個人の投資家の皆様へ
新日本科学(証券コード:2395)の企業分析レポートをお届けします。
1. 企業情報
新日本科学は、医薬品開発の初期段階で行われる「非臨床試験」(動物実験など)を受託する国内最大手のCRO(医薬品開発業務受託機関)です。同社の事業は主に以下の3つに分けられます。
* CRO事業(売上構成比約97%): 新薬や医療機器、再生医療製品の安全性、薬理、薬物動態などの試験を受託しています。特に、医薬品開発に不可欠な非ヒト霊長類(NHP)の繁殖・供給体制に強みを持っています。
* トランスレーショナルリサーチ(TR)事業: 独自の経鼻投与技術(SMART)を用いた製剤開発や、ライフサイエンス分野の企業投資、ライセンス仲介を行っています。経鼻片頭痛薬「Atzumi™」が米国でFDA(食品医薬品局)の承認を取得し、事業化を推進しています。
* メディポリス事業(売上構成比約1%): 鹿児島県で地熱・温泉発電事業やホテル運営などのホスピタリティ事業を展開しています。
本社は鹿児島にあり、グローバルに事業を展開しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
新日本科学は、非臨床試験受託サービスにおいて国内で確固たるトップの地位を築いています。特に、新薬開発に不可欠な非ヒト霊長類(NHP)の繁殖・供給体制は国内最大級であり、これが同社の大きな競争優位性となっています。
医薬品業界では、新薬の研究開発を外部のCROに委託する動きが世界的に加速しており、アウトソーシング需要は今後も堅調に推移する見込みです。核酸医薬や遺伝子治療薬といった新しい作用メカニズムを持つ医薬品の開発が活発化しており、同社はこれらに対応するバイオアナリティカル分析やMPS(Microphysiological System)導入にも注力し、技術面での競争力を高めています。欧米の顧客からの受注も増加しており、グローバルな市場での存在感も向上しています。
課題としては、TR事業のような先行投資型の事業が一時的に収益を圧迫する可能性があること、為替変動リスクや実験動物の安定供給に関わる地政学的リスクなどが挙げられます。
3. 経営戦略と重点分野
同社は「2028Vision」という中期ビジョンを掲げ、以下の財務目標を設定しています。
* 売上高:500億円
* 経常利益:200億円
* 売上高経常利益率:40%
* 配当性向:30~40%
具体的な施策としては、以下の分野に注力しています。
* CRO事業の強化とグローバル展開: 主力事業である非臨床試験受託において、非ヒト霊長類(NHP)の供給体制の維持・強化、先端技術の導入を進め、欧米を含む海外顧客からの受注を拡大し、収益基盤を盤石にすることを目指しています。
* TR事業における自社技術の事業化: 自社開発の経鼻投与技術(SMART)を活かした製剤の開発を推進し、特に米国FDA承認を取得した経鼻片頭痛薬「Atzumi™」の商業化を最重要課題としています。販売パートナーの選定や生産体制構築への投資を積極的に行い、将来の大きな収益源となることを目指しています。
* メディポリス事業の安定化・収益化: 温泉発電の安定稼働による収益貢献を目指し、事業の多角化を進めています。
4. 事業モデルの持続可能性
新日本科学の事業モデルは、安定したCRO事業の収益基盤と、将来の成長ドライバーとなるTR事業への投資、そしてメディポリス事業による多角化を組み合わせることで持続可能性を高めています。
CRO事業は新薬開発のアウトソーシングという継続的な市場ニーズに支えられており、同社の専門性とNHP供給体制は強力な競争優位性です。これにより安定した収益が期待できます。TR事業における経鼻投与技術は独自性が高く、既にFDA承認を得た製品は大きな潜在的価値を持っています。事業化に成功すれば、収益構造を大きく変える可能性があります。メディポリス事業の再生可能エネルギー分野も、中長期的な視点で見れば安定した収益源となる可能性があります。
一方、TR事業の開発投資に伴う費用や販売パートナーの獲得の不確実性、為替変動、特定の実験動物の供給に関する地政学的リスクなどが事業モデルのリスク要因として挙げられます。同社はこれらのリスクを管理しつつ、市場ニーズへの適応力を高めています。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向と独自性:
- 経鼻投与技術「SMART」: 薬を鼻から脳へ直接送達することで、迅速な効果発現や消化器系での分解回避を実現します。米国FDA承認済みの経鼻片頭痛薬「Atzumi™」はこの技術の代表例です。
- 非ヒト霊長類(NHP)の繁殖・供給体制: 医薬品開発に不可欠なNHPを社内で安定的に繁殖・供給できる体制は、同社のCRO事業における大きな独自性と強みです。
- バイオアナリシス機能の強化およびMPS(Microphysiological System)の導入: 薬物動態試験の質を高める分析技術と、動物実験の代替・削減を目指す次世代技術にも投資しています。
- 収益を牽引している製品やサービス:
- 現在の収益を牽引しているのは、売上の約97%を占めるCRO事業における非臨床試験受託サービスです。特に非臨床薬物動態試験や安全性試験が好調で、欧米顧客からの受注が増加しています。
- 将来の潜在的な牽引役としては、TR事業の経鼻片頭痛薬「Atzumi™」が挙げられます。現在商業化に向けて投資段階にありますが、成功すれば大きな収益源となることが期待されます。
