイント)下回っています。相対的にディフェンシブな特性を持つため、市場全体の上昇局面では出遅れる傾向が見られます。

6. リスク評価

  • ベータ値0.17(5Y Monthly)は、市場全体の変動に対する株価の感応度が非常に低いことを示しており、ディフェンシブな特性が強い銘柄です。
  • 決算短信に記載されている主なリスク要因は、貨物需要の鈍化、燃料費および人件費の高騰、為替変動、地政学リスク、そして投資有価証券の評価損発生です。特に燃料費や人件費の高騰は、物流事業の利益率に直接的な影響を与える可能性があります。
  • 事業特有のリスクとしては、大規模な設備投資(愛知県あま市の新拠点)が期待通りの収益に結びつかない可能性や、労働力不足(ドライバー、フォークリフトオペレーター等)の深刻化、新技術への対応遅れによる競争力低下が挙げられます。
  • 52週レンジにおける現在位置は62.5%であり、高値からの下落リスクも、安値からの上昇余地も存在する中間の水準です。

7. 市場センチメント

  • 信用取引の状況は、信用買残136,100株に対し信用売残5,700株と、信用買残が大幅に上回っており、信用倍率は23.88倍となっています。これは、今後の株価上昇を期待する買い方が優勢であるものの、需給面では将来的な売り圧力となる可能性を秘めています。
  • 株主構成を見ると、日本マスタートラスト信託銀行、京都銀行、滋賀銀行、安田倉庫、三菱UFJ銀行など、安定株主となり得る金融機関や事業会社が大株主として名を連ねています。機関投資家保有比率25.21%、インサイダー保有比率25.55%も安定した株主構成を示唆しており、経営陣の持株比率は個別には不明ですが、インサイダー保有比率から一定のガバナンスが期待されます。

8. 株主還元

  • 配当利回り(会社予想)は2.64%です。配当性向(会社予想)は38.8%と穏当な水準であり、業績の成長に伴う増配の余地を残しています。
  • 配当は継続的に増配傾向にあり、2022年3月期の年間24円から、2026年3月期予想では年間38円までの増配を計画しています。
  • 株主還元策として、配当だけでなく自社株買いも継続的に実施しており、直近の中間期においても223百万円の自己株式取得が行われています。これは株主への還元意識が高いことを示しています。

9. 総合評価

  • 投資ポイント:
  • 非常に高い自己資本比率(約78%)と安定した営業キャッシュフロー(営業CF/純利益比率1.66)に裏打ちされた強固な財務基盤。
  • 業界平均PBRの約50%という大幅な割安水準にあり、資産価値からの評価に改善余地がある。
  • 新規物流拠点への積極投資と、継続的な増配および自社株買いによる株主還元姿勢。
  • 強み:
  • 安定した財務と高い現金創出力。
  • ディフェンシブな事業特性と低い市場感応度(ベータ値0.17)。
  • 多様なニーズに対応できる総合物流サービスと長年のノウハウ。
  • 弱み:
  • 比較的低い収益性(ROE、ROAがベンチマーク未達)。
  • 燃料費・人件費上昇による利益率への持続的な圧力。
  • 市場全体の上昇局面での相対的な株価パフォーマンスの鈍さ。
  • 機会:
  • 物流施設の機能拡充やネットワーク強化による事業拡大。
  • 国際貨物事業における安田倉庫との連携強化による成長加速。
  • EC市場拡大など、変化する物流需要への対応。
  • 脅威:
  • 景気変動や地政学リスクによる貨物需要の減少。
  • 物流業界におけるコスト上昇圧力と価格競争の激化。
  • 労働力不足の深刻化。
  • 注目すべき指標:
  • 営業利益率の推移(中期経営計画達成に向けたコストコントロールの成果)。
  • 愛知県あま市の新物流拠点の稼働率と、それに伴う売上・利益への貢献度。
  • 営業キャッシュフローの継続的な創出力と、設備投資・株主還元への配分。

10. 企業スコア

  • 成長性: C
  • 売上高成長率が通期予想で2.37%、直近四半期前年比1.50%であり、0-5%の範囲にあります。
  • 収益性: D
  • ROEが3.95%と5%未満であるため、収益性評価基準のDに該当します。
  • 財務健全性: S
  • 自己資本比率が77.7%(60%以上)かつ流動比率が197%(150%以上)であり、極めて高い財務の安定性を示します。
  • 株価バリュエーション: S
  • PBRが0.55倍と業界平均1.1倍の50%であり、大幅な割安状態(業界平均の70%以下)に該当します。PERは業界平均と同水準ですが、PBRの割安感が非常に大きいためSと評価します。

企業情報

銘柄コード 9319
企業名 中央倉庫
URL http://www.chuosoko.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 運輸・物流 – 倉庫・運輸関連業

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 1,438円
EPS(1株利益) 97.80円
年間配当 2.64円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 4.5% 16.9倍 2,061円 7.6%
標準 3.5% 14.7倍 1,704円 3.6%
悲観 2.1% 12.5倍 1,354円 -1.0%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 1,438円

目標年率 理論株価 判定
15% 855円 △ 68%割高
10% 1,067円 △ 35%割高
5% 1,347円 △ 7%割高

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

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By ジニー

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