カイオム・バイオサイエンス (4583) 企業分析レポート

個人投資家の皆様へ

1. 企業情報

カイオム・バイオサイエンスは、理化学研究所発の創薬ベンチャー企業です。独自の抗体作製技術「ADLib®システム」とそのヒト化技術「Human ADLib®システム」を基盤とし、主に以下の二つの事業を展開しています。
* 創薬事業: 未だ十分な治療法がない難病(アンメットニーズ)に対する抗体医薬品候補の開発を行っています。開発した医薬品候補を大手製薬会社などにライセンス供与し、開発進捗に応じたマイルストン収入や、上市後のロイヤリティを主な収益源とします。肝臓がんや肺がん、悪性中皮腫など、複数の疾患領域でパイプライン(開発中の医薬品候補)が臨床試験段階に進んでいます。
* 創薬支援事業: 独自の抗体作製技術やタンパク質精製技術を活用し、大学、研究機関、診断薬メーカー、製薬会社といった顧客からの受託サービスを提供しています。これにより、顧客の創薬研究開発を支援しています。

同社は2005年2月8日に設立され、東京都渋谷区に本社を置いています。従業員の平均年齢は44.8歳、平均年収は7,370千円です。

2. 業界のポジションと市場シェア

カイオム・バイオサイエンスは、医薬品セクターのバイオテクノロジー分野に位置し、特に抗体医薬品の開発及び医薬研究支援サービスに特化しています。

競争優位性:

同社の最大の強みは、理化学研究所が開発した独自の抗体作製技術「ADLib®システム」です。これは、特定の抗原に対して標的特異性の高い抗体を効率的に作製できる技術であり、他社との差別化要因となります。また、創薬事業だけでなく創薬研究支援事業を展開することで、創薬事業の研究開発費を補完し、安定的な収益源を確保しようとしている点が特徴です。創薬支援事業は直近で売上・利益を伸ばしており、高い利益率を維持しています。

課題:

創薬事業は、多額の研究開発費と長期間を要し、成功確率は低いというリスクを伴います。現在、同社は継続的に赤字を計上しており、創薬パイプラインの成功が事業の将来性を大きく左右します。また、抗体医薬品開発の分野は競争が激しく、常に技術革新や他社の動向に注目する必要があります。

3. 経営戦略と重点分野

決算短信によると、同社の経営戦略は、独自の抗体技術を最大限に活用し、事業の成長と収益性向上を図ることにあります。

具体的な施策・重点分野:

  • 創薬事業:
    • 臨床開発の推進を最優先課題とし、開発中のパイプラインであるCBA-1205(肝臓がん、メラノーマ、小児がん)およびCBA-1535(悪性中皮腫、肺がん、トリプルネガティブ乳がん)の臨床試験を着実に進めること。
    • 開発中のパイプラインの導出可能性を最大化し、IDD(In-house Drug Discovery)ビジネスモデルを通じて早期の収益化を目指すこと。
    • 新たなパイプラインの拡充と収益化機会の追求。
  • 創薬支援事業:
    • 独自のADLib®システムを活用した技術サービスを継続的に提供し、安定的な収益基盤を確保すること。
    • 新規顧客の獲得を進め、顧客基盤の拡大を図ること。2025年12月期には売上高500百万円を目指す計画です。

これらの戦略を通じて、アンメットニーズの高い疾患に対し画期的な治療薬を提供しつつ、企業価値の向上を目指しています。

4. 事業モデルの持続可能性

カイオム・バイオサイエンスの事業モデルは、「創薬事業」による将来的な大きな収益と、「創薬支援事業」による足元の安定収益の組み合わせに特徴があります。
* 収益モデル: 創薬事業はライセンス導出に伴う契約一時金、マイルストン収入、および上市後のロイヤリティを将来の主な収益源とします。創薬支援事業は、抗体作製受託サービスなどによる役務収益が中心です。
* 市場ニーズへの適応: バイオ医薬、特に抗体医薬品の研究開発ニーズは堅調であり、最近注目が高まっているADC(抗体薬物複合体)などのトレンドにも同社の抗体技術は対応可能です。創薬支援事業の堅調な成長は、創薬事業における多額の研究開発投資を部分的に補填し、事業全体の持続可能性を高める要因となっています。
* 持続可能性の課題: 創薬事業の成功は依然として不確実性が高く、多額な研究開発費が継続的に必要となるため、資金調達の状況やパイプラインの進捗・成功が事業の持続性に大きく影響します。

5. 技術革新と主力製品

技術開発の動向と独自性:

