1. 企業情報
カバー株式会社は、VTuber（バーチャルYouTuber）を主軸としたIP（知的財産）開発、プロダクション運営、およびメディアミックス事業を展開する企業です。具体的には、人気VTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営し、所属VTuberの配信活動、コンテンツ制作、ライブイベントの企画・実施を行っています。また、VTuberのキャラクターIPを活用したオリジナルグッズ（マーチャンダイジング）の企画・販売、企業とのライセンス契約やタイアップによる収益も主な事業の柱となっています。さらに、バーチャル空間で自由に活動できるサンドボックスゲーム「ホロアース」の開発を通じて、メタバース事業にも注力しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
カバーはVTuber業界において、「ホロライブプロダクション」という強力なブランドと多数の人気VTuberを擁する主要なプレイヤーの一つです。その運営実績と人気IPの活用により、高いブランド認知度とファンベースを確立しています。競争優位性としては、所属VTuberの魅力的なキャラクター性、質の高いコンテンツ制作能力、そしてマーチャンダイジングやライセンスといった多角的な収益化モデルが挙げられます。課題としては、VTuberへの人気が集中するリスクや、競合プロダクションの台頭、海外展開における文化的・法的な障壁などが考えられます。直近では、北米関税がEC売上に一時的な影響を与えたことが報告されています。
3. 経営戦略と重点分野
経営陣は、中長期的な成長戦略として以下の3段階を掲げています。
– VTuberビジネスの確立: VTuberプロダクション事業の基盤を強化。
– IPビジネスへの進化: VTuberのキャラクターIPを多様なコンテンツや商品展開に活かす。
– クリエイター経済圏の拡大: メタバース事業「ホロアース」などを通じて、より広いクリエイターエコノミーを構築。
これらの戦略を実現するため、内製による開発能力の拡充、戦略的パートナーシップの締結、M&A（合併・買収）といった施策を通じて事業能力を高める方針です。直近では「hololive OFFICIAL CARD GAME」などの商材が売上拡大に寄与しており、表現技術向上、物流改善、海外事業開発などへの先行投資を継続しています。
4. 事業モデルの持続可能性
同社の事業モデルは、人気VTuberが持つ強力なIPを基盤としており、配信・コンテンツ、ライブ・イベント、マーチャンダイジング、ライセンス・タイアップと多角的な収益源を持っています。特にマーチャンダイジングとライセンスが収益の大きな柱となっています。VTuber市場は成長が続いており、同社は海外売上比率が29%（2025年3月期）と海外展開にも積極的です。今後メタバース「ホロアース」の展開が成功すれば、新たな収益源とファンエンゲージメントの機会を創出し、事業モデルの持続可能性を高める可能性があります。市場ニーズの変化に対し、IPを活用した多様な事業展開と技術投資によって適応力を維持しようとしています。
5. 技術革新と主力製品
カバーの事業は、3Dモデリングやアニメーション技術、ライブ配信技術を活用したVTuberのキャラクターIP開発と運営そのものが技術革新を内包しています。主力製品・サービスは、VTuber事務所「ホロライブプロダクション」に所属するタレントであり、彼らが生み出すコンテンツや、そのIPを活用した各種グッズ、ゲーム、コラボレーション企画などが収益を牽引しています。具体的には、「hololive OFFICIAL CARD GAME」が直近の売上拡大に貢献しており、企業は表現技術の向上にも継続的に投資を行っています。
6. 株価の評価
現在の株価1,932.0円に対し、各種指標は以下の通りです。
* PER（会社予想）: 22.25倍 (算出: 1,932.0円 / 86.82円 = 22.25)
* 業界平均PER（情報・通信業）が66.2倍と比較して、割安な水準にあります。
* PBR（実績）: 7.19倍 (算出: 1,932.0円 / 268.70円 = 7.19)
* 業界平均PBR（情報・通信業）が3.5倍と比較して、割高な水準にあります。
PERは業界平均より低いものの、PBRは業界平均より高く、これは企業の高い成長性やIP価値が株価に織り込まれている可能性を示唆しています。
7. テクニカル分析
