1. 企業概要

パンチ工業は、国内および中国市場を中心に、金型部品の製造・販売を手掛ける大手企業です。自動車、家電、電子部品といった幅広い産業分野のプラスチック金型部品やプレス金型部品を提供しています。特に、短納期対応、特注品、エンジニアリングサービスに強みを持ち、金型部品の特注品では国内・中国でトップクラスのシェアを誇ります。
収益モデルは主にB2B(企業間取引)であり、金型部品の製造・販売が主軸です。汎用品の製造は海外へ移管し、高付加価値の特注品やFA(ファクトリーオートメーション)関連部品の育成に注力することで、安定した収益基盤の構築を目指しています。技術的独自性は、顧客の多様なニーズに応える特注品対応力と、それを可能にする精密加工技術、そして迅速な供給体制にあり、これが高い参入障壁となっています。

2. 業界ポジション

パンチ工業は金型部品製造販売において、特に国内および中国市場で大手としての地位を確立しており、特注品分野ではトップ級の市場シェアを占めていると推定されます。市場動向としては、グローバル経済の不確実性や地政学リスク、原材料価格の高止まり、為替変動といった外部環境の影響を受けやすい特性があります。同社は、このような環境下で中国や東南アジアを中心とした海外市場での販路強化を進め、国内の個人消費の弱さや人件費上昇といった課題に対応しています。
競合に対する相対的な強みは、顧客の個別要望に対応する特注品供給能力、短納期での対応力、そして長年培ったエンジニアリングノウハウにあります。一方、弱みとしては、連結事業が金型部品に完全に依存している単一セグメントであることや、国内事業の収益性が相対的に低い点が挙げられます。

財務指標比較(業界平均との比較)

指標 パンチ工業(実績/予想) 業界平均(機械) 評価
PER(予想) 24.09倍 10.7倍 割高
PBR(実績) 0.65倍 0.7倍 やや割安
ROE(実績) 4.26% データなし 低い(ベンチマーク比)
営業利益率(実績) 5.80% データなし 中低水準

※同一業種区分企業データは提供されておりません。PER、PBRは業界平均と比較して、PERは割高、PBRはやや割安と評価されます。ROEと営業利益率は、絶対値で見ると決して高い水準ではありません。

3. 経営戦略

経営陣は「Vision60」として、2035年3月期までに連結売上高800億円を目指す長期ビジョンを掲げています。これは「脱・金型部品依存」を目標に、FA事業や新規事業の比率拡大を図るものです。足元では、ミスミグループ本社との資本業務提携を進めており、その効果測定に時間を要するため、新たな中期経営計画の策定を2026年3月期中に見送る方針です。これは提携効果の確実な見極めを優先する姿勢を示しています。
最近の適時開示情報である2026年3月期第2四半期決算短信では、中国での自動車関連受注の好調や東南アジア・欧米での販路強化が寄与し、中間期として増収増益を達成しています。特に営業利益は前年同期比で42.8%増と大きく改善しました。
これらの戦略と適時開開示内容は、足元では海外市場、特に中国での成長が業績を牽引していることを示しています。中期的にはミスミグループとの提携を通じたシナジー創出や、FA事業の育成が今後の成長ドライバーとなる可能性がありますが、提携効果の具体的な進捗や国内事業の立て直しが、長期ビジョンの達成に向けた重要な課題となるでしょう。

4. 財務分析

収益性

  • 営業利益率(過去12か月):5.80%(ベンチマーク:営業利益率10-15%でA評価)
  • ROE(実績):4.26%(ベンチマーク:ROE10%でA評価)
  • ROA(実績):3.90%(ベンチマーク:ROA5%でA評価)

過去12ヶ月の収益性指標は、ベンチマークより低い水準にあります。ただし、2026年3月期中間期の営業利益率は4.81%と直近で改善傾向にあります。

財務健全性

  • 自己資本比率(実績):66.7%(ベンチマーク:自己資本比率60%以上でS評価 → 健全性が高い)
  • 流動比率(直近四半期):261%(ベンチマーク:流動比率200%以上でS評価 → 健全性が高い)
  • D/Eレシオ(直近四半期):0.14倍(総負債2.9B / 自己資本21.039B = 0.1378。非常に低い水準で、負債依存度が低い)

自己資本比率および流動比率は極めて高く、財務基盤は非常に安定しています。

成長性

決算期 売上高(百万円) 売上高成長率 営業利益(百万円) 営業利益成長率
2022/3連 39,358 3,041
2023/3連 42,799 +8.74% 2,436 -19.89%
2024/3連 38,344 -10.41% 1,240 -49.10%
2025/3連 40,822 +6.46% 1,685 +35.89%
2026/3連予 41,700 +2.15% 1,590 -5.76%

2024年3月期は大幅な減収減益となりましたが、2025年3月期には回復基調を見せ、売上高は増加、営業利益は大幅に改善しました。2026年3月期も増収を予想していますが、営業利益は減益予想です。利益の成長は不安定な推移を示しています。

