企業の一言説明
近鉄百貨店は、近鉄沿線に国内最大級のあべのハルカス本店を中心に店舗を展開する、百貨店事業を主軸とする総合小売・サービス企業です。親会社である近鉄グループホールディングスの子会社として、安定した顧客基盤と地域密着型の戦略を強みとしています。
投資判断のための3つのキーポイント
- 業績の力強い回復と将来成長への期待: コロナ禍からの回復に加え、インバウンド需要の増加や大阪・関西万博への期待を背景に、百貨店事業が牽引し、売上高・利益ともにV字回復を遂げています。特に純利益は、店舗再編に伴う特別利益も寄与し、通期予想を大きく上回る進捗率を見せています。
- 改善する財務体質と安定した株主構成: 有利子負債の削減が進むなど財務体質の改善が見られます。また、親会社の近鉄グループホールディングスが過半数の株式を保有しており、経営基盤の安定性が確保されています。
- 万博効果への期待と構造的な課題: 大阪・関西万博によって、さらなるインバウンド需要の増加や地域活性化が期待されますが、その反動リスクも存在します。また、百貨店業界全体が抱える構造的な変化への対応(eコマースとの競合、消費行動の変化)は、引き続き重要な経営課題です。
企業スコア早見表
| 項目 | スコア | 判定 |
|---|---|---|
| 成長性 | A | 良好な成長 |
| 収益性 | A | 良好な収益性 |
| 財務健全性 | B | まずまず健全 |
| バリュエーション | C | やや割高圏 |
注目指標サマリー
| 指標 | 値 | 業界平均比 |
|---|---|---|
| 株価 | 1,806.0円 | – |
| PER | 20.37倍 | 業界平均21.1倍 |
| PBR | 1.60倍 | 業界平均1.3倍 |
| 配当利回り | 1.11% | – |
| ROE | 15.81% | – |
1. 企業概要
近鉄百貨店(Kintetsu Department Store Co., Ltd.)は、1934年設立の老舗百貨店です。親会社である近鉄グループホールディングスの傘下で、主に「百貨店業」「卸・小売業」「内装業」「不動産業」を展開しています。特に、国内最大級の複合商業施設「あべのハルカス」に本店を構え、近畿日本鉄道沿線を中心に店舗網を築き、地域密着型のビジネスモデルを強みとしています。同社は衣料品、食品、個人用品、家庭用品の販売、レストラン・カフェ運営に加え、自動車卸・小売、商業施設や物流施設の賃貸・レンタル、内装事業、人材派遣事業など、多角的な事業を進めることで収益源の多様化を図っています。百貨店事業においては、長年の歴史とブランド力を背景に、高品質なサービスと商品提供を通じて安定した顧客基盤を維持しています。
2. 業界ポジション
近鉄百貨店は日本の百貨店業界において、特に近畿地方を主要な事業エリアとし、大阪のランドマークである「あべのハルカス本店」を旗艦店とする点で特異なポジションを確立しています。百貨店業界全体としては、Eコマースの台頭や消費者の購買行動の変化により厳しい環境にありますが、同社は近鉄グループの強力なインフラを活用し、鉄道沿線という地の利を生かした地域密着戦略を展開しています。また、インバウンド需要の取り込みにも注力し、回復基調にある百貨店市場において存在感を示しています。
競合に対する強みとしては、あべのハルカスという都市型複合施設の運営ノウハウ、近鉄グループとの連携による安定的な顧客流入、そして長年の歴史で培われたブランド力と顧客ロイヤリティが挙げられます。一方、弱みとしては、全国展開する大手百貨店グループと比較して、事業規模や多様な地域でのブランド浸透度に限定がある点が挙げられます。
財務指標の業界平均との比較を見ると、PER(株価収益率)は20.37倍と業界平均の21.1倍に近く、収益性に対する評価は概ね適正水準にあります。PBR(株価純資産倍率)は1.60倍と業界平均の1.3倍をやや上回っており、純資産価値から見ると若干割高感があるといえるでしょう。
3. 経営戦略
近鉄百貨店は、中期経営計画において、百貨店事業の核店舗であるあべのハルカス本店をはじめとする主要店舗の強化と、大阪・関西万博を見据えたインバウンド需要の最大限の取り込みを成長戦略の柱としています。同社は、訪日外国人観光客の増加に伴う免税売上の拡大や、万博開催による地域全体の活性化が事業機会となると捉え、これらを収益拡大に繋げるべく戦略的な施策を展開しています。
直近では、名古屋店の閉鎖に伴う店舗再編を進め、事業構造の最適化を図っています。これに関連して、特別利益として受取補償金を計上し、有利子負債の削減に成功するなど、財務体質の改善も進展しています。百貨店事業以外では、自動車の卸・小売事業(シュテルン近鉄)や内装事業(近創)も堅調な推移を見せており、事業の多角化が経営の安定に寄与しています。
今後のイベントとしては、2026年2月26日にEx-Dividend Date(配当落ち日)が予定されています。これは、この日を境に株式を購入しても直近の配当金を受け取る権利が得られなくなる日を指し、配当を重視する投資家にとっては注目されるでしょう。経営陣は、万博関連需要の取り込みと同時に、その反動リスクや衣料品・化粧品といった基幹カテゴリの需要変動リスクにも言及しており、慎重かつ現実的な経営姿勢を窺わせます。販管費増による営業利益マージン圧迫リスクも認識しており、コスト管理も重要な課題です。
【財務品質チェックリスト】Piotroski F-Score
Piotroski F-Scoreは、収益性、財務健全性、効率性の9つの項目で企業の財務状況を評価する指標で、0点から9点までの範囲で評価されます。3つのカテゴリ(収益性、財務健全性、効率性)にそれぞれ3つの基準があり、各基準を満たすと1点が加算されます。
| 項目 | スコア | 判定 |
|---|---|---|
| 総合スコア | 6/9 | A: 良好(全体的に健全だが一部改善余地あり) |
| 収益性 | 2/3 | 純利益とROAは良好ですが、営業キャッシュフローのデータがなく評価項目全てを判断できていません。 |
| 財務健全性 | 2/3 | D/Eレシオと株式希薄化は問題ありませんが、流動比率がベンチマークを下回っています。 |
| 効率性 | 2/3 | ROEと四半期売上成長率は良好ですが、営業利益率がベンチマークに達していません。 |
解説:
近鉄百貨店のF-Scoreは6/9点で「A: 良好」と評価されます。収益性に関しては、純利益がプラスであり、ROA(総資産利益率)もプラスであることから、基本的な収益獲得能力は健全です。ただし、営業キャッシュフローのデータが提供されていないため、その項目は評価できていません。財務健全性では、総負債対株主資本比率(D/Eレシオ)が低く、株式の希薄化も起きていないため安定性を示しています。しかし、流動比率が1.5倍のベンチマークを下回っており、短期的な支払い能力にはやや改善の余地があります。効率性では、ROE(自己資本利益率)が良好な水準にあり、四半期ベースの売上成長も実現していますが、営業利益率がまだベンチマークである10%に達しておらず、本業での収益性の向上は継続的な課題です。
【収益性】
収益性指標は、企業がどれだけ効率的に利益を上げているかを示すものです。
- 営業利益率: 5.06% (過去12か月)
- ベンチマーク: 高収益企業は10%以上が目安。
- 百貨店業界は一般的に利益率が低い傾向にありますが、5.06%という数値は黒字を維持しているものの、さらなる効率化や高付加価値化が求められます。過去の数値と比較すると、コロナ禍による赤字から回復し、改善傾向にはあります。
- ROE(自己資本利益率): 15.81% (過去12か月)
- ベンチマーク: 10%以上が一般的な目安。
- 15.81%というROEは、株主から預かった資本を非常に効率的に活用して利益を生み出していることを示しており、優良な水準です。これは、直近の業績回復と、特別利益の計上による純利益の押し上げが強く影響しています。
- ROA(総資産利益率): 3.32% (過去12か月)
- ベンチマーク: 5%以上が目安。
- ROAは3.32%と、ベンチマークの5%には達していませんが、着実に改善傾向にあります。これは、企業の総資産に対してどれだけの利益を生み出しているかを示す指標であり、資産を効率的に活用しきれていない部分があることを示唆しています。
【財務健全性】
企業の財務健全性は、事業を安定的に継続できる体力があるかを示します。
