1. 企業情報
株式会社アートネイチャーは、1965年に設立され、1967年に法人化された、毛髪製品の製造・販売を手掛ける企業です。男性向け、女性向けのウィッグ（かつら、ヘアピース）のほか、ヘアケア製品や関連サービスを提供しています。特に、オーダーメイド製品を主力とし、国内の男性用毛髪製品市場では首位、女性向け市場では2位のポジションにあります。
連結事業の構成は、2025年3月期実績で男性向け事業が売上高の53%（セグメント利益比率63%）、女性向け事業が29%（同63%）、女性向け既製品事業が14%（同81%）を占めています。
2. 業界のポジションと市場シェア
アートネイチャーは、国内毛髪関連市場において、男性用で首位、女性向けで2位という有力な市場ポジションを確立しています。日本の高齢化社会の進展、定年延長、女性の社会進出、アンチエイジングへの関心の高まりなどにより、毛髪関連市場の需要は拡大が見込まれています。一方で、美容業界を含む隣接業界からの新規参入や同業他社との競合が厳しさを増していることが課題として挙げられています。
3. 経営戦略と重点分野
アートネイチャーは、中期経営計画「アートネイチャーAdvanceプラン」を策定しており、2024年3月期を初年度とする3年間で「毛髪業界トップブランド」としての地位を確立し、「美と健康の新領域事業の拡充」を目指しています。
具体的な施策としては、男性向け事業においては効果的な広告宣伝と顧客定着策の推進、女性向け事業では来店顧客数の増加によるリピート売上向上に注力しています。また、女性向け既製品事業では、新規出店や販促活動、新商品販売が好調とされ、事業を牽引しています。
2026年3月期には、連結売上高47,623百万円、売上高経常利益率6.0%、ROE 5.5%の達成を目標に掲げていますが、2025年3月期の業績は売上は微増ながら利益面で減益となり、計画との乖離が見られます。
4. 事業モデルの持続可能性
アートネイチャーの事業モデルは、オーダーメイドウィッグや既製品ウィッグ、ヘアケア製品などの提供を通じて、顧客の毛髪に関する悩みに応えることにあります。高齢化やアンチエイジング志向の高まりといった社会構造の変化が追い風となる一方で、市場の成熟化、競合の激化、そして原材料価格の高騰や消費マインドの減退といった外部環境の変化への適応力が持続可能性のカギとなります。中期経営計画での「新領域事業の拡充」は、事業の多角化と収益基盤の強化を目指すものと考えられます。
5. 技術革新と主力製品
提供された情報から具体的な技術革新に関する詳細な記述はありませんが、「注文生産品が主力」であることから、顧客一人ひとりのニーズに合わせた製品を高い品質で提供できる製造・提案力が強みと考えられます。主要な収益を牽引している製品・サービスは、男性向けのオーダーメイドウィッグと、女性向けのオーダーメイドウィッグ及び既製品ウィッグです。これら主力製品と共に、ヘアケア商品も展開しています。
6. 株価の評価
現在の株価は816.0円です。
* PER（株価収益率）: 会社予想EPS（2026年3月期）44.97円に基づくと、PERは 816.0円 ÷ 44.97円 = 約18.17倍です。業界平均PERが10.0倍と比較すると、割高な水準に見えます。
* PBR（株価純資産倍率）: 実績BPS（2025年3月期）820.93円に基づくと、PBRは 816.0円 ÷ 820.93円 = 約1.00倍です。業界平均PBRが0.5倍と比較すると割高な水準に見える一方、株価が1株当たり純資産とほぼ同程度の評価となっています。
来期の会社予想EPSが今期実績EPS（25.25円）から大きく改善する前提でのPERであることを考慮すると、仮に今期実績EPSで計算した場合のPERは816.0円 ÷ 25.25円 = 約32.36倍となり、現在の株価は将来の利益成長への期待を含んでいると見られます。
7. テクニカル分析
現在の株価816.0円は、年初来高値828円に近く、52週高値867円にも比較的近い水準にあります。直近10日間の株価推移を見ると、7月10日の754円から堅調に上昇しており、株価は50日移動平均線（749.08円）と200日移動平均線（785.33円）を上回っています。このことから、テクニカル的には上昇トレンドにあるように見えますが、年初来高値付近で推移していることから、比較的高値圏に位置していると評価できます。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年間は400億円台前半で推移しており、2025年3月期は43,340百万円と前期比1.1%の微増となりましたが、ほぼ横ばい傾向です。
