1. 企業情報
山九株式会社は、1917年創業の老舗企業で、日本製鉄を主要株主とする物流・プラントエンジニアリング会社です。主な事業は、港湾荷役・運送、3PL（サードパーティ・ロジスティクス）、工場構内作業などの物流事業と、プラントの設計・建設・メンテナンスを行う機工事業です。高炉改修工事に強みがあり、中東やアジア地域での物流事業展開も強化しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
山九は、陸運業界に属し、特にプラントエンジニアリング分野で高い技術力と実績を有しています。物流事業においても、3PLサービスや重量物輸送など、多様なニーズに対応できる点が強みです。業界内での具体的な市場シェアは開示されていませんが、大手企業の一角として、安定した地位を築いています。競争優位性としては、日本製鉄との関係性による安定した顧客基盤、プラント建設における高度な技術力、海外展開の加速などが挙げられます。課題としては、景気変動の影響を受けやすいプラント事業の業績安定化、物流業界の人手不足、燃料価格の高騰などへの対応が挙げられます。
3. 経営戦略と重点分野
山九は、中期経営計画において、海外事業の拡大、高付加価値サービスの提供、DX（デジタルトランスフォーメーション）推進などを重点戦略として掲げています。具体的には、東南アジアを中心とした海外拠点の拡充、3PLサービスの強化、プラント事業における環境関連分野への注力などが挙げられます。2025年3月期の第3四半期決算短信では、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する四半期純利益が前年同期比で増加しており、計画は順調に進捗していると考えられます。
4. 事業モデルの持続可能性
山九の事業モデルは、物流とプラント事業という2つの柱で構成されており、相互に補完し合うことでリスク分散を図っています。物流事業は、経済活動の活発化に伴い需要が拡大する傾向があり、安定的な収益基盤となっています。プラント事業は、インフラ投資や設備投資の需要に左右されますが、高度な技術力と実績により、一定の需要を確保しています。市場ニーズの変化への適応力としては、3PLサービスの拡充による顧客ニーズへの対応、環境関連分野への事業展開などが挙げられます。
5. 技術革新と主力製品
山九は、プラントエンジニアリング分野において、高度な技術力を有しています。特に、製鉄プラントの建設・改修工事においては、豊富な実績とノウハウを蓄積しています。また、物流分野においても、重量物輸送や特殊輸送など、高度な技術を必要とするサービスを提供しています。技術開発の動向としては、省エネルギー化や環境負荷低減に貢献する技術開発、DX推進による業務効率化などが挙げられます。収益を牽引している製品やサービスとしては、プラント建設・改修工事、3PLサービス、重量物輸送などが挙げられます。
6. 株価の評価
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 株価 | 6,233円 |
| PER（会社予想） | 12.07倍 |
| PBR（実績） | 1.18倍 |
| EPS（会社予想） | 516.36円 |
| BPS（実績） | 5,300.62円 |
| 配当利回り | 3.27% |
PERは12.07倍であり、業界平均PERの13.9を下回っています。PBRは1.18倍であり、業界平均PBRの1.0を上回っています。EPS、BPSから計算すると、割安感があるとは一概には言えません。
7. テクニカル分析
直近10日間の株価推移を見ると、2025年4月28日の終値は6,233円であり、年初来高値6,413円に近づいています。50日移動平均線6,028.32円、200日移動平均線5,333.81円を上回っており、上昇トレンドにあると判断できます。
8. 財務諸表分析
| 指標 | 過去12ヶ月 | 3/31/2024 | 3/31/2023 | 3/31/2022 | 3/31/2021 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高（百万円） | 563,547 | 563,547 | 579,226 | 553,831 | 533,870 |
| 営業利益（百万円） | 35,216 | 35,216 | 38,169 | 34,466 | 33,929 |
| 経常利益（百万円） | 36,227 | 36,227 | 38,458 | 34,284 | 36,219 |
| 当期純利益（百万円） | 24,379 | 24,379 | 24,959 | 22,636 | 23,540 |
| ROE | 10.18% | ||||
| ROA | 4.85% | ||||
| 自己資本比率 | 55.8% |
過去数年間の財務状況を見ると、売上高は安定的に推移しており、利益も堅調に推移しています。2024年3月期の売上高は減少しましたが、営業利益、経常利益、当期純利益は増加しています。ROEは10.18%と、一定の収益性を確保しています。自己資本比率も55.8%と高く、財務体質は良好です。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り（会社予想）: 3.27%
- 1株配当（会社予想）: 204.00円
- 配当性向: 37.21%
山九は、安定的な配当を重視する方針であり、配当利回りも3%を超えています。2025年3月期の年間配当は204円を予定しており、前期から増配となっています。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は上昇傾向にあり、年初来高値に近づいています。出来高も増加傾向にあり、投資家の関心が高まっていると考えられます。株価への影響を与える要因としては、業績動向、配当政策、海外事業の進捗、業界全体の動向などが挙げられます。
11. 総評
山九は、安定した収益基盤と高い技術力を有する優良企業です。物流とプラント事業という2つの柱を持ち、リスク分散を図っています。財務状況も良好で、株主還元にも積極的です。直近の業績も好調であり、株価も上昇傾向にあります。ただし、プラント事業は景気変動の影響を受けやすく、今後の海外事業の進捗や、人手不足、燃料価格高騰への対応などが、株価の行方を左右する要因となるでしょう。総合的に見て、中長期的な投資対象として検討する価値があると考えられます。
企業情報
| 銘柄コード | 9065 |
| 企業名 | 山九 |
| URL | http://www.sankyu.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 運輸・物流 – 陸運業 |
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