- 自己資本比率: 33.7% (連結実績)
- ベンチマーク: 一般的に40%以上が望ましいとされます。
- 33.7%という自己資本比率は、一般的な目安には届かないものの、百貨店業界の特性(固定資産が多い)を考慮すると、まずまずの水準と言えます。コロナ禍以前の20%台後半から改善しており、財務基盤の強化が進んでいます。
- 流動比率: 0.54 (直近四半期)
- ベンチマーク: 短期的な支払い能力の目安として200%以上が理想。100%を下回ると短期的な資金繰りが厳しい可能性があります。
- 0.54という流動比率は、短期的な支払い能力において強い懸念があることを示しています。これは、短期負債に比べて流動資産が著しく少ない状態を意味し、資金繰りの状況を注意深く見ていく必要があります。有利子負債は削減傾向ですが、この指標は改善が必要です。
【キャッシュフロー】
企業のキャッシュフローは、事業活動を通じて現金をどれだけ生み出しているかを示します。
- 営業キャッシュフロー (営業CF): データなし
- フリーキャッシュフロー (FCF): データなし
- 提供されたデータから営業キャッシュフローおよびフリーキャッシュフローを直接算出するための詳細なキャッシュフロー計算書が不足しているため、具体的な状況を評価することはできません。
【利益の質】
利益の質は、計上された利益がどの程度現金に裏付けられているかを示します。
- 営業CF/純利益比率: データなし
- 営業キャッシュフローのデータがないため、この比率を算出することはできません。一般的に、この比率が1.0以上であれば、会計上の利益が実際の現金流入にしっかり裏付けられている、健全な利益であると判断されます。
【四半期進捗】
通期目標に対する実績の進捗状況と、直近の業績トレンドを確認します。
近鉄百貨店の2026年2月期第3四半期決算短信によると、通期予想に対する進捗率は以下の通りです。
- 売上高進捗率: 76.7% (通期予想121,000百万円に対し、実績92,876百万円)
- 営業利益進捗率: 77.0% (通期予想5,400百万円に対し、実績4,157百万円)
- 当期純利益進捗率: 133.2% (通期予想3,500百万円に対し、実績4,662百万円)
当期純利益が第3四半期で既に通期予想を大きく上回っている点が注目されます。これは、特別利益として計上された受取補償金(4,531百万円)が大きく寄与したためです。会社側は通期予想の修正を行っておらず、保守的な見通しを持っている可能性があります。
直近3四半期の売上高・営業利益の推移(年間データから四半期を概算するが、今回は第3四半期のデータのみ提供されているため、それだけを記述)
- 2026年2月期 第3四半期累計:
- 売上高: 92,876百万円(前年同期比 +11.7%)
- 営業利益: 4,157百万円(前年同期比 +44.4%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 4,662百万円(前年同期比 +171.7%)
百貨店事業が売上高で前年同期比+14.4%、営業利益で+80.3%と大幅な増益を達成し、全体の業績を牽引しています。卸・小売業や内装業は堅調であるものの、営業利益は前年同期比で減少しており、事業全体としての収益性向上には引き続き百貨店事業の好調が不可欠である状況が伺えます。
【バリュエーション】
バリュエーション指標は、現在の株価が企業の価値に対して割安か割高かを判断する目安となります。
- PER(株価収益率): 20.37倍 (会社予想EPS基準)
- 業界平均PER: 21.1倍
- 現在のPERは業界平均とほぼ同水準であり、利益から見ると現在の株価は「適正」なバリュエーションにあると言えます。株価は利益の約20年分と解釈でき、特段の割高感はありません。
- PBR(株価純資産倍率): 1.60倍 (実績)
- 業界平均PBR: 1.3倍
- PBRは業界平均をやや上回る1.60倍であり、企業の純資産価値と比較すると、現在の株価は「やや割高」であると判断できます。PBRが1倍を下回る場合は解散価値を下回る状態とされ、割安と見なされることが多いですが、1.60倍は純資産の1.6倍の価値が市場で評価されていることを示します。ただし、インバウンド需要や万博期待といった成長プレミアムが織り込まれている可能性もあります。
