1. 企業概要

日本航空電子工業は、コネクタ、ユーザーインターフェースソリューション、および航空機向け電子機器を提供する主要な電機メーカーです。特に、NEC系のコネクタ大手として、小型・高速伝送技術に強みを持っています。自動車、携帯機器、産業機器、インフラ、航空宇宙といった広範な分野で事業を展開しているのが特徴です。

  • 主力製品・サービスの特徴
    コネクタ事業が売上高の約87%を占めており、入力/出力、基板対基板、高電流用など多岐にわたるコネクタを提供しています。これらのコネクタは、小型化、薄型化、高速伝送性能に優れ、高い信頼性が求められる用途で競争力を発揮します。その他、静電容量式タッチパネルなどのユーザーインターフェースソリューションや、航空・宇宙分野向けのモーションセンシング・制御ソリューションも手掛けています。
  • 収益モデル
    主な収益源は、電子機器メーカーや自動車メーカーなど、企業顧客に対するコネクタ製品の販売(B2B)です。製品の特性上、特定の用途に向けたカスタム開発や少量多品種生産が多く、顧客との継続的な取引により安定的な収益確保を図るフロー型ビジネスが中心と考えられます。
  • 技術的独自性や参入障壁
    小型、薄型、高速伝送といった微細化・高性能化が求められるコネクタ技術に独自の強みを持っています。特に、高周波対応コネクタや車載向けなど、高い信頼性と技術力が要求される製品群において、長年の経験とノウハウが参入障壁となっています。また、航空・宇宙分野向け電子機器は、専門的な認証と高い安全基準が求められるため、新規参入が困難な領域です。

2. 業界ポジション

  • 業界内での推定市場シェアまたはポジション
    日本航空電子工業は「NEC系コネクター大手」と評されており、国内コネクタ市場において主要プレイヤーの一角を占めています。特に、高機能・高信頼性コネクタ市場では一定のプレゼンスを有すると推測されます。
  • 主要競合との差別化要因
    同社の差別化要因は、高い技術が要求される小型・薄型・高速伝送コネクタの開発力と製造技術です。また、自動車や航空・宇宙といった、特に厳しい品質基準と耐久性が求められる分野への長年の供給実績と信頼性も強みです。
  • 市場動向と企業の対応状況
    決算短信によると、直近の携帯機器市場では買い替え需要の長期化により需要が減少傾向にあります。自動車市場は、電動車需要の減速などの外部環境の変化があるものの、同社の自動車向けコネクタ事業は現状において概ね堅調に推移しています。産機・インフラ、航空・宇宙(防衛関連)向けは一部で堅調です。同社は、新製品開発と生産設備への積極投資により、将来の成長分野への対応を進めていますが、新製品立ち上げに伴うコスト増が課題となっています。
  • 【定量比較】業界平均との財務指標比較
  • PER(会社予想):28.79倍(業界平均:24.2倍)
  • PBR(実績):1.26倍(業界平均:1.6倍)
    PERは業界平均より高くやや割高な水準にある一方で、PBRは業界平均より低く割安感がある状態です。これは、直近の利益減少傾向と高い自己資本比率が複合的に影響していると考えられます。

3. 経営戦略

  • 経営陣のビジョンと中期経営計画
    提出された決算短信には、具体的な中期経営計画の数値目標や詳細なビジョンの言及はありませんでした。しかし、新製品の積極的な開発と量産立ち上げを進めていることから、高付加価値製品による成長戦略を重視していると推察されます。
  • 重点投資分野と成長戦略
    当中間期の有形固定資産取得(設備投資)が前年同期比で増加しており、主に新製品の生産設備向けに投資が行われています。これは、次世代の小型・高速伝送コネクタや航空機向け電子機器といった、同社の技術的強みを活かせる分野でのシェア拡大を目指す成長戦略の一環と考えられます。
  • 最近の適時開示情報
    2025年10月30日付で、2026年3月期の通期連結業績予想を修正しました。修正の主な理由は、原材料価格の高騰と、新製品立ち上げに伴う試作費・仕損費の増加による利益圧迫です。大型受注やM&Aに関する特筆すべき適時開示情報はありませんでした。
  • これらが今後の業績に与える影響
    新製品の立ち上げは将来の成長を支える上で不可欠ですが、現状では一時的なコスト増として利益を圧迫しています。今後、新製品の量産が本格化し、試作費・仕損費が落ち着けば、収益性の改善に寄与する可能性があります。ただし、原材料価格の高止まりや市場需要の変動は引き続きリスク要因となります。

