1. 企業情報

出光興産株式会社は、1911年創業の国内大手エネルギー企業です。核となる事業は石油精製・販売であり、国内の石油元売り業界では第2位の地位を占めています。昭和シェル石油との経営統合により、その事業基盤を強化しました。事業セグメントは多岐にわたり、燃料油が売上全体の84%を占める一方で、基礎化学品(例: エチレン、プロピレン)、潤滑油や電子材料などの高機能材、電力・再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱)、そして原油・天然ガス・石炭などの資源開発も手掛けています。国内のみならず、アジア、オセアニア、北米など国際的にも事業を展開しており、海外売上比率は29%(2025年3月期)です。

2. 業界のポジションと市場シェア

国内の石油元売り業界において、競合他社統合を経て第2位のポジションを確立しています。これは、安定した供給能力と広範な販売網を持つことを意味します。燃料油事業は国内市場の需要変動や国際的な原油価格に大きく左右される性質を持ちますが、石油化学品、高機能材といった非燃料事業や、豪州石炭権益といった資源事業を持つことで、事業ポートフォリオの多角化を図っています。これにより、燃料油事業の市場環境変化に対する耐性を高めようとしていますが、主力である燃料油事業の比率が高く、市況変動の影響を受けやすいという課題があります。

3. 経営戦略と重点分野

提供データからは、具体的な中期経営計画のビジョンや詳細な戦略に関する記述は見られませんでした。しかし、事業セグメントの構成から、燃料油事業を基盤としつつ、基礎化学品、高機能材、電力・再生可能エネルギー、資源といった分野への事業拡大と高付加価値化を目指していることが推測されます。特に、電力・再生可能エネルギー分野は、グローバルな脱炭素化の流れの中で、将来的な成長ドライバーとして重要度が増していると見られます。

4. 事業モデルの持続可能性

出光興産の収益モデルは、燃料油事業が大部分を占めるため、原油価格の変動、精製マージン、製品市況、為替レートの動向に大きく影響されます。これは、市場ニーズや外部環境の変化に収益が直結しやすい特性を持つことを意味します。一方で、電力・再生可能エネルギーといった将来性のある分野への投資を通じて、脱炭素社会への移行期における事業構造の転換を図ろうとしています。高機能材などの分野で高付加価値製品の提供を強化することも、持続可能性を高める上での重要な戦略と考えられますが、現時点での売上構成比と利益貢献度は燃料油事業に大きく依存しており、その収益の安定化と新規事業の早期育成が課題となります。

5. 技術革新と主力製品

技術開発に関する具体的な記載は詳細ではありませんが、高機能材セグメントでは潤滑油、先進材料、機能化学品、電子材料、アスファルト・機能舗装材料、農薬や機能性飼料などのアグリバイオテクノロジー製品といった幅広い分野の製品を提供しています。これらの製品は、特定の市場ニーズに対応するための技術や素材の強みを有していると考えられます。しかし、現状の収益を最も大きく牽引しているのは燃料油事業であり、原油を精製して得られるガソリン、軽油、灯油などが主力製品と言えます。今後は、特に再生可能エネルギー分野や高機能材分野での技術革新が、新たな収益源となることが期待されます。

6. 株価の評価

現在の株価1,082.0円に対し、各種指標は以下の通りです。
* EPS(会社予想): 40.83円
* PER(会社予想): 26.50倍
* BPS(実績): 1,370.50円
* PBR(実績): 0.79倍
* 配当利回り(会社予想): 3.33%

業界平均PER8.0倍と比較すると、出光興産のPER26.50倍は割高に見えます。これは、会社予想EPS40.83円が直近の業績悪化を反映して低い水準にあるためと考えられます。一方で、業界平均PBR0.9倍と比較すると、出光興産のPBR0.79倍は割安感があります。
直近12か月のEPS(77.83円)を用いた場合、PERは約13.9倍となりますが、これも業界平均よりは高い水準です。PBRは企業の純資産価値に対する株価の指標であり、出光興産が純資産価値を下回る評価を受けていることを示しています。利益の変動が大きく、特に直近で大幅な減益となっているため、EPSベースのPER評価は変動しやすい状況にあります。

