1. 企業情報
株式会社ワコムは、ペンタブレットや関連ソフトウェアの開発・製造・販売をグローバルに展開する企業です。特に、描画用のペン入力タブレットでは世界シェア首位を誇っています。事業は、自社ブランドのペンタブレットやペンディスプレイなどを扱う「ブランド製品事業」と、PCやスマートフォンなどのデバイス向けに電子ペンシステム技術(EMR/AESなど)をOEM供給する「テクノロジーソリューション事業」の二本柱で構成されています。2025年3月期の事業構成は、ブランド製品事業が売上高の25%(前年同期比△10%)、テクノロジーソリューション事業が75%(+21%)を占め、海外売上比率は49%(2025年3月時点)となっています。本社は埼玉県加須市にあり、従業員数1,006名、平均年収964万円を誇る企業です。
2. 業界のポジションと市場シェア
ワコムは、ペンタブレット市場において世界シェア首位の地位を確立しています。これは、長年にわたる技術開発とブランド構築の成果であり、高い競争優位性を示しています。テクノロジーソリューション事業では、サムスン電子をはじめとする大手メーカーに電子ペンシステムを供給しており、OEM市場においても重要なプレイヤーとしてのポジションを築いています。競争優位性としては、デジタルペン技術に関する豊富な特許とノウハウ、クリエイターコミュニティにおける高いブランド認知度と信頼性が挙げられます。一方、課題としては、PCやスマートフォン市場の動向に左右されやすいOEM事業の需要変動、競合他社の台頭、為替レートの変動、および米国の関税政策などの外部要因が収益に影響を与える可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
ワコムは、中期経営計画「Wacom Chapter 4」(2025年3月期〜2029年3月期)を推進しています。この計画では、「かく」体験の技術統合と価値提供をビジョンに掲げ、顧客体験価値の向上と事業ポートフォリオの最適化を目指しています。重点分野としては、以下のような施策が進められています。
* 商品ポートフォリオの刷新と強化: Wacom Cintiqなどの新製品リリースにより、クリエイターの多様なニーズに応える。
* 事業投資による新規ユースケース開拓: SYNCORE TECHNOLOGYやHoloeyesへの出資を通じて、医療分野のVRなどデジタルペンの新たな応用領域を探索。
* ブランド事業の構造改革と効率化: 販売チャネルの最適化や直販モデルの見直しにより、収益性の改善を図る。
2026年3月期第1四半期決算では、ブランド製品事業において一部機種販売終了による台数減があったものの、事業構造改革による固定費削減が寄与し、前年同期の損失から黒字化を達成しており、構造改革が一定の成果を上げていることが示唆されます。
4. 事業モデルの持続可能性
ワコムの事業モデルは、独自のデジタルペン技術を核としたブランド製品とOEM供給の組み合わせにより構築されています。このモデルは、クリエイター市場での磐石な地位と、デバイスメーカーへの技術提供という多角的な収益源が特徴です。市場ニーズの変化への適応力としては、モバイル、クラウド、AIといった技術革新への対応を中期経営計画で掲げ、教育市場やタブレット/ノートPC市場におけるデジタルペン需要の拡大機会を捉えようとしています。新しい技術応用分野への投資やパートナーシップを通じて、将来の成長機会を模索する姿勢は、事業モデルの持続可能性を高める要素と考えられます。
5. 技術革新と主力製品
ワコムの技術革新の中心は、電磁誘導方式(EMR)や静電容量方式(AES)といった独自のデジタルペン技術です。これらの技術は、高精度かつ自然な書き味を実現し、同社のペンタブレットや電子ペンシステムの競争力の源泉となっています。主力製品には、プロクリエイター向けから一般ユーザー向けまで幅広いラインナップがあり、以下の製品が収益を牽引しています。
* ペンコンピューター: MobileStudio Pro
* ペンディスプレイ: Wacom One, Wacom Cintiq, Wacom Cintiq Pro
* ペンタブレット: Wacom Intuos, Wacom Intuos Pro, Wacom One, One by Wacom
* スマートパッド: Bamboo Slate, Bamboo Folio
* デジタルペン: Bamboo Ink, Bamboo Ink Plus, Bamboo Solo
これらの製品は、デジタルコンテンツ制作、イラストレーション、デザイン、教育、ビジネスなど多岐にわたる分野で利用され、高い評価を得ています。
6. 株価の評価
現在の株価815.0円に対し、会社予想EPS(連結)は63.19円であるため、PER(会社予想)は約12.90倍となります。業界平均PERが24.2倍であることと比較すると、ワコムのPERは業界平均を下回っており、収益性から見た株価は割安な水準にあると言えます。
一方、実績BPS(連結)は222.94円であるため、PBR(実績)は約3.66倍となります。業界平均PBRが1.6倍であることと比較すると、ワコムのPBRは業界平均を上回っており、純資産から見た株価は割高な水準にあると言えます。
PERとPBRの両方を見ると、収益性に対しては割安感があるものの、純資産に対しては割高感があるという評価になります。
7. テクニカル分析
現在の株価815.0円は、年初来高値869円(52週高値)に近く、年初来安値449円(52週安値)からは大きく上昇している高値圏に位置しています。
移動平均線を見ると、50日移動平均線が759.90円、200日移動平均線が661.97円であり、現在の株価はこれら両方の移動平均線を上回っています。これは、短期・中期的に上昇トレンドが継続していることを示唆しています。