4. 財務分析

  • 【収益性】
  • 営業利益率(過去12か月):5.57%(ベンチマーク 10%)
  • ROE(過去12か月):6.10%(ベンチマーク 10%)
  • ROA(過去12か月):3.18%(ベンチマーク 5%)
    直近の測定期間(過去12か月)における各収益性指標は、ベンチマークを下回る水準です。特に2026年3月期中間期の営業利益率は4.31%と前年同期の8.13%から大きく低下しており、収益性は圧迫されています。
  • 【財務健全性】
  • 自己資本比率(2025年3月期実績):62.0%
  • 流動比率(直近四半期):238%
  • D/Eレシオ(直近四半期):0.25倍
    自己資本比率、流動比率ともに非常に良好な水準であり、有利子負債も少なく、財務健全性は極めて高いと言えます。
  • 【成長性】
  • 売上高成長率:
  • 2024年3月期実績:△4.28%(前年比)
  • 2025年3月期実績:△1.83%(前年比)
  • 2026年3月期予想:+1.51%(前年比)
    売上高は過去数年間で横ばいから微減傾向にありますが、2026年3月期の会社予想では微増を見込んでいます。
  • 利益成長率:
  • 2024年3月期純利益:△16.49%(前年比)
  • 2025年3月期純利益:△5.39%(前年比)
  • 2026年3月期予想純利益:△48.24%(前年比)
    利益は減少傾向にあり、特に2026年3月期の会社予想は大幅な減益を見込んでいます。
  • 【キャッシュフロー】
  • 営業CF(過去12か月):28,990百万円
  • 純利益(過去12か月):8,080百万円
  • 営業CF/純利益比率:3.59
    営業キャッシュフローが純利益を大幅に上回っており、利益の質は非常に健全です。資金創出力は高い状態を維持しています。
  • 【四半期進捗】
  • 2026年3月期第2四半期(中間期)実績の通期会社修正予想に対する進捗率:
  • 売上高:49.1%
  • 営業利益:47.6%
  • 親会社株主に帰属する中間純利益:51.9%
    営業利益の進捗率が50%を下回っており、通期目標達成には下半期の収益改善が不可欠です。

5. 株価分析

  • 【現在の水準】
  • PER(会社予想):28.79倍(業界平均:24.2倍)
  • PBR(実績):1.26倍(業界平均:1.6倍)
    PERは業界平均より高くやや割高感がある一方、PBRは業界平均より低く割安感があります。これは、直近の利益減少傾向と、高い自己資本比率に支えられたBPSが影響していると考えられます。
  • EPSベースの理論株価(業界平均PER基準):89.01円 × 24.2倍 = 2,154.04円
  • BPSベースの理論株価(業界平均PBR基準):2,028.38円 × 1.6倍 = 3,245.41円
    現状株価2,562円は、EPS基準では割高、BPS基準では割安なレンジに位置します。
  • 【テクニカル】
  • 52週高値・安値との位置関係:
  • 年初来高値 3,015円、年初来安値 2,119円。
  • 現在株価 2,562円は52週レンジのほぼ中央(49.4%)に位置しており、極端な高値でも安値でもありません。
  • 移動平均線との位置関係:
  • 現在株価(2,562.0円)は、5日移動平均線(2,528.20円)、25日移動平均線(2,519.52円)、75日移動平均線(2,520.64円)、200日移動平均線(2,489.37円)の全てを上回っています。
  • トレンドシグナル:
    短期から長期の全ての移動平均線を上回っていることから、短期的に上昇トレンドが形成されつつあると解釈できます。明確なゴールデンクロス/デッドクロスのシグナルは直接記載されていません。
  • 【市場との比較】
  • 日経平均比:
  • 過去1ヶ月のパフォーマンスは日経平均を2.77%ポイント上回っています。
  • しかし、3ヶ月、6ヶ月、1年の期間では、日経平均を大きく下回るパフォーマンスとなっています(1年で31.96%ポイント下回る)。
  • TOPIX比:
  • 過去1ヶ月のパフォーマンスはTOPIXを2.75%ポイント上回っています。
    短期では持ち直しの兆しが見られるものの、中長期では市場全体の動きに劣後しており、相対的にアンダーパフォームしている状況です。

6. リスク評価

  • ベータ値による市場感応度
    ベータ値(5Y Monthly):0.40
    市場全体(S&P 500)の動きと比較して、株価の変動が小さいことを示します。市場全体の変動リスクに対する感応度が低く、比較的ディフェンシブな特性を持つ銘柄と言えます。
  • 決算短信記載のリスク要因
    決算短信の「今後の見通し」に記載されている主なリスク要因は以下の通りです。
  • 原材料価格の高騰
  • 主要顧客市場(自動車・携帯機器)の需要低迷
  • 為替変動
  • 新製品の量産立ち上げ遅延
  • 事業特有のリスク
  • 技術陳腐化リスク: コネクタ製品は技術革新が激しく、常に小型化、高速化、高機能化が求められます。新製品開発や製造技術への投資を怠ると、競争力を失う可能性があります。
  • 特定顧客・市場への依存: 自動車や携帯機器向けといった特定の市場の動向、または主要顧客の生産計画や要求仕様の変更が業績に大きく影響する可能性があります。
  • NECグループからの影響: 大株主に日本電気を擁するNEC系企業であるため、NECグループ全体の戦略や事業再編が経営方針に影響を与える可能性があります。
  • 52週レンジにおける現在位置
    現在株価2,562円は52週高値3,015円、安値2,119円のレンジ内で49.4%の位置にあります。これは、高値圏でも安値圏でもない中立的な水準を示しており、大きな下落リスクや上昇余地は現状では限定的である可能性を示唆します。

