1. 企業情報
ダイハツインフィニアースは、2025年5月に「ダイハツディーゼル株式会社」から商号変更した企業です。主な事業は、船舶用エンジン、陸上用エンジン、および産業用計器の製造販売です。特に船舶用ディーゼル発電機用補機では世界大手の一角を占めています。その他、アルミホイールなどの産業機器、不動産賃貸、太陽光発電といった多角的な事業も展開しています。設立は1907年と歴史があり、ダイハツ工業を源流とする企業です。
2. 業界のポジションと市場シェア
同社は船舶用ディーゼル発電用補機において世界大手の一角を占める強い競争優位性を持っています。主力である造船・海運業界の堅調さを背景に、中小型機関の販売およびメンテナンス需要が好調に推移しています。
一方で、世界経済の減速、地政学的リスク、米国の保護主義的な通商政策の強化といった外部要因が市場環境の不確実性を高める可能性があります。加えて、陸用機関部門では採算性の悪化という課題も抱えています。
3. 経営戦略と重点分野
同社は、具体的な中期経営計画の詳細を公表していませんが、セグメント別の戦略において、内燃機関部門では舶用機関関連のメンテナンス需要への対応を強化し、収益基盤の強化を目指しています。また、その他の部門では、各事業の特性に応じた運営により収益確保を図る方針です。2026年3月期の連結業績予想については、2025年4月28日公表の内容から変更がないとされています。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の収益モデルは、船舶用・陸上用エンジンの製造販売とメンテナンス、ならびに産業機器、不動産賃貸、太陽光発電などの多様な事業で構成されています。中核である造船・海運業界は世界的な海上荷動き量の増加や新造船発注の回復傾向により拡大基調にあり、同社の主力事業には追い風となっています。また、窒素酸化物規制に対応した船舶エンジンの提供など、環境規制への対応も進めており、これは長期的な事業の持続可能性に貢献し得る要素です。一方で、陸用機関部門など一部事業では採算性の向上が今後の課題となる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
同社の主力製品は、船舶用ディーゼル発電用補機および陸上用ディーゼルエンジンです。技術革新の動向としては、提供されている情報からは具体的なR&Dに関する詳細な記述はありませんが、デュアルフューエルエンジンや窒素酸化物規制に対応した船舶エンジンを提供していることから、環境負荷低減に向けた技術開発に取り組んでいると考えられます。これらは今後の市場ニーズに対応し、収益を牽引する可能性があります。
6. 株価の評価
現在の株価2,452.0円に基づき、各種指標を確認します。
* PER（会社予想）: 17.79倍（株価2452円 ÷ 1株当たり純利益（会社予想）137.80円）
* PBR（実績）: 1.43倍（株価2452円 ÷ 1株当たり純資産（実績）1720.48円）
業界平均PERが7.3倍、業界平均PBRが0.5倍であることから、それらの平均と比較すると、PER、PBRともに高めの水準にあります。
7. テクニカル分析
現在の株価2,452.0円は、年初来高値2,741円、52週高値2,741円に接近した水準にあり、年初来安値1,286円、52週安値1,170円からは大きく上昇しています。また、50日移動平均線（2,094.48円）および200日移動平均線（1,832.19円）を上回って推移しており、株価は比較的高値圏で推移している状況です。
8. 財務諸表分析
過去数年間の損益計算書を見ると、売上高、営業利益、純利益ともに継続的な成長傾向が見られます。
* 売上高: 2022年3月期 575億円 → 2025年3月期（予想）887億円と着実に増加。
* 営業利益、純利益: 同様に増加傾向にあり、収益性改善がうかがえます。
直近の2026年3月期第1四半期の連結決算では、売上高は前年同期比3.0%増と増加しましたが、営業利益は4.3%減、経常利益は18.0%減、親会社株主に帰属する四半期純利益は11.3%減と、増収減益を記録しています。これは、為替の影響や陸用機関部門での採算性悪化が要因とされています。
財務安全性については、自己資本比率が45.9%（直近2026年3月期第1四半期末45.2%）と比較的健全な水準です。また、直近四半期で総現金が141.5億円の総負債に対して248.2億円と、現預金が負債を上回っており、流動性比率（Current Ratio）も1.97と流動性は高い水準を示しています。
9. 株主還元と配当方針
会社予想の配当利回りは2.53%で、1株当たり配当金は62.00円を予定しています。昨年度の実績ベースの配当性向は34.27%と、利益の一定割合を配当に回す健全な水準にあると言えるでしょう。自己株式口が20.25%と、過去に自社株買いを実施していることから、株主還元への意識が見られます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
過去1年間の株価変動率（52 Week Change）は110.34%と、S&P 500の同時期の変化率20.28%を大きく上回る推移を示しており、強い上昇モメンタムが見られます。直近の信用取引状況では信用買残が信用売残を大きく上回っており（信用倍率6.41倍）、買い需要が比較的強い状況を示唆しています。ただし、これは将来的に売り圧力となる可能性も含んでいます。株価への影響要因としては、メイン市場である造船・海運業界の景気動向、国際的な海上輸送需要、為替変動、原材料価格の変動、そして地政学的リスクなどが挙げられます。
11. 総評
ダイハツインフィニアースは、船舶用ディーゼル発電機用補機における世界大手の一角として、強固な事業基盤を持つ企業です。過去数年間は売上高、利益ともに着実な成長を遂げており、財務状況も比較的健全性を保っています。
株主還元にも積極的で、安定的な配当が期待されます。
しかしながら、直近の四半期決算では増収ながら減益となっており、特に陸用機関部門の採算性悪化が課題として挙げられます。市場の成長期待と良好なパフォーマンスを示す一方で、現在の株価は業界平均と比較してPER、PBRともに高めの水準にあります。地政学的変動や為替、原材料価格の動向といった外部環境の変化が、今後の業績や株価に影響を与える可能性を秘めているため、これらの要素を注視することが重要と考えられます。
企業情報
| 銘柄コード | 6023 |
| 企業名 | ダイハツインフィニアース |
| URL | https://www.d-infi.com/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 自動車・輸送機 – 輸送用機器 |
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