これらの指標からすると、PERは適正ですがPBRはやや割高であり、総合的には中立からやや割高寄りといった評価になります。目標株価(業種平均PER基準)は3,030円、目標株価(業種平均PBR基準)は1,471円と算出されており、両基準の間で評価が分かれています。
【テクニカルシグナル】
トレンド系・オシレータ系の指標から株価の動きを読み解きます。
| 指標 | 状態 | 数値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| MACD | 中立 | MACD値: -10.2 / シグナルライン: -7.68 / ヒストグラム: -2.52 | MACD線がシグナル線を下回っていますが、過去のデッドクロス直後のため大きな動きは見られず中立的です。短期的なトレンド方向を示す上で、今後の推移が注目されます。 |
| RSI | 中立 | 39.2% | RSIは70%以上で買われすぎ、30%以下で売られすぎと判断されます。現在は中立域にあり、特段の過熱感や売られすぎ感はありません。 |
| 5日線乖離率 | – | -0.34% | 株価が5日移動平均線をわずかに下回っており、直近のモメンタムはやや弱いことを示唆します。 |
| 25日線乖離率 | – | -1.86% | 株価が25日移動平均線を下回っており、短期トレンドからの乖離は軽度な下落を示唆します。 |
| 75日線乖離率 | – | -2.77% | 株価が75日移動平均線を下回っており、中期トレンドからの乖離は緩やかな下落を示唆します。 |
| 200日線乖離率 | – | -3.80% | 株価が200日移動平均線を下回っており、長期トレンドからの乖離も緩やかな下落傾向を示唆します。 |
解説:
MACDとRSIは現在中立的な状態を示しており、株価に明確な買われすぎや売られすぎの状況は見られません。しかし、移動平均線乖離率が全てマイナスであり、現在の株価が短期・中期・長期の全ての移動平均線を下回っていることは、株価が下降トレンドにあることを示唆しています。特に、全ての移動平均線を下回っていることは、トレンドの弱さを示しており、今後の株価動向には注意が必要です。
【テクニカル】
株価の過去の動きや節目からの位置関係を分析します。
- 52週高値・安値との位置:
- 52週高値: 2,307円
- 52週安値: 1,718円
- 現在の株価1,806.0円は、52週安値から14.9%(0%が安値、100%が高値)の位置にあります。これは、比較的高値圏から下落し、安値圏に近い位置で推移していることを示しています。
- 移動平均線との関係:
- 現在の株価1,806.0円は、5日移動平均線(1,812.20円)、25日移動平均線(1,839.28円)、75日移動平均線(1,857.52円)、200日移動平均線(1,877.22円)の全てを下回っています。これは、短期から長期にわたる下降トレンドが継続していることを示唆しており、株価に上昇モメンタムが見られない状況です。
【市場比較】
日経平均株価やTOPIXといった市場全体の指標との相対的なパフォーマンスを比較します。
- 日経平均比:
- 1ヶ月リターン: 株式-4.24% vs 日経+6.64% → 10.89%ポイント下回る
- 3ヶ月リターン: 株式-7.62% vs 日経+11.43% → 19.05%ポイント下回る
- 6ヶ月リターン: 株式-4.29% vs 日経+33.77% → 38.06%ポイント下回る
- 1年リターン: 株式-19.55% vs 日経+47.16% → 66.71%ポイント下回る
- TOPIX比:
- 1ヶ月リターン: 株式-4.24% vs TOPIX+4.13% → 8.37%ポイント下回る
解説:
近鉄百貨店の株価は、日経平均株価およびTOPIXといった市場全体の主要指数に対して、一貫してアンダーパフォーム(市場を下回るパフォーマンス)しています。特に、直近1年間では日経平均に対して66.71%ポイントも下回っており、市場全体の強い上昇トレンドの中で、同社の株価は相対的に低調な推移を示しています。これは、同社が市場全体のテーマから外れている、あるいは個別の業績やファンダメンタルズが市場の評価に追いついていない可能性を示唆しています。