7. 市場センチメント

  • 信用取引の状況
  • 信用買残:105,800株
  • 信用売残:46,300株
  • 信用倍率:2.29倍
    信用買残が売残より多く、信用倍率が2倍を超えていることから、依然として買い方が優勢の状況です。ただし、信用買残は前週比で減少しており、短期的な需給の改善が見られます。
  • 株主構成と大株主の動向
    大株主の筆頭は日本電気で32.12%を保有しており、安定株主としての位置付けが強いです。その他、日本マスタートラスト信託銀行、チェース・マンハッタン・バンク、ゴールドマン・サックス・インターナショナルといった著名な機関投資家も多数名を連ねています。機関投資家の動向は株価に影響を与える可能性があります。
  • 経営陣の持株比率と安定株主の状況
    「% Held by Insiders」が33.26%であり、経営陣や企業内部関係者が一定の株式を保有しています。これに日本電気の保有分を加えると、安定株主が過半数を占める構図であり、株主基盤は比較的安定していると考えられます。

8. 株主還元

  • 配当利回りと配当性向
  • 配当利回り(会社予想):2.34%(株価2,562円、1株配当60.00円で計算)
  • 配当性向(2025年3月期実績):34.9%
    現在の株価に対する配当利回りは2%台半ばで、市場平均と比較しても妥当な水準です。配当性向は30%台で推移しており、企業成長への投資余力を残しながらも適切な株主還元を行っています。
  • 配当の継続性・増配傾向
    2021年3月期以降、配当金は継続的に増配傾向にあります(年間配当は35円→50円→55円→60円)。特に、2026年3月期は大幅な減益予想にもかかわらず、配当額を据え置き(年間60円)の方針であり、株主還元の意欲がうかがえます。
  • 自社株買いの実績と方針
    決算短信や提供された情報からは、直近の自社株買いの実績や明確な方針に関する記載はありませんでした。ただし、自己株式(自社)が4.11%保有されています。

9. 総合評価

  • 【投資ポイント】
    1. 多様な産業を支える高性能コネクタ技術と高い財務健全性。
    1. 原材料高騰や新製品立ち上げに伴う一時的な利益低迷からの回復期待。
    1. 減益予想下でも維持される株主還元(配当性向と増配傾向)。
  • 【強み】
  • 小型・高速伝送コネクタや航空機向け電子機器における高い技術力と専門性
  • 自己資本比率62.0%など、極めて強固な財務基盤
  • 大株主であるNECを筆頭とした安定的な株主構成
  • 【弱み】
  • 原材料価格高騰と新製品立ち上げコスト増による直近の収益性悪化
  • 売上高の伸び悩みや利益の減少トレンドが見られる成長性の課題
  • 主要顧客市場(携帯機器・自動車)の需要変動に業績が左右されやすい
  • 【機会】
  • 新製品の本格量産による収益改善と市場シェア拡大
  • 自動車のCASE/MaaS分野や5G・データセンター関連でのコネクタ需要増加
  • 防衛関連や宇宙産業における航機事業の成長
  • 【脅威】
  • 原材料価格の不安定な推移とサプライチェーンリスク
  • グローバル経済の減速や地政学リスクによる市場需要の低迷
  • 技術革新の加速による製品の陳腐化リスクと競合の激化
  • 【注目すべき指標】
  • 営業利益率の回復状況(特に、新製品立ち上げコストの落ち着きと量産効果)
  • 四半期ごとの売上高成長率と、新製品の売上貢献度
  • 棚卸資産の推移(新製品の量産状況と需要動向)

10. 企業スコア

  • 成長性: C
    2025年3月期売上高成長率は-1.83%、2026年3月期予想は+1.51%と、売上成長率5%の基準を満たしていません。利益面では大幅な減益予想となっています。
  • 収益性: C
    過去12か月間のROEは6.10%、営業利益率は5.57%であり、ROE 5-8%または営業利益率 3-5%の基準に近い水準です。特に2026年3月期中間期の営業利益率は4.31%と低く、C評価と判断します。
  • 財務健全性: S
    自己資本比率は62.0%、流動比率は238%であり、それぞれS評価基準(自己資本比率60%以上、流動比率200%以上)を大きく上回る非常に高い水準です。
  • 株価バリュエーション: B
    PER(会社予想)は業界平均の119%とやや割高感がありますが、PBR(実績)は業界平均の78.75%と割安感があります。両指標を総合的に考慮し、適正水準に近いB評価と判断します。

企業情報

銘柄コード 6807
企業名 日本航空電子工業
URL http://www.jae.com/jp/
市場区分 プライム市場
業種 電機・精密 – 電気機器

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 2,562円
EPS(1株利益) 89.01円
年間配当 2.34円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 6.3% 32.3倍 3,901円 8.9%
標準 4.8% 28.1倍 3,167円 4.4%
悲観 2.9% 23.9倍 2,453円 -0.8%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 2,562円

目標年率 理論株価 判定
15% 1,581円 △ 62%割高
10% 1,975円 △ 30%割高
5% 2,492円 △ 3%割高

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

関連情報

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企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。

By ジニー

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