企業の一言説明
東邦ホールディングスは、医薬品卸売事業を主軸に、調剤薬局、医薬品製造販売事業も展開する日本の大手医薬品流通企業の持ち株会社です。
投資判断のための3つのキーポイント
- 安定的な医薬品流通網と周辺事業の多角化: 医薬品卸売に加え、調剤薬局事業や顧客支援システム提供など、医療インフラを支える多角的な事業展開により、安定した収益基盤を有しています。
- 連続増配と積極的な株主還元姿勢: 業績予想の下方修正があったものの、期末配当の大幅増額修正を発表するなど、株主還元への意欲が高い点が評価されます。
- 収益性の課題と厳しい市場評価: 低い営業利益率とROA、業界平均を上回るPER/PBRなど、収益性とバリュエーション面で課題があり、市場からは厳しい評価を受けています。
企業スコア早見表
| 項目 | スコア | 判定 |
|---|---|---|
| 成長性 | C | やや不安 |
| 収益性 | C | やや不安 |
| 財務健全性 | B | 普通 |
| バリュエーション | D | 懸念 |
※スコア凡例: S=優良, A=良好, B=普通, C=やや不安, D=懸念
注目指標サマリー
| 指標 | 値 | 業界平均比 |
|---|---|---|
| 株価 | 4,755円 | – |
| PER | 19.27倍 | 業界平均12.1倍 |
| PBR | 1.15倍 | 業界平均1.0倍 |
| 配当利回り | 2.52% | – |
| ROE | 7.85% | – |
1. 企業概要
東邦ホールディングスは、医薬品卸売事業を中核に、医療機関や調剤薬局への医薬品供給を担う大手持ち株会社です。主力は医療用医薬品、麻薬、試薬、医療機器の卸売であり、調剤薬局の運営、医薬品の製造販売も手掛けています。買収戦略により全国にエリアを拡大し、ENIFやLXMATE Heliosなどの顧客支援システム開発・提供も行い、医療現場のDXをサポートする技術的独自性も有しています。
2. 業界ポジション
医薬品卸業界の大手の一角を占め、買収を通じて全国の流通網を強化しています。医療機関や調剤薬局への広範な供給網と、ITを活用した医療支援システム提供を強みとしています。競合他社と比較して、PERは19.27倍と業界平均の12.1倍を大きく上回り、PBRも1.15倍と業界平均の1.0倍を上回っており、バリュエーション面では割高と評価される可能性があります。
3. 経営戦略
買収を通じて全国エリア拡大を図り、医薬品卸売事業の基盤強化を進めてきました。直近の2026年3月期第3四半期決算では、医薬品卸売事業が前年同期比微増収となったものの、セグメント利益は減少しました。一方で、調剤薬局事業とその他周辺事業は増収増益を達成しており、多角化戦略の成果が現れています。通期の業績予想は維持されているものの、経常利益の予想は前週比で下降修正されており、引き続き市場動向を注視する必要があります。
【財務品質チェックリスト】Piotroski F-Score
| 項目 | スコア | 判定 |
|---|---|---|
| 総合スコア | 5/9 | A: 良好(全体的に健全だが一部改善余地あり) |
| 収益性 | 2/3 | 純利益とROAはプラスだが、営業キャッシュフローのデータなし |
| 財務健全性 | 2/3 | D/Eレシオ、株式希薄化は問題ないが、流動比率が基準未達 |
| 効率性 | 1/3 | 四半期売上成長率はプラスだが、営業利益率とROEが基準未達 |
Piotroski F-Scoreは5/9点と「良好」な判定です。これは、一定の収益性と財務健全性を維持していることを示唆しています。特に、純利益とROAがプラスであり、有利子負債への依存度が低いこと、そして株式の希薄化が見られない点は評価できます。一方で、流動性や効率面では改善の余地があることを示しています。
【収益性】
- 営業利益率(過去12か月): 1.23%
- 売上高は1兆5,000億円を超える規模ですが、営業利益率は低水準にとどまっています。これは医薬品卸売事業の特性上、薄利多売の構造であることが背景にあると考えられます。
- ROE(実績): 7.85% (ベンチマーク: 10%)
- 株主資本に対する利益率はベンチマークの10%を下回っており、資本効率の改善が求められます。過去12か月では9.10%に改善傾向が見られますが、まだ十分ではありません。
- ROA(過去12か月): 1.29% (ベンチマーク: 5%)
- 総資産に対する利益率もベンチマークの5%を大きく下回っており、資産を効率的に活用できているとは言えません。
