企業の一言説明
杏林製薬は、ぜんそく薬や呼吸器アレルギー薬、去痰剤などを主力とする医薬品中堅企業です。国内の新医薬品事業を核に、後発医薬品や消化器薬なども展開する企業です。
投資判断のための3つのキーポイント
- 高い財務健全性による安定基盤: 自己資本比率が非常に高く、潤沢な流動資産を保有しており、安定した企業経営の基盤を築いています。
- 割安なバリュエーションと安定配当: 業界平均を大きく下回るPERとPBRで割安感があり、堅調な配当利回りと積極的な株主還元姿勢が魅力です。
- 研究開発投資による短期的な利益圧迫とパイプラインリスク: 導入品の獲得や研究開発投資を積極的に行っているため、短期的に営業利益率が圧迫される傾向にあります。また、開発パイプラインの一部で未達や中止も発生しており、新薬開発に伴うリスクを内包しています。
企業スコア早見表
| 項目 | スコア | 判定 |
|---|---|---|
| 成長性 | C | 成長鈍化懸念 |
| 収益性 | B | まずまず |
| 財務健全性 | A | 非常に堅固 |
| バリュエーション | S | 非常に割安 |
注目指標サマリー
| 指標 | 値 | 業界平均比 |
|---|---|---|
| 株価 | 1622.0円 | – |
| PER | 19.41倍 | 業界平均27.8倍 |
| PBR | 0.68倍 | 業界平均1.4倍 |
| 配当利回り | 3.51% | – |
| ROE | 7.00% | – |
1. 企業概要
杏林製薬は、KYORIN Pharmaceutical Co., Ltd.として、医療用医薬品の研究開発、製造、販売を国内外で展開する製薬中堅企業です。主力製品には、喘息治療薬「フルティフォーム」、咳治療薬「リフヌア」、過活動膀胱治療薬「ベオーバ」、キノロン系合成抗菌剤「ラスビック」などがあります。売上構成は新医薬品等(国内)が約65%、後発医薬品が約28%、新医薬品(海外)が約7%を占め(2025年3月期予想)、近年はデジタルセラピューティクス(DTx)分野への参入も進めています。技術的には自社開発に加え、外部導入や共同開発を積極的に進めることで、幅広い疾患領域に対応し収益源の多角化を図っています。
2. 業界ポジション
国内製薬業界において中堅企業としての地位を確立しており、特に呼吸器系、泌尿器系、消化器系に強みを持っています。国内医療費抑制策や薬価改定が続く厳しい事業環境下で、新薬の安定的な開発と後発医薬品事業によって収益基盤を維持しています。競合他社と比較して、財務健全性の高さが強みとして挙げられます。市場でのバリュエーションを見ると、PER 19.41倍は業界平均27.8倍を下回り、PBR 0.68倍も業界平均1.4倍を下回っており、割安な水準にあります。これは、市場から過小評価されているか、将来の成長性に対する期待が低い可能性を示唆しています。
3. 経営戦略
杏林製薬は、中期経営計画「Vision 110 – Stage1 -(2023〜2025)」の最終期に「事業体制の確立」を掲げています。具体的には、新薬比率の最大化を目指し、導入品や外部導入を積極的に活用してパイプラインの拡充を図る戦略を推進しています。最近の重要な動きとして、慢性咳嗽向けデジタルセラピューティクス(DTx)の開発・商業化でHyfe Inc.と提携したことや、ヒンジバイオ社とのSLE(全身性エリテマトーデス)などの共同開発・ライセンス契約の締結が挙げられます。一方で、KRP-R120(間質性肺疾患)の国際第3相試験で主要評価項目未達、KRP-A218の開発中止など、新薬開発固有のリスクも顕在化しています。
今後のイベント:
- 2026年2月4日 (UTC): 決算発表予定日
- 2026年3月30日 (UTC): 配当権利落ち日
4. 財務分析
| 項目 | 値 | 解釈 |
|---|---|---|
| 【財務品質スコア】 | Piotroski F-Score: 2/9点 | C: やや懸念。営業利益率やROEの低さが影響し、財務健全性というより収益性改善が課題。 |
| 【収益性】 | 営業利益率: 9.26% (過去12ヶ月) | 決算短信中間累計では2.32%と低い。研究開発投資増が短期的な利益率を圧迫。 |
| ROE: 7.00% (実績) | ROE(株主のお金でどれだけ稼いだか)は7.00%で、一般的な目安とされる10%を下回ります。 | |
| ROA: 4.22% (実績) | ROA(会社の総資産でどれだけ稼いだか)は4.22%で、一般的な目安とされる5%を下回ります。 | |
| 【財務健全性】 | 自己資本比率: 70.4% (実績) | 非常に高い水準で、財務基盤が極めて強固であることを示します。 |
| 流動比率: 4.70 (直近四半期) | 非常に高い水準で、短期的な支払い能力に全く問題ありません。 | |
| 【キャッシュフロー】 | 営業CF: 6,310百万円 (過去12ヶ月) | 本業でキャッシュを生み出す力はありますが、積極的な投資に回すには不十分な水準。 |
| FCF: 1,240百万円 (過去12ヶ月) | フリーキャッシュフローは1,240百万円と黒字ですが、企業規模に対しては潤沢とは言えません。 | |
| 【利益の質】 | 営業CF/純利益比率: 0.68 | C: やや懸念(キャッシュフロー不足)。純利益に対して営業キャッシュフローが少ない状態であり、利益の質に注意が必要です。 |
| 【四半期進捗】 | 通期売上高予想に対する中間進捗率: 約46.3% | 概ね順調な進捗です。 |
| 通期営業利益予想に対する中間進捗率: 約22.3% | 進捗が低く、下期での大幅な利益回復が通期目標達成の鍵となります。 |
| | 通期純利益予想に対する中間進捗率: 約31.1% | 特別利益の計上が寄与しており、営業利益の進捗とは乖離があります。
5. 株価分析
杏林製薬の株価は現在1,622.0円です。
【バリュエーション】
- PER: (連)19.41倍。株価が利益の約19.41年分であることを示します。業界平均27.8倍と比較すると割安な水準にあります。
- PBR: (連)0.68倍。株価が純資産の約0.68倍であることを示します。業界平均1.4倍と比較して大幅に割安であり、企業の解散価値とされる1倍を下回っています。これは、市場から企業価値が過小評価されている可能性を示唆しています。
【テクニカル】
- 現在の株価は1,622.0円で、52週高値1,698円、52週安値1,331円に対して79.3%の位置(安値から高値までのレンジにおいて、高値に近い水準)にあります。
- 全ての移動平均線(5日MA: 1,613.80円、25日MA: 1,542.60円、75日MA: 1,478.73円、200日MA: 1,494.01円)を上回っており、短期から中長期にかけて上昇トレンドにあることを示唆しています。
【市場比較】
- 1ヶ月リターンでは日経平均を0.38%ポイント上回っていますが、3ヶ月、6ヶ月、1年リターンでは日経平均およびTOPIXを下回っています。特に6ヶ月、1年といった中長期的な期間では、市場全体の上昇に乗り切れていない状況がうかがえます。
【定量リスク】
- ベータ値: -0.12。これは市場全体が1動いたときに企業の株価が-0.12動くことを意味し、一般的に市場全体の変動とは逆の動きをする傾向がある、または市場の影響を受けにくいことを示します。非常に低い(負の)ベータ値は珍しく、市場リスクとの連動性は非常に低いと解釈できます。
- 年間ボラティリティ: 23.47%。株価が1年間で平均的にどれくらい変動するかを示す指標です。仮に100万円投資した場合、年間で±23.47万円程度の変動が想定されます。
- 最大ドローダウン: -20.04%。過去の特定の期間において、株価が最も大きく下落した割合です。この程度の短期間での下落は今後も起こりうる可能性があります。
- シャープレシオ: 0.33。リスクに見合うリターンが得られているかを示す指標で、1.0以上が良好とされます。0.33は、リスク対比のリターンがあまり高くないことを示唆します。
【事業リスク】
- 国内医療費抑制策と薬価改定の影響: 国内市場が主な収益源であるため、国が推進する医療費抑制策や定期的な薬価改定は、製品価格や収益性を直接的に圧迫する最大の事業リスクです。
- 研究開発パイプラインの不確実性: 新薬開発は多大な投資と時間を要しますが、臨床試験の失敗や開発中止のリスクが常に伴います。直近でKRP-R120の第3相未達やKRP-A218の開発中止が判明しており、将来の成長ドライバーに影響を及ぼす可能性があります。
- 競争激化と他社製品の台頭: 激しい開発競争の中で、競合他社からより効果的で安価な医薬品が上市された場合、主力製品の市場シェアや収益性が低下するリスクがあります。
7. 市場センチメント
- 信用取引状況: 信用買残117,400株、信用売残19,500株に対し、信用倍率は6.02倍です。信用買い残が売り残の6倍以上あり、株価上昇時に需給が重しとなる可能性があります。
- 主要株主構成: 上位株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)が10.6%、(株)マイカムが8.64%、ルキウスが4.7%となっています。信託銀行や特定大口株主の保有割合が高く、安定した株主構成です。機関投資家(% Held by Institutions 22.01%)の保有も一定数存在します。
8. 株主還元
- 配当利回り: 会社予想で3.51%と、現在の低金利環境下においては比較的高水準です。
- 1株配当(会社予想): 57.00円。前期実績および通期予想も57円であり、安定的な配当が続いています。
- 配当性向: 会社予想ベースで約68% (通期)です。これは利益の約3分の2を配当に回していることを意味し、一般的な30~50%と比較するとやや高めですが、安定配当への意欲が伺えます。
- 自社株買い: 2025年5月30日に自己株式11,421百万円を消却しており、これはEPS(1株当たり利益)の向上や株主への還元意欲を示すものです。
SWOT分析
強み
- 自己資本比率70.4%、流動比率4.70と際立って強固な財務健全性を有しており、安定した企業運営が可能です。
