1. 企業情報
概要
東レ株式会社は、日本を代表する総合化学メーカーであり、繊維・機能化成品・炭素繊維複合材料・環境・エンジニアリング・ライフサイエンスの5つの主要事業を展開しています。主力の繊維事業ではナイロンやポリエステルなどの合成繊維を製造・販売し、炭素繊維複合材では世界トップシェアを有します。加えて、電子材料や水処理用逆浸透膜、医薬・医療機器など幅広い分野に事業を拡大しています。グローバル展開も積極的で、海外売上比率は約60%に達しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内ポジション
東レは、合成繊維分野で国内最大手、炭素繊維複合材料分野で世界首位の地位を確立しています。機能化成品や環境・エンジニアリング分野でも国内外で高い競争力を有します。
– 競争優位性
炭素繊維や水処理膜など高付加価値製品での技術力が強み。グローバルな生産・販売体制も競争力の源泉です。
– 課題
繊維事業では衣料用途の欧州市場低迷や海外品との競争激化、産業用途では自動車向け需要の回復遅れ、中国EV市場での競争激化が課題です。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営ビジョン・戦略
「持続的かつ健全な成長」を目指し、2023年度から中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”を推進中。
– 中期経営計画の重点分野
– 持続的な成長の実現
– 価値創出力強化
– 競争力強化
– 「人を基本とする経営」の深化
– リスクマネジメントとグループガバナンスの強化
– 具体的施策
– 高付加価値製品（炭素繊維、水処理膜等）への重点投資
– グローバル市場でのシェア拡大
– サステナビリティ対応（環境配慮型製品の開発等）
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデル
繊維・機能化成品・炭素繊維など多角化された事業ポートフォリオを持ち、安定した収益基盤を形成。
– 市場ニーズへの適応力
炭素繊維や水処理膜など成長分野へのシフト、環境・サステナビリティ対応を進めており、市場変化への適応力が見られます。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向・独自性
炭素繊維複合材料、水処理膜（逆浸透膜）、高機能フィルム・樹脂など、世界トップクラスの技術力を有します。
– 収益を牽引する主力製品
– 炭素繊維複合材料（航空・自動車・産業用途）
– 機能化成品（樹脂、フィルム、電子材料）
– 繊維（衣料・産業用途）
– 水処理膜（逆浸透膜）
6. 株価の評価
- PER（会社予想）: 18.44倍（業界平均21.7倍より低い）
- PBR（実績）: 0.88倍（業界平均1.0倍より低い）
- EPS（会社予想）: 52.44円
- BPS（実績）: 1,092.90円
- 株価（2025/5/15終値）: 967.1円
- 指標比較
- 株価/BPS = 0.88倍 ⇒ 純資産に対して割安感
- 株価/EPS = 18.44倍 ⇒ 業界平均よりやや割安
- 配当利回り: 2.07%（予想）
7. テクニカル分析
- 株価推移
直近10日間で900円台前半から985円まで上昇し、現在は967.1円。
– 52週高値/安値: 1,108円 / 818円
– 移動平均線
– 50日: 970.99円
– 200日: 918.70円
– 現状評価
株価は50日・200日移動平均線付近にあり、年初来高値圏からはやや下落した水準。直近は反発傾向も見られますが、直近高値（985円）では一時的な上値抵抗も観測されます。
8. 財務諸表分析
- 売上・利益推移（連結）
| 期末 | 売上収益(億円) | 営業利益(億円) | 純利益(億円) | EPS(円) |
|---|---|---|---|---|
| 2021/3 | 18,836 | 559 | 458 | 28.61 |
| 2022/3 | 22,285 | 1,005 | 842 | 52.63 |
| 2023/3 | 24,893 | 1,090 | 728 | 45.49 |
| 2024/3 | 24,646 | 576 | 305 | 13.67 |
| 2025/3 | 25,633 | 1,275 | 867 | 48.93 |
- キャッシュフロー
- 営業活動CF: 2,550億円（2025/3期、前年1,857億円）
- フリーCF: プラス維持
- ROE/ROA
- ROE（実績）: 4.52%
- ROA（実績）: 2.42%
- 自己資本比率
- 51.9%（2025/3期末）と財務健全性は高い
- 利益率
- 売上高営業利益率: 4.5%（2025/3期）
9. 株主還元と配当方針
- 配当実績・予想
- 2024/3期: 年間18円
- 2025/3期: 年間20円（予想）
- 配当利回り: 2.07%（予想）
- 配当性向: 56.06%
- 自社株買い: 自己株式保有あり（保有比率1.75%）、大規模な自社株買いは現時点で確認できず
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 直近の株価変動傾向
- 5月上旬に900円台前半から急伸し、985円まで上昇後、現在は970円台で推移
- 出来高も増加傾向
- 影響要因
- 2025年3月期決算で大幅な増益を発表し、投資家の関心が高まった可能性
- 配当増額も株価下支え要因
- 信用買残は減少傾向、信用倍率は1.45倍で特段の偏りなし
11. 総評
東レは、繊維・機能化成品・炭素繊維など多角的な事業展開とグローバルな競争力を持つ総合化学メーカーです。2025年3月期は大幅な増収増益を達成し、財務基盤も安定しています。主力の炭素繊維や水処理膜など高付加価値分野での成長が期待される一方、繊維事業の一部やライフサイエンス事業では課題も残ります。株価指標面では業界平均と比較してやや割安感があり、配当利回りも一定水準を確保しています。テクニカル面では直近上昇後にやや調整が入っている状況です。今後も中期経営計画の進捗やグローバル市場の動向、サステナビリティ対応などが注目されます。
企業情報
| 銘柄コード | 3402 |
| 企業名 | 東レ |
| URL | http://www.toray.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 繊維製品 |
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