1. 企業情報

日本碍子株式会社は、1919年設立の歴史ある企業で、東京証券取引所プライム市場に上場しています。祖業である碍子(がいし)の世界最大手として知られ、そのセラミック技術を基盤に多角的な事業展開を行っています。
主な事業セグメントは以下の3つです。
* エンバイロメント事業: 自動車排ガス浄化用部品(HONEYCERAM、DPF、NOxセンサーなど)、化学工業用耐蝕機器、液・ガス用膜分離装置、燃焼装置・耐火物などを提供しています。自動車産業の環境規制強化に対応する製品が主力です。
* デジタルソサエティ事業: 半導体製造装置用製品(セラミックヒーター、静電チャックなど)、電子工業用製品(圧電マイクロアクチュエーター、EnerCeraなど)、ベリリウム銅製品、金型製品などを展開しています。半導体や電子部品の高機能化に対応する製品群です。
* エネルギー&インダストリー事業: 電力貯蔵用NAS電池、がいし、各種電力設備(送電・変電・配電用)などを手掛けています。再生可能エネルギーの導入拡大やインフラ整備に貢献する事業です。

同社は「森村グループ」の一員であり、セラミックス技術を核とした幅広い産業分野で製品を提供しています。

2. 業界のポジションと市場シェア

日本碍子は、その祖業であるがいしにおいて世界最大手の地位を確立しています。長年にわたり培ってきた高度なセラミック技術を競争優位性の源泉とし、多様な製品を市場に供給しています。
* 競争優位性: 自動車排ガス浄化用ハニカムフィルター「HONEYCERAM」は、世界的な環境規制強化の流れの中で高いシェアを持っています。また、半導体製造装置用セラミックスや、独自のNAS電池(ナトリウム硫黄電池)など、特定の高機能セラミックス製品分野でも競争力を持っています。高い技術力とグローバルな顧客基盤が強みです。
* 課題: エンバイロメント事業においては、将来的な内燃機関ビジネスの漸減を見据えた新製品開発が課題となります。また、エネルギー&インダストリー事業のNAS電池は、海外案件の遅延により在庫評価損を計上するなど、立ち上げに課題を抱えていることが決算短信で示されています。

3. 経営戦略と重点分野

日本碍子は、中期経営計画において、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しています。
* ビジョン・戦略:
* 2030年に「新事業化品売上高1,000億円」を目標に掲げ、利益成長を目指しています。
* ROE10%以上の水準を目指しており、これを達成することで持続的な企業価値向上を図る方針です。
* 具体的な施策・重点分野:
* 既存コア事業の拡大: エンバイロメント事業では新製品開発・量産準備、デジタルソサエティ事業では半導体、電子部品の高機能化・市場拡大に対応するための次世代製品開発や設備投資を推進しています。
* 新規事業への注力: NAS電池の収益化を目指し、BASF社との体制強化を進めています。
* M&Aによる競争力強化: ドイツのDeutsche KNM GmbH社の株式取得を通じて、事業競争力の強化を図る方針を示しています。
* 株主還元: ROEと連動した配当方針を掲げ、積極的な株主還元にも努めます。

4. 事業モデルの持続可能性

セラミック技術を核に多角化された事業ポートフォリオを持つことで、特定の産業依存度を低減し、持続可能性を高めています。
* 収益モデル: 環境規制対応品、デジタルデバイス向け高機能部品、インフラ向け電力設備といった、社会のニーズ変化に合わせた変動に対応できる事業構造です。主要な収益源は、自動車排ガス浄化用製品を中心としたエンバイロメント事業と、成長著しい半導体・電子部品関連のデジタルソサエティ事業です。
* 市場ニーズへの適応力:
* 自動車業界のEV化の進展に対応し、電動車向けの新製品開発を進めることで、将来的な内燃機関ビジネスの縮小リスクに備えています。
* AIやデータセンター投資の拡大による半導体需要の増加を、デジタルソサエティ事業の成長機会と捉え、新たな製品開発や設備投資を活発に行っています。
* 世界的な再生可能エネルギー導入や送配電網の強化の動きは、NAS電池やがいしといったエネルギー&インダストリー事業の需要増に繋がるものと考えられます。