同社の技術的核は、独自の「ADLib®システム」とその発展形である「Human ADLib®システム」です。これらのシステムは、高い特異性を持つモノクローナル抗体を効率的に作製することを可能にし、低分子医薬品では解決が難しい疾患領域へのアプローチを可能にしています。

収益を牽引している製品・サービス:

現時点では、創薬支援事業が安定的な収益源となっています。抗体作製やタンパク質精製などの受託サービスが、新規顧客獲得により売上高とセグメント利益を増加させており、高い利益率を維持しています。創薬事業のパイプラインはまだ開発段階であり、今後の臨床試験の進捗やライセンス導出が実現すれば、将来的に大きな収益の柱となる見込みです。主要なパイプラインには、肝臓がん治療薬のADCT-701, CBA-1205、悪性中皮腫や乳がん治療薬のCBA-1535などがあります。

6. 株価の評価

  • 現在の株価: 146.0円
  • EPS(1株当たり利益): 会社予想は公表されておらず、過去12か月の実績では-17.53円と赤字計上です。このため、PER(株価収益率)は算出できません。
  • BPS(1株当たり純資産): 直近四半期実績で25.99円(各種指標では25.84円)です。
  • PBR(株価純資産倍率): 実績PBRは5.65倍です。

現在の株価146.0円は、1株当たり純資産(BPS)に対してPBRが5.65倍と比較的高い水準にあります。これは、現時点の収益性や資産価値よりも、同社が持つ独自の創薬技術や将来のパイプライン成功への期待が株価に織り込まれている可能性を示しています。グロース市場に上場するバイオベンチャー企業では、研究開発段階にあるため赤字が先行し、将来の成長性への期待からPBRが高くなる傾向が見られます。

7. テクニカル分析

直近10日間の株価は143円から157円の範囲で推移しており、本日終値は146円です。
年初来高値は294円、年初来安値は111円です。現在の株価146円は、年初来安値(111円)に比較的近い水準にあります。
移動平均線を見ると、50日移動平均線が147.28円、200日移動平均線が167.85円であり、現在の株価はこれら両方の移動平均線を下回っています。これは、短期および中期的に株価が下降トレンドにあることを示唆しています。全体的に見ると、株価は年初来の高値と比較して安値圏に近い位置にあるという見方ができます。

8. 財務諸表分析

売上と利益:

  • 売上高: 過去12か月の売上高は780,809千円(約7.8億円)であり、2022年以降増加傾向にあります。特に、2025年12月期第1四半期の売上高は前年同期比7.0%増の138,699千円と伸びており、創薬支援事業がその成長を牽引しています。
  • 利益: 同社は過去数年にわたり営業損失と純損失を計上し続けています。過去12か月の営業損失は約10.3億円、純損失は約10.2億円です。しかし、2025年12月期第1四半期では、創薬事業における臨床開発費用の計上額が前年同期よりも減少したことで、営業損失、経常損失、四半期純損失いずれも赤字幅が縮小しました。

キャッシュフローと財務体質:

  • キャッシュ: 直近四半期末時点の現金および預金は1,820百万円(約18.2億円)です。バイオベンチャーにとって、研究開発投資を継続するための手元資金は重要な要素となります。
  • 自己資本比率: 直近四半期末時点の自己資本比率は79.5%と高く、財務の安全性は良好です。総負債に対する自己資本の比率も高く、有利子負債は少ない状態です。
  • ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率): 継続的な純損失のため、ROEは-66.89%(過去12か月)、ROAは-30.73%(過去12か月)と、いずれもマイナスを計上しています。

財務傾向のまとめ:

売上高は成長している一方で、創薬事業の研究開発への先行投資により継続的な赤字となっています。しかしながら、直近の決算では赤字幅が縮小し、創薬支援事業が安定的な収益源として貢献しています。自己資本比率が高いことから、当面の財務的な安定性は保たれていると考えられますが、将来的な創薬事業の成功と安定的な黒字化が、長期的な財務健全性を確立する上で重要となります。

9. 株主還元と配当方針

カイオム・バイオサイエンスは、現在までのところ株主への配当を実施していません。会社予想の配当利回りは0.00%、1株配当も0.00円です。これは、創薬フェーズの企業であり、事業が継続的に赤字であるため、得られた資金は研究開発への再投資に優先的に充当されているためと考えられます。自社株買いなどの株主還元策についても、現在のところは言及されていません。
将来的に事業が安定的に黒字化し、収益基盤が確立された場合には、配当を含めた株主還元策が検討される可能性はあります。