- 「ベオーバ」等の主力製品が堅調に推移し、新医薬品の伸長により安定した売上成長を維持しています。
弱み
- 研究開発費の増加や製品コスト増により、短期的な営業利益率が圧迫されており、通期目標に対する利益進捗が低いです。
- パイプラインの開発中止や第3相試験での未達が判明しており、将来の成長を担う新薬候補のリスクを抱えています。
機会
- 慢性咳嗽向けのDTx(デジタルセラピューティクス)など、新たな医療技術分野への参入・展開により、将来の成長ドライバーを確立する可能性があります。
- 海外市場での新薬展開により、国内市場の成長鈍化を補完し、収益基盤を拡大する機会があります。
脅威
- 国内医薬品市場における継続的な薬価改定や医療費抑制策は、収益性を直接的に脅かす最大の要因です。
- 国際的な開発競争の激化や、他社新薬の登場により、主力製品の競争優位性が失われる可能性があります。
この銘柄が向いている投資家
- 安定配当を重視する長期投資家: 高い配当利回りと、利益成長に比して高い配当性向を維持する方針は、インカムゲインを求める投資家にとって魅力的です。
- バリュエーションの割安感を重視する投資家: 業界平均と比較してPER・PBRともに割安な水準にあり、将来的な再評価を期待する投資家に向いています。
- 財務健全性を重視する保守的な投資家: 極めて高い自己資本比率と潤沢な流動資産は、企業の安定性を重視する投資家にとって安心材料となります。
この銘柄を検討する際の注意点
- 研究開発の進捗状況とパイプラインリスク: 短期的な利益率を圧迫している研究開発投資が、将来の新薬上市に繋がり、成長を牽引できるかどうかが重要です。特に後期開発品の動向は注視が必要です。
- 国内市場の環境変化: 薬価改定や医療費抑制策など、国内医薬品市場の制度変更が収益に与える影響を継続的にモニタリングする必要があります。
今後ウォッチすべき指標
- 主力製品および新たな導入品の売上高推移: 特に呼吸器領域や泌尿器領域での成長維持と、新しい重点領域品目の市場浸透度。
- 研究開発パイプラインの進捗と承認状況: DTxや共同開発含む開発品のフェーズ進展、特に第3相試験の結果発表や承認申請の動向。
成長性: C (成長鈍化懸念)
- 根拠: 過去12ヶ月の売上高は増加していますが、2026年3月期の通期予想では売上高、営業利益、純利益ともに前年比で減少を見込んでいます。特に営業利益は大幅な減益予想となっており、短期的な成長性の鈍化が懸念されます。
収益性: B (まずまず)
- 根拠: ROEは7.00%と一般的な目安である10%を下回りますが、営業利益率は過去12ヶ月で9.26%であり、評価基準のB(営業利益率5-10%)に該当します。中間期の営業利益率は低いものの、通期で回復の見込みがあるため、B評価とします。
財務健全性: A (非常に堅固)
- 根拠: 自己資本比率が70.4%と極めて高く、流動比率も4.70と非常に良好な水準です。短期・長期ともに財務基盤が極めて強固であり、安定した企業経営が維持されています。Piotroski F-Scoreは低いものの、これは収益性の低さが主な原因であり、財務体質そのものは優良です。
バリュエーション: S (非常に割安)
- 根拠: PER19.41倍、PBR0.68倍ともに業界平均(PER27.8倍、PBR1.4倍)を大きく下回っています。PBRが1倍を割れていることも含め、業界平均と比較して極めて割安な水準にあり、市場からの再評価の余地が大きいと考えられます。
企業情報
| 銘柄コード | 4569 |
| 企業名 | 杏林製薬 |
| URL | https://www.kyorin-pharm.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 医薬品 – 医薬品 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 1,622円 |
| EPS(1株利益) | 83.55円 |
| 年間配当 | 3.51円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 18.1% | 23.8倍 | 4,564円 | 23.1% |
| 標準 | 13.9% | 20.7倍 | 3,315円 | 15.6% |
| 悲観 | 8.4% | 17.6倍 | 2,193円 | 6.4% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 1,622円
| 目標年率 | 理論株価 | 判定 |
|---|---|---|
| 15% | 1,661円 | ○ 2%割安 |
| 10% | 2,075円 | ○ 22%割安 |
| 5% | 2,618円 | ○ 38%割安 |
【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.15)」によって自動生成されました。
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