1. 企業情報
概要
東亜建設工業株式会社は、主に海上土木事業を中心とした総合建設会社です。国内外で港湾・空港・道路・鉄道・上下水道などのインフラ整備、浚渫・埋立・造成といった海洋土木、建築工事、都市・地域開発、地質調査、再生可能エネルギー施設の建設など幅広い分野で事業を展開しています。特に海外ODA案件や東南アジアでの事業展開にも積極的です。1910年代創業の伝統ある企業で、東京都新宿区に本社を置きます。
事業構成（2024年度）
- 国内土木：48%（営業利益率10%）
- 国内建築：30%（営業利益率5%）
- 海外：17%（営業利益率3%）
- その他：5%（営業利益率11%）
2. 業界のポジションと市場シェア
業界内ポジション
東亜建設工業は「海上土木」分野で国内有数の規模を誇ります。大手ゼネコン（鹿島、清水建設、大成建設等）と比較すると総合力では劣るものの、港湾・海洋土木の専門性で差別化しています。海外ODA関連工事や新興国インフラにも強みがあります。
競争優位性・課題
- 強み：海上土木の技術力、海外ODA案件の実績、安定した官公需比率
- 課題：国内建設市場の競争激化、資材・人件費高騰、海外リスク管理
3. 経営戦略と重点分野
経営ビジョン・戦略
- 「海洋土木を軸に、国内外の社会インフラ整備に貢献」
- 中期経営計画（2023～2025年度）では、国内外の大型インフラ案件受注拡大、建築分野の収益力強化、海外展開の推進、ESG対応の強化を掲げています。
重点施策
- 国内：防災・減災、物流施設、都市再開発等の受注拡大
- 海外：東南アジアを中心としたODA案件の獲得
- 技術開発：環境配慮型工法、再生可能エネルギー関連の施工技術開発
- 働き方改革・人材育成・ガバナンス強化
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルは、官公需・インフラ需要に支えられ安定性が高い
- 国内の防災・減災投資、海外インフラ需要が中長期的に見込まれる
- 市場ニーズの変化（環境・脱炭素、デジタル化）への適応も進めている
- 資材価格や人件費高騰、海外リスクへの対応が引き続き重要
5. 技術革新と主力製品
- 海上土木分野での浚渫・埋立・港湾工事の高度な施工技術
- 再生可能エネルギー施設（洋上風力発電基礎等）の建設技術
- 環境配慮型工法（低騒音・低振動工法、環境修復技術等）
- 近年は建築分野でも物流施設や大型再開発案件の実績を拡大
6. 株価の評価
- 現在株価：1,509円
- 予想EPS：157.53円
- 予想PER：9.58倍（業界平均14.0倍より割安水準）
- 実績BPS：1,342.70円
- 実績PBR：1.12倍（業界平均1.1倍並み）
評価
利益水準を考慮するとPERは業界平均より低く、PBRは平均並み。利益成長や配当利回りを考慮すると、株価はやや割安感がみられます。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：1,528円 年初来安値：1,067円
- 直近株価は1,500円台で推移し、高値圏に位置
- 50日移動平均：1,386円、200日移動平均：1,209円（いずれも上回る）
- 直近10日間の株価は1,490～1,520円のレンジで安定
- 信用買残は高水準（信用倍率22倍）だが、やや減少傾向
8. 財務諸表分析
売上・利益推移（過去4年）
| 決算期 | 売上高（百万円） | 営業利益（百万円） | 純利益（百万円） | EPS（円） |
|---|---|---|---|---|
| 2021/3 | 189,712 | 8,715 | 6,859 | 87.66 |
| 2022/3 | 219,814 | 9,874 | 7,385 | 95.70 |
| 2023/3 | 213,569 | 6,555 | 4,835 | 56.14 |
| 2024/3 | 283,852 | 17,231 | 10,517 | 127.73 |
| 2025/3（直近） | 330,472 | 20,621 | 14,908 | 187.94 |
- 売上・利益ともに大幅な増加傾向
- 営業利益率6.2%、ROE14.75%、自己資本比率35.6%と健全
- 営業キャッシュフローはマイナス（大型案件の進捗等による一時的要因）
9. 株主還元と配当方針
- 2025年3月期配当：1株76円（配当利回り5.04%、業界平均を上回る）
- 配当性向：40.44%（安定配当志向）
- 自己株式取得：2025年5月に4,200,000株を上限とする自己株買い決議
- 中間配当制度導入予定
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 直近1年で株価は約50%上昇（S&P500の上昇率を大きく上回る）
- 直近の株価は高値圏で推移し、出来高も安定
- 信用買残は高いが、やや減少傾向
- 配当利回りの高さや自己株買い実施などが投資家の関心を集めている
11. 総評
東亜建設工業は、海上土木を中心とした高い専門性と、国内外インフラ需要を背景に安定した成長を続けています。直近では売上・利益とも大幅に伸長し、財務指標も良好です。配当利回りの高さや自己株買いなど株主還元策も充実しており、株価は高値圏で推移しています。今後は国内外のインフラ投資動向や資材・人件費のコスト管理、海外リスクへの対応が引き続き注目されます。
企業情報
| 銘柄コード | 1885 |
| 企業名 | 東亜建設工業 |
| URL | http://www.toa-const.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 建設・資材 – 建設業 |
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