現在の株価1,932.0円は、年初来高値3,420円、年初来安値1,857円、52週高値3,420円、52週安値1,491円と比べて、年初来安値に近い水準にあります。また、50日移動平均線2,127.80円、200日移動平均線2,361.99円をいずれも下回っており、短期および中長期的に下落基調にあることが示唆されます。直近10日間の株価推移を見ても、2,056円から1,932円まで下落傾向が続いており、現在株価は安値圏にあると判断できます。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去12か月で43,401百万円（約434億円）を計上しており、2022年3月期からの売上高は13,663百万円 → 20,451百万円 → 30,166百万円 → 43,401百万円と毎年大幅に成長を続けています。直近の2026年3月期第1四半期の売上高も前年同期比で50.1%増と高い成長率を維持しています。
- 利益: 営業利益、経常利益、純利益も売上高に連動して増加傾向にあります。ただし、2026年3月期第1四半期の営業利益成長率は前年同期比+16.5%と、売上高成長率（+50.1%）と比較して鈍化が見られます。これは、主に表現技術向上、物流改善、海外事業開発といった先行投資の影響によるものと説明されています。
- ROE（実績）: 39.58%と非常に高く、自己資本を効率的に活用して利益を生み出していることを示しています。
- ROA（過去12か月）: 19.20%と良好であり、総資産に対する利益創出能力も高いです。
- 自己資本比率（実績）: 直近四半期で56.2%（前事業年度末は51.3%）と、財務基盤は非常に健全です。
- 流動比率（直近四半期）: 1.64倍であり、短期的な支払い能力に問題はありません。
- キャッシュフロー: 第1四半期のキャッシュフロー計算書は作成されていませんが、総資産のうち現金及び預金が11,753百万円を占めており、一定の流動性資産を確保しています。
9. 株主還元と配当方針
同社は、配当利回り（会社予想）0.00%、1株配当（会社予想）0.00円、配当性向0.00%と、無配方針を継続しています。現時点では、利益を内部留保し、成長投資に充てることで企業価値の向上を図る姿勢と見られます。自社株買いに関する情報は開示されていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は直近の記録において下降傾向にあり、年初来のレンジでは安値圏に位置しています。52週高値から大きく下落しており、短期的には下降の勢いが強いと判断できます。信用取引では信用買残が信用売残を大きく上回っており（信用倍率7.17倍）、将来的な需給の重しとなる可能性があります。
投資家関心に影響を与える要因としては、VTuber IPの新たなヒット、海外展開の成否、メタバース事業「ホロアース」の進捗、そして先行投資が今後の利益成長にどう繋がるかといった点が注目されます。直近の決算発表では売上高は好調な伸びを見せた一方で、先行投資による利益率の低下が市場に影響を与えている可能性も考えられます。
11. 総評
カバーは、強力なVTuber IP「ホロライブプロダクション」を中核に、多角的な事業展開で急速な成長を遂げている企業です。売上高は毎年大きく増加しており、事業の拡大フェーズにあります。財務基盤は自己資本比率が高く非常に健全であり、ROEやROAも高水準で資本効率の良い経営が行われています。しかし、現在は成長戦略のための先行投資を積極的に行っているため、売上成長に対して利益成長が一時的に鈍化する傾向が見られます。株価は安値圏にあり、無配で成長投資を優先する方針です。今後の成長は、IP戦略の深化、海外市場への浸透、そしてメタバース事業の成功にかかっていると言えるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: S
- 過去数年の売上高は毎年大きく増加しており、LTM（直近12か月）売上成長率は43.88%、直近四半期では50.1%と非常に高い成長率を維持しています。成長性は極めて高いと評価できます。
- 収益性: A
- 粗利率は50%を超え、営業利益率は10%台、EBITDA率は20%대를保っています。特にROE（39.58%）やROA（19.20%）といった資本効率を示す指標が非常に高く、高い収益力を有していると評価できます。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率は直近で56.2%と非常に高く、流動比率も1.64倍と短期的な資金繰りに問題はありません。負債も少なく、非常に健全な財務体質であると評価できます。
企業情報
| 銘柄コード | 5253 |
| 企業名 | カバー |
| URL | https://cover-corp.com/ |
| 市場区分 | グロース市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – 情報・通信業 |
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