7. テクニカル分析

現在の株価1,082.0円は、年初来高値1,190円、52週高値1,190.50円からやや下方にあるものの、年初来安値799円、52週安値799.10円からは大きく上昇した水準にあります。
50日移動平均線(1,016.93円)および200日移動平均線(970.18円)を上回っていることから、短期的および中期的に上昇トレンドにあると見られます。
提供された直近10日間の株価履歴は古い日付(2025年3月末〜4月上旬)のものですが、その期間中も概ね上昇傾向を示していました。

損益計算書(年度別比較)

  • 売上高 (Total Revenue): 過去数年で変動が大きいですが、2023年3月期には9.45兆円とピークを迎えました。しかし、直近の過去12か月では9.19兆円、さらに2026年3月期第1四半期では前年同期比18.5%減の1.84兆円と、減少傾向にあります。
  • 売上総利益 (Gross Profit): 売上高と同様に変動が大きく、ピークであった2022年3月期の8841億円から、直近の第1四半期では1046億円と大幅に減少しています。
  • 営業利益 (Operating Income): 2022年3月期の4344億円を頂点に、減少傾向が続いています。特に2026年3月期第1四半期では、前年同期の1225億円の利益から一転して210億円の営業損失を計上しており、収益力の急激な悪化が見られます。
  • 純利益 (Net Income Common Stockholders): 営業利益と同様に2022年3月期の2794億円をピークに減少しており、直近の第1四半期では前年同期比94.5%減の52億円と、大幅な減益となりました。これは、主に原油価格下落に伴う在庫評価差や販売価格のタイムラグ、製品市況の悪化が影響しています。

企業財務指標

  • ROE(実績): 直近12か月で0.67%と、過去の5.91%から大きく低下しており、株主資本を効率的に活用して利益を上げられていない状況を示しています。
  • ROA(実績): 直近12か月で0.25%と、総資産に対する利益効率も低下しています。
  • 自己資本比率(実績): 2026年3月期第1四半期末で38.3%と、前期末の36.0%からわずかに改善傾向にあります。負債の多いエネルギー企業としては一般的な水準ですが、より高い健全性が望ましいでしょう。
  • 流動比率(実績): 2026年3月期第1四半期末で1.28と、短期的な支払い能力に問題はない水準です。
  • D/E比率(Total Debt/Equity): 2026年3月期第1四半期末で71.69%と、負債が自己資本の約0.7倍であり、これもエネルギー産業として異常に高い水準ではありません。

総括: 直近の財務状況は、売上および利益の大幅な減少により厳しい局面を迎えています。市況変動への脆弱性が露呈し、収益性が大きく低下している点が課題です。一方で、自己資本比率は改善傾向にあり、流動性も維持されています。

9. 株主還元と配当方針

出光興産は、安定的な株主還元策として配当を実施しています。会社予想の1株配当は年間36.00円(中間18.00円、期末18.00円)であり、これに基づく配当利回りは3.33%です。配当性向は、直近は利益水準の低下により高まる可能性がありますが、会社公表のデータでは46.25%と示されています。
また、2025年4月30日には自己株式69,331千株を消却しており、これは発行済株式数の減少を通じて1株当たりの価値を高める、積極的な株主還元策の一つです。会社は通期業績予想を据え置いていますが、今後の利益水準の推移が配当方針の持続性に影響を与える可能性があります。

10. 株価モメンタムと投資家関心

現在の株価は、50日移動平均線および200日移動平均線を上回っており、短期的・中期的に上昇トレンドにあることを示唆しています。本日株価は前日終値から上昇しており、直近のモメンタムはポジティブです。
投資家関心としては、本日の出来高が2,588,500株であり、3ヶ月平均出来高3.74M株を下回るものの、10日平均出来高2.75M株とは同程度の水準です。信用買残が多い一方で信用売残が少ないため(信用倍率3.89倍)、需給面では買い方が優勢であるものの、買い残の多さが将来的な株価の上値を抑える可能性も考えられます。今後の国際的な原油価格の動向、脱炭素化に向けた事業転換の進捗、および各セグメントの収益回復が、株価への主要な影響要因となると考えられます。

11. 総評

出光興産は、国内石油元売り大手として強固な事業基盤を持つ一方で、燃料油事業への高い依存度とそれによる市況変動リスクに直面しています。直近の決算では、原油価格の下落や市況悪化により収益が大幅に悪化し、営業利益が損失を計上するなど厳しい状況が見られます。事業多角化として、基礎化学品、高機能材、再生可能エネルギー分野へも進出していますが、その収益貢献はