企業の一言説明

富士フイルムホールディングスは、写真フィルムで培った技術力を基盤に、ヘルスケア、エレクトロニクス、ビジネスイノベーション、イメージングの多岐にわたる事業を展開するグローバル素材・化学メーカーです。特にヘルスケア分野では、医療機器からバイオ医薬品製造受託(CDMO)、再生医療まで幅広く手掛け、高成長を牽引しています。

投資判断のための3つのキーポイント

  • 事業構造転換と成長ドライバー: 写真フィルムからの大胆な事業転換に成功し、ヘルスケア(特にバイオCDMO)や先端半導体材料に注力。イメージング事業の好調も加わり、高収益体質への変革が進んでいます。
  • 強固な財務基盤と高い利益の質: Piotroski F-Scoreが7点(S評価)と財務健全性が高く、営業キャッシュフローが純利益を大幅に上回るなど、利益の質も優良です。
  • 設備投資先行によるFCFの課題と信用倍率: グローバルでの生産能力増強に向けた大規模な設備投資が先行しており、フリーキャッシュフローはマイナスで推移しています。また、信用倍率が42.81倍と高水準であり、将来の売り圧力に注意が必要です。

企業スコア早見表

項目 スコア 判定
成長性 B 堅調な成長
収益性 A 良好な水準
財務健全性 A 優良水準
バリュエーション S 割安感あり

注目指標サマリー

指標 業界平均比
株価 3,065.0円
PER 14.1倍 業界平均20.4倍
PBR 1.06倍 業界平均1.1倍
配当利回り 2.28%
ROE 8.15%

1. 企業概要

富士フイルムホールディングス(以下、同社)は、写真フィルムで培った先進技術を基盤に多角化を進めてきた企業です。主要な事業領域は、医療機器、医薬品、バイオCDMO(受託開発製造)を含むヘルスケア、半導体・ディスプレイ材料などのエレクトロニクス、複合機やソリューションを提供するビジネスイノベーション、そして「instax」やデジタルカメラに代表されるイメージングの4つです。特にヘルスケアとエレクトロニクスの成長分野に注力しており、技術的独自性とグローバル展開により高い参入障壁を築いています。

2. 業界ポジション

同社は日本のプライム市場に上場する「素材・化学」セクターに属する企業です。写真フィルム事業で培った高精細材料技術を転用し、ヘルスケアや半導体材料といった成長分野で高い競争力を持っています。特にバイオCDMOにおいては、グローバルな生産拠点をM&Aにより拡充し、業界でも存在感を高めています。半導体材料分野では、CMPスラリーなどで世界トップシェアを有すると言われています。主要な競合企業は各事業セグメントで異なりますが、全社としては多角化によるリスク分散が強みとなります。現在のバリュエーションはPER 14.1倍に対し業界平均20.4倍、PBR 1.06倍に対し業界平均1.1倍となっており、業界平均と比較して割安感がある水準となっています。

3. 経営戦略

同社は、持続的な成長を実現するため、ヘルスケア、エレクトロニクスといった成長領域への重点投資を継続しています。特にバイオCDMO事業では、米国ノースカロライナ州の新拠点の開設やデンマーク拠点の強化など、グローバルでの生産能力増強に積極的に取り組んでいます。また、半導体材料では次世代技術に対応する研究開発を強化。直近の2026年3月期第2四半期決算では、イメージング事業の想定以上の好調により通期売上高予想を上方修正(+200億円)しましたが、積極的な成長投資を背景に営業利益等の通期予想は据え置いています。バイオCDMO、半導体材料、デジタルカメラといった高付加価値製品への転換が戦略の中核であり、中長期的な企業価値向上を目指しています。
今後の主なイベントとしては、2026年2月5日に次期決算発表、2026年3月30日に配当支払いの基準となる権利落ち日を迎える予定です。

【財務品質チェックリスト】Piotroski F-Score

項目 スコア 判定
総合スコア 7/9 S: 財務優良(収益性・健全性・効率性すべて良好)
収益性 3/3 良好(純利益、営業キャッシュフロー、ROAが全てプラス)
財務健全性 2/3 良好(D/Eレシオが1.0未満、株式希薄化なしだが流動比率に改善余地)
効率性 2/3 良好(営業利益率と四半期売上成長率は良好だが、ROEは改善余地あり)

Piotroski F-Score解説:

同社の総合スコアは9点満点中7点と、極めて優良な財務品質を示しています。収益性においては、純利益、営業キャッシュフロー、ROAが全てプラスであり、営業利益率も10%を超えているため満点評価です。財務健全性については、負債資本比率(D/Eレシオ 0.2641)が1.0未満で健全であり、株式希薄化のリスクもありません。ただし、流動比率(1.38)がベンチマークの1.5以上を下回る点が改善余地として挙げられます。効率性に関しては、営業利益率が10%を上回り、四半期売上成長率もプラスですが、ROE(8.15%)が一般的な目安とされる10%を下回っているため、満点には至りませんでした。全体としては、非常に安定した財務状況と効率的な事業運営が評価されます。

【収益性】

  • 営業利益率(過去12か月): 10.11%
  • ROE (Return on Equity、株主資本利益率): 8.15%(株主のお金でどれだけ稼いだかを示す指標。一般的に10%以上が良好とされますが、やや未達)
  • ROA (Return on Assets、総資産利益率): 4.23%(会社の総資産をどれだけ効率的に利益に結びつけたかを示す指標。一般的に5%以上が良好とされますが、やや未達)

同社の営業利益率は二桁を維持しており堅調ですが、ROEおよびROAは、ベンチマークである10%および5%にわずかに届いていません。これは、積極的な設備投資による資産増加などが影響している可能性があります。

【財務健全性】

  • 自己資本比率: 63.8%(総資産に占める自己資本の割合。高いほど財務が安定している証拠で、40%以上が一般的目安。同社は非常に高水準)
  • 流動比率: 1.38倍(短期的な負債の支払い能力を示す指標。200%以上が理想的とされるが、100%を超えていれば破産リスクは低い。同社は150%未満であり、F-Scoreの懸念点とも重なります。直近でわずかに低下しています)

同社は自己資本比率が高く、長期的な財務基盤は非常に強固です。流動比率は1.5倍を下回っていますが、急激な資金繰り悪化懸念がある水準ではありません。

【キャッシュフロー】

  • 営業キャッシュフロー(過去12か月): 422,350百万円(本業で稼ぐお金。プラスは健全)
  • フリーキャッシュフロー(過去12か月): -214,230百万円(営業CFから投資CFを差し引いた、自由に使えるお金。大規模な設備投資により大幅なマイナス)

同社の営業キャッシュフローは堅調にプラスを維持しており、本業で安定して現金を創出しています。しかし、バイオCDMO等の成長投資向け設備投資が先行しているため、フリーキャッシュフローは大幅なマイナスとなっています。これは成長のための投資フェーズであることを示唆しています。

【利益の質】

  • 営業CF/純利益比率(過去12か月): 1.56(営業キャッシュフローが純利益の何倍かを示す指標。1.0以上は利益が実体を伴う現金で得られていることを示し、質の高い利益と言えます)

同社の利益の質は非常に高く、純利益に対して営業キャッシュフローが大幅に上回っており、会計上の利益操作リスクが低い健全な状態です。

【四半期進捗】

2026年3月期 第2四半期(中間期)の決算進捗は以下の通りです。

  • 売上高: 中間実績1兆5,723億6,300万円。通期修正後予想(3兆3,000億円)に対する進捗率は47.6%。
  • 営業利益: 中間実績1,584億8,600万円。通期予想(3,310億円)に対する進捗率は47.9%。
  • 純利益: 中間実績1,202億3,200万円。通期予想(2,620億円)に対する進捗率は45.9%。

通期予想に対する中間期の進捗率は、売上高・営業利益ともに約47~48%と、概ね通常ペースで推移しており、通期見通しの達成は妥当な範囲内と判断できます。直近3四半期(過去12か月データから推計)の売上高・営業利益も堅調に推移しており、特に直近四半期前年同期比では売上高+7.5%、営業利益+13.3%と増収増益を達成しています。

【バリュエーション】

  • PER (Price Earnings Ratio、株価収益率): 14.1倍(株価が利益の何年分かを示す。業界平均20.4倍より低く、割安感があります)
  • PBR (Price Book-value Ratio、株価純資産倍率): 1.06倍(株価が純資産の何倍かを示す。業界平均1.1倍とほぼ同水準であり、適正な水準と言えます。1倍未満は解散価値を下回る状態とされます)

同社のPERは業界平均より大幅に低く、PBRはほぼ同等であることから、利益基準では割安、資産基準では適正なバリュエーションと判断できます。業種平均PER基準の目標株価は4,582円、業種平均PBR基準の目標株価は3,185円と算出されており、現株価3,065.0円から見ると、PER基準では上昇余地があると考えられます。

【テクニカルシグナル】

指標 状態 数値 解釈
MACD 中立 短期トレンド方向を示す
RSI 中立 [データなし] 70以上=過熱、30以下=売られすぎ
移動平均乖離率 下方乖離 -3.13% (5日線) 25日線からの乖離度

MACDとRSIは中立を示しており、明確なトレンド転換シグナルは見られません。しかし、5日移動平均線からの乖離率が-3.13%、25日線から-7.84%、75日線から-9.77%、200日線から-6.92%と、全ての移動平均線を下回って下方乖離しており、株価は短期・中期的に下降トレンドにあることが示唆されます。

【テクニカル】

  • 52週高値・安値との位置: 現在株価3,065.0円は52週高値3,787.0円と安値2,516.0円のレンジにおいて43.2%の位置にあり、安値圏寄りで推移しています。
  • 移動平均線との関係: 現在株価は、5日、25日、75日、200日の全ての主要移動平均線を下回っており、テクニカル的には軟調な状態です。

【市場比較】

日経平均株価およびTOPIXとの相対パフォーマンスでは、直近1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年の全ての期間で大きく下回っています。これは、市場全体が上昇する中で、同社の株価が相対的に低迷していることを示しており、特に長期的に市場アンダーパフォームが顕著です。

6. リスク評価

【注意事項】

⚠️ 信用倍率が42.81倍と高水準です。将来の売り圧力に注意が必要です。

【定量リスク】

  • 年間ボラティリティ: 31.36%
  • シャープレシオ: 0.27
  • 最大ドローダウン: -31.21%

仮に100万円投資した場合、年間で±31万円程度の変動が想定され、比較的ボラティリティが高い銘柄です。シャープレシオが0.27と低いことから、リスクに見合うリターンが十分に得られていない可能性があります。過去の最大ドローダウン-31.21%は、同様の下落が今後も起こりうるリスクを示唆しています。

【事業リスク】

  • 市場環境の変化と競争激化: 特に中国市場における医療材料需要の減退や、各事業セグメントでのグローバルな競争激化は収益性に影響を与える可能性があります。また、為替変動リスクも大きく(海外売上比率約65%)、想定為替レートとの乖離が業績に影響する可能性があります。
  • 大規模設備投資に伴う財務負担と回収遅延: バイオCDMOなどの成長分野への積極的な設備投資は、巨額の資金を必要とし、フリーキャッシュフローのマイナス要因となっています。投資回収が計画通りに進まない場合、収益性や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。
  • 技術革新と製品開発のリスク: 同社は高付加価値製品への転換を進めていますが、ヘルスケアや半導体材料分野では常に技術革新が求められます。新たな技術や製品の開発競争に遅れをとった場合、市場での競争力を失うリスクがあります。

7. 市場センチメント

信用買残が2,654,100株に対し、信用売残が62,000株と極端に少なく、信用倍率は42.81倍と非常に高水準です。これは、株価上昇への期待から買い残が増加している一方で、ショートポジションが少ないことを示しています。ただし、高すぎる信用倍率は、将来的にこれらの買い残が利益確定売りや損切りとして出てくることで、株価の重しとなる可能性があります。
主要株主は、日本マスタートラスト信託銀行(18.39%)、日本カストディ銀行(6.32%)、日本生命保険(3.41%)と、日本の大手信託銀行や機関投資家が上位を占めており、安定株主が多い構造です。

8. 株主還元

同社は、株主還元として配当を安定的に実施しており、増配傾向にあります。

  • 配当利回り: 2.28%(株価3,065.0円、年間配当予想70円に基づく)
  • 配当性向: 31.16%(通期予想に基づく)(利益の30-50%を配当に回すのが一般的。健全な水準です)

2026年3月期の年間配当は70円(中間35円、期末予想35円)と、前年(65円)より増配を予定しています。安定した配当と増配傾向は、長期保有を検討する投資家にとって魅力的です。自社株買いは、中間決算短信で大規模な実施に関する記載はありませんでしたが、自己株口での保有が3.05%あります。

SWOT分析

強み

  • 写真フィルム技術を応用した多角化戦略の成功と技術的優位性
  • ヘルスケア(バイオCDMO、医療機器)や高機能材料(半導体材料)など高成長分野への事業転換

弱み

  • 大規模な設備投資先行によるフリーキャッシュフローの減少
  • 一部事業(中国の医療材料需要減、AF材料)における成長鈍化や需要変動

機会

  • 世界の人口増加と高齢化に伴うヘルスケア市場及びDXソリューションの拡大
  • 生成AI・先端半導体需要による高機能材料市場のさらなる伸長

脅威

  • 地政学リスクや為替変動、原材料価格の高騰による事業への影響
  • グローバル市場での競争激化と技術革新のスピード

この銘柄が向いている投資家

  • 中長期的な事業転換と成長に期待する投資家: ヘルスケアやエレクトロニクスといった高成長分野への積極的な投資が、将来的な企業価値向上に繋がると考える投資家。
  • 安定した収益基盤と配当を重視する投資家: 財務健全性が高く、安定した営業利益と増配傾向を評価する投資家。
  • バリュエーションの割安感を重視する投資家: 業界平均と比較してPERに割安感があるため、株価の回復を期待する投資家。

この銘柄を検討する際の注意点

  • 設備投資の動向とフリーキャッシュフローの改善: 現在マイナスとなっているフリーキャッシュフローが、大規模投資の回収に伴い黒字転換するかどうかを注視する必要があります。
  • 信用倍率の高止まり: 信用買残が高い水準にあるため、需給バランスの悪化による短期的な株価下落リスクに留意が必要です。
  • 中国市場の景気動向: 中国市場での需要減退が一部事業に影響を及ぼしているため、今後の回復状況を定期的に確認することが重要です。

今後ウォッチすべき指標

  • ヘルスケア部門およびエレクトロニクス部門の売上高・利益成長率: 特にバイオCDMOや半導体材料事業の具体的な進捗と寄与度。
  • フリーキャッシュフローの推移と設備投資計画: 投資の回収状況と将来の資本効率改善の兆し。
  • 四半期ごとのセグメント別業績: イメージング事業の好調が持続するか、またビジネスイノベーション事業の収益改善が続くか。

10. 企業スコア(詳細)

成長性: B (堅調な成長)

過去12か月の売上高成長率は7.50%、通期予想売上高成長率は約3.2%と堅調に推移しています。これは評価基準の「B」(5-10%の成長)に該当します。ヘルスケアや半導体材料の成長分野への投資が着実に売上として寄与しています。

収益性: A (良好な水準)

ROEは8.15%とベンチマーク10%には届かないものの、営業利益率は10.11%を達成しており、評価基準の「A」(ROE10-15%または営業利益率10-15%)に該当します。多角化した事業ポートフォリオの中で、高収益事業の割合が増加しています。

財務健全性: A (優良水準)

自己資本比率63.8%と60%以上であり優良ですが、流動比率は1.38倍と200%未満です。しかし、Piotroski F-Scoreが7点と高評価であることから、総合的に見て評価基準の「A」(自己資本比率40-60%・流動比率150%以上・F-Score5-6点または自己資本比率60%以上・F-Score7点以上だが流動比率がわずかに満たない)に該当します。高い財務安定性を有しながらも、短期流動性にはわずかな改善余地があります。

バリュエーション: S (割安感あり)

PERは14.1倍で業界平均20.4倍の約69%であり、PBRは1.06倍で業界平均1.1倍の約96%です。PERが業界平均の70%以下であるため、評価基準の「S」(PER/PBR業界平均の70%以下)に該当し、株式市場では割安感があると判断できます。


企業情報

銘柄コード 4901
企業名 富士フイルムホールディングス
URL http://www.fujifilmholdings.com/
市場区分 プライム市場
業種 素材・化学 – 化学

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 3,065円
EPS(1株利益) 217.68円
年間配当 70.00円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 20.0% 16.2倍 8,769円 25.1%
標準 15.4% 14.1倍 6,270円 17.3%
悲観 9.2% 12.0倍 4,054円 8.0%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 3,065円

目標年率 理論株価 判定
15% 3,390円 ○ 10%割安
10% 4,233円 ○ 28%割安
5% 5,342円 ○ 43%割安

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

関連情報

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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.18)」によって自動生成されました。

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企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。

By ジニー

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