1. 企業情報
日本カーボン株式会社は、1915年創業の老舗炭素製品メーカーです。主な事業は、炭素繊維やカーボン製品（高温炉用断熱材、C/Cコンポジット、カーボンパッキング材等）、等方性黒鉛や高純度黒鉛（半導体・光ファイバー製造装置部品等）、機械用カーボン部品（ベアリング、シール等）、人工黒鉛電極（電炉用）、シリコンカーバイド連続繊維（航空機・複合材料向け）、リチウムイオン電池用部材など多岐にわたります。海外売上比率は約48%とグローバル展開も進んでいます。
2. 業界のポジションと市場シェア
日本カーボンは炭素製品分野で国内大手の一角を占めています。特に電炉用電極や半導体・リチウムイオン電池向け部材、航空機向け炭化ケイ素繊維などで高い技術力とシェアを持ちます。競合には昭和電工マテリアルズ、SECカーボンなどがあり、グローバルでは米国・中国メーカーとの競争も激化しています。課題としては、半導体やEV市場の需要変動、原材料高騰、地政学リスク（米中摩擦・関税等）への対応が挙げられます。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は中期経営方針「GOBEYOND 2030」を掲げ、「収益性の向上」「サステナビリティ経営の推進」「株主還元の強化」を重点施策としています。具体的には、製造コスト削減、適正価格での販売、成長分野（航空宇宙・半導体・EV等）へのリソース集中、サステナブル素材開発、株主還元強化（配当・自社株買い等）を進めています。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業は、産業の基盤を支える炭素・炭化ケイ素製品の安定した需要に支えられています。特に半導体・EV・航空宇宙向けなど成長分野への展開が進む一方、市場変動や地政学リスクの影響を受けやすい側面もあります。コスト削減や新規用途開発、海外市場の拡大など、変化への適応力が問われています。
5. 技術革新と主力製品
高温耐熱・高強度・軽量といった炭素材料の特性を活かし、独自技術を持つ製品（C/Cコンポジット、等方性黒鉛、シリコンカーバイド繊維「ニカロン」シリーズ等）が主力です。航空機用炭化ケイ素繊維はGE等との合弁事業もあり、今後の成長が期待されています。半導体・EV向け製品も引き続き収益を牽引しています。
6. 株価の評価
- 株価：4,190円
- EPS（会社予想）：370.83円
- PER（会社予想）：11.3倍（業界平均18.3倍を下回る）
- BPS（実績）：4,649.5円
- PBR（実績）：0.90倍（業界平均1.4倍を下回る）
→ 業界平均と比較すると、株価は利益・純資産に対して割安な水準にあります。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：4,430円
- 年初来安値：3,560円
- 直近株価：4,190円（5/22終値）
- 50日移動平均：4,134.7円
- 200日移動平均：4,302.17円
株価は50日移動平均線付近に位置し、年初来高値圏にはやや届かず、200日線をやや下回っています。直近10日間は4,200円前後でのもみ合いが続いており、上値の重さと下値の堅さが見られます。
8. 財務諸表分析
- 売上高：横ばい傾向（2021年31,578百万円→2024年37,956百万円）
- 営業利益率：2024年16.6%（過去数年で改善傾向）
- 純利益：2021年2,729百万円→2024年4,078百万円（増益基調）
- EPS：2021年247.00円→2024年369.03円（増加傾向）
- ROE：8.04%（安定水準）
- 自己資本比率：63.2%（財務健全性高い）
- キャッシュフロー：現預金残高10,660百万円、総負債9,670百万円（流動比率2.43、財務余力あり）
- 直近四半期：売上・利益ともに前年同期比減少（売上高-5.7%、営業利益-20.5%、純利益-30.5%）
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り（予想）：4.77%（高水準）
- 1株配当（予想）：200円
- 配当性向：58.44%
- 自社株買い：自己株式保有比率6.17%、株主還元策として一定の自社株買い実施
- 配当方針：安定配当と株主還元の強化を中期方針に掲げている
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価変動：直近1年で-22.34%と調整局面。直近10日間は4,200円前後でもみ合い。
- 信用取引動向：信用買残高はやや減少傾向、信用倍率は14.11倍と買い長。
- 投資家構成：機関投資家・信託銀行による保有が目立つ。自己株式も一定比率あり。
- 影響要因：半導体・EV市場の需要動向、米国関税政策、地政学リスク、配当利回りの高さ等が株価に影響。
11. 総評
日本カーボンは、炭素・炭化ケイ素製品の高い技術力とグローバル展開を強みとする企業です。財務基盤は堅固であり、安定した配当政策も特徴です。一方、直近では半導体・EV市場の調整や地政学リスクの影響で業績に減速傾向が見られます。株価は業界平均と比較して割安な水準で推移しており、配当利回りも高い点が目立ちます。今後は、成長分野への展開やコスト競争力の強化、地政学リスクへの対応が重要なポイントとなります。
企業情報
| 銘柄コード | 5302 |
| 企業名 | 日本カーボン |
| URL | http://www.carbon.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 建設・資材 – ガラス・土石製品 |
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