【定量リスク】
過去のデータに基づく統計的なリスク指標です。
- 年間ボラティリティ: 21.78%
- これは、株価が年間で平均的にどの程度変動するかを示します。仮に100万円を投資した場合、年間で±21.78万円程度の変動が想定されることを意味します。比較的安定した百貨店業界の中では、やや高めの変動率と言えます。
- シャープレシオ: 0.76
- シャープレシオは、リスクに見合うリターンが得られているかを示す指標で、1.0以上が良好とされます。0.76という数値は、リスクを取った割にはリターンが相対的に低いことを示唆しており、リスクリターン効率は平均以下であると判断できます。
- 最大ドローダウン: -15.83%
- これは、過去の一定期間で発生した株価の最大下落率を示します。仮に100万円投資した場合、過去には最大で15.83万円程度の評価損を経験する可能性があったことを意味し、今後も同様の下落が起こりうることを覚悟する必要があります。
- ベータ値: -0.20
- ベータ値は市場全体(S&P 500等の主要株価指数)の動きに対する個別銘柄の感応度を示します。一般的に1.0が市場平均と同じ動き、1.0より大きいと市場より大きく変動(ハイリスク・ハイリターン)、1.0より小さいと市場より小さく変動(ローリスク)とされます。-0.20という値は、市場全体が上昇する際に株価は下落する傾向にあり、市場全体が下落する際に株価は上昇する傾向がある(逆相関)ことを示唆します。これは、近鉄百貨店が市場の変動に対してディフェンシブな特性を持つ可能性を示しています。
【事業リスク】
近鉄百貨店が事業運営において直面する主要なリスク要因は以下の3点です。
- 消費環境の変化と競争激化: 百貨店業界は、Eコマース(電子商取引)の拡大、専門店業態の多様化、そして消費者の価値観や購買行動の変化により、継続的な構造変化に直面しています。若年層の百貨店離れや、節約志向の高まりは、売上減少に直結するリスクとなります。また、主要都市圏では同業他社との競争が激しく、集客や売上維持のための施策費用が増加する可能性も考えられます。
- インバウンド需要への依存と変動: 近鉄百貨店は、あべのハルカス本店を中心にインバウンド(訪日外国人観光客)需要を積極的に取り込んでおり、足元の業績回復に大きく貢献しています。しかし、地政学リスク、感染症の再流行、国際情勢の変化、為替レートの変動などにより、インバウンド需要が急減する可能性があり、その場合は業績に大きな悪影響を及ぼすリスクがあります。また、大阪・関西万博後の需要の反動もリスクとして認識されています。
- 店舗再編・固定資産処分に伴う費用発生: 名古屋店閉鎖のような店舗戦略の見直しは、事業構造の最適化に寄与する一方で、その過程で店舗閉鎖損失や固定資産除却損といった特別損失が発生する可能性があります。また、既存店舗の魅力向上に向けた設備投資やリノベーション費用も継続的に発生し、損益に影響を与える可能性があります。老朽化した店舗の維持管理費用も負担となる可能性があります。
7. 市場センチメント
市場センチメントは、投資家全体の心理状態や需給状況を示すものです。
- 信用取引状況(信用倍率): 0.60倍
- 信用倍率は1倍を下回っており、「売り長」の状態です。これは、信用買い残よりも信用売り残が多いことを意味し、将来的な買い戻しによる株価の上昇圧力が期待できると一般的に解釈されます。しかし、一方で、株価の下落を期待する投資家が多いとも言えます。
- 主要株主構成:
- 近鉄グループホールディングス: 63.03%
- 日本カストディ銀行(近畿日本鉄道退職給付信託口): 3.57%
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口): 2.49%
- 親会社の近鉄グループホールディングスが圧倒的な筆頭株主であり、発行済株式の過半数を保有しているため、経営の安定性は非常に高いと言えます。大株主が安定しているため、短期的な株価の乱高下は比較的抑制されやすい傾向にありますが、一方で、流動性が低いという側面も持ちます。自社株や信託系の保有も一定数見られ、安定株主が大部分を占める構成です。
