1. 企業情報
概要・事業内容
住友電気工業株式会社は、電線・ケーブルの製造・販売を中心に、自動車用ワイヤハーネス、情報通信、エレクトロニクス、環境エネルギー、産業素材など多岐にわたる事業を展開する総合素材メーカーです。自動車用ワイヤハーネスで世界有数のシェアを持つほか、光ファイバーなど通信インフラ分野でも国内外で高い競争力を有しています。1897年創業、大阪市に本社を置きます。従業員数は約29万人と大規模です。
– 【連結事業構成】自動車59%、情報通信5%、エレクトロニクス7%、環境エネルギー22%、産業用素材他8%（カッコ内は営業利益率）
– 海外売上比率は62%（2024.3期）
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内ポジション
電線・ケーブル分野で国内最大手、世界でもトップクラス。自動車用ワイヤハーネスでは世界大手の一角を占めます。光ファイバーなど通信インフラ分野でも国内外で高いシェアを持ちます。
– 競争優位性
グローバルな生産・販売体制、幅広い事業ポートフォリオ、技術力の高さが強み。自動車電装化・EV化の進展や、通信インフラ需要の拡大など、成長分野への対応力も高いです。
– 課題
原材料価格の変動、為替リスク、グローバル競争の激化、サプライチェーンの安定確保などが課題となります。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営ビジョン・戦略
「社会インフラの高度化・グリーン化を支える技術リーダー」を掲げ、持続可能な社会への貢献と収益力強化を両立させる戦略を推進。
– 中期経営計画の重点分野
– 自動車分野：EV・自動運転向けワイヤハーネス等の拡大
– 情報通信分野：光ファイバー・データセンター向け製品の強化
– 環境エネルギー分野：再生可能エネルギー関連、送配電線、蓄電システム
– 生産・サプライチェーンの効率化・グローバル展開
– 研究開発投資による新規事業創出
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデル
多角化された事業ポートフォリオにより、特定分野の景気変動リスクを分散。自動車、通信インフラ、エネルギー等、長期的な社会ニーズに根差したビジネスモデルです。
– 市場ニーズへの適応力
EV化・自動運転、5G/6G通信、再生可能エネルギーなど、成長分野への技術・製品開発を積極的に進めており、変化への対応力は高いと考えられます。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発動向・独自性
ワイヤハーネスの軽量化・高機能化、光ファイバーの超高速・大容量化、次世代通信技術、パワー半導体材料など、独自技術を多数保有。
– 主力製品・サービス
– 自動車用ワイヤハーネス（世界大手）
– 光ファイバー・光通信機器
– 環境エネルギー関連（送配電線、蓄電池材料）
– 産業用素材（特殊鋼線、工具材料等）
6. 株価の評価
- EPS（会社予想）：205.16円
- BPS（実績）：2,959.35円
- 株価：2,370.5円
- PER（会社予想）：11.55倍（業界平均80.4倍）
- PBR（実績）：0.80倍（業界平均0.8倍）
- 株価と指標の比較
業界平均と比べてPERは大幅に低く、PBRは業界平均並み。利益水準に対して株価は相対的に抑えられている状況です。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：3,145円
- 年初来安値：1,620円
- 直近株価：2,370.5円
- 50日移動平均：2,395.08円
- 200日移動平均：2,540.17円
- 株価推移
直近10日間で2,000円台前半から2,300円台後半まで上昇。年初来高値からは下落しているものの、安値圏からは大きく回復。現在は50日移動平均線付近で推移し、200日線を下回る水準です。
8. 財務諸表分析
- 売上・利益の推移（過去4年）
- 売上高：2.92兆円（2021年）→4.40兆円（2024年）
- 営業利益：1,139億円（2021年）→2,266億円（2024年）
- 純利益：563億円（2021年）→1,497億円（2024年）
- EPS：72.25円（2021年）→191.98円（2024年）
- 利益率・効率性
- 営業利益率：7.33%
- ROE：7.29%（実績）、8.81%（過去12か月）
- ROA：4.02%（過去12か月）
- 財務安全性
- 自己資本比率：約50%
- 総資産：4.6兆円
- 有利子負債比率：32.87%
- 流動比率：1.65倍
- キャッシュフロー
- キャッシュは3,388億円、安定した財務基盤を維持
- 成長性
- 売上・利益ともに着実な成長傾向
- 2024年度の営業利益・純利益は過去最高水準
9. 株主還元と配当方針
- 配当実績・予想
- 年間配当予想：77円（配当利回り3.25%）
- 配当性向：約36.86%
- 5年平均配当利回り：2.92%（直近はこれを上回る水準）
- 株主還元策
- 自社株買いの実施実績あり（自己株式保有比率1.75%）
- 安定配当を基本方針としつつ、業績に応じた増配も実施
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価の直近変動傾向
- 4月下旬に2,000円を割る場面があったが、その後大きく反発し、直近10日間で約20%上昇
- 出来高も増加傾向
- 投資家関心・需給
- 信用買残は減少、信用売残は増加傾向（需給はやや拮抗）
- 機関投資家・信託銀行の保有比率が高い
- 株価への影響要因
- 自動車・通信・エネルギー業界の動向
- 原材料価格、為替レート、グローバル経済情勢
11. 総評
住友電気工業は、電線・ケーブル、自動車用ワイヤハーネス、情報通信、環境エネルギーなど多角的な事業を展開し、国内外で高い競争力を有する大手総合素材メーカーです。売上・利益ともに安定した成長を続けており、財務基盤も堅固です。配当利回りも高水準で、株主還元策にも積極的です。株価は年初来高値からは下落しているものの、直近では反発傾向にあり、業績・財務指標と比較して割安感も見られます。今後も自動車の電動化や通信インフラ需要の拡大、新エネルギー分野の成長など、事業環境の変化に柔軟に対応できる体制が整っています。
企業情報
| 銘柄コード | 5802 |
| 企業名 | 住友電気工業 |
| URL | http://www.sei.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 鉄鋼・非鉄 – 非鉄金属 |
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