1. 企業情報
概要
保土谷化学工業は、1916年創業の中堅化学メーカーです。主力は有機EL材料を中心とした機能性色素で、その他にも機能性樹脂、基礎化学品、アグロサイエンス（農薬等）、物流関連事業を展開しています。サムスンが出資する韓国子会社を持ち、半導体やバイオ材料分野の育成にも注力しています。連結従業員数は942名、平均年齢41.6歳、平均年収は687万円です。
事業セグメント構成（2025.3期）
- 機能性色素：52%（営業利益率15%）
- 機能性樹脂：17%（同-1%）
- 基礎化学品：15%（同5%）
- アグロサイエンス：11%（同5%）
- 物流関連：4%（同11%）
2. 業界のポジションと市場シェア
業界内ポジション
保土谷化学は素材・化学業界の中堅企業であり、有機EL材料などの精密化学品に強みを持ちます。特に機能性色素分野では国内外で一定のシェアを有し、韓国サムスンとの関係も特徴的です。
競争優位性・課題
- 優位性：有機EL材料、トナー用電荷制御剤など高付加価値製品に強み。サムスン等大手との取引や、バイオ・半導体材料分野の育成も進行中。
- 課題：化学業界全体の市況変動、原材料高騰、海外競合との競争激化。機能性樹脂部門の収益性低下も課題。
3. 経営戦略と重点分野
経営ビジョン・戦略
- 「高機能・高付加価値材料を軸に、グローバル展開と新分野開拓を推進」
- 韓国子会社を活用したアジア市場展開、半導体・バイオ材料等の新規分野育成
- 既存事業の高収益化と新規事業の創出
中期経営計画の施策例
- 有機EL材料・半導体材料の研究開発強化
- 機能性色素・機能性樹脂のグローバル展開
- 環境対応型製品（バイオ材料等）の拡充
- 生産効率化・コスト削減
4. 事業モデルの持続可能性
収益モデル
主力の機能性色素・有機EL材料は、ディスプレイ・半導体・バイオ分野の需要増加により今後も一定の成長が期待されます。基礎化学品・アグロサイエンスは景気変動の影響を受けやすいものの、安定した収益源として機能しています。
市場変化への適応力
- 研究開発投資を継続し、新技術・新製品開発を推進
- 韓国子会社を活用した海外展開
- 環境・サステナビリティ対応製品の拡大
5. 技術革新と主力製品
技術開発の動向・独自性
- 有機EL材料、トナー用電荷制御剤、有機光導電体材料などで独自技術を保有
- バイオ材料や半導体材料など新分野への積極展開
主力製品・サービス
- 有機EL材料（ディスプレイ・照明向け）
- トナー用電荷制御剤
- ウレタン原料・接着剤
- 過酸化水素、除草剤・殺虫剤
6. 株価の評価
バリュエーション指標（2025年7月15日時点）
- 株価：1,463円
- 予想PER：7.75倍（業界平均20.4倍）
- 実績PBR：0.48倍（業界平均1.1倍）
- 予想EPS：188.76円
- 実績BPS：3,057.98円
評価
PER・PBRともに業界平均を大きく下回っており、バリュエーション面では割安感が見られます。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：1,938円
- 年初来安値：1,239円
- 直近株価：1,463円
- 50日移動平均：1,464.4円
- 200日移動平均：1,717.64円
現状
株価は年初来安値圏からやや回復したものの、50日・200日移動平均線を下回る水準で推移。直近10日間は1,450円前後でのもみ合いが続いており、上値の重さが見られます。
8. 財務諸表分析
売上・利益推移（百万円）
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 | EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2025/3 | 48,578 | 4,884 | 3,178 | 200.04 |
| 2024/3 | 44,261 | 3,958 | 2,480 | 156.32 |
| 2023/3 | 43,324 | 3,705 | 2,223 | 140.32 |
| 2022/3 | 41,879 | 6,425 | 3,251 | 205.34 |
- 売上は増加傾向、営業利益・純利益も2024/3以降回復傾向。
- 2022/3は一時的に営業利益が高かったが、直近は安定成長。
- ROE（実績）：6.60%、自己資本比率：60.9%と財務健全性は高い。
- 営業キャッシュフローはプラスだが、フリーキャッシュフローはややマイナス。
9. 株主還元と配当方針
- 予想配当利回り：3.42%
- 予想1株配当：50円
- 配当性向：約22.5%（過去5年平均配当利回り：1.71%）
- 自己株式保有：3.27%
- 配当は増配傾向。自社株買いも実施実績あり。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 直近株価は下落基調から横ばい推移
- 信用買残は減少傾向、信用倍率は高水準（15.92倍）でやや需給悪化
- 52週変動率は-44.68%と大きく下落
- 機関投資家・金融機関の保有比率も一定（インサイダー18%、機関38%）
11. 総評
保土谷化学工業は、有機EL材料を中心とした高付加価値化学品に強みを持つ中堅化学メーカーです。売上・利益ともに直近は回復傾向にあり、財務基盤も堅固です。PER・PBRは業界平均を大きく下回っており、バリュエーション面で割安感が見られます。配当利回りも高めで、株主還元姿勢も一定評価できます。一方で、株価は長期下落基調の中で横ばい推移が続いており、信用需給にはやや注意が必要です。今後は有機EL・半導体・バイオ材料分野での成長加速が注目されます。
企業情報
| 銘柄コード | 4112 |
| 企業名 | 保土谷化学工業 |
| URL | http://www.hodogaya.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 素材・化学 – 化学 |
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