1. 企業情報
概要
帝人株式会社は、1918年創業の総合化学メーカーであり、主に以下の事業を展開しています。
– マテリアル事業（炭素繊維、アラミド繊維、樹脂、フィルム等）
– 繊維・製品事業（合成繊維、産業資材、衣料繊維等）
– ヘルスケア事業（医薬品、在宅医療機器、医療材料等）
– IT事業（システム開発・運用、電子コミック配信等）※2025年3月期より非継続事業に分類
本社は大阪市北区中之島に所在し、従業員数は約21,583人。世界54カ国で事業展開しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 炭素繊維分野で世界2位のシェアを持ち、アラミド繊維もグローバルで高い競争力を有しています。
- 素材・化学業界においては、東レなどと並ぶ大手企業。
- ヘルスケア分野では在宅医療機器や医薬品で一定の存在感。
- 課題：グローバルな市況変動、原材料価格、薬価改定など外部環境の影響を受けやすい点が挙げられます。
3. 経営戦略と重点分野
- 中期経営計画2024-2025では、「収益性改善の完遂による基礎収益力の回復」と「事業ポートフォリオ変革」を主要課題に掲げています。
- マテリアル事業の収益性改善、アラミド・樹脂事業の販売拡大、繊維・製品事業の産業資材分野強化、ヘルスケア事業の新製品投入とコスト最適化を推進。
- グローバル展開とサステナビリティ対応も重視。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルはマテリアル（43%）、繊維・製品（31%）、ヘルスケア（14%）の3本柱で構成され、分散化によりリスク低減を図っています。
- 市場ニーズの変化に対応し、リサイクル素材や環境配慮型製品の開発も推進。
- 医療分野は高齢化社会を背景に中長期的な成長が期待される一方、薬価改定等の制度リスクも存在。
5. 技術革新と主力製品
- 炭素繊維・アラミド繊維などの高機能素材で世界的な競争力を持ち、自動車・航空機・産業資材用途で採用拡大。
- 医薬品・在宅医療機器では独自の製品開発力を有し、骨・関節、呼吸器、循環器領域に強み。
- リサイクルポリエステルやナノファイバーなど、環境対応型素材の開発も進行中。
6. 株価の評価
- 株価：1,119円（2025/6/6終値）
- EPS（会社予想）：62.27円
- PER（会社予想）：17.97倍（業界平均21.7倍より低い）
- BPS（実績）：2,238.40円
- PBR（実績）：0.50倍（業界平均1.0倍より低い）
→ 現在の株価は、業界平均と比較して割安な水準と評価される傾向が見られます。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：1,404円
- 年初来安値：1,076円
- 直近株価：1,119円（6/6終値）
- 50日移動平均：1,167.65円
- 200日移動平均：1,303.17円
→ 現在の株価は年初来安値圏に近く、移動平均線を下回る水準。直近は下落基調が続いています。
8. 財務諸表分析
- 売上高：1兆327億円（2024年度）、1兆55億円（2025年度、4.7%増）
- 営業利益：13.5億円（2024年度）、27.6億円（2025年度、25.7%増）
- 純利益：10.6億円（2024年度）、28.3億円（2025年度、7.9%増）
- ROE：6.7%（2025年度）、-2.9%（2024年度）
- 自己資本比率：40.6%（2025年度）、33.4%（2024年度）
- 営業キャッシュフロー：698億円（2025年度）
- D/Eレシオ：0.9倍（2025年度）
→ 2025年度は増収増益・財務体質改善が見られますが、利益水準は依然として低め。
9. 株主還元と配当方針
- 年間配当金：50円（2024年度・2025年度予想）
- 配当利回り：4.47%（2025/6/6時点）
- 配当性向：44.99%
- 自社株買い：自己株式保有あり（2.67%）
- 5年平均配当利回り：3.14%（現状は過去平均より高い）
→ 安定した配当政策を維持しています。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 直近の株価推移：5月下旬から下落基調。年初来安値圏に近い。
- 信用買残/売残：買残増加傾向、信用倍率は16.62倍と高水準。
- 出来高：直近10日平均で60万株超と流動性は十分。
- 機関投資家保有比率：57.46%
- ベータ値：0.35（市場全体に対して値動きは小さい）
→ 市場全体の下落や業績懸念が株価に影響していると考えられます。
11. 総評
帝人株式会社は、炭素繊維・アラミド繊維など高機能素材で世界的に高いシェアを持つ総合化学メーカーです。近年は収益性改善や事業ポートフォリオ改革を進めており、2025年度は増収増益・財務体質の改善が見られました。株価は業界平均と比較して割安な水準にあり、配当利回りも高めに推移しています。一方で、直近の株価は下落基調で、外部環境や市場動向の影響を受けやすい点には注意が必要です。今後は、グローバルな需要動向やヘルスケア事業の収益性、サステナビリティ対応の進捗が注目されます。
企業情報
| 銘柄コード | 3401 |
| 企業名 | 帝人 |
| URL | http://www.teijin.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 繊維製品 |
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