1. 企業概要

富士製薬工業は、医療用医薬品の研究開発、製造、販売を国内外で手掛ける製薬会社です。特に「女性医療」領域と「血管造影剤」、そして「バイオシミラー」製品に強みを持っています。後発医薬品だけでなく、新薬やバイオ後続品の開発・販売にも注力し、子会社を通じて海外展開も積極的に行っています。

  • 主力製品・サービスの特徴:
    • 女性医療領域: 不妊症治療剤や更年期障害治療剤など、女性のライフステージに合わせた幅広い製品ラインナップが特徴です。
    • バイオシミラー: 先進的なバイオ医薬品の後続品を開発・提供し、医療費抑制に貢献しつつ成長市場を取り込んでいます。
    • グローバルCMO (Contract Manufacturing Organization): 医薬品の製造受託サービスも展開しており、安定的な収益源となっています。
  • 収益モデル:
    • 主に医療機関へ医薬品を提供するB2Bモデルです。
    • 競合が比較的少ない女性医療領域の新薬や、薬価が安定しやすいバイオシミラー、そして製造受託といった、ストック性の高いビジネスモデルを志向しています。
  • 技術的独自性や参入障壁:
    • バイオシミラーの開発・製造には高度なバイオテクノロジーと設備投資が必要であり、参入障壁は高いです。
    • 女性医療領域は特定の専門知識とネットワークが必要とされ、同社はこの分野で独自のポジションを築いています。新薬開発には多大な研究開発費と臨床試験の成功が不可欠です。

2. 業界ポジション

具体的な市場シェアのデータはありませんが、同社は医薬品業界において、女性医療、バイオシミラー、CMOという特定のニッチかつ成長領域に注力することで独自のポジションを確立しています。

  • 主要競合との差別化要因:
    • 女性医療に特化した製品ラインナップと研究開発体制。
    • バイオシミラーの開発・製造における技術力と承認実績。
    • 国内外での医薬品製造受託(CMO)事業による安定的な収益貢献。
  • 市場動向と企業の対応状況:
    • 医薬品業界全体では、薬価改定や薬価抑制政策、原材料・エネルギーコストの高騰、為替変動(円安)などの厳しい事業環境が続いています。
    • 同社は、こうした環境下でも、新薬(女性医療)とバイオシミラーの伸長、海外(ASEAN)での製販拡大を通じて売上拡大を図っています。
  • 【定量比較】業界平均との財務指標比較:
    • PER(会社予想): 12.25倍 vs 業界平均 27.8倍 → 大幅に割安
    • PBR(実績): 0.99倍 vs 業界平均 1.4倍 → 割安
    • ROE(実績): 6.49% vs 業界平均はデータなし(ベンチマーク10%を下回る)
    • 営業利益率(過去12ヶ月): 9.7% vs 業界平均はデータなし

3. 経営戦略

  • 経営陣のビジョンと中期経営計画:
    • 同社は「長期ビジョン2035」を策定し、今後5年間での成長戦略として以下を掲げています。
    • 女性医療での貢献拡大
    • バイオシミラー事業による貢献拡大
    • グローバルCMO事業による収益貢献
    • 次の成長ドライバーの仕込み・見極め
    • これらを支える基盤として、人財強化、組織機能高度化、デジタル推進にも力を入れています。
  • 重点投資分野と成長戦略:
    • 研究開発費の増加を見込んでおり、特に女性医療領域における新薬開発やバイオシミラーの開発に注力します。
    • 海外、特にASEAN地域での製販拡大も重要な成長戦略の一つです。
  • 最近の適時開示情報:
    • 2025年9月期決算短信によると、新薬(女性医療領域製品)、バイオシミラー製品の市場浸透が売上拡大に寄与。
    • 2025年9月には3製品で製造販売承認を取得しており、今後の業績貢献が期待されます。
  • これらが今後の業績に与える影響:
    • 新製品の投入や海外展開の強化は、売上高と営業利益の持続的な成長を牽引する見込みです。
    • 研究開発費の増加は一時的な利益圧迫要因となる可能性がありますが、将来の成長のための先行投資として位置付けられます。
    • 親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益の有無や研究開発費の費用化タイミングによって変動する可能性があります。

