1. 企業情報

INFORICHは、モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT」を主軸に事業を展開している企業です。スマートフォンの外出先での充電ニーズに応えるサービスとして知られています。また、充電器スタンドを活用したデジタルサイネージ広告事業、データ関連事業、コンサルティングやマーケティングサービス、ハードウェア・ソフトウェア開発も手掛けています。日本国内だけでなく、アジアを中心に海外展開も進めています。市場区分は東証グロース市場、業種区分はサービス業(情報通信・サービスその他)に属します。

2. 業界のポジションと市場シェア

INFORICHは、モバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」の運営を通じて、国内市場において一定の存在感を示していると推測されます。国内のChargeSPOT設置台数は2025年6月末時点で54,847台、月間アクティブユーザー数は1,058千人/月と増加傾向にあります。海外展開も積極的に進めており、グローバルでの総設置台数は約79,988台となっています。
競争環境については、決算短信で「中国市場での競合激化」が言及されており、一部地域での設置台数の最適化(縮小)を実施していることから、特に海外市場での競争圧力は高い状況にあることが示唆されます。国内市場における具体的な競合他社との比較数値は提供データにはありませんが、成長市場での主要なプレイヤーの一つと考えられます。

3. 経営戦略と重点分野

INFORICHは中期経営計画「VISION2030」を掲げています。主要な戦略と重点分野は以下の通りです。
* ChargeSPOT事業の拡大: 国内外でのモバイルバッテリースタンド設置台数のさらなる増加を目指し、サービスの利便性とアクセス向上を図ることで、基盤事業の成長を継続します。
* プラットフォーム事業の育成と収益化: ChargeSPOTの設置ネットワークやサイネージを活かした広告事業、ファン向けサービス「CheerSPOT」、完全個室型ベビーケアルーム「mamaro」などの新規事業の立ち上げと拡大を進めています。これらの事業を将来的な新たな収益の柱として確立することを目指しており、現状は投資・成長期に位置付けられています。

4. 事業モデルの持続可能性

INFORICHの収益モデルは、主にChargeSPOTからのバッテリーレンタル料と、スタンドを活用したデジタルサイネージ広告収入から構成されています。スマートフォンの利用が生活に不可欠な現代において、外出先での充電ニーズは非常に高く、ChargeSPOTサービスはこの根強いニーズに応えています。
また、プラットフォーム事業を多角的に展開することで、単一事業への依存リスクを軽減し、新たな市場機会や収益源の獲得を試みています。これにより、市場ニーズの変化への適応力を高め、事業モデルの持続可能性を追求していると考えられます。

5. 技術革新と主力製品

INFORICHの主力製品・サービスはモバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」です。同社は「ハードウェアとソフトウェアの開発」を行っているとされており、これはChargeSPOTのスタンド機器やアプリケーションの機能改善、運用システムの構築などを自社で行っていることを示唆しています。提供データからは、特定の画期的な独自技術や特許に関する詳細な記述は確認できませんが、サービスの利便性向上や運用効率化のための技術開発は継続的に行われているものと推測されます。現在の収益を最も牽引しているのは国内のChargeSPOT事業です。

6. 株価の評価

  • 現在の株価: 2,386.0円
  • EPS(会社予想): 244.53円
  • BPS(実績): 610.56円
  • PER(会社予想): (連)9.75倍
  • PBR(実績): (連)3.90倍
  • 業界平均PER: 25.7倍
  • 業界平均PBR: 2.5倍

INFORICHの会社予想PERは9.75倍であり、業界平均PER25.7倍と比較すると大幅に低い水準にあります。これは、会社が予想する利益水準から見た場合、現在の株価が相対的に割安感を有していると捉えられる可能性があります。
一方、実績PBRは3.90倍であり、業界平均PBR2.5倍と比較すると高い水準にあります。これは、企業の純資産価値と比較して現在の株価が評価されていることを示唆しており、割高感があると捉えられる可能性もあります。
これらの指標を総合的に検討すると、成長期待の高さからPBRが高くなっている一方で、利益水準に対するPERは相対的に抑えられている状況にあると言えます。

7. テクニカル分析

現在の株価2,386.0円は、年初来高値4,625円および52週高値5,570円と比較して大きく下落した水準にあります。また、年初来安値2,270円に比較的近く、過去1年間の株価推移の中では安値圏にあると見ることができます。
直近10日間の株価は、2025年8月29日の2,505円から緩やかに下降傾向にあり、本日(2025年9月11日)は2,386円で取引されています。
50日移動平均線(2,574.14円)および200日移動平均線(3,486.99円)をいずれも下回っており、短期・長期のいずれの視点からも下降トレンドにあることが示唆されます。

