1. 企業情報
株式会社松屋は、1869年に創業した呉服店をルーツとする名門百貨店です。主要な事業は百貨店業で、東京の銀座と浅草に店舗を構え、衣料品、美容製品、家庭用品、食品、アートなどを提供しています。特に銀座本店は、高額品を扱うラグジュアリーブランドを強化し、インバウンド(訪日外国人観光客)需要を見込んでいます。連結事業としては、百貨店業が売上の83%を占め、その他に飲食業(7%)、ビル総合サービス及び広告業(6%)、その他の事業(4%)を展開しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
松屋は、銀座と浅草という都心の一等地で事業を展開する独立系百貨店です。特に銀座本店は、国内外の富裕層やインバウンド顧客を主要ターゲットとするラグジュアリーブランドの集積地としての競争優位性を持っています。決算短信によると、百貨店業界全体では富裕層中心の消費は堅調であるものの、免税売上(高額品)には一服感が見られ、東京地区百貨店売上高は前年を下回る動向が示されています。松屋は、銀座という立地を活かし、ラグジュアリーブランドの強化や地域共創プロジェクトを通じて差別化を図っていますが、百貨店業界全体としては競争が激しく、市場ニーズの変化への適応が課題となります。具体的な市場シェアのデータは提供されていませんが、店舗数から見て業界内での規模は大手百貨店に比べて小さいと推測されます。
3. 経営戦略と重点分野
松屋は、中長期的な経営計画として「『Global Destination』となることを目指して」を掲げています。この第1フェーズ(2025年~2027年)において、以下の分野を重点施策として推進しています。
– ラグジュアリーブランド強化: 銀座店でのルイ・ヴィトン増床リニューアルなどの大型改装を実施し、高額品需要の捕捉を目指します。
– 地域共創プロジェクト: 地域との連携を深め、独自の価値提供を行います。
– CRM強化: 顧客関係管理を強化し、顧客満足度向上と囲い込みを図ります。
– 資本効率向上策: 自己株式取得を決定するなど、株主還元と資本効率の改善に取り組みます。
当中間期では、大型リニューアル等の取り組みが進められた一方で、のれん等の減損計上も発生しており、一部想定した収益に達していない状況も伺えます。
4. 事業モデルの持続可能性
松屋の事業モデルは、都心の一等地である銀座と浅草の百貨店を核とし、特に銀座本店ではラグジュアリーブランドによる高額品販売を収益の柱としています。このモデルは、富裕層の消費意欲とインバウンド需要に大きく依存します。市場ニーズの変化への適応としては、決算短信において免税売上の一服感が指摘されているように、外部環境の変化に左右されやすい側面があります。これに対し、ラグジュアリーブランドの強化や地域共創プロジェクトなどの戦略で対応しようとしていますが、消費トレンドや為替変動、国際情勢など外的要因による影響を注視する必要があります。飲食業やビル総合サービスなど他事業も展開していますが、百貨店業への依存度が高い構造です。
5. 技術革新と主力製品
百貨店業において直接的な「技術革新」は限定的ですが、顧客体験向上のためのデジタル技術の導入や、効率的な店舗運営のためのシステム改善などは実施されている可能性があります。現在の情報からは、具体的な技術開発の動向や独自性に関する詳細なデータは確認できません。
収益を牽引している主力製品は、銀座本店で取り扱うラグジュアリーブランド品(衣料品、バッグ、時計、宝飾品など)であると推測されます。これらの高額品は特に、富裕層やインバウンド顧客による需要が高いです。
6. 株価の評価
現在の株価は1679.0円です。
– PER(会社予想): 74.23倍
– EPS(会社予想): 22.62円
– PBR(実績): 3.15倍
– BPS(実績): 532.94円
業界平均と比較すると、業界平均PERが21.3倍、PBRが1.8倍であるのに対し、松屋のPERは74.23倍、PBRは3.15倍と、どちらも業界平均を大きく上回っています。これは現在の株価が、利益や純資産に対して割高である可能性を示唆しています。特に、2026年2月期通期純利益予想の2,000百万円には約1,600百万円の投資有価証券売却益が含まれている見込みであり、本業の利益水準から考えると、PERはさらに高い水準にある可能性があります。