キャッシュフロー

  • 営業CF(過去12か月):1,880百万円(前年同期632百万円から増加)
  • 投資CF(2026年3月期中間期):△502百万円(有形固定資産取得が主要因)
  • 財務CF(2026年3月期中間期):△533百万円(長期借入金返済や配当金支払いが主要因)
  • FCF(フリーキャッシュフロー、過去12か月):1,010百万円(プラスで創出されており、本業で稼ぐ力が評価される)
  • 営業CF/純利益比率(過去12か月):1.54(1.0以上が健全。利益の質は優良)
  • 配当カバレッジ比率(過去12か月):3.67倍(営業CF1,880百万円 / 年間配当支払額512百万円。十分に配当をカバーしている)

中間期単体でみると営業CFは減少していますが、過去12ヶ月で見ると堅調にキャッシュを創出しており、利益の質も高いと言えます。

セグメント別分析

同社は金型部品事業の単一セグメントですが、地域別および業種別の売上情報が提供されています。

  • 地域別売上(2026年3月期中間期)
    • 国内:5,332百万円(前年同期比 −7.2%)- 減少傾向で課題
    • 中国:12,236百万円(+7.6%)- 最も大きく成長を牽引
    • 東南アジア地域:1,010百万円(+6.3%)
    • 欧米他:1,985百万円(+3.2%)
  • 業種別売上(2026年3月期中間期)
    • 自動車関連:8,929百万円(+5.0%)- 主要な成長ドライバー
    • 電子部品・半導体:3,547百万円(+4.0%)
    • 家電・精密機器:1,902百万円(−2.7%)- 減少傾向
    • その他:6,185百万円(+1.1%)

中国市場と自動車関連が主要な成長ドライバーであり、国内および家電・精密機器分野は課題セグメントと言えます。セグメント別利益率はデータがありません。

四半期進捗

  • 2026年3月期通期予想に対する中間期(第2四半期)の進捗率:
    • 売上高:49.3%(通期予想41,700百万円に対し20,564百万円)- 概ね計画通り
    • 営業利益:62.2%(通期予想1,590百万円に対し989百万円)- 通期予想を上回る進捗
    • 親会社株主に帰属する中間純利益:98.1%(通期予想570百万円に対し559百万円)- ほぼ通期予想を達成

中間期で純利益が通期予想にほぼ到達しており、通期での純利益は会社予想を上回る可能性があります。営業利益も順調に進捗しています。

5. 株価分析

現在の水準

  • PER(会社予想):24.09倍
  • PBR(実績):0.65倍
  • 業界平均PER:10.7倍、業界平均PBR:0.7倍

PERは業界平均と比較して割高ですが、PBRは業界平均と同程度かやや割安な水準にあります。

  • EPS(会社予想)20.71円、BPS(実績)764.05円を基にした理論株価レンジは484円~535円とされています。現在の株価499.0円はこのレンジ内に位置しています。

テクニカル

  • 現在株価:499.0円
  • 52週高値:502.0円、52週安値:331.0円
  • 52週高値への位置:98.2%(ほぼ高値圏)
  • 移動平均線との関係:
    • 5日MA(493.80円)を上回り(+1.05%)
    • 25日MA(488.40円)を上回り(+2.17%)
    • 75日MA(444.00円)を上回り(+12.39%)
    • 200日MA(412.01円)を上回り(+21.11%)

すべての移動平均線を上回っており、強い上昇トレンドを示しています。

市場との比較

  • 日経平均との相対パフォーマンス:
    • 1ヶ月:+1.06%ポイント上回る
    • 3ヶ月:+11.05%ポイント上回る
    • 6ヶ月:+3.23%ポイント上回る
    • 1年:-7.68%ポイント下回る
  • TOPIXとの相対パフォーマンス:
    • 1ヶ月:-0.09%ポイント下回る

過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月では日経平均を上回るパフォーマンスを見せていますが、1年では下回っています。TOPIXとはほぼ同水準です。

6. リスク評価

  • ベータ値による市場感応度: 0.52(5Y Monthly)。市場全体の変動に対して株価の変動が小さく、ディフェンシブな特性を持つ銘柄と言えます。
  • 決算短信記載のリスク要因:
    • 為替変動リスク: 製品や原材料の輸入、海外子会社の業績が為替レートの変動から影響を受けます。
    • 原材料・エネルギー価格の変動: 主要な原材料価格やエネルギーコストの高止まりは、収益性を圧迫する可能性があります。
    • 国内の人員・生産体制の整備遅れ: 国内売上減少の要因にもなっており、今後の国内事業の持続性に影響を与える可能性があります。
    • 地政学リスク: 世界経済の不透明感や米中関係、サプライチェーンの混乱などが事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
    • ミスミグループとの提携に伴う統合作業の不確実性: シナジー効果が計画通りに発揮されないリスクがあります。
    • 財務制限条項: 一部の借入金に株主資本比率の維持や経常利益の連続黒字化といった財務制限条項があり、抵触した場合には期限前弁済義務が生じる可能性があります。
  • 事業特有のリスク:
    • 金型部品の需要は、自動車や電子機器の生産動向に強く連動するため、これらの産業の景気変動に直接的に影響を受けます。
    • 技術革新のスピードが速い分野では、技術陳腐化のリスクも存在します。
  • 52週レンジにおける現在位置: 98.2%(高値圏)。現在株価が高値水準にあるため、短期的な調整リスクには注意が必要です。

