1. 企業概要
高砂香料工業は、香料分野で国内最大手であり、世界でも有数の地位を確立している企業です。主に飲料・食品向けの「フレーバー」、化粧品や日用品向けの「フレグランス」を提供しています。加えて、香料原料となる「アロマイングリディエンツ」や、医薬品中間体などを手掛ける「ファインケミカル」事業も展開しています。
主力製品・サービスは、多岐にわたる飲料・食品向けのフレーバーや、パーソナルケア・ホームケア製品向けのフレグランスです。特に、食品業界における多様なニーズに応える技術力と、香りの創造における専門性が特徴です。収益モデルは法人顧客(B2B)への製品供給が主であり、継続的な需要が見込まれるストック型に近いモデルと言えます。
技術的独自性としては、独自の香料開発技術や合成技術に強みを持つほか、グローバルでの生産・供給体制を構築している点が挙げられます。香料開発は高度な専門知識と長年の経験が不可欠であり、新規参入には高い障壁があります。
2. 業界ポジション
高砂香料工業は、香料業界において国内で1位のシェアを占め、世界でも大手の一角を占めるグローバル企業です。同社の事業構成比を見ると、フレーバーが52%、フレグランスが32%を占め、飲料・食品向けが主な収益源となっています。海外売上高比率は70%(2025.3期予想)と高く、欧米やアジアなどでの現地生産・販売を推進することでグローバル展開を強化しています。
市場動向としては、世界経済の成長に連動して香料市場も堅調に推移しており、特に中国や東南アジアといった新興国市場での成長期待が高い状況です。高砂香料工業はこれらの成長市場への対応として、現地生産の推進を強化しています。
競合に対する相対的な強みは、幅広い製品ラインナップとグローバルな供給体制、そして長年培ってきた技術力にあります。一方、弱みとしては、特定のファインケミカル製品の品質管理問題や為替変動リスクといった外部要因に対する影響を受けやすい点が挙げられます。
【定量比較】業界平均との財務指標比較
| 指標 | 高砂香料工業(実績/予想) | 業界平均(素材・化学) | 評価 |
|---|---|---|---|
| PER(会社予想) | 12.28倍 | 20.4倍 | 割安 |
| PBR(実績) | 1.00倍 | 1.1倍 | 割安 |
高砂香料工業のPERおよびPBRは、素材・化学業界の平均と比較して割安な水準にあります。
【同一業種区分企業比較】
- 同一業種区分企業のデータは提供されておりません。
3. 経営戦略
経営陣は「New Global Plan-2(NGP-2:2024–2026年度)」を中期経営計画として推進しており、グローバル市場での競争力強化を目指しています。重点投資分野としては、引き続き海外での現地生産・販売体制の強化、特に中国・東南アジア市場での深耕が挙げられます。また、成長領域としてのファインケミカル事業にも注力していますが、最近は一時的な品質管理問題に直面しています。
直近の適時開示情報である2026年3月期第2四半期決算短信によると、フレーバー部門(特に日本・東南アジアの飲料向け)が売上・利益ともに好調に推移している一方で、ファインケミカル部門では品質管理強化対応による一部出荷延期のため、売上が大幅減少し営業損失に転落しました。
これらの状況が今後の業績に与える影響としては、フレーバー部門の好調が全体の成長を支える形となりますが、ファインケミカル部門の回復は通期達成の重要な鍵となります。会社は通期業績予想を変更しておらず、ファインケミカルの出荷回復を見込んでいるものと推察されます。また、2025年10月1日付の株式分割も、投資家の流動性向上に寄与するものです。
4. 財務分析
【収益性】
- 営業利益率(Operating Margin 過去12か月): 4.00%
- 決算短信中間実績: 約5.42% (前年中間: 約7.05%)
- ROE(Return on Equity 過去12か月): 9.93% (ベンチマーク10%に近い)
- 2025年3月期実績: 9.75%
- ROA(Return on Assets 過去12か月): 3.29% (ベンチマーク5%を下回る)
過去12か月と直近四半期の中間実績を見ると、営業利益率はベンチマークの5%を下回っており、収益性には改善の余地があると考えられます。ROEはベンチマークの10%に迫る水準ですが、ROAはベンチマークを下回っています。
【財務健全性】
- 自己資本比率(実績): 55.0% (安定水準)
- 決算短信中間実績: 56.4%
- 流動比率(直近四半期): 197% (短期支払能力は十分)
- D/Eレシオ(Total Debt/Equity 直近四半期): 34.81% (健全な水準)
自己資本比率は高く、流動比率も200%に近く、D/Eレシオも低いことから、財務健全性は非常に良好と評価できます。
【成長性】
| Breakdown | 3/31/2022 | 3/31/2023 | 3/31/2024 | 3/31/2025 | 2026/3予想 |
|---|---|---|---|---|---|
| Total Revenue | 162,440 | 186,792 | 195,940 | 229,207 | 230,000 |
| Operating Income | 8,812 | 5,947 | 2,316 | 15,341 | 12,500 |
| Net Income | 8,909 | 7,393 | 2,698 | 13,325 | 11,700 |