8. 財務諸表分析

  • 売上高: 過去数年間で顕著な成長を続けており、2021年の1,645百万円から過去12ヶ月では10,701百万円へと大幅に伸長しています。直近の2025年12月期第2四半期(中間期)の売上高も6,256百万円(前年同期比+36.5%)と、高い成長率を維持しています。
  • 利益: 営業利益および親会社株主に帰属する純利益は、2022年までは赤字でしたが、2023年に黒字転換を果たし、過去12ヶ月では大幅な利益改善が見られます。しかし、2025年12月期第2四半期(中間期)の経常利益と中間純利益は、前年同期比で一時的に減少しています。これは、海外事業や新規プラットフォーム事業への投資、為替変動等の要因が影響している可能性があります。
  • キャッシュフロー: 営業活動によるキャッシュフローは、過去12ヶ月で4.5B、中間期累計で+1,965百万円とプラスを確保しており、本業で安定して現金を創出している状況です。一方で、バッテリースタンド取得や子会社買収など、成長のための投資活動に継続して資金を配分しています。
  • 収益性・効率性: 実績ROEは49.09%(過去12ヶ月では38.76%)と非常に高い水準にあり、自己資本を効率的に活用して利益を上げていることを示しています。売上総利益率も過去12ヶ月で約77.8%と高く、粗利率の高い事業モデルです。
  • 安全性: 自己資本比率は28.1%(実績)であり、中間期で28.8%とやや改善傾向にあります。流動比率は1.28(直近四半期)と、短期的な支払い能力に問題はない水準です。ただし、負債/純資産比率は中間期で244%となっており、借入金が純資産に対してやや高めである点も考慮されます。

9. 株主還元と配当方針

提供データによると、INFORICHは現時点では配当を行っていません。配当利回り(会社予想)、1株配当(会社予想)、Trailing Annual Dividend Rate、Payout Ratioすべて0.00%と記載されています。中間配当実績も0.00円、期末配当予想も「未定」です。これは、成長ステージにある企業として、得られた利益を事業拡大のための投資に優先的に充当する方針である可能性を示唆しています。

10. 株価モメンタムと投資家関心

直近の株価は下降傾向にあり、過去1年間で見ても下降トレンドとなっています。現在の株価水準は、年初来高値や52週高値から大幅に下落しており、今年の安値圏に位置しています。50日および200日移動平均線を下回っていることも、下降モメンタムの継続を示唆しています。
投資家関心という点では、信用買残が非常に多く(1,871,600株)、信用売残が少ない(300株)ため、信用倍率が6,238.67倍と極めて高くなっています。これは、今後信用買いの反対売買(決済売り)が増えることで、株価の上値が重くなる可能性があることを示唆しています。
株価への影響を与える要因としては、国内ChargeSPOT事業の継続的な成長、海外事業の収益性改善、プラットフォーム事業の今後の収益化の進捗、中国市場の競争環境の変化、為替変動などが挙げられます。

11. 総評

INFORICHは、モバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」を主軸に高成長を続けている企業です。売上高は右肩上がりに伸び、近年は利益も黒字化し、高いROEを達成しています。これは、サービスの普及と事業拡大が順調に進んでいることを示します。
中期経営計画「VISION2030」では、ChargeSPOTの更なる普及と、広告・プラットフォーム事業の多角化による収益源の強化を目指しています。しかし、海外事業では競争激化が見られ、新規事業の収益化は今後の課題と位置付けられています。
財務面では、本業で堅調にキャッシュを創出しているものの、成長への積極的な投資により負債比率はやや高めです。
株価は過去1年で大きく下落し、現在は安値圏にあると見られます。会社予想PERは業界平均より低い水準にある一方、PBRは業界平均より高い水準にあり、成長期待と現在の資産価値からの評価が混在しています。高い信用買残は今後の需給バランスに影響を与える可能性があります。現状配当は行われておらず、利益は事業拡大のために再投資されている方針と推測されます。


企業情報

銘柄コード 9338
企業名 INFORICH
URL https://inforich.net/
市場区分 グロース市場
業種 情報通信・サービスその他 – サービス業

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