7. 市場センチメント

  • 信用取引の状況: 信用買残815,900株、信用売残52,800株、信用倍率15.45倍。信用買残が多い状況で、売り圧力が蓄積している可能性があります。
  • 株主構成と大株主の動向:
    • エム・ティ興産(13.77%)、ミスミグループ本社(10.86%)、クリアストリーム・バンキング(8.73%)が上位株主。ミスミグループ本社が安定株主として存在している点はポジティブです。
    • 経営陣の森久保哲司氏が2.44%、森久保有司氏が2.40%を保有しており、一定の持株比率を保っています。
  • 機関投資家の保有割合: 1.15%と低く、個人投資家の影響が大きい可能性があります。

8. 株主還元

  • 配当利回り(会社予想): 3.72%(現在の株価499.0円、1株配当18.54円)。高めの水準です。
  • 配当性向(会社予想): 58.1%。安定した配当を重視する姿勢が見られます。
  • 配当の継続性・増配傾向: 過去の配当履歴を見ると、年間配当は13円(2022年3月期)から19.56円(2025年3月期)と推移しており、安定的に配当実施されています。2026年3月期予想は18.54円と前期比では減額予想ですが、高水準を維持しています。配当カバレッジも3.67倍と余裕があります。
  • 自社株買いの実績と方針: 提供データに自社株買いに関する明確な記載はありません。

9. 総合評価

【投資ポイント】

  • 高い財務健全性(自己資本比率66.7%、流動比率261%)と安定したキャッシュフロー。
  • 金型部品の特注品における国内・中国でのトップクラスシェアと技術的優位性。
  • 中国市場及び自動車関連事業の売上好調が業績を牽引し、海外成長戦略が機能している点。

【強み】

  • 安定した財務基盤と高い流動性。
  • 特定分野における高い市場シェアと特注品対応力。
  • 堅調な海外(特に中国)市場でのプレゼンスと成長。
  • ベータ値が低く、市場変動に対する安定性が高い。

【弱み】

  • 収益性指標(ROE、ROA、営業利益率)が業界平均やベンチマークと比較して低い。
  • 国内事業の低迷とそれに伴う売上減少。
  • 連結事業が金型部品に依存する単一セグメント構成。
  • 利益の成長性が不安定な推移。

【機会】

  • ミスミグループ本社との資本業務提携によるシナジー創出と販路拡大。
  • FA部品や新規事業の育成を通じた「脱・金型部品依存」の実現。
  • 東南アジア・欧米市場でのさらなる販路拡大と開拓。

【脅威】

  • 為替変動や原材料価格の高騰によるコスト上昇リスク。
  • グローバル経済の減速や地政学リスク。
  • 国内の人員・生産体制整備の遅れによる競争力低下。
  • 高値圏にある株価における短期的な調整リスク。

【注目すべき指標】

  • 売上高(国内、中国別)成長率: 国内事業の回復と中国事業の持続的成長
  • 営業利益率とROE: 収益性改善の進捗
  • FA事業・新規事業の売上構成比率: 「脱・金型部品依存」の進捗

10. 企業スコア

  • 成長性: C
    • 売上成長率(2025年3月期→2026年3月期予想)が約+2.15%であり、0-5%の範囲に該当するため。
  • 収益性: B
    • ROE(過去12か月)が5.89%(5-8%の範囲)、営業利益率(過去12か月)が5.80%(5-10%の範囲)であり、いずれかの基準を満たすため。
  • 財務健全性: S
    • 自己資本比率(実績)は66.7%(60%以上)、流動比率(直近四半期)は261%(200%以上)であり、どちらの基準も満たすため。
  • 株価バリュエーション: D
    • PER(会社予想)24.09倍は業界平均10.7倍の約225%であり、大幅に割高。PBR(実績)0.65倍は業界平均0.7倍の約93%で割安ですが、PERの割高感が強いため、総合的に割高と判断されるため。

企業情報

銘柄コード 6165
企業名 パンチ工業
URL http://www.punch.co.jp/
市場区分 スタンダード市場
業種 機械 – 機械

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 499円
EPS(1株利益) 20.71円
年間配当 3.72円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 0.0% 25.4倍 526円 1.8%
標準 0.0% 22.1倍 457円 -0.9%
悲観 1.0% 18.8倍 409円 -3.0%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 499円

目標年率 理論株価 判定
15% 237円 △ 111%割高
10% 296円 △ 69%割高
5% 373円 △ 34%割高

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

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By ジニー

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