TDK(6762)に関する企業分析レポートを、個人投資家向けにステップバイステップでまとめました。
1. 企業情報
TDKは、1935年設立の日本の大手電子部品メーカーです。主要事業は多岐にわたり、世界中で製品を展開しています。
事業内容の概要:
- 受動部品: セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、フィルムコンデンサ、高周波部品、各種コイルやトランスなど、電子回路の基盤となる部品を製造・販売しています。主に自動車市場やICT市場で利用されます。
- センサ応用製品: 温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサなどを提供し、自動車、産業機器、ICT分野で活用されています。
- 磁気応用製品: ハードディスクドライブ(HDD)用磁気ヘッドやサスペンション、マグネットなどが主要製品で、データセンター向けのHDD需要を支えています。
- エナジー応用製品: リチウムイオン二次電池などのエナジーデバイスや電源を製造しており、スマートフォンなどのICT機器や、様々な産業分野で使われています。このセグメントが収益の大きな柱となっています。
- その他: 製造装置(メカトロニクス生産設備)や、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータなども手掛けています。
2025年3月期の連結事業別売上構成比を見ると、エナジー応用製品が53%と最も高く、次いで受動部品が25%を占めています。海外売上比率は92%に上り、グローバルに事業を展開している企業です。
2. 業界のポジションと市場シェア
TDKは電子部品業界において、幅広い製品ラインナップを持つ大手企業としての地位を確立しています。特に、長年にわたる磁気ヘッド技術の蓄積に加え、近年は二次電池(エナジーデバイス)とセンサ応用製品を成長の牽引役として注力しています。
競争優位性:
- 多角的な事業ポートフォリオ: ICT、自動車、産業機器、家電、医療など多様な市場に製品を供給しており、特定の市場に依存しない安定した事業基盤を構築しています。
- 成長分野への集中: エナジー応用製品(二次電池)やセンサ応用製品は、電動化やIoT、AIの進展に伴い需要拡大が見込まれる分野であり、これらの分野で主要な売上シェアを占めている点は強みです。
- グローバルな事業展開: 売上の9割以上が海外であり、世界各地の市場ニーズに対応できる体制を整えています。
課題:
- 特定の市場サイクルへの影響: HDD向け磁気ヘッドは主要製品の一つであり、HDD市場の動向が業績に影響を与える可能性があります。
- 為替変動リスク: 海外売上比率が高いため、為替レートの変動が業績に与える影響は小さくありません。
- 一部市場の低迷: 直近では自動車(特にBEV)向け需要の低迷や、一部産業機器市場での投資抑制が事業に影響を与えています。
3. 経営戦略と重点分野
TDKは、電子部品分野における技術革新と成長市場への対応を重視しています。具体的な中期経営計画の細部は提供データにはないものの、安定的な株主還元姿勢が示されており、2025年3月期を初年度とする中期経営計画では、配当性向35%を目安としています。
重点分野として推測される点:
- エナジー応用製品の強化: 二次電池事業は売上の最大セグメントであり、今後もICT市場(スマートフォン、データセンター)のほか、電動化の進展に伴う需要増大に対応していくことが見込まれます。
- センサ応用製品の拡大: IoTやAIの普及により、多種多様なセンサの需要が高まっており、この分野での技術開発と市場開拓を継続していくと考えられます。
- 既存事業の最適化と高付加価値化: 受動部品や磁気応用製品においても、顧客ニーズに応じた高機能・高品質な製品提供に努め、収益性の維持・向上を図ると考えられます。
4. 事業モデルの持続可能性
TDKの事業モデルは、多岐にわたる製品と市場への展開により、一定の持続可能性を持っています。
収益モデル:
- 電子部品メーカーとして、製品の設計・開発から製造、販売までを一貫して行い、多様な顧客に供給することで収益を得ています。
- 特に、スマートフォンなどのICT市場や、今後の成長が期待されるEV、自動運転、IoT/AI関連市場に向けた製品が収益源となっています。
市場ニーズの変化への適応力:
- ICT市場(スマートフォン、データセンター向けHDDニアライン)は堅調に推移しており、同社のエナジーデバイスや磁気応用製品がその需要を捉えています。