6. 株価の評価
現在の株価1,589.0円に対し、PER(会社予想)は18.63倍、PBR(実績)は1.86倍です。
* PERでの評価: 業界平均PER17.0倍と比較すると、同社のPER(18.63倍)はやや割高な水準にあります。EPS(会社予想)85.27円に基づくと、PER基準の理論株価は約1,450.59円となり、現在の株価は理論株価より約9.5%割高と評価できます。
* PBRでの評価: 業界平均PBR1.8倍と比較すると、同社のPBR(1.86倍)はほぼ同水準で、わずかに高い水準です。BPS(実績)853.03円に基づくと、PBR基準の理論株価は約1,535.45円となり、現在の株価は理論株価より約3.5%割高と評価できます。
結論: PER、PBRともに業界平均と比較して、現在の株価はやや割高から適正水準と評価できるでしょう。TR事業の将来性や技術的な独自性に対する期待感が株価に織り込まれている可能性があります。
7. テクニカル分析
現在の株価1,589.0円は、年初来高値1,897円からは約16.3%低い水準にあります。一方で、年初来安値1,142円からは約39.1%高い水準です。
移動平均線を見ると、現在の株価は50日移動平均線(1,648.46円)を下回っており、短期的な調整局面・下降トレンドを示唆しています。しかし、200日移動平均線(1,505.79円)は上回っており、中長期的な上昇トレンドは維持されている可能性があります。
直近10日間の株価推移では、一時1,700円台から下落し、その後1,560円台で推移した後、1,600円前後で底堅く動いていますが、明確な上昇の勢いは見られません。
8. 財務諸表分析
- 売上: 過去数年間は一貫して増加しており、直近Q1(2026年3月期第1四半期)の売上高は64.77億円(前年同期比+16.7%)と過去最高を更新しています。これは主にCRO事業の成長によるものです。
- 利益:
- 粗利益: 売上高の増加に伴い、粗利益も順調に増加しており、粗利率はLTM(直近12ヶ月)で約52.3%と高水準です。
- 営業利益: 過去のピークからは減少傾向にあり、直近Q1ではTR事業への積極的な先行投資が影響し、3.40億円の営業損失を計上しました。
- 経常利益・純利益: 直近Q1では営業損失を計上したものの、新日本科学PPDからの持分法投資利益や為替差益が大きく寄与し、5.15億円の経常利益、2.60億円の親会社株主に帰属する四半期純利益(前年同期比+113.1%)を確保しています。多角的な収益構造が利益を支えています。
- キャッシュフロー: 第1四半期の連結キャッシュ・フロー計算書のデータが提供されていないため、詳細な分析は困難です。
- ROE(自己資本利益率): 実績(LTM)14.46%と、日本企業の平均を上回る高い水準であり、自己資本を効率的に活用して利益を生み出す能力があることを示します。
- ROA(総資産利益率): 実績(LTM)2.04%と、ROEと比較して低い水準です。総資産に占める負債の割合が高いことが影響している可能性があります。
- 自己資本比率: 実績43.3%、直近Q1で39.9%となっています。一般的に40%以上が健全とされる中で、現状はほぼ健全な水準ですが、直近Q1で40%を下回った点は注視が必要です。
- 流動比率: 直近Q1で113.6%です。短期的な支払い能力を示す指標として一般的に120%〜150%が望ましいとされるため、やや低い水準であり、短期的な資金繰りには注意が必要かもしれません。
- D/E比率(有利子負債/自己資本): 直近Q1の計算値で約102%と、有利子負債が自己資本を上回っており、財務レバレッジは高めです。TR事業や設備投資に伴う借入金増加が影響していると見られます。
傾向: 売上高は順調に成長していますが、TR事業への戦略的な先行投資が営業利益を押し下げています。しかし、営業外収益が業績を補完し、経常利益・純利益は確保されています。財務面では、自己資本比率は健全水準を維持しつつも、流動比率やD/E比率には改善の余地があると言えます。
9. 株主還元と配当方針
同社の配当利回り(会社予想)は3.13%です。これは、現在の市場環境においては魅力的な水準と言えます。1株配当(会社予想)は50.00円(中間20.00円、期末30.00円)であり、安定的な配当維持の方針が伺えます。
配当性向は実績で42.27%であり、中期ビジョン「2028Vision」で掲げる目標レンジ(30〜40%)をやや上回っています。これは、株主への還元意欲が高いことを示しています。過去5年間の平均配当利回り2.14%よりも現在の利回りが高いことから、直近の配当水準が向上していることがわかります。
提供データからは直近の自社株買いに関する明確な情報はありませんが、安定的な配当を通じて株主への還元を行う方針と見られます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
過去10日間の株価推移を見ると、短期的には下降トレンドから底堅く推移しているものの、上昇の勢いは乏しい状況です。株価は50日移動平均線を下回っており、短期的なモメンタムは弱含みです。一方、200日移動平均線は上回っており、中長期的なモメンタムは維持されている可能性があります。
直近の出来高は過去3ヶ月平均を下回っており、取引活動が低下傾向にあることを示しています。
