1. 企業情報
ＭＯＲＥＳＣＯは、1958年設立の独立系化学品メーカーです。特殊潤滑油や合成潤滑油、ホットメルト接着剤、素材などが事業の4本柱となっています。高真空ポンプ油、難燃性作動油、切削油剤、ハードディスク表面潤滑剤といった高機能な専門化学製品を開発・製造・販売しており、自動車、鉄鋼、建設材料、食品、電子機器、原子力関連など多岐にわたる産業分野で応用されています。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は独立系の化学品メーカーとして、特に自動車向けなどの特殊潤滑油に強みを持っています。提供データからは具体的な市場シェアは不明ですが、幅広い産業に製品を提供することで、特定市場への依存を分散していると考えられます。業界内での競争優位性としては、特定の用途に特化した高機能製品の開発力が挙げられます。一方で、自動車産業の生産動向や国際的な原材料価格の変動、為替レートの変動（円高進行）などが業績に影響を与える可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
提供データに具体的な中期経営計画の詳細は記載されていませんが、決算短信のセグメント情報からは、国内外での事業拡大を継続していることがうかがえます。特に、日本国内での特殊潤滑油や素材部門の販売増加、中国や東南/南アジア市場での特殊潤滑油やホットメルト接着剤の拡販が売上成長に寄与しています。収益面では、為替変動が経常利益や純利益に影響を与えることがあるため、その動向を注視する必要があると考えられます。
4. 事業モデルの持続可能性
ＭＯＲＥＳＣＯの事業モデルは、多岐にわたる産業分野（自動車、鉄鋼、電子機器、医療・医薬、エネルギーなど）に高付加価値な特殊化学品を提供することで、特定の産業動向に左右されにくい構造を目指していると見られます。技術力を要する特殊機能性化学品分野に強みを持つ点は、持続的な収益源に繋がりやすい要素です。一方で、世界経済の景気変動、資源価格の高止まり、地政学リスク、主要顧客である自動車産業の動向は、事業の持続性に影響を与える外部要因となります。
5. 技術革新と主力製品
同社の主力製品は「特殊潤滑油」「合成潤滑油」「素材」「ホットメルト」の4本柱です。具体的な製品ラインナップには、高真空ポンプ油、難燃性作動油、ダイカスト潤滑剤、切削油剤、ハードディスク表面潤滑剤、そしてホットメルト接着剤などがあります。また、有機デバイスシーラントやガス・水蒸気透過率分析装置、有機薄膜太陽電池といった新領域への展開も行っており、継続的な技術開発と製品ポートフォリオの拡充を図っていると考えられます。これらが収益を牽引する重要な要素となっています。
6. 株価の評価
現在の株価は1,248.0円です。
– PER（株価収益率）: 会社予想EPS 141.76円に基づくと、PERは約8.80倍です。これは、同業他社の業界平均PER（12.1倍）と比較すると低い水準にあります。
– PBR（株価純資産倍率）: 実績BPS 2,294.15円に基づくと、PBRは約0.54倍です。これは、同業他社の業界平均PBR（0.7倍）を下回っており、PBR1倍未満のいわゆる「低PBR」企業に該当します。
これらの指標から見ると、現在の株価は市場や業界平均と比較して割安感がある可能性があると考えられます。
7. テクニカル分析
現在の株価1,248.0円は、年初来安値1,045円からは上昇していますが、年初来高値1,400円からは下落しています。直近10日間の株価は1,218円から1,250円の範囲で推移しており、大きな方向感は見られません。50日移動平均線（1,214.48円）よりは上にありますが、200日移動平均線（1,239.15円）とはほぼ同水準にあります。過去52週間の株価変化率は-8.15%であり、同期間のS&P500の上昇率（+12.97%）と比較すると、市場全体に対して相対的に株価は劣勢であったと言えます。
8. 財務諸表分析
- 売上: 過去数年間で売上高は増加傾向にあります（2022年2月期27,300百万円から2025年2月期34,374百万円）。直近の2026年2月期第1四半期も増収を記録しています。
- 利益: 営業利益は期によって変動があるものの、直近12か月では増加傾向を示しています。しかし、純利益は減少しており、特に2026年2月期第1四半期では、売上高・営業利益が増加したにもかかわらず、為替差損の影響で経常利益、純利益は減少しています。
- 収益性: ROE（実績4.85%、過去12ヶ月4.88%）は5%を下回る水準です。ROA（過去12ヶ月2.31%）も同様に低い水準です。
- 安全性: 自己資本比率は56.6%と健全な水準を維持しており、流動比率も2.05倍と短期的な支払い能力は高いです。有利子負債も総資本対比で20.46%と過度な負債を抱えていないことが示唆されます。
- キャッシュフロー: 営業キャッシュフローはプラスで推移しており、安定した事業活動を示しています。
9. 株主還元と配当方針
同社は、年間配当として会社予想で45.00円を提示しており、現在の株価に基づく配当利回りは約3.61%です。配当性向は40.74%であり、業績に応じた安定的な配当を志向していると考えられます。提供データには、市場からの大規模な自社株買いに関する明確な記載はありません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は狭いレンジでの推移であり、強い上昇または下降のモメンタムは確認されません。信用買残は40,700株、信用売残は0株となっており、信用需給は買い方に偏っている状況です。株価に影響を与える要因としては、為替変動（特に円高）、原材料価格の動向、中国経済の回復状況、ウクライナ情勢や中東情勢といった地政学リスク、そして主要顧客である自動車産業の生産台数などの需要動向が挙げられます。
11. 総評
ＭＯＲＥＳＣＯは、多岐にわたる産業向けに特殊潤滑油やホットメルト接着剤などの高機能化学製品を提供する独立系メーカーです。売上は堅調に推移しているものの、利益は為替変動などの外部要因の影響を受けることがあります。財務基盤は健全であり、自己資本比率や流動比率は安定しています。株価面では、PERおよびPBRが業界平均を下回っており、純資産と比較しても割安感がある可能性があります。株主還元としては、比較的高水準の配当利回りが維持されています。今後の株価は、世界経済の動向、特に自動車産業や為替の変動、原材料価格の安定性が影響を与えるものと考えられます。
企業情報
| 銘柄コード | 5018 |
| 企業名 | MORESCO |
| URL | http://www.moresco.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | エネルギー資源 – 石油・石炭製品 |
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