- 一方で、自動車(特にBEV)向け需要の低迷や産業機器向け投資の低調といった市場の変化にも直面しており、これらに対する事業ポートフォリオの調整や新たな需要開拓が求められます。
- 継続的な研究開発投資(直近四半期で約647億円)を通じて、技術革新に対応し、市場の変化に合わせた製品開発を進めている点は強みです。
5. 技術革新と主力製品
TDKは、長年の経験と研究開発投資に裏打ちされた高い技術力を有しています。
技術開発の動向:
- 電子材料技術を基盤とし、材料開発から製品化までを一貫して手掛けることで、高機能な電子部品を創出しています。
- 特に、二次電池やセンサといった分野では、小型化、高容量化、高精度化といった顧客ニーズに応えるための技術開発に注力していると推測されます。
収益を牽引している製品・サービス:
- エナジー応用製品: 特に二次電池が連結売上高の53.3%を占め、セグメント利益にも大きく貢献しており、現在の主力製品です。
- 磁気応用製品: HDD用磁気ヘッドは、データセンター向けニアラインHDD需要の増加により、引き続き重要な収益源となっています。
- センサ応用製品: ICT市場向けに売上を伸ばしており、今後の成長が期待される分野です。
6. 株価の評価
現在の株価1,991.0円に対し、PER(会社予想)とPBR(実績)を市場・業界平均と比較します。
* PER(会社予想): 27.99倍
* 業界平均PER: 24.2倍
* TDKのPERは業界平均と比較してやや高い水準にあります。
* PBR(実績): 2.13倍
* 業界平均PBR: 1.6倍
* TDKのPBRは業界平均と比較して高い水準にあります。
これらの指標に基づくと、TDKの現在の株価は、業界平均と比較してPER、PBRともに高めに評価されている状況です。これは、同社の成長期待や特定の事業分野における優位性を市場が織り込んでいる可能性も考えられます。
7. テクニカル分析
直近の株価推移と移動平均線を基に株価水準を分析します。
* 現在の株価: 1,991.0円
* 年初来高値: 2,106円
* 年初来安値: 1,165円
* 52週高値: 2,113.50円
* 52週安値: 1,165.00円
* 50日移動平均線: 1,824.86円
* 200日移動平均線: 1,720.45円
現在の株価1,991.0円は、年初来高値および52週高値(ともに2,100円台)からはやや調整した水準にあります。しかし、50日移動平均線、200日移動平均線を大きく上回っており、中長期的には上昇トレンドの中にいます。直近10日間の株価推移を見ると、一時2,081円まで上昇した後、本日1,991円まで下落しており、短期的にはやや価格調整局面にあると考えられます。
8. 財務諸表分析
過去数年間の損益計算書と各種財務指標を比較します。
売上高:
- 2022年3月期: 1兆9,021億円
- 2023年3月期: 2兆1,808億円
- 2024年3月期: 2兆1,038億円
- 2025年3月期(過去12か月実績): 2兆2,048億円
売上高は長期的に増加傾向にありましたが、2024年3月期に一時減少。しかし、直近12か月では再び過去最高を更新しています。直近の2026年3月期第1四半期の売上高は5,357億円で、前年同期比3.3%増となっており、増加傾向を維持しています。
営業利益:
- 2022年3月期: 1,667億円
- 2023年3月期: 1,688億円
- 2024年3月期: 1,728億円
- 2025年3月期(過去12か月実績): 2,241億円
営業利益は順調に増加を続けています。しかし、直近の2026年3月期第1四半期の営業利益は564億円で、前年同期比2.5%減となりました。これは、為替の円高影響や自動車向け販売の低下が要因とされています。
親会社の所有者に帰属する四半期利益:
- 2022年3月期: 1,312億円
- 2023年3月期: 1,141億円
- 2024年3月期: 1,246億円
- 2025年3月期(過去12か月実績): 1,671億円
純利益も中長期的には成長傾向にありますが、2026年3月期第1四半期は414億円で、前年同期比30.5%減と大幅な減少となりました。これは営業利益の減少に加え、税引前利益段階での金融収益減少・金融費用増加も影響しています。
キャッシュフロー:
- 営業活動によるキャッシュフロー(過去12か月):4,322億円
- 営業活動によるキャッシュフロー(直近Q1):590億円(前年同期は726億円)
