1. 企業情報
ヤマハ発動機株式会社は、二輪車、船外機、ウォータービークル、産業用ロボット、電動アシスト自転車、金融サービスなど多岐にわたる事業を展開する総合輸送機器メーカーです。主力の「ランドモビリティ」（二輪車等）が売上の約7割を占め、マリン事業（船外機等）が2割強、ロボティクスや金融サービスも手掛けています。世界各国で事業展開しており、海外売上比率は94%と極めて高いのが特徴です。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 競争優位性：
- 二輪車分野では世界大手の一角を占め、ホンダ、スズキ、カワサキと並ぶ日本の主要プレーヤー。
- マリン事業（船外機等）では世界トップクラスのシェア。
- ロボティクス分野でも産業用ロボットや表面実装機（サーフェスマウンター）で存在感を強めています。
- 課題：
- 二輪車・マリンともに先進国市場の需要減少、新興国市場の景気変動や為替リスク。
- 直近ではベトナム・ブラジル・欧州などでの販売台数減少が業績に影響。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営ビジョン・戦略：
- 「感動創造企業」を掲げ、モビリティの多様化・高付加価値化を推進。
- 2025年1月より「アウトドアランドビークル事業本部」を新設し、事業ポートフォリオの最適化と成長分野への注力を図る。
- 重点分野：
- マリン事業・ロボティクス事業の強化。
- 電動モビリティや先進安全技術の開発。
- 研究開発投資の増加による新製品・新技術の創出。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデル：
- 主力の二輪車・マリン製品はグローバルに展開し、為替や現地経済に影響を受けやすいが、事業分散と高いブランド力でリスク分散。
- 金融サービスやロボティクスなど新規分野の拡大で収益源の多様化を推進。
- 市場ニーズへの適応力：
- 電動化・自動化など、モビリティ市場の変化に対応した製品開発を進めている。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発：
- 電動アシスト自転車、電動車椅子、産業用ロボットなどの開発強化。
- 船外機の高効率化・低環境負荷技術、二輪車の電動化。
- 主力製品：
- 二輪車（特にアジア・新興国向け）
- 船外機（グローバルシェアトップクラス）
- 産業用ロボット・表面実装機（電子部品実装分野）
6. 株価の評価
- PER（予想）: 7.73倍（業界平均13.3倍より割安水準）
- PBR（実績）: 0.96倍（業界平均0.8倍よりやや高い）
- EPS（予想）: 143.64円
- BPS（実績）: 1,153.21円
- 株価（8/1終値）: 1,110円
- 理論株価（BPS×PBR）: 1,106円（実際の株価とほぼ一致）
- 配当利回り: 4.50%（高水準）
7. テクニカル分析
- 年初来高値: 1,384円
- 年初来安値: 963円
- 直近株価: 1,110円（8/1終値）
- 50日移動平均: 1,085.72円
- 200日移動平均: 1,209.17円
- 直近10日間の値動き: 1,050円台～1,150円台で推移。直近はやや反落傾向。
- 現状: 年初来安値よりは高いが、高値圏からは下落した位置。50日線付近で下げ止まりの様子。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 2兆5,761億円（2024年12月期）
- 過去3年で増加傾向だが、直近四半期は減収。
- 営業利益: 1,744億円（2024年12月期）
- 前年比減少、利益率も低下傾向。
- 純利益: 1,080億円（2024年12月期）
- 前年比大幅減少（前年1,584億円→1,080億円）
- ROE: 9.46%
- ROA: 3.32%
- 自己資本比率: 41.7%
- 営業キャッシュフロー: 1,406億円（過去12か月）
- フリーキャッシュフロー: 460億円（過去12か月）
- 財務健全性: 自己資本比率・流動比率ともに一定の水準を維持。負債比率はやや上昇傾向。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り: 4.50%（予想）
- 配当性向: 58.84%
- 配当実績: 年間50円（2024年・2025年予想ともに）
- 自社株買い: 実施履歴あり（2025年2月取締役会決議）
- 株主構成: 信託銀行・自己株式・大手金融機関・トヨタ自動車等が上位株主。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 直近の株価変動: 7月下旬に1,150円台まで上昇後、やや調整局面。出来高は高水準。
- 信用取引動向: 信用買残は減少傾向、信用倍率は6.78倍とやや買い方優勢。
- 投資家関心: 配当利回りの高さや自社株買いの実施など、株主還元策への注目が続く。
11. 総評
ヤマハ発動機は、二輪車とマリン分野で世界有数のシェアを持つグローバル企業です。直近では主力市場の需要減やコスト増、為替影響などで業績が減速していますが、電動化・ロボティクスなど成長分野への投資を強化し、事業ポートフォリオの多角化を図っています。財務基盤は安定しており、配当利回りも高水準です。株価は業績減速を織り込みつつも、バリュエーション面では割安感が見られます。今後は、事業環境の変化や新規分野の成長が業績回復のカギとなります。
企業情報
| 銘柄コード | 7272 |
| 企業名 | ヤマハ発動機 |
| URL | http://www.yamaha-motor.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – 輸送用機器 |
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