直近10日間の株価推移は、10月6日の869円をピークに、10月10日には815円までやや下落しており、短期的な調整局面にあるようにも見受けられます。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去5年間を見ると、2022年3月期から2024年3月期にかけて増加傾向にあり、2024年3月期に$118,794,737千円でピークを迎えました。直近12ヶ月(LTM)は$115,680,799千円と微減。2026年3月期第1四半期決算では、売上高が24,505百万円(前年同期比△16.0%)と減少しており、製品ライフサイクルやOEM市場の需要変動の影響が示唆されます。2026年3月期の通期予想も減収を見込んでいます。
- 利益: 営業利益は2023年3月期に大幅に落ち込みましたが、2024年3月期、そして直近12ヶ月(LTM)にかけて回復基調にあります。特に2026年3月期第1四半期の営業利益は2,723百万円(前年同期比+7.9%)と増益を達成しており、事業構造改革による費用削減効果が寄与しています。ただし、今期は為替差損の影響で経常利益、純利益は減益となりました。
- キャッシュフロー: 直近12ヶ月の営業キャッシュフローは9,400百万円とプラスですが、2026年3月期第1四半期は営業活動によるキャッシュフローが△686百万円、投資活動によるキャッシュフローが△951百万円、財務活動によるキャッシュフローが△2,973百万円と、いずれも流出となりました。特に棚卸資産の増加が営業CFのマイナス要因となっています。
- ROE: 実績ROEは15.63%と、自己資本を効率的に活用し、高い収益性をあげていると言えます。
- 自己資本比率: 実績自己資本比率は43.6%、直近四半期末では45.4%と、財務の健全性は高い水準にあります。
- 流動比率: 直近四半期の流動比率は1.88倍であり、短期的な支払い能力に問題はありません。
- D/E (Debt/Equity)比率: 直近四半期の総負債比率(Total Debt/Equity)は40.02%と、負債水準も適切であり、健全な財務基盤を有しています。
9. 株主還元と配当方針
ワコムは、安定した株主還元策を実施しています。配当利回り(会社予想)は2.70%、1株配当(会社予想)は年間22.00円です。配当性向は59.51%と、利益の一定割合を株主還元に充てる方針を示しており、過去5年間の平均配当利回りも2.66%と比較的安定しています。
また、2025年5月16日には自己株式11,000,000株の消却を実施しており、配当だけでなく自社株買い(消却)を通じて株主資本効率の向上と株主還元にも力を入れていることが伺えます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は、短期的に高値圏からの調整局面にあるものの、中長期的には移動平均線を上回る上昇モメンタムを維持しています。年初来安値からの大幅な上昇は、投資家の関心が高いことを示しています。
信用取引の状況では、信用買残が503,200株に対し、信用売残が142,400株であり、信用倍率は3.53倍となっています。信用買い残が売り残よりも多い状況です。
機関投資家の保有割合は50.57%と高く、プロ投資家からの注目度も高いと考えられます。今後の株価に影響を与える要因としては、OEN先メーカーの製品サイクルや需要動向、為替変動(円高)、競争環境の変化、M&Aや新規事業投資の成果、事業構造改革の進捗などが考えられます。
11. 総評
ワコムは、ペンタブレット市場で世界シェア首位の地位を確立し、強力なブランド力と技術力を基盤とする企業です。OEM事業とブランド製品事業の二本柱で収益を上げており、特にテクノロジーソリューション事業が売上の大部分を占めます。中期経営計画「Wacom Chapter 4」に基づき、製品ポートフォリオの刷新、新規技術や市場への投資、事業構造改革を推進しており、直近の決算では売上減の一方で、構造改革による営業利益の改善が見られました。
財務基盤は自己資本比率が高く、流動性も問題ないことから非常に健全です。株価は年初来高値圏にあり、PERは業界平均と比べると割安感があるものの、PBRは割高感があります。安定配当と自己株式消却という株主還元策も継続的に実施されています。
今後の注目点は、為替変動を含むマクロ経済環境、OEM市場全体の需要回復とワコムの競争力維持、そして構造改革や新規投資が収益にどこまで貢献していくかとなるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: C
- LTM売上成長率(YoY)が-2.62%、直近四半期売上成長率(YoY)が-16.0%であり、売上が減少傾向にあるため。
- 収益性: B
- 過去12ヶ月のOperating Marginは11.14%、直近四半期は営業利益率が11.1%と前年同期から改善しています。業界平均と比較するデータがないものの、構造改革の進捗で一定の収益性を確保しており、今後の改善が期待されるため。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率45.4%、流動比率1.88倍、D/E比率40.02%と、いずれの指標も非常に健全な水準にあるため。
- 株価バリュエーション: B
- PER(会社予想)は業界平均と比較して割安な水準ですが、PBR(実績)は業界平均と比較して割高な水準にあります。両者を総合的に考慮し、中立的な評価としました。
企業情報
銘柄コード | 6727 |
企業名 | ワコム |
URL | https://www.wacom.com/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 電機・精密 – 電気機器 |
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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