1. 企業情報
概要
酉島製作所は、主に各種産業用ポンプの製造・販売を国内外で展開する企業です。エンドサクション、ダブルサクション、多段、特殊大型ポンプなど幅広い製品ラインナップを持ち、メカニカルシールや関連部品の提供も行っています。設置・試運転、保守・点検、運転管理、再設計・部品改良、コーティングサービスなど、ライフサイクル全体をカバーするサービスも強みです。また、風力発電や小水力発電、廃水エネルギー再利用など再生可能エネルギー分野にも進出しています。主な用途は水道・下水、灌漑・排水、発電、一般産業、石油・ガス、海水淡水化など多岐にわたります。
2. 業界のポジションと市場シェア
業界内ポジション
酉島製作所は国内ポンプ大手3社の一角であり、特にエネルギー用高効率ポンプの国内シェアは首位です。中東の海水淡水化設備向けにも強みを持ち、海外売上比率が62%とグローバル展開が進んでいます。
競争優位性・課題
- 競争優位性：高効率・大型ポンプの技術力、海外案件の豊富な実績、ライフサイクル全体をカバーするサービス体制。
- 課題：原材料・外注費の高騰、為替変動、海外リスク（地政学的リスク、政策変更等）、国内外の設備投資動向に左右されやすい点。
3. 経営戦略と重点分野
経営ビジョン・戦略
- 国内外のインフラ需要、再生可能エネルギー分野の拡大を成長ドライバーと位置付け。
- 省エネ・高効率化技術の開発、海外市場（特に中東・アジア）での受注強化。
- サービス・メンテナンス事業の拡大による安定収益化。
中期経営計画の施策
- 研究開発投資の継続（高効率ポンプ、新素材、IoT活用など）
- グローバルサプライチェーンの最適化
- ESG対応（CO2削減、再エネ推進、水資源保全）
4. 事業モデルの持続可能性
収益モデル
- 主力はポンプ本体の製造・販売だが、設置・保守・運転管理などのサービス収入も重要な柱。
- 既存設備の更新需要や、インフラ老朽化対策、防災・減災需要に支えられた安定的な市場。
市場ニーズ変化への適応力
- 再生可能エネルギーや省エネ技術への対応力が高い。
- 海外売上比率が高く、地域分散によるリスクヘッジが可能。
5. 技術革新と主力製品
技術開発の動向・独自性
- 高効率・大容量ポンプの開発、IoTによる遠隔監視・診断サービスの展開。
- 海水淡水化向けや再エネ関連の特殊ポンプで高い技術力を保有。
収益を牽引する主力製品・サービス
- 発電所・海水淡水化向け大型ポンプ
- 上下水道・産業用ポンプ
- 保守・メンテナンス、リプレース（更新）事業
6. 株価の評価
- 株価：1,989円（2025/5/23終値）
- EPS（会社予想）：161.45円
- PER（会社予想）：12.32倍（業界平均16.6倍）
- BPS（実績）：2,100.97円
- PBR（実績）：0.95倍（業界平均1.4倍）
評価
- 業界平均と比較してPER・PBRともに割安水準。
- EPSに対する株価も妥当な範囲内。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：2,495円
- 年初来安値：1,650円
- 直近株価推移：5月中旬以降下落基調、1,900円台で下げ止まりの様子。
- 50日移動平均：1,999.54円
- 200日移動平均：2,389.16円
- 現在値は50日線付近、200日線を大きく下回る。
- 直近10日間の出来高は安定、やや増加傾向。
8. 財務諸表分析
収益・利益
- 売上高は過去数年で増加傾向（2021年3月期: 約508億円 → 2025年3月期: 約865億円）。
- 営業利益・純利益は2024年度に一時減少（コスト増・為替影響等）、2025年度は増益予想。
キャッシュフロー
- 営業キャッシュフローは直近でマイナス（-6.68億円）、フリーキャッシュフローもマイナス（-59.5億円）。投資や運転資本増加の影響か。
資本効率
- ROE：7.52%（業界平均並み）
- ROA：3.14%
- 自己資本比率：48.4%（財務安全性は高い）
9. 株主還元と配当方針
配当実績・方針
- 2025年3月期配当予想：年間62円（配当利回り3.12%、配当性向39.3%）
- 近年は安定配当を維持、増配傾向。
- 自社株買いも実施実績あり（自己株式保有比率7.8%）。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価変動傾向：2025年初頭は高値圏（2,495円）、5月以降下落基調（-40%超/1年）。
- 信用倍率：4.51倍、買い残増加傾向。
- 出来高：直近は増加傾向。
- 投資家構成：機関投資家・信託銀行の保有比率が高く、安定株主が多い。
11. 総評
酉島製作所は、国内外で高効率大型ポンプの技術力・納入実績を持つ機械メーカーです。インフラ需要や再生可能エネルギー分野への対応、海外売上比率の高さが特徴です。直近ではコスト増や為替影響で利益が一時減少しましたが、中期的には増収増益基調を維持しています。財務安全性・配当安定性も高く、株価指標は業界平均と比較して割安水準です。株価は年初来高値から大きく下落していますが、出来高増加や信用買い残の増加も見られ、投資家の関心は一定水準を維持しています。今後は、海外案件・再エネ分野の受注動向やコスト管理、キャッシュフローの改善が注目されます。
※本レポートは情報提供を目的としており、投資助言を目的とするものではありません。
企業情報
| 銘柄コード | 6363 |
| 企業名 | 酉島製作所 |
| URL | http://www.torishima.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 機械 – 機械 |
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