10. 株価モメンタムと投資家関心

  • 株価の変動傾向: 直近の株価は、比較的レンジ内で上下しながらも、やや下降傾向にあります。出来高は数十万株から百万株超で推移しており、一定の流動性があることが分かります。
  • 信用取引状況: 信用買残が6,621,700株と比較的多く、信用売残は0株です。信用買残が多いことは、将来的な株価上昇を期待して買い持ちしている投資家が多いことを示唆する一方で、今後の株価の動向次第では売り圧力となる可能性もはらんでいます。
  • 株価への影響要因:
    • 創薬事業の進捗: 臨床試験の段階移行、有望な治験結果の発表、他社とのライセンス導出契約の締結などが、株価に最も大きなインパクトを与える要因となります。
    • 創薬支援事業の成長: 安定的な収益源としての創薬支援事業の継続的な成長と利益貢献も、中長期的には企業価値評価に影響を与える可能性があります。
    • 資金調達: 新たな研究開発資金の調達に関するニュースも、株価に影響を与える要因となります。
    • 市場テーマ: バイオ・ヘルスケアセクター全体の動向や、特定の創薬技術(ADCなど)への投資家からの注目度も株価に影響を与えることがあります。
    • 決算発表: 次回の決算発表は2025年8月12日から18日の期間に予定されており、業績進捗や事業計画の発表は投資家の関心を集める主要なイベントとなります。

11. 総評

カイオム・バイオサイエンスは、理化学研究所発の創薬ベンチャーとして、独自の抗体作製技術を中核に据え、画期的な医薬品の開発を目指す企業です。

ポジティブな点:

  • 唯一性のある強力な抗体作製技術「ADLib®システム」を有しています。
  • 複数の抗体医薬品候補が臨床試験段階に進み、将来的な大型収益の可能性を秘めています。
  • 創薬支援事業が安定的に成長し、赤字が続く創薬事業の研究開発費を一部補填する役割を担い、事業全体の持続可能性を高めています。
  • 自己資本比率が高く、財務の安全性は比較的良好です。
  • 直近の決算では、赤字幅が縮小傾向にあります。

注目すべき点・課題:

  • 創薬事業は多額な先行投資が必要であり、現時点では継続的に赤字を計上しています。
  • パイプラインの成功は不確実性が高く、開発の遅延や失敗は企業業績に大きな影響を与えます。
  • 株価はPBRが高く、将来の期待が織り込まれている可能性があります。
  • 株価は年初来高値から大きく下落し、安値圏に近い水準にあります。

総じて、カイオム・バイオサイエンスは、将来の大きな成長を期待されるバイオベンチャー企業であり、独自の技術と有望なパイプラインが魅力です。しかし、その収益化にはまだ時間を要するフェーズにあり、創薬事業の進捗状況や資金繰り、創薬支援事業の持続的な成長が今後の企業価値を左右する重要な要素となるでしょう。投資を検討される際には、これらの要因を慎重に評価することが重要です。


企業情報

銘柄コード 4583
企業名 カイオム・バイオサイエンス
URL https://www.chiome.co.jp
市場区分 グロース市場
業種 医薬品 – 医薬品

関連情報

証券会社


このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.1)」によって自動生成されました。

本レポートは、不特定多数の投資家に向けた一般的な情報提供を目的としており、個別の投資ニーズや状況に基づく助言を行うものではありません。記載されている情報は、AIによる分析や公開データに基づいて作成されたものであり、その正確性、完全性、適時性について保証するものではありません。また、これらの情報は予告なく変更または削除される場合があります。

本レポートに含まれる内容は、過去のデータや公開情報を基にしたものであり、主観的な価値判断や将来の結果を保証するものではありません。特定の金融商品の購入、売却、保有、またはその他の投資行動を推奨する意図は一切ありません。

投資には元本割れのリスクがあり、市場状況や経済環境の変化により損失が発生する可能性があります。最終的な投資判断は、すべてご自身の責任で行ってください。当サイト運営者は、本レポートの情報を利用した結果発生したいかなる損失や損害についても一切責任を負いません。

なお、本レポートは、金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではなく、参考資料としてのみご利用ください。特定の銘柄や投資行動についての判断は、個別の専門家や金融機関にご相談されることを強くお勧めします。

By ジニー

ジニーは、Smart Stock NotesのAIアシスタントです。膨大なデータとAIの力で、企業や市場の情報をわかりやすくお届けします。投資に役立つ参考情報を提供することで、みなさまが安心して自己判断で投資を考えられるようサポートします。