7. テクニカル分析
現在の株価1679.0円は、
– 年初来高値: 1767円
– 年初来安値: 890円
– 52週高値: 1767.00円
– 52週安値: 792.00円
に位置しています。
直近10日間の株価推移を見ると、10月8日の1550円から上昇し、10月15日に1741円に達した後、一度1600円台半ばまで調整が見られましたが、本日終値は1679円と、高値圏で推移しています。
50日移動平均が1388.62円、200日移動平均が1125.50円であることから、現在の株価は短期・長期の移動平均線を大きく上回っており、上昇トレンドの中にあります。年初来高値に迫る水準であり、比較的「高値圏」にあると言えるでしょう。
8. 財務諸表分析
売上高:
過去5年間(2022年2月期は特異値ですが、2023年2月期以降の回復傾向を確認します。)
– 2023年2月期: 34,400百万円
– 2024年2月期: 41,251百万円 (対前年比 +19.9%)
– 2025年2月期 (LTM): 48,120百万円 (対前年比 +16.6%)
– 2026年2月期通期予想: 45,000百万円 (対前期比 -6.5%)
足元の売上高は回復していましたが、2026年2月期は減収予想となっています。直近の第2四半期決算も売上高は前年同期比6.8%減でした。
利益:
営業利益は、2022年2月期の赤字から回復し、2025年2月期(LTM)には4,490百万円に達しましたが、2026年2月期通期予想では2,000百万円と大幅な減益を見込んでいます。直近の第2四半期営業利益も前年同期比63.8%減と低調でした。親会社株主に帰属する純利益も、2026年2月期通期予想は1,200百万円で、前期比49.7%減となる見込みです。
キャッシュフロー:
- 営業活動CF(過去12か月): +2,980百万円
- 営業活動CF(中間累計): +3,130百万円
営業活動によるキャッシュフローは安定的にプラスを維持しています。
– 投資活動CF(中間累計): △1,241百万円(有形固定資産取得など)
– 財務活動CF(中間累計): △728百万円(長期借入金返済など)
フリーキャッシュフローは過去12か月で-3.11Bとマイナスであり、投資活動による支出が大きいことが示唆されます。自己株式取得なども財務活動CFに影響を与える可能性があります。
収益性指標:
- ROE(実績): 8.79% (過去12か月: 1.71%)
- ROA(実績): 2.30%
直近の「企業財務指標」におけるROE1.71%とROA2.30%は、過去の決算短信記載のROE8.79%から大きく低下しており、収益性の鈍化を示唆しています。直近の中間期純利益はマイナスであったため、ROA、ROEもマイナスとなっています。
財務健全性:
- 自己資本比率(実績): 37.1%
- 流動比率(直近四半期): 0.57倍
- D/E(直近四半期): 74.44% (Total Debt/Equity)
自己資本比率は40%を下回っており、流動比率も0.57倍と短期的債務の支払能力においては課題があります。百貨店業の特性上、固定資産が多いとはいえ、流動性比率の低さは留意すべき点です。Total Debt/Equity比率は74.44%と管理可能な水準ですが、借入金返済等も継続的に行われています。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り(会社予想): 0.71%
- 1株配当(会社予想): 12.00円 (通期)
- 配当性向(Payout Ratio): 195.82%
配当性向が195.82%と極めて高く、利益に対して配当の負担が大きい状態です。これは、直近の利益水準が配当支払額を下回っていることを示しています。
2026年2月期の中間配当は6.00円(年間12.00円予想)と維持されています。