信用取引の状況を見ると、信用買残が信用売残を大きく上回り、信用倍率は27.10倍と非常に高い水準です。これは、将来の株価上昇を期待して買い建てている投資家が多い反面、潜在的な売り圧力(しこり玉)が存在し、株価の上値を重くする要因となる可能性があります。
投資家の関心は、CRO事業の安定成長と、TR事業における経鼻片頭痛薬「Atzumi™」の商業化の具体的な進捗、そしてそれに伴う今後の収益貢献状況に集まるでしょう。また、為替動向や地政学的リスクも株価に影響を与える要因となり得ます。同社の技術的な独自性や安定したCRO事業は魅力的ですが、TR事業への大規模投資が一時的に収益を圧迫する点は注意が必要です。
11. 総評
新日本科学は、非臨床試験受託サービスにおいて国内トップという強固な事業基盤を持つCRO企業です。CRO事業は安定的に成長しており、売上高は増加傾向にあります。これは、新薬開発アウトソーシングの需要拡大と同社の技術的優位性に支えられています。
一方で、TR事業における経鼻片頭痛薬「Atzumi™」の事業化に向けた積極的な先行投資が、直近では営業利益を圧迫し営業損失を計上しています。しかし、持分法投資利益や為替差益により経常利益・純利益は確保されており、多角的な収益構造がリスクを分散しています。
財務面では、ROEは高水準ですが、自己資本比率は健全な水準を維持しつつも、流動比率や有利子負債比率には改善の余地が見られます。株主還元については、中期目標を上回る配当性向で、比較的高い配当利回りを維持しており、株主還元への意識は高いと言えます。
株価はPER、PBRともに業界平均と比べてやや割高から適正水準にあり、TR事業の将来性が一定程度織り込まれている可能性があります。短期的には調整局面にあるものの、中長期的には成長基調にあると見られます。信用倍率が高いため、需給面での潜在的な売り圧力には留意が必要です。
総じて、安定した基盤事業と将来の成長ドライバーを両輪で推進する戦略は方向性として評価できますが、TR事業の投資フェーズが続く間は、短期的な利益の変動や財務バランスの変化には注意が必要なフェーズにあると言えるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性:A
- LTM売上成長率(YoY)は約22.56%、3年CAGRは約22.09%と、高い成長率を維持しています。直近Q1の売上高成長率も16.7%であり、主力CRO事業が牽引し売上が順調に拡大しています。
- 収益性:B
- 粗利率はLTMで約52.3%と高水準ですが、LTM営業利益率は約9.21%、直近Q1ではTR事業への先行投資により営業損失を計上しています。経常利益率はQ1で約8.0%と回復していますが、営業段階での収益性は一時的に圧迫されています。CRO事業単体では利益貢献が大きいものの、連結では戦略投資が影響しているため「B」と評価します。
- 財務健全性:B
- 自己資本比率は実績で43.3%、直近Q1で39.9%と、概ね健全な水準と評価できます。流動比率(113.6%)はやや低く、D/E比率(自己資本比率に対する有利子負債比率102%)は比較的高めです。大規模な設備投資やTR事業への投資により負債が増加傾向にあるものの、即座に問題となる水準ではないため「B」と評価します。
- 株価バリュエーション:C
- PER(会社予想)18.63倍は業界平均17.0倍より高く、PBR(実績)1.86倍は業界平均1.8倍とほぼ同水準、あるいはわずかに高い水準です。業界平均と比較して、現在の株価はやや割高から適正範囲にあり、特段の割安感はないため「C」と評価します。
企業情報
銘柄コード | 2395 |
企業名 | 新日本科学 |
URL | http://www.snbl.co.jp/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 情報通信・サービスその他 – サービス業 |
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
本レポートは、不特定多数の投資家に向けた一般的な情報提供を目的としており、個別の投資ニーズや状況に基づく助言を行うものではありません。記載されている情報は、AIによる分析や公開データに基づいて作成されたものであり、その正確性、完全性、適時性について保証するものではありません。また、これらの情報は予告なく変更または削除される場合があります。
本レポートに含まれる内容は、過去のデータや公開情報を基にしたものであり、主観的な価値判断や将来の結果を保証するものではありません。特定の金融商品の購入、売却、保有、またはその他の投資行動を推奨する意図は一切ありません。
投資には元本割れのリスクがあり、市場状況や経済環境の変化により損失が発生する可能性があります。最終的な投資判断は、すべてご自身の責任で行ってください。当サイト運営者は、本レポートの情報を利用した結果発生したいかなる損失や損害についても一切責任を負いません。
なお、本レポートは、金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではなく、参考資料としてのみご利用ください。特定の銘柄や投資行動についての判断は、個別の専門家や金融機関にご相談されることを強くお勧めします。
企業スコアは、AIによる財務・業績データの分析をもとに試験的に算出した指標です。評価方法は現在も検討・改善を重ねており、確立した標準的な指標ではありません。投資判断の唯一の基準ではなく、あくまで参考情報としてご利用ください。