8. 株主還元
株主還元は、企業が株主に対して利益をどのように分配するかを示すものです。
- 配当利回り: 1.11% (会社予想)
- 配当利回りは1.11%と、現在の低金利環境下では一定の魅力を持つものの、高配当銘柄と比較すると控えめな水準です。
- 1株配当(会社予想): 20.00円
- 配当性向: 23.2% (Yahoo Japanデータ)
- 23.2%という配当性向は、利益の約4分の1を配当に回していることを意味します。この水準は、企業の成長投資と株主還元をバランス良く両立させようとする姿勢を示しており、無理なく継続可能な配当政策であると考えられます。近年の業績回復に伴い、配当も安定して実施されており、株主還元への意識は高いと言えます。
- 自社株買いの状況:
- 決算短信によれば、会社は株式需給緩衝信託による自己株式の取得・売却を実施しています。これは、市場の需給バランスを調整し、株価の安定化を図ることを目的とすることが多いです。現時点での大規模な自社株買いによる株主還元は明示されていませんが、株価変動への配慮は見られます。
SWOT分析
強み (Strengths)
- 地域密着型戦略とブランド力: あべのハルカス本店を核とする近鉄沿線の有力な商業施設展開と、長年の歴史で培われた百貨店のブランド力・顧客基盤。
- 近鉄グループとの連携: 近鉄グループホールディングスの傘下にあることで、鉄道や不動産といったグループの強固な顧客基盤と相乗効果を生み出しやすい。
弱み (Weaknesses)
- 流動比率の低さ: 短期的な支払い能力に不安があり、資金繰りの状況を注意深く見る必要がある。
- 百貨店業界の構造的課題: Eコマースとの競争、消費行動の変化など、業界全体が抱える構造的な課題への対応が継続的な経営課題。
機会 (Opportunities)
- インバウンド需要の増加: 大阪・関西万博開催に向け、訪日外国人観光客による消費拡大が期待される。
- 都市再開発・地域活性化: 旗艦店周辺の再開発や地域全体の活性化が、集客力向上や売上増に繋がる可能性。
脅威 (Threats)
- 消費者の可処分所得への影響: 景気変動、物価高騰が消費者の購買意欲を冷え込ませ、百貨店の売上に悪影響を及ぼす可能性。
- 万博後の需要反動: 万博期間中に一時的に高まる需要が、イベント終了後に急減するリスク。
この銘柄が向いている投資家
- 大阪・関西の経済成長とインバウンド需要の回復に期待する投資家: 大阪・関西万博やインバウンド需要の本格回復による業績成長シナリオに共感し、その恩恵を受けたいと考える投資家。
- 親会社との連携による安定性を評価する投資家: 近鉄グループホールディングスの傘下という安定した経営基盤と、そのシナジー効果を重視する投資家。
- 収益性改善と財務体質強化の進捗を評価する投資家: 足元の業績回復に加え、有利子負債の削減など財務健全性への取り組みを評価し、長期的な視点で企業の成長を見守りたいと考える投資家。
この銘柄を検討する際の注意点
- 流動比率の改善状況: 現在の流動比率の低さは短期的な資金繰りにおける懸念点です。今後の決算でこの指標がどのように改善していくか、注視する必要があります。
- 万博後の需要動向: 大阪・関西万博による一時的な需要増は期待されますが、その後の反動減リスクも認識しておくべきです。持続的な成長を実現できるか、万博以降の経営戦略とその実行力を注意深く評価する必要があります。
今後ウォッチすべき指標
- 四半期売上高・営業利益の推移: 特に百貨店事業の売上高と営業利益が、特別利益を除いた本業ベースで着実に成長を維持できるか。
- 流動比率: 短期的な支払い能力を示す上で重要な指標であり、1.0以上への改善を目指せるか。
- インバウンド売上比率と動向: 万博開催に向けた需要取り込みの状況と、為替変動等による影響。
- 販管費増のコントロール: 万博関連費用などによる販管費増が、営業利益率に与える影響。
10. 企業スコア
近鉄百貨店の各項目について、以下の評価基準に基づき5段階評価(S, A, B, C, D)を行い、その根拠を説明します。
- 成長性: A
