1. 企業概要

株式会社小松製作所は、国内最大手、世界第2位の建設機械・鉱山機械メーカーです。油圧ショベル、ブルドーザー、ホイールローダーなどの建設機械や、超大型ダンプトラックなどの鉱山機械を主力製品として世界中で製造・販売しています。加えて、鍛圧機械や工作機械などの産業機械、建設機械の販売金融サービスも手掛けています。
主要な収益モデルは建設機械・車両の販売が収益全体の約9割を占めるフロー型が中心ですが、部品・サービス、リテールファイナンスを通じて顧客との継続的な関係を築くストック型収益も補完しています。事業はB2B(企業間取引)が主軸です。技術的独自性としては、ICT(情報通信技術)を活用したスマートコンストラクション(ICT建機)の推進や、鉱山機械の自動運行システム(AHS)の開発・導入に強みを持っています。基幹部品の内製化とグローバルな生産・販売・サービス網が、高い参入障壁となっています。

2. 業界ポジション

小松製作所は、建設機械業界において世界第2位のポジションを確立しています。主要競合他社との差別化要因としては、ICT建機による現場の生産性向上ソリューションや、鉱山機械の無人運行システムの提供といった先進的なIT技術の活用が挙げられます。また、グローバルに展開する強固な販売・サービスネットワークと、リテールファイナンスによる顧客支援も競争優位性となっています。
市場動向としては、地域ごとの需要に差が見られ、直近の中間期決算では欧州・AfME(アフリカ・中東)地域は堅調に推移しましたが、米州の鉱山機械、アジア(日本除く)、日本市場では販売が減少しました。企業はソリューションビジネスの強化や自動運転・SDV(ソフトウェア定義車両)開発の協業を通じて、中長期的な成長の機会を捉えようとしています。
定量比較として、業界平均PER16.6倍に対し、小松製作所のPERは14.30倍とやや割安な水準にあります。PBRは業界平均1.4倍に対し、1.41倍とほぼ同水準です。ROEは14.17%と高い収益性を示しています。

3. 経営戦略

経営陣は、2026年3月期から始まる3か年の中期経営計画「Driving value with ambition」を推進しています。主要なビジョンは「安全で生産性の高い、持続可能な未来の現場」の実現であり、具体的には以下の3本柱を成長戦略として掲げています。

  • 価値創造を最大化するソリューションビジネスモデルの変革: ICTの活用や協業によるイノベーション推進。
  • イノベーションによる製品の強化と新技術への挑戦: 電動化、水素化、自動運転、SDV開発の推進。
  • レジリエントな企業基盤の構築: サプライチェーン強靭化、人財育成、ESGへの取り組み。

重点投資分野としては、ICT建機化率の向上(直近27.0%)、鉱山向けAHS導入の拡大(累計940台)、自動運転化およびSDV開発への投資が挙げられます。
最近の適時開示情報としては、2026年3月期第2四半期決算短信において、主に為替の円安進展を背景に、通期業績予想を上方修正しました。この上方修正は、足元の為替環境の追い風を織り込んだものであり、今後の業績にプラスの影響を与える見込みです。ただし、中間期の売上・利益は前年同期比で減収減益となっており、本業における市場需要の回復がカギとなります。

4. 財務分析

  • 収益性
    • 営業利益率(過去12か月):13.92%。実績(2025年3月期予想):16.01%。中間期実績:14.6%。高水準を維持しています。
    • ROE(実績):14.17% (ベンチマーク10%に対し良好)。過去12ヶ月:13.57% (ベンチマーク10%に対し良好)。
    • ROA(過去12か月):6.87% (ベンチマーク5%に対し良好)。
  • 財務健全性
    • 自己資本比率(実績):55.0%。中間期末:54.3% (健全水準)。
    • 流動比率(直近四半期):209% (200%以上で非常に良好な流動性)。
    • D/Eレシオ(直近四半期):39.82% (低水準で健全)。
  • 成長性
    • 売上高成長率は2021年3月期から2025年3月期予想まで連続して増収を続けていましたが、2026年3月期は通期予想でマイナス5.3%の減収を見込んでいます(直近四半期前年比△2.60%)。
    • 当期純利益も増益傾向が続いていましたが、2026年3月期は通期予想でマイナス27.2%の減益を見込んでいます(直近四半期前年比△8.10%)。成長性は一時的に鈍化する見込みです。
  • キャッシュフロー
    • 営業CF(過去12か月):427,150百万円。純利益(過去12か月):413,290百万円。
    • 営業CF/純利益比率:1.03 (健全な利益の質を示しています)。
    • 中間期の営業CF/純利益比率は0.73と、棚卸資産の増加により一時的に純利益を下回っています。
  • 四半期進捗
    • 2026年3月期の通期業績予想(修正後)に対して、中間期の進捗率は売上高48.6%、営業利益55.4%、当期純利益54.9%であり、通期目標達成の可能性は高いと判断できます。