4. 財務分析

  • 収益性:
    • 営業利益率(過去12か月):9.7%
    • ROE(実績):6.49% (ベンチマーク10%を下回り、改善の余地あり)
    • ROA(実績):3.40% (ベンチマーク5%を下回り、改善の余地あり)
  • 財務健全性:
    • 自己資本比率(実績):50.2% (良好な水準)
    • 流動比率(直近四半期):155% (流動性は比較的良好)
    • D/Eレシオ(直近四半期):65.96% (負債は適度な水準)
  • 成長性:
    • 売上高成長率(2025.9期 対 2024.9期):+12.0%
    • 営業利益成長率(2025.9期 対 2024.9期):+28.6%
    • 親会社株主に帰属する当期純利益成長率(2025.9期 対 2024.9期):-51.2%(前期の特別利益剥落の影響)
  • キャッシュフロー:
    • 営業キャッシュフロー(過去12か月):5,800百万円
    • 営業CF/純利益比率:1.93 (非常に健全なキャッシュ創出能力を示す)
  • 四半期進捗: データなし(直近四半期の通期予想に対する進捗率は提供データから算出不可)

5. 株価分析

  • 【現在の水準】:
    • PER(会社予想):12.25倍
    • PBR(実績):0.99倍
    • 業界平均PER:27.8倍、業界平均PBR:1.4倍
    • PER、PBRともに業界平均と比較して割安な水準にあります。
    • EPS(会社予想):155.79円、BPS(実績):1,917.82円
    • EPSベースの理論株価(業界平均PER基準):155.79円 × 27.8倍 = 4,330円
    • BPSベースの理論株価(業界平均PBR基準):1,917.82円 × 1.4倍 = 2,685円
  • 【テクニカル】:
    • 現在株価:1,908.0円
    • 52週高値・安値との位置関係:52週高値1,930円、安値1,180円に対し、現在の株価はレンジの97.1%と高値圏にあります。
    • 移動平均線との位置関係(5日、25日、75日、200日):
    • 5日移動平均線(1,898.00円)を上回っています。
    • 25日移動平均線(1,824.72円)を上回っています。
    • 75日移動平均線(1,679.83円)を上回っています。
    • 200日移動平均線(1,483.70円)を上回っています。
    • トレンドシグナル:株価は全ての移動平均線を上回っており、短期から長期にわたる強い上昇トレンドを示唆しています。具体的なゴールデンクロス/デッドクロスの発生は不明ですが、強い上昇基調にあります。
  • 【市場との比較】:
    • 過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のリターンにおいて、日経平均株価およびTOPIXを上回るパフォーマンスです。
    • 過去1年間のリターンでは、日経平均株価を10.77%ポイント下回っていますが、TOPIXと比べると類似する動きです。

6. リスク評価

  • ベータ値による市場感応度:
    • ベータ値:0.29。これは市場全体の変動に対する株価の感応度が低いことを示し、比較的安定的な銘柄と評価できます。
  • 決算短信記載のリスク要因:
    • 薬価改定や薬価抑制:継続的な薬価改定により収益が圧迫される可能性があります。
    • 為替変動:原材料調達や海外事業において、円安または円高がコストや収益に影響を及ぼす可能性があります。
    • 原材料・エネルギー価格変動:製造コストの増加につながる可能性があります。
    • 競合他社の動向:新薬開発やバイオシミラー参入による競争激化のリスク。
    • 新製品の承認・販売の遅延:研究開発投資の回収が遅れる可能性があります。
  • 事業特有のリスク:
    • 医薬品開発の成功確率:新薬やバイオシミラーの開発は長期にわたり、成功が保証されません。
    • 特定製品への依存度:女性医療領域やバイオシミラー事業が収益の柱であり、これらの製品にトラブルが発生した場合、業績に大きな影響を与える可能性があります。
  • 52週レンジにおける現在位置:
    • 97.1%(0%=安値、100%=高値)と、高値圏に位置しており、短期的には調整局面を迎える可能性があります。