5. 技術革新と主力製品

日本碍子は、セラミック分野における長年の研究開発により、独自の技術と製品を多数保有しています。
* 技術開発の動向と独自性:
* ファインセラミックス技術: 高い耐熱性、耐食性、絶縁性、機械的強度を持つセラミックス材料を、幅広い分野に応用しています。
* MEMS(微細加工)技術: 圧電マイクロアクチュエーターなどの超小型精密デバイスの開発に活かされています。
* NAS電池技術: 大容量電力貯蔵システムとして、再生可能エネルギーの導入拡大に不可欠な技術とされています。
* 収益を牽引している製品・サービス:
* HONEYCERAM: 自動車の排ガス浄化触媒の担体として、世界中で広く採用されています。
* 半導体製造装置用製品: 半導体産業の需要拡大に伴い、セラミックヒーターや静電チャックなどの需要が増加し、デジタルソサエティ事業の収益を大きく牽引しています。
* (課題を抱えつつも)NAS電池: 長時間の電力貯蔵を可能にする大規模蓄電システムとして、将来的には収益貢献が期待されています。

6. 株価の評価

現在の株価1,841.5円に対する各種指標に基づいた評価は以下の通りです。
* EPS(会社予想): 187.65円
* PER(会社予想): 9.81倍(1,841.5円 ÷ 187.65円)
* 業界平均PER18.3倍と比較すると、日本碍子の予想PERは低い水準にあり、相対的に割安感がある可能性があります。
* BPS(実績): 2,455.87円
* PBR(実績): 0.75倍(1,841.5円 ÷ 2,455.87円)
* 業界平均PBR1.4倍と比較すると、日本碍子のPBRは低い水準にあり、資産価値に対して株価が割安であると評価される可能性があります。

ROE(実績)7.76%は中期経営計画で掲げている10%には届いていませんが、利益成長により改善傾向にあります。

7. テクニカル分析

直近の株価推移と各種移動平均線を参照すると、以下の傾向が見られます。
* 年初来高値・安値: 年初来高値は2,010円、年初来安値は1,540円です。現在の株価1,841.5円は、このレンジの中央よりやや上の水準に位置しています。
* 52週高値・安値: 52週高値は2,155円、52週安値は1,539.50円です。現在の株価は、52週のレンジで見ても中位水準より少し高い位置です。
* 移動平均線:
* 50日移動平均(1,783.58円)を上回っており、短期的な株価は上昇トレンドにある可能性があります。
* 200日移動平均(1,873.03円)を下回っており、中長期的な株価は下降トレンドにある可能性があります。
* 直近10日間の推移: 1,800円台で推移し、比較的安定しており、日次の値動きは小幅ながら緩やかな上昇傾向が見られます。

総合的に見ると、現在の株価は最高値圏からは離れていますが、年初来安値からは上昇しており、短期的な上向きの勢いが継続するかが注目されます。

8. 財務諸表分析

過去数年分の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書から、以下の傾向が読み取れます。

売上と利益の傾向(損益計算書)

  • 売上高: 過去数年で着実に増加しており、2025年3月期には6,195億円と過去最高を更新しました。為替の円安効果に加え、半導体製造装置用製品の物量増加が寄与しています。
  • 営業利益: 2022年3月期に835億円を記録した後、一時的に減少しましたが、2025年3月期は812億円と大幅に回復し、過去最高水準に近づいています。為替効果とデジタルソサエティ事業の増益が貢献しました。
  • 当期純利益: 2022年3月期の708億円がピークでしたが、2024年3月期に405億円まで減少した後、2025年3月期は549億円と大きく回復しました。

財務安全性(貸借対照表)

  • 自己資本比率: 2025年3月期は63.0%と、堅実な財務基盤を維持しており、前期から改善しています。
  • 流動比率: 3.74と高く、短期的な支払い能力も非常に優れていると考えられます。
  • 有利子負債: 総負債に占める有利子負債の割合を示すTotal Debt/Equityは34.67%と低く、負債依存度が低い健全なバランスシートです。

キャッシュフロー(キャッシュフロー計算書)