5. 株価分析

  • 現在の水準
    • 現在の株価5,000.0円は、PER(会社予想)14.30倍、PBR(実績)1.41倍です。業界平均PER16.6倍、業界平均PBR1.4倍と比較すると、PERは業界平均より約14%割安、PBRはほぼ同水準にあります。
    • EPS(会社予想)349.56円、BPS(実績)3,543.57円に基づくと、業種平均PER基準の理論株価は5,802円、業種平均PBR基準の理論株価は4,961円となります。現在の株価はPBR基準からはほぼ適正、PER基準からは割安な水準と言えます。
  • テクニカル
    • 52週高値5,867円、52週安値3,566円に対し、現在の株価は52週レンジの62.3%の位置にあり、やや高値寄りの水準です。
    • 移動平均線との位置関係では、5日移動平均線(4,985.60円)をわずかに上回っています。しかし、25日移動平均線(5,036.76円)および75日移動平均線(5,196.84円)を下回っており、短期から中期の下降トレンドを示唆しています。200日移動平均線(4,799.17円)は上回っており、長期的なトレンドは維持されています。
    • 明確なゴールデンクロスやデッドクロスシグナルは発生していませんが、短期的な抵抗線に近づいています。
  • 市場との比較
    • 過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年間のいずれの期間においても、日経平均株価およびTOPIXといった市場主要指数をアンダーパフォームしています。これは、市場全体の上昇トレンドに乗り切れていない現状を示しています。

6. リスク評価

  • ベータ値
    • ベータ値は0.75であり、市場全体(日経平均やTOPIX)と比較して株価の変動、すなわち市場感応度は控えめであると言えます。
  • 決算短信記載のリスク要因
    • 為替相場の変動:円安は業績にプラスに寄与する一方、円高はリスクとなります。
    • 世界経済の景況感:主要市場におけるインフラ投資や鉱業の需要低迷は、建設機械・鉱山機械事業に直接影響します。
    • 米国関税による影響:貿易政策の変更は、地域別の販売戦略やコスト構造に影響を及ぼす可能性があります。
    • 原材料価格の高騰:製造コスト増加による収益圧迫のリスクがあります。
    • 地域別の需要偏り:特定の地域に依存した売上構成は、その地域の経済情勢変動に脆弱性をもたらす可能性があります。
  • 事業特有のリスク
    • 建設機械業界は景気循環の影響を強く受けるため、グローバル経済の減速は事業リスクとなります。
    • 資源価格の変動は、鉱山機械の需要に直接影響を与える可能性があります。
    • 急速な技術革新(AI、IoT、自動化など)への対応が遅れると、競争力を失う技術陳腐化リスクも存在します。
  • 52週レンジにおける現在位置
    • 現在の株価は52週レンジの62.3%に位置しており、高値圏にあるものの、最近の市場全体の調整によりやや下方に推移しています。

7. 市場センチメント

  • 信用取引の状況
    • 信用買残は1,582,800株(前週比+13,200株)、信用売残は164,500株(前週比-27,400株)です。信用買残が信用売残を大きく上回る信用倍率9.62倍となっており、株価が上昇基調に転じた際に、買残の整理売りが上値の抵抗となる可能性があります。
  • 株主構成と大株主の動向
    • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)が17.23%、日本カストディ銀行(信託口)が6.83%を保有するなど、主要な機関投資家や信託銀行が大株主の上位を占めています。特定の外部大株主による支配リスクは低いと見られます。
    • 機関投資家による保有比率は50.31%と高く、安定株主が多い構造です。
  • 経営陣の持株比率と安定株主の状況
    • インサイダー(経営陣)による持株比率は1.37%と記載されており、一般的な水準です。自社(自己株口)が4.45%、自社従業員持株会が1.23%を保有しており、安定株主としての役割を果たすとともに、株主価値の向上へのインセンティブが働いていると考えられます。