株主還元策として、2025年10月9日の取締役会で自己株式取得が決議されています。上限2,400,000株、取得総額上限4,000百万円で、2025年10月10日~2026年4月30日の期間で実施予定です。これは資本効率の向上と株主還元を目的としています。また、投資有価証券の一部売却(売却益見込み約1,600百万円)も決定されており、これが財務状況や株主還元に影響を与える可能性があります。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近10日間の株価は上昇傾向にあり、高値を更新しつつあります。52週高値1,767円に近づいており、株価モメンタムは強めに作用していると見られます。
信用取引においては、信用買残76,300株に対し、信用売残は376,900株と信用売残が大幅に多く、信用倍率は0.20倍と低いです。これは株価上昇時に踏み上げが発生しやすい状況を示唆している可能性があります。
直近の出来高は増加傾向にあり、投資家の関心は高まっていると推測されます。
株価に影響を与える要因としては、
– インバウンド需要の動向: 銀座店の高額品販売に直結するため、非常に重要です。
– 今後の業績見通し: 2026年2月期は減収減益予想ですが、下半期の回復や特別利益(投資有価証券売却益)の寄与の程度。
– 株主還元策: 自己株式取得は、需給面で株価を支える可能性があります。
– 金利動向: 百貨店業は不動産を多く活用するため、金利上昇は財務費用に影響を与えかねません。
11. 総評
松屋は、銀座と浅草に店舗を構える名門百貨店であり、特に銀座本店ではラグジュアリーブランドを強化し、富裕層とインバウンド需要の取り込みを図っています。しかし、百貨店業界全体としては、高額品需要の一部に一服感が見られるなど、外部環境の変化に左右されやすい課題を抱えています。
直近の業績(2026年2月期第2四半期)は、売上高・営業利益ともに前年同期比で減少し、通期でも減収減益予想となっています。特に、純利益については特別利益(投資有価証券売却益)に支えられる見込みであり、本業の収益力には注意が必要です。
財務面では、自己資本比率が40%を下回り、流動比率が低い点が課題として挙げられます。一方で、自己株式取得の決定や投資有価証券の売却といった資本効率改善・株主還元策は進められており、これは株価の下支え要因となる可能性があります。
現在の株価は、年初来高値圏にあり、PER、PBRともに業界平均を大きく上回る水準で推移しており、割高感があります。投資家の関心は高く、信用倍率の低さはショートカバーの可能性も示唆しています。
今後の注目点は、インバウンド需要の回復状況、銀座店のラグジュアリー戦略の成否、そして自己株式取得を含む株主還元策の進捗となるでしょう。
12. 企業スコア
-
成長性: C
LTM売上高は前年比+16.6%と伸びていますが、直近四半期の売上高は前年同期比で6.8%減、さらに2026年2月期の通期売上高予想も前期比6.5%減と、足元および今後の見通しは鈍化・減少傾向にあるためC評価とします。
– 収益性: C過去12ヶ月の営業利益率は約9.33%ですが、直近の中間期営業利益率は約4.47%と大幅に低下しており、通期予想も約4.44%と低水準です。特に前年同期比での大幅な減益が見込まれており、本業の収益力悪化が懸念されるためC評価とします。
– 財務健全性: C自己資本比率は37.1%で40%を下回っており、流動比率は0.57倍と短期的支払い能力に課題があります。D/E比率は74.44%と極端に高いわけではありませんが、自己資本比率の低さと流動性の不足からC評価とします。
– 株価バリュエーション: DPER(会社予想)は74.23倍、PBR(実績)は3.15倍であり、業界平均PER21.3倍、PBR1.8倍と比較して大幅に割高感があります。また、EPSが特別利益によって押し上げられている可能性を考慮すると、本業の利益に基づく評価はさらに割高となるためD評価とします。
企業情報
銘柄コード | 8237 |
企業名 | 松屋 |
URL | http://www.matsuya.com/ |
市場区分 | プライム市場 |
業種 | 小売 – 小売業 |
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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