売上高は近年着実に成長していますが、営業利益と純利益は2024年3月期に大幅な落ち込みを見せました。2025年3月期は大幅に回復し、過去最高益を更新する見込みですが、2026年3月期は利益面で足踏みする計画となっています。直近の売上高成長率は、過去1年で+0.3%(予想)、直近四半期(前年比)で-2.80%と鈍化しています。
【キャッシュフロー】
- 営業キャッシュフロー(Operating Cash Flow 過去12か月): 154億円
- フリーキャッシュフロー(Levered Free Cash Flow 過去12か月): 10.2億円
- 営業利益は増加していますが、フリーキャッシュフローは比較的低い水準にあります。
- 営業CF/純利益比率: 1.11倍 (営業CFが純利益を上回っており、利益の質は良好)
- 配当カバレッジ比率(営業CF/配当支払額):
- 年間配当支払額(会社予想52円 × 発行済株式数約1億株)= 約52億円
- 154億円 ÷ 52億円 = 約2.96倍 (配当支払能力は十分)
決算短信では、現金及び預金が前期末比で222.5億円減少したと報告されています。これは、短期借入金の返済(104.12億円減)と長期借入金の増加(30.36億円増)を考慮すると、積極的な投資活動や運転資金の確保に充てられた可能性がありますが、詳細なCFデータがないため断定はできません。現金の減少は今後注視すべき点です。
【セグメント別分析】
2026年3月期 第2四半期(中間期)実績では以下の傾向が見られます。
- フレーバー部門: 売上高633.94億円(+4.5%)、営業利益42.50億円(+41.7%)。日本・東南アジアの飲料向けが好調で、同社の成長ドライバーとなっています。
- フレグランス部門: 売上高362.95億円(▲0.4%)、営業利益6.03億円(▲2.2%)。東南アジアは好調ですが、米国が低調です。
- アロマイングリディエンツ部門: 売上高81.54億円(+1.5%)、営業利益13.72億円(▲0.8%)。スペシャリティ原料が堅調です。
- ファインケミカル部門: 売上高59.18億円(▲23.6%)、営業損失6.02億円(前年同期は営業利益23.92億円)。品質管理強化対応に伴う出荷延期が大きく響き、要課題セグメントです。
- 地域別: アジア地域の売上高(+7.0%)と営業利益(+71.1%)が大きく伸長し、全体を牽引しています。一方、日本、米州、欧州は利益面で減益となっています。
【四半期進捗】
通期予想(売上高2300億円、営業利益125億円、純利益117億円)に対する中間累計実績の進捗率は以下の通りです。
- 売上高: 49.8%
- 営業利益: 49.7%
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 46.1%
売上高と営業利益は概ね50%程度で計画通りに進捗していますが、純利益はやや遅れています。これは特別利益(投資有価証券売却益など)の一時的な寄与が中間期に限定された影響も考えられます。通期目標達成には、ファインケミカル部門の出荷回復が不可欠です。
5. 株価分析
【現在の水準】
- PER(会社予想): 12.28倍
- PBR(実績): 1.00倍
- 業界平均PER 20.4倍、業界平均PBR 1.1倍と比較すると、PER、PBR共に割安な水準にあります。
- EPS(会社予想): 120.04円, BPS(実績): 1,477.65円
- PER基準目標株価: 2893円, PBR基準目標株価: 1877円
【テクニカル】
- 52週高値・安値との位置関係: 年初来高値1,760円、安値995円に対し、現在の株価1,474.0円は52週レンジの9.9%の位置(安値圏に近い)にあります。
- 移動平均線との位置関係:
- 5日移動平均線(1,468.80円)を0.35%上回る
- 25日移動平均線(1,462.12円)を0.81%上回る
- 75日移動平均線(1,510.77円)を2.43%下回る
- 200日移動平均線(1,453.33円)を1.42%上回る
- 短期移動平均線は株価を下から支える形ですが、75日移動平均線は上値抵抗として機能している可能性があります。
- トレンドシグナル: 現時点では明確なゴールデンクロスやデッドクロスは確認できませんが、短期線が上昇傾向にあり、中長期線付近での揉み合いが見られます。
【市場との比較】
過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年において、日経平均およびTOPIXといった市場指数を大きく下回る相対パフォーマンスとなっています。特に1年リターンでは株価が-73.68%となっており、市場全体の勢いに対して逆行している状況です。これは株式分割の影響を調整した年足換算である可能性も考慮する必要があるかもしれませんが、データを見る限り相対的に弱い推移です。
6. リスク評価
- ベータ値: 0.35
- ベータ値が1を下回るため、市場全体の変動に対する感応度が低い、安定性の高い銘柄と言えます。
- 決算短信記載のリスク要因:
- ファインケミカル部門における品質管理対応の長期化および出荷遅延の継続
- 為替変動リスク(前期のような大幅な為替差損の再発可能性)
- 中国・東南アジア市場の景気変動(特に中国の景気低迷リスク)
- 原材料価格の高騰
- 地政学リスク(ウクライナ侵攻、中東情勢など国際情勢の不安定化)
- 事業特有のリスク:
- グローバルな香料市場における競合激化
- 新製品開発競争とその成功圧力