8. 株主還元

  • 配当利回り・配当性向
    • 会社予想に基づく配当利回りは3.80%です。
    • 2026年3月期の年間配当予想は190.00円で、これに基づく配当性向(会社予想EPS351.84円に対して)は約54.0%となります。これは過去実績(40%台)と比較してやや高めですが、収益が計画通りに推移すれば持続可能な水準と見られます。
  • 配当の継続性・増配傾向
    • 2022年3月期の年間配当96円から、2025年3月期の190円(予想)まで継続的な増配傾向にあり、株主還元への意欲が高いことが伺えます。2026年3月期予想は190円と据え置きです。
  • 自社株買いの実績と方針
    • 中間決算において自己株式取得が実施されたことが言及されており、配当と並行して機動的な株主還元策として活用されています。今後も資本効率向上を目的とした自社株買いが期待されます。

9. 総合評価

  • 投資ポイント
    • グローバル建機市場における確固たる世界第2位の地位と、ICT・自動運転技術による差別化戦略。
    • 健全な財務体質と高水準の収益性、安定的なキャッシュフロー創出力。
    • 堅実な株主還元策、特に継続的な増配傾向と自社株買いによる株主価値向上へのコミットメント。
  • 強み
    • 広範な製品ラインナップとグローバルな市場展開による収益源の多様性。
    • ICT建機やマイニング分野での先進技術導入による高い競争力。
    • 自己資本比率54.3%、流動比率209%、ROE14.17%など、財務指標の安定性と収益性の高さ。
  • 弱み
    • 世界経済の景気変動や資源価格、インフラ投資動向に業績が左右されやすい。
    • 直近の中間決算では為替効果を除くと本業ベースでの減益となっており、成長鈍化の懸念がある。
    • 過去1年間の株価パフォーマンスが市場主要指数を下回っている。
  • 機会
    • 世界的なインフラ投資の需要(特に新興国や再開発需要)による建機需要の拡大。
    • 建設・鉱山現場におけるDX推進、自動化・省人化ニーズの高まり。
    • 産業機械他部門における半導体関連の需要増加などの特定の市場成長。
  • 脅威
    • 米中対立や地政学リスク、保護貿易主義の台頭によるグローバルサプライチェーンへの悪影響。
    • 予期せぬ景気後退や金融引き締め政策による設備投資の停滞。
    • 円高への急激な転換による為替差損の発生と輸出競争力の低下。
  • 注目すべき指標
    • 四半期ごとの地域別売上高及び利益の動向(特にアジア市場と鉱山機械)。
    • ICT建機化率の進捗と、自動運転関連ソリューションの市場導入動向。
    • 通期業績予想に対する実際の進捗率と、為替前提の変動。

10. 企業スコア

  • 成長性: D
    • 2026年3月期の売上高成長率予想はマイナス5.3%であり、直近四半期も前年同期比でマイナス成長を記録しているため。
  • 収益性: A
    • ROEが実績14.17%(ベンチマーク10%以上)、過去12か月の営業利益率が13.92%(ベンチマーク10%以上)と、共に高い水準を維持しているため。
  • 財務健全性: A
    • 自己資本比率が実績55.0%(ベンチマーク40-60%)、流動比率が直近四半期で209%(ベンチマーク150%以上)と、いずれも良好な水準にあるため。
  • 株価バリュエーション: B
    • PERが業界平均の86%(割安圏A評価)である一方、PBRが業界平均の100.7%(適正圏B評価)であり、共に条件を満たす評価ではBとなるため。

企業情報

銘柄コード 6301
企業名 小松製作所
URL https://www.komatsu.jp/ja
市場区分 プライム市場
業種 機械 – 機械

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 5,000円
EPS(1株利益) 349.56円
年間配当 3.80円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 12.5% 16.4倍 10,342円 15.7%
標準 9.6% 14.3倍 7,900円 9.7%
悲観 5.8% 12.2倍 5,620円 2.4%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 5,000円

目標年率 理論株価 判定
15% 3,940円 △ 27%割高
10% 4,921円 △ 2%割高
5% 6,210円 ○ 19%割安

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

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By ジニー

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