【財務健全性】
- 自己資本比率(実績): 35.5%
- 2025年3月期の実績は35.5%であり、過去の推移を見ると概ね30%台を維持しており、会社の倒産リスクが低いことを示す一つの指標としては悪くありませんが、一般的には40%以上が望ましいとされます。
- 流動比率(直近四半期): 1.23
- 流動資産が流動負債の1.23倍であることを示しており、短期的な債務返済能力は確保されています。しかし、F-Scoreの基準(1.5倍)には達しておらず、より安全性を高める余地があります。
【キャッシュフロー】
- 営業CF:
- 2024年3月期に599.3億円と大幅なプラスでしたが、2025年3月期には-266.7億円とマイナスに転じています。これは仕入れや在庫管理、売掛金の変動など、本業におけるキャッシュ創出能力に課題が見られる可能性があります。
- FCF(フリーキャッシュフロー):
- 2024年3月期に690.2億円と大幅なプラスでしたが、2025年3月期には-308.5億円とマイナスに転じており、事業活動で得たキャッシュが投資に回しきれていない、あるいは不足している状況を示しています。
【利益の質】
- 営業CF/純利益比率: データなし(営業CFがマイナスである2025年3月期は計算が適切ではないため)
【四半期進捗】
2026年3月期第3四半期決算短信によると、通期予想(売上高1兆5,720億円、営業利益207億円、当期純利益157億円)に対する進捗率は以下の通りです。
- 売上高: 75.3%
- 営業利益: 60.0%
- 純利益: 92.0%
売上高の進捗は概ね順調ですが、営業利益は通期予想に対して進捗が遅れており、第4四半期での巻き返しが期待されます。一方、純利益は既に92.0%と高進捗であり、これは投資有価証券売却益や固定資産売却益といった特別利益の計上が大きく寄与しています。
直近3四半期の売上高・営業利益の推移は以下の通りです。
- 2026年3月期第3四半期累計:**
- 売上高: 1兆1,831億5,800万円(前年同期比+1.8%)
- 営業利益: 124億2,200万円(前年同期比△13.3%)
特に営業利益の前年同期比での減少は注目すべき点です。
【バリュエーション】
- PER(会社予想): 19.27倍
- 業界平均の12.1倍と比較すると、東邦ホールディングスのPERは割高に位置します。これは、将来の成長期待が市場に織り込まれている可能性もありますが、現状の収益性から見ると注意が必要です。
- PBR(実績): 1.15倍
- 業界平均の1.0倍と比較すると、PBRもやや割高です。しかし、PBR1.0倍をわずかに上回る程度で、解散価値を大きく上回っているわけではありません。
これらのバリュエーション指標は、現在の株価が業界平均と比較して割高圏にあることを示唆しています。目標株価(業種平均PER基準で3,645円、業種平均PBR基準で4,155円)と比較しても、現在の株価4,755円は上回っています。
【テクニカルシグナル】
| 指標 | 状態 | 数値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| MACD | 中立 | MACD値: 9.99 / シグナルライン: 1.24 | 短期的なトレンドの方向性について、強いシグナルは出ていません。MACD値がシグナルラインを上回っているため、わずかに上向きの勢いは見られます。 |
| RSI | 中立 | 52.9% | 買われすぎでも売られすぎでもない中立圏にあり、株価の過熱感はありません。 |
| 5日線乖離率 | – | +0.21% | 株価がごくわずかに5日移動平均線を上回っており、短期的なモメンタムは安定しています。 |
| 25日線乖離率 | – | +0.91% | 株価がわずかに25日移動平均線を上回っており、短期的な上昇傾向を示唆しています。 |
| 75日線乖離率 | – | +1.04% | 株価がわずかに75日移動平均線を上回っており、中期的な上昇トレンドの可能性を示唆しています。 |
| 200日線乖離率 | – | -2.94% | 株価が200日移動平均線を下回っており、長期的な目線では下降トレンドの可能性も残っています。 |
【テクニカル】
現在の株価4,755円は、52週高値5,726円、52週安値4,013円の中間位置(43.3%)にあります。短期・中期移動平均線(5日、25日、75日)は株価を下回っており、やや上向きのトレンドを示唆しています。しかし、長期の200日移動平均線は株価を上回っており、このラインがレジスタンス(上値抵抗)となる可能性があります。
