1. 企業情報
概要
イーレックス株式会社は、主に電力の小売・卸売事業を展開するエネルギー企業です。自社でバイオマス発電所を複数運営し、再生可能エネルギーの拡販に注力しています。代理店経由での電力小売を主力とし、工場や家庭向けの電力・ガス小売も手掛けています。また、海外展開としてベトナムで木質ペレット工場の商業運転を開始しています。
– 設立：1999年12月8日
– 本社：東京都中央区京橋
– 従業員数：286人（平均年齢42歳、平均年収911万円）
– 事業構成（2024年3月期）：電力小売31%、電力卸売60%、その他9%
2. 業界のポジションと市場シェア
業界内ポジション
イーレックスは、国内の電力自由化を背景に新電力（PPS）として台頭した企業の一つです。バイオマス発電を中心とした再生可能エネルギーに強みを持ち、卸売事業の比率が高い点が特徴です。
競争優位性と課題
- 【優位性】
- 再エネ電源の自社保有による安定供給力
- バイオマス燃料の海外調達（ベトナム等）によるコスト競争力
- 【課題】
- 電力市場価格の変動リスク
- 燃料価格や調達コストの上昇リスク
- 競合他社との価格競争激化
3. 経営戦略と重点分野
ビジョン・戦略
- 2030年に2,500万トンのCO2削減、2050年にはカーボンマイナスの実現を目指す
- バイオマス発電の拡大と再エネ電力の拡販
- 海外（ベトナム等）での燃料調達・生産体制の強化
中期経営計画の重点施策
- 国内外でのバイオマス発電所の新設・拡張
- 電力トレーディングの高度化（電力先物市場の活用等）
- 法人向け高圧電力プランの拡販
- 海外子会社（ベトナム）の木質ペレット生産開始
4. 事業モデルの持続可能性
- 再生可能エネルギーへの社会的需要の高まりにより、バイオマス発電を軸とした事業モデルは今後も一定の需要が見込まれます。
- 燃料調達の多様化や海外生産拠点の活用により、コスト競争力を維持。
- 電力市場価格や燃料価格の変動リスクに対して、トレーディング事業や先物市場の活用でリスクヘッジを図っています。
5. 技術革新と主力製品
- バイオマス発電技術の高度化・効率化に取り組み、自社で燃料（木質ペレット）生産も開始。
- ベトナムのペレット工場稼働など、燃料の安定供給体制を強化。
- 主力はバイオマス発電による電力供給、ならびに電力小売・卸売。
6. 株価の評価
- 株価：803円（2025/5/22時点）
- EPS（2026年3月期予想）：43.83円
- PER（予想）：18.21倍（業界平均7.0倍）
- BPS（実績）：823.19円
- PBR（実績）：0.97倍（業界平均0.7倍）
評価
- PERは業界平均より高い水準ですが、再エネ分野への期待や成長投資を織り込んでいる可能性があります。
- PBRは1倍を下回っており、資産価値と比較して割高感は限定的です。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：886円、年初来安値：704円
- 50日移動平均：810.92円、200日移動平均：739.84円
- 直近株価：803円
- 直近10日間の値動き：800円台前半～830円台で推移し、やや調整局面
分析
- 株価は年初来高値からやや調整しつつも、50日・200日移動平均線の中間付近で推移
- 高値圏からはやや下落傾向だが、下値は堅い印象
8. 財務諸表分析
売上・利益推移（過去4年）
- 2022年3月期：売上230,502百万円、純利益9,653百万円
- 2023年3月期：売上296,312百万円、純利益9,131百万円
- 2024年3月期：売上244,977百万円、純利益-22,257百万円（損失計上）
- 2025年3月期：売上171,217百万円、純利益2,118百万円（黒字回復）
キャッシュフロー・財務健全性
- 営業CF：19,495百万円（2025年3月期）
- 自己資本比率：41.8%
- 総資産：153,382百万円
収益性指標
- ROE（実績）：3.79%
- ROA（実績）：2.99%
- 営業利益率：1.79%
分析
- 2024年3月期に大きな損失を計上したが、2025年3月期は黒字回復。
- 売上は減少傾向だが、利益率改善とキャッシュフローは安定。
- 財務体質は自己資本比率40%超で健全。
9. 株主還元と配当方針
- 配当予想：年間22円（2025年3月期）、配当利回り2.80%（Forward）
- 配当性向：38.39%
- 方針：安定的かつ継続的な還元を基本方針とする
- 自社株買い：特記なし
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 直近の株価は800円台前半で推移し、やや調整局面
- 信用買残増加、信用倍率6.00倍と、個人投資家の関心は高い
- インサイダー保有率約51%と経営陣のコミットメントも高い
- 配当利回りの上昇や再エネ分野の成長期待が株価を下支え
11. 総評
イーレックスは、バイオマス発電を中心とした再生可能エネルギー分野で独自のポジションを築いています。2024年に一時的な損失を計上したものの、2025年3月期には黒字回復し、財務体質も健全です。今後はバイオマス燃料の海外生産体制強化や、再エネ拡販により成長が期待される一方、電力市場価格や燃料コストの変動リスクには注意が必要です。株価は業界平均PERより高いものの、再エネ成長期待や安定した配当政策が評価材料となっています。
企業情報
| 銘柄コード | 9517 |
| 企業名 | イーレックス |
| URL | http://www.erex.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 電力・ガス – 電気・ガス業 |
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