- 評価基準: S(15%以上) / A(10-15%) / B(5-10%) / C(0-5%) / D(マイナス)
- 根拠: 直近のQuarterly Revenue Growth(前年比)は10.80%と、基準の10-15%に該当し「A: 良好な成長」と評価できます。コロナ禍からの回復に加え、インバウンド需要の取り込みにより、売上高は着実に増加傾向にあります。
- 収益性: A
- 評価基準: S(ROE15%以上かつ営業利益率15%以上) / A(ROE10-15%または営業利益率10-15%) / B(ROE8-10%または営業利益率5-10%) / C(ROE5-8%または営業利益率3-5%) / D(ROE5%未満かつ営業利益率3%未満)
- 根拠: 過去12ヶ月のROEは15.81%と「S」の基準を満たす非常に高い水準です。一方で、営業利益率は5.06%と「B」の基準に該当します。両方を満たしてSとはならないため、ROEの高さと営業利益率の改善傾向を考慮し、総合的に「A: 良好な収益性」と評価します。特にROEの数値は株主資本の効率的な活用を示しています。
- 財務健全性: B
- 評価基準: S(自己資本比率60%以上・流動比率200%以上・F-Score7点以上) / A(自己資本比率40-60%・流動比率150%以上・F-Score5-6点) / B(自己資本比率30-40%・F-Score3-4点) / C(自己資本比率20-30%・F-Score1-2点) / D(自己資本比率20%未満・F-Score0点)
- 根拠: 自己資本比率は33.7%で「B」の範囲にあります。F-Scoreは6点と「A」の範囲ですが、流動比率が0.54と著しく低く、どの基準も満たしていません。自己資本比率の改善とF-Scoreの評価はプラス要因ですが、流動比率の低さが大きな懸念材料であるため、総合的には「B: まずまず健全」と評価します。有利子負債の削減は進んでおり、長期的な健全性は改善傾向にあります。
- バリュエーション: C
- 評価基準: S(PER/PBR業界平均の70%以下) / A(80-90%) / B(90-110%) / C(110-130%) / D(130%以上)
- 根拠: PER(20.37倍)は業界平均PER(21.1倍)の約96.5%であり「B」の範囲です。PBR(1.60倍)は業界平均PBR(1.3倍)の約123.1%であり「C」の範囲です。PERは適正水準ですが、PBRが業界平均を上回っており、純資産価値から見るとやや割高感が強いため、総合的に「C: やや割高圏」と評価します。現在の株価には、今後の成長期待が一部織り込まれている可能性があります。
企業情報
| 銘柄コード | 8244 |
| 企業名 | 近鉄百貨店 |
| URL | http://www.d-kintetsu.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 小売 – 小売業 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 1,806円 |
| EPS(1株利益) | 88.64円 |
| 年間配当 | 1.11円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5.5% | 23.6倍 | 2,733円 | 8.7% |
| 標準 | 4.3% | 20.5倍 | 2,236円 | 4.4% |
| 悲観 | 2.6% | 17.4倍 | 1,751円 | -0.6% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 1,806円
| 目標年率 | 理論株価 | 判定 |
|---|---|---|
| 15% | 1,115円 | △ 62%割高 |
| 10% | 1,393円 | △ 30%割高 |
| 5% | 1,757円 | △ 3%割高 |
【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い
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