【市場比較】
日経平均やTOPIXとの相対パフォーマンスを見ると、直近1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年いずれの期間でも市場指数を大きく下回っています。特に6ヶ月、1年では40%前後も下回っており、市場全体の好調な地合いに比べて、同社の株価は相対的に低調に推移していると言えます。
【定量リスク】
- 年間ボラティリティ: 25.79%
- この数値は、株価の年間変動幅が約±25.79%程度となる可能性を示します。仮に100万円投資した場合、年間で±25.79万円程度の変動が想定され、投資資金が大きく変動するリスクがあります。
- シャープレシオ: -0.53
- リスクに見合うリターンが得られていないことを示しており、過去の投資効率は低い状態でした。
- 最大ドローダウン: -44.77%
- 過去の最も大きな下落率は約44.77%でした。この程度の下落は今後も起こりうる可能性があり、投資においては資金管理が重要です。
- ベータ値: -0.11
- 市場全体(例えば日経平均やTOPIX)の動きと逆方向に動く傾向があることを示します。非常に小さいマイナス値であり、市場全体の変動とはあまり関係なく、個別要因で株価が動く傾向が強いと考えられます。
【事業リスク】
- 薬価改定の影響: 医薬品卸業界は、政府による毎年の薬価改定の影響を直接受けます。薬価の引き下げは、売上高は増加しても利益率の低下に直結し、収益を圧迫する可能性があります。
- 競争激化と業界再編: 医薬品卸業界では大手各社によるシェア争いが激しく、M&Aによる業界再編も進んでいます。これにより、価格競争がさらに激化し、収益性が低下するリスクがあります。
- 物流コスト高騰: 医薬品の安定供給には広範な物流網と効率的な配送が不可欠ですが、燃料費や人件費の高騰は物流コストを押し上げ、利益率を圧迫する要因となります。
7. 市場センチメント
信用買残が19,300株、信用売残が19,800株であり、信用倍率は0.97倍です。これは売残の方が多く、需給面では将来的な買い戻しによる株価上昇圧力が期待できる可能性がありますが、極端な偏りは見られません。主要株主は、ステート・ストリート・バンク&トラスト(13.21%)、自社(自己株口10.4%)、日本マスタートラスト信託銀行(9.67%)などで構成されています。機関投資家の保有比率が高いことから、株価は業績や財務状況に比較的連動しやすいと考えられます。
8. 株主還元
配当利回り(会社予想)は2.52%です。2026年3月期の年間配当予想は120円(中間45円、期末75円)であり、前期の65円から大幅な増配修正となりました。これにより、配当性向は約48.8%(EPS 245.70円に基づく)となります。過去5年間の平均配当利回りは1.35%であり、今回の増配は株主還元への積極的な姿勢を示すものです。自社は自己株式を10.4%保有しており、これも株主還元の一形態と見なせます。
SWOT分析
強み
- 医薬品卸売事業を核とした安定的な事業基盤と全国規模の流通網。
- 調剤薬局、医薬品製造販売、医療支援システムなど多角的な事業展開。
弱み
- 低い営業利益率とROA、資本効率の改善が課題。
- PER/PBRが業界平均より割高であり、市場からの評価が厳しい。
機会
- 高齢化社会における医療需要の持続的な増加。
- 医療DXの推進による新たなシステム・サービス提供機会。
脅威
- 薬価改定による収益性の継続的な圧迫。
- 医薬品卸業界における競争激化とM&Aによる再編。
この銘柄が向いている投資家
- 配当を重視する投資家: 直近の増配と高い配当性向により、株主還元に積極的な姿勢が見られます。
- 医療インフラの安定成長に期待する長期投資家: 高齢化社会において、医薬品流通は不可欠であり、インフラとしての安定性があります。ただし、収益性改善は注視が必要です。
この銘柄を検討する際の注意点
- 収益性の改善状況: 低い営業利益率とROAの改善が見られるか、今後の決算で確認が必要です。
- バリュエーションの割高感: 業界平均と比較して割高なPER/PBRが継続するのか、市場による再評価があるのかを慎重に見極める必要があります。
今後ウォッチすべき指標
- 営業利益率の推移: 医薬品卸事業の収益改善が今後の課題となるため、営業利益率が安定的、かつ上昇傾向を示すか。目標値: 2%以上。
- ROE・ROAの改善: 資本効率の改善を示すROEが10%以上、ROAが5%以上を達成できるか。
成長性: C (やや不安)
売上高は増加傾向にありますが、直近の2026年3月期第3四半期決算では営業利益が前年同期比で減少しており、通期予想のEPSも前期比で減少見込みです。売上高の成長率は概ね3-5%程度であり、成長性スコアの基準ではC評価に該当します。
収益性: C (やや不安)
ROEの実績値が7.85%(過去12か月では9.10%)、営業利益率が1.23%であり、いずれもベンチマーク(ROE10%、営業利益率10%)を下回っています。これは、医薬品卸売事業の薄利多売なビジネスモデルに起因する側面もありますが、収益効率の面で課題を抱えていることを示しており、C評価と判断します。
財務健全性: B (普通)
自己資本比率が35.5%と30-40%台を推移しており、F-Scoreも5/9点(良好)と評価されています。流動比率は1.23と短期的な安全性が確保されていますが、より高い水準が望まれます。全体としては、重大な懸念はないものの、改善の余地もある「普通」のB評価とします。
バリュエーション: D (懸念)
PERは19.27倍、PBRは1.15倍であり、それぞれ業界平均のPER12.1倍、PBR1.0倍と比較すると割高な水準にあります。目標株価(業種平均PER基準3,645円、業種平均PBR基準4,155円)と比較しても現状の株価は上回っており、バリュエーション面では「懸念」されるD評価と判断します。
以上
企業情報
| 銘柄コード | 8129 |
| 企業名 | 東邦ホールディングス |
| URL | http://www.tohohd.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 商社・卸売 – 卸売業 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 4,755円 |
| EPS(1株利益) | 246.72円 |
| 年間配当 | 2.52円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 14.0% | 20.9倍 | 9,957円 | 16.0% |
| 標準 | 10.8% | 18.2倍 | 7,496円 | 9.6% |
| 悲観 | 6.5% | 15.5倍 | 5,223円 | 2.0% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 4,755円
| 目標年率 | 理論株価 | 判定 |
|---|---|---|
| 15% | 3,735円 | △ 27%割高 |
| 10% | 4,665円 | △ 2%割高 |
| 5% | 5,887円 | ○ 19%割安 |
【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い
競合他社
| 企業名 | コード | 現在値(円) | 時価総額(億円) | PER(倍) | PBR(倍) | ROE(%) | 配当利回り(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| メディパルホールディングス | 7459 | 3,006 | 6,492 | 16.31 | 0.95 | 6.4 | 2.12 |
| アルフレッサ ホールディングス | 2784 | 2,612 | 4,997 | 13.88 | 0.95 | 7.4 | 2.60 |
| スズケン | 9987 | 6,548 | 4,725 | 13.69 | 1.10 | 8.4 | 1.52 |
関連情報
証券会社
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本レポートは、不特定多数の投資家に向けた一般的な情報提供を目的としており、個別の投資ニーズや状況に基づく助言を行うものではありません。記載されている情報は、AIによる分析や公開データに基づいて作成されたものであり、その正確性、完全性、適時性について保証するものではありません。また、これらの情報は予告なく変更または削除される場合があります。
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企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。