- 営業利益・純利益: 営業利益は2023年3月期をピークに減少傾向にあり、2025年3月期は2,181百万円と前期比17.8%減となりました。親会社株主に帰属する当期純利益も同様で、2025年3月期は821百万円と前期比43.8%減の大幅な減益です。これは、為替の影響に加え、人件費や原材料費の高騰が利益を圧迫したためと説明されています。
- 収益性指標:
- ROE（実績）: 3.08% (過去12か月では3.05%) と、中期経営計画の目標（5.5%）を下回っており、資本効率は低い水準です。
- ROA（過去12か月）: 2.68%も同様に低い水準です。
- 財務安全性: 自己資本比率は2025年3月期で53.8%と、財務の健全性は高いと言えます。流動比率（Current Ratio）は2.06と短期的な支払い能力も問題ないと見られます。
- キャッシュフロー: 営業活動によるキャッシュフローは2,580百万円と増加しましたが、投資活動によるキャッシュフローが△2,909百万円と設備投資などによる支出が増加したため、期末の現金および現金同等物は減少しています。
全体として、売上は堅調ながらも、コスト増により利益が大きく減少している点が現状の課題と言えます。
9. 株主還元と配当方針
配当利回り（会社予想）は現在の株価で3.43%（年間28.00円）です。
アートネイチャーの配当方針は、「連結配当性向40%以上を基本とし、年間配当28円を下限とする」こと、さらに「ROE10%超達成までは連結配当性向50％以上を基本とする」としています。
2025年3月期の実績EPSが25.25円、年間配当予想が28円であるため、実績ベースの配当性向は100%を超過しており（Payout Ratio 112.54%）、現在の利益水準に対しては、配当の下限維持を優先している状況です。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は上昇傾向にあり、7月中旬以降に出来高を伴って上昇しています。これは投資家の関心が高まっている可能性を示唆しています。
信用取引の状況を見ると、信用売残が56,500株と大きく増加し、信用買残が減少したため信用倍率は0.22倍と低い状態です。これは、今後の株価上昇局面で売り方の買い戻し（踏み上げ）が発生する可能性も考えられますが、そうならない可能性も考慮する必要があります。
今後の株価に影響を与える要因としては、2025年7月28日から8月1日にかけて予定されている次回決算発表、中期経営計画における利益目標の達成状況、そしてマクロ経済環境の変化（円安、物価上昇、消費マインド）などが挙げられます。
11. 総評
アートネイチャーは、国内毛髪関連市場で強固な地位を築いている企業です。高齢化社会の進展という市場の追い風がある一方で、競合激化や原材料・人件費の高騰により、近年は利益が減少傾向にあります。特に2025年3月期は売上微増ながら大幅な減益となりました。
財務面では自己資本比率が高く健全性を保っていますが、収益性を示すROEは中期経営計画の目標を下回る水準です。株主還元は安定配当を重視しており、現状の年間28円配当を下限としていますが、低迷した利益を考慮すると配当性向は100%を超えています。
株価は直近で上昇し、年初来高値に近い水準で推移しており、テクニカル的には上昇トレンドにあるように見えます。今後の注目点は、中期経営計画での利益目標達成に向けた具体的な施策の効果と、次期（2026年3月期）に会社が予想する大幅な利益回復が実現するか、そして変化する外部環境にどのように対応していくか、などが挙げられます。
企業情報
| 銘柄コード | 7823 |
| 企業名 | アートネイチャー |
| URL | http://www.artnature.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – その他製品 |
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