直近四半期では営業CFが前年同期比で減少したものの、過去12か月では堅調な水準を維持しています。投資活動によるキャッシュフローは、固定資産取得の増加により過去12か月にわたり支出超過となっていますが、将来の成長に向けた投資と見られます。
収益性と安全性:
- ROE(実績): 9.53%
- 自己資本比率(実績): 50.8%(直近四半期は49.1%)
ROEは国際的な高水準にはないものの、自己資本比率は約50%と高く、財務基盤は安定していると言えます。流動比率も1.65倍と短期的な支払い能力も問題ありません。
まとめ:
TDKの売上高は堅調に推移しているものの、直近の四半期決算では為替変動や一部市場の需要低迷により、営業利益および純利益が減少しました。しかし、財務基盤は強固であり、中長期的な成長に向けた投資は継続しています。
9. 株主還元と配当方針
TDKは、安定的な株主還元に取り組んでいます。
* 配当利回り(会社予想): 1.51%
* 1株配当(会社予想): 30.00円
* 配当性向: 34.10%
同社は、2026年3月期について、中間配当15.00円、期末配当15.00円、年間合計30.00円を予想しています。これは直近の配当予想から修正されていません。
中期経営計画では配当性向35%を目安としており、現在の配当性向34.10%はこの目安に沿った水準です。
過去には株式分割(2024年10月1日に1株を5株に分割)も実施しており、株式取得のしやすさも考慮しています。自己株式口の存在から、過去に自社株買いによる株主還元も実施した可能性が考えられます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価の直近の変動傾向: 直近10日間の株価は、一時2,081円まで上昇したものの、その後1,991円まで下落しており、短期的な上昇モメンタムは弱まっています。しかし、50日および200日移動平均線を上回る水準を維持しており、中長期的には上昇トレンドにある中に、目先の調整局面に入ったと見られます。
- 出来高: 直近の出来高は活発であり、多くの投資家が関心を持っていることが伺えます。
- 信用取引: 信用買残は前週比で減少、信用売残は前週比で増加しており、短期的な売り圧力が増している可能性があります。信用倍率は2.03倍です。
株価への影響を与える要因:
- ICT市場の動向: スマートフォンやデータセンター向けHDDなど、主要市場の需要動向は株価に大きく影響します。
- 自動車市場の回復: 足元の自動車(特にBEV)市場の需要低迷が改善されるかどうかが注目されます。
- 為替レートの変動: グローバル企業であるため、円高への進行は業績と株価の両方にマイナス影響を与える可能性があります。
- 地政学リスクや貿易摩擦: 米国の関税措置など、不透明な外部環境要因もリスクとして挙げられています。
- 今後の決算発表: 直近四半期での減益を受けて、今後の業績見通しや市場の評価が重要なドライバーとなります。
11. 総評
TDKは、電子部品業界におけるグローバル大手であり、幅広い製品群と多様な市場展開を強みとしています。特に二次電池やセンサといった成長分野への注力は、中期的な事業持続可能性に貢献すると考えられます。
財務面では、売上高は堅調に成長しているものの、直近の四半期決算では為替の円高影響や自動車向け需要の低迷により、営業利益と純利益が前年同期比で減少しました。この点は今後の動向に注意が必要です。一方で、自己資本比率が高く、財務基盤は安定していると言えます。
株価の評価については、現在の株価はPER、PBRともに業界平均と比較してやや高めの水準にあります。テクニカル分析では、中長期的には上昇トレンドの中にありますが、直近は高値圏から調整局面に入っています。
株主還元については、安定配当を目指し、中期経営計画で掲げた配当性向目安に沿った水準を維持しています。
今後、ICT市場の堅調な推移が継続するか、自動車向け需要が回復するか、また為替変動などの外部環境要因への適応力が、TDKの業績および株価に影響を与える主要な要因となるでしょう。
企業情報
銘柄コード | 6762 |
企業名 | TDK |
URL | https://www.tdk.com/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 電機・精密 – 電気機器 |
関連情報
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.1)」によって自動生成されました。
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