7. 市場センチメント

  • 信用取引の状況:
    • 信用買残:195,600株(前週比 +2,000株)
    • 信用売残:24,600株(前週比 +13,800株)
    • 信用倍率:7.95倍。買残が売残を大幅に上回っており、需給にやや偏りが見られます。ただし、極端に高すぎる水準ではありません。
  • 株主構成と大株主の動向:
    • (有)FJP (17.3%)、今井博文氏 (12.26%)、日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) (8.67%)などが大株主です。
    • 安定した大株主が多く、経営の安定性に寄与していると考えられます。
  • 経営陣の持株比率と安定株主の状況:
    • 内部者保有比率 (Held by Insiders) が48.50%と非常に高く、経営陣が会社の成長に対して強いインセンティブを持つと共に、安定した株主構成を示しています。

8. 株主還元

  • 配当利回り(会社予想): 2.46% (現在の株価1,908.0円、予想配当47.00円で計算)
  • 配当性向(会社予想): 30.2% (2026年9月期予想)
  • 配当の継続性・増配傾向:
    • 2021年9月期から2026年9月期(予想)にかけて、年間配当は35円から47円へと順調に増配傾向にあります。
    • 安定的かつ継続的な配当を重視する方針です。
  • 自社株買いの実績と方針:
    • 提供データに自社株買いの明確な実績は記載されていませんが、「自社(自己株口)」として1.59%の保有があるため、過去に実施された可能性があります。今後の方針についてはデータなし。

9. 総合評価

  • 【投資ポイント】
    • 女性医療・バイオシミラー事業の成長と新製品開発による売上・営業利益の持続的拡大。
    • 業界平均と比較して割安なバリュエーション水準(PER、PBR)。
    • 堅固な財務基盤と安定的な増配傾向に裏打ちされた株主還元。
  • 【強み】
    • 特定領域(女性医療、バイオシミラー)における専門性と競争力。
    • 堅調な営業キャッシュフロー創出能力(営業CF/純利益比率 1.93)。
    • 自己資本比率50.2%と高い財務健全性。
  • 【弱み】
    • 純利益が一時的な特別損益によって大きく変動する傾向がある。
    • 薬価改定や市場競争の影響を受けやすい事業環境。
    • ROEおよびROAが業界ベンチマークを下回っており、資本効率の改善余地。
  • 【機会】
    • 新規バイオシミラー製品の市場投入と市場拡大。
    • グローバルCMO事業のさらなる拡大と海外市場での収益獲得。
    • 研究開発投資の成果による新たな収益源の創出。
  • 【脅威】
    • 薬価抑制、原材料コスト高騰、為替変動による収益性悪化。
    • 競合他社による新製品開発や市場参入。
    • 規制強化や製品開発失敗に伴うリスク。
  • 【注目すべき指標】
    • 2026年9月期営業利益目標 5,520百万円の達成状況。
    • 今後の売上高成長を牽引する女性医療およびバイオシミラー製品の動向。
    • ROEの改善(目標8%以上)に向けた取り組みと実績。

10. 企業スコア

  • 成長性: A (売上成長率 10-15%に該当)
    • 2025年9月期売上高成長率:+12.0%
    • 2026年9月期売上高成長率予想:+11.2%
  • 収益性: B (ROE 8-10% または 営業利益率 5-10%に該当)
    • ROE(実績):6.49% (C評価の閾値内)
    • 営業利益率(過去12か月):9.7% (B評価の閾値内)
    • ROEがC評価に対し、営業利益率がB評価のため中間的なBとする。
  • 財務健全性: A (自己資本比率 40-60% かつ 流動比率 150%以上 に該当)
    • 自己資本比率:50.2%
    • 流動比率:155%
  • 株価バリュエーション: A (PER/PBR共に業界平均の80-90%(割安)に該当)
    • PER(会社予想):業界平均の44% (S評価)
    • PBR(実績):業界平均の71% (A評価)
    • 評価基準: Sは「PER/PBR共に業界平均の70%以下」であるため、PBRが70%をわずかに上回るため、Sには届かずAと評価します。

企業情報

銘柄コード 4554
企業名 富士製薬工業
URL http://www.fujipharma.jp/
市場区分 プライム市場
業種 医薬品 – 医薬品

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 1,908円
EPS(1株利益) 155.79円
年間配当 2.46円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 0.0% 14.1倍 2,195円 3.0%
標準 0.0% 12.2倍 1,908円 0.1%
悲観 1.0% 10.4倍 1,705円 -2.1%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 1,908円

目標年率 理論株価 判定
15% 955円 △ 100%割高
10% 1,193円 △ 60%割高
5% 1,505円 △ 27%割高

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

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By ジニー

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