  • 営業活動によるキャッシュフロー: 安定して健全なプラスのキャッシュフローを創出しており、本業で現金を稼ぐ力が確認できます(2025年3月期は966億円の収入)。
  • 投資活動によるキャッシュフロー: 設備投資のために支出が上回っており(2025年3月期は550億円の支出)、戦略的な成長投資を行っていることが伺えます。
  • フリーキャッシュフロー: 営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたレバードフリーキャッシュフローは544億円と堅調にプラスを維持しており、株主還元や新規事業投資などの余力があることを示しています。

収益性と効率性

  • ROE(自己資本利益率): 2025年3月期は7.8%と前期から改善しましたが、中期経営計画で目標とする10%にはまだ達していません。
  • 売上高営業利益率: 2025年3月期は13.1%に向上しており、収益性が改善していることが示されています。

9. 株主還元と配当方針

日本碍子株主還元に対して積極的な方針を示しています。
* 配当利回り: 会社予想で3.58%と、現在の株価に対して比較的高い配当利回りを提供しています。
* 1株配当: 会社予想の年間配当は66.00円です。2025年3月期の実績年間配当は60円(中間30円、期末30円)であり、2026年3月期には増配予想となっています。
* 配当性向: 会社予想の配当性向は32.32%であり、中期経営計画で掲げている「配当性向30%程度」と整合しています。
* 自社株買い: データには自己株式が保有されていること(自社(自己株口) 1.63%)が示されており、自社株買いも株主還元策として活用している可能性があります。
* 株主還元方針: ROE10%以上の水準を目指し、配当性向30%程度および純資産配当率3%程度を中期的な目途とする積極的な株主還元に取り組むとしています。

10. 株価モメンタムと投資家関心

  • 株価の直近の変動傾向: 直近10日間の株価は1,800円台で比較的安定して推移し、緩やかな上昇傾向が見られます。日中の値幅制限内での取引が行われています。
  • 信用取引動向:
    • 信用買残は前週比で減少しており、個人の買い圧力は低下傾向にある可能性があります。
    • 信用売残も減少しており、空売りの解消が進んでいる可能性があります。
    • 信用倍率は10.51倍と、買い残が売り残を大きく上回っていますが、前週比で買残の減少が売り残の減少を上回っています。
  • 株価への影響を与える要因:
    • 好材料: 半導体関連のデジタルソサエティ事業の好調な業績、全体の売上高・利益の過去最高水準への回復、堅実な自己資本比率といった財務の健全性、高い配当利回りと、積極的な株主還元方針は投資家にとってのポジティブな要因となりえます。
    • 懸念材料: 環境事業におけるEV化の進展に伴う中長期的な構造変化や、NAS電池事業の収益化の遅延、また為替変動リスクや地政学的な不透明感といったマクロ要因は、株価に影響を与える可能性があります。特に、2026年3月期の連結業績予想では、営業利益、経常利益が減益を見込んでいる点には注意が必要です。

11. 総評

日本碍子は、祖業のがいし事業に加え、高度なセラミックス技術を応用した多角的な事業展開により、堅実な経営を行っています。特に、自動車排ガス浄化用部品や、半導体製造装置用製品が収益の柱となっており、デジタルソサエティ事業の成長が足元の業績を牽引しています。
財務面では、自己資本比率63.0%と非常に健全な財務体質を保持し、安定した営業キャッシュフローを生み出しています。売上高は過去最高を更新し、利益も大幅に回復傾向にありますが、エネルギー&インダストリー事業のNAS電池は依然として赤字であり、今後の収益化が課題です。
株価評価においては、予想PER9.81倍、実績PBR0.75倍と、ガラス・土石製品業界の平均と比較して割安な水準にある可能性があります。配当利回りは3.58%と高く、配当性向も中期経営計画の目標に沿っており、株主還元への意識も高いと考えられます。
株価は中長期的な低迷期を経験しましたが、直近では半導体関連事業の好調や増益予想を受けてゆるやかな回復基調にあります。ただし、次期の利益予想が減益となっている点、NAS電池事業の今後の動向、グローバル経済の不確実性等は注視が必要です。


企業情報

銘柄コード 5333
企業名 日本碍子
URL http://www.ngk.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 建設・資材 – ガラス・土石製品

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By ジニー

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