- 健康・環境規制の強化
- 消費者嗜好の変化への対応
- 52週レンジにおける現在位置: 現在株価は52週レンジの安値圏(9.9%)に位置しており、下値リスクは比較的限定的である可能性がありますが、上昇トレンドへの転換には材料が必要です。
7. 市場センチメント
- 信用取引の状況:
- 信用買残: 139,800株
- 信用売残: 46,100株
- 信用倍率: 3.03倍 (買い残が売り残よりも多く、需給はやや重い可能性があります)
- 信用買残は前週比で+9,900株増加しており、個人の買いが若干増加傾向にあります。
- 株主構成と大株主の動向:
- 主要な大株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、日本生命保険、日本カストディ銀行(信託口)といった機関投資家が中心です。安定株主が多い構造と言えます。
- % Held by Insiders (経営陣等) 10.91%、% Held by Institutions 40.09% とあります。
- 経営陣の持株比率: 10.91%と一定の割合を保有しており、経営陣と株主の利害が一致しやすい状況です。
8. 株主還元
- 配当利回り(会社予想): 3.53% (現在の株価に対する利回りは比較的良好です)
- 1株配当(会社予想): 52.00円
- 配当性向(会社予想): 35.1% (利益の成長に対する配当のバランスが取れています)
- 配当の継続性・増配傾向: 2024年3月期は利益が大幅に減少したにも関わらず年間配当14円(分割考慮前、分割後換算で2.8円)を維持し、2025年3月期予想は48円、2026年3月期予想は52円と、分割調整後で連続増配の計画です。安定的な株主還元を目指す方針がうかがえます。
- 自社株買いの実績と方針: 提供データに具体的な自社株買い計画の記載はありませんが、株主構成に「自社(自己株口) 3.24%」の記載があることから、過去に自社株買いを実施した実績があると考えられます。
9. 総合評価
【投資ポイント】
- グローバル香料市場における日本最大手の地位と、特にアジア地域での成長機会
- 飲料・食品向けフレーバー事業の堅調な収益性と今後の成長期待
- 業界平均と比較して割安なバリュエーションと安定的な配当利回り
【強み】
- 国内香料業界における盤石なポジションとグローバルな事業展開力
- 高い技術力と多様な香料製品ポートフォリオ
- 安定した財務基盤と高い自己資本比率
- アジア地域を中心とした海外市場での成長性
【弱み】
- 特定事業(ファインケミカル)における一時的な不調と品質管理リスク
- 為替変動や原材料価格高騰といった外部環境変化への感応度
- 市場平均を下回る株価パフォーマンス
【機会】
- アジア新興国市場における香料需要の拡大
- 健康志向やサステナビリティといった消費トレンドへの対応
- M&Aによる事業領域拡大や技術シナジーの創出
- 新しい香料開発や用途開拓による付加価値向上
【脅威】
- 世界経済の減速や地政学リスクによる消費マインドの低下
- 競合他社との開発競争激化と価格競争
- 医薬品中間体に対する品質規制の厳格化
- 気候変動による原材料調達リスク
【注目すべき指標】
- ファインケミカル部門の出荷延期解消と黒字転換の有無
- 中間期以降の現金及び預金残高の回復状況
- アジア地域の売上高成長率と営業利益率の維持・向上
- 通期業績予想達成に向けた進捗率の動向
10. 企業スコア
- 成長性: C (売上成長率が0-5%の範囲であるため)
- 収益性: B (ROE 9.93%が8-10%の範囲にあり、営業利益率4.00%は3-5%の範囲。ROE基準でB評価)
- 財務健全性: A (自己資本比率56.4%が40-60%の範囲、流動比率197%が150%以上の範囲であるため)
- 株価バリュエーション: S (PER/PBR共に業界平均の70%以下/80-90%以下であるため)
企業情報
| 銘柄コード | 4914 |
| 企業名 | 高砂香料工業 |
| URL | http://www.takasago.com/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 化学 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 1,474円 |
| EPS(1株利益) | 120.04円 |
| 年間配当 | 3.53円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15.8% | 14.1倍 | 3,526円 | 19.2% |
| 標準 | 12.1% | 12.3倍 | 2,614円 | 12.4% |
| 悲観 | 7.3% | 10.4倍 | 1,781円 | 4.1% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 1,474円
| 目標年率 | 理論株価 | 判定 |
|---|---|---|
| 15% | 1,312円 | △ 12%割高 |
| 10% | 1,639円 | ○ 10%割安 |
| 5% | 2,068円 | ○ 29%割安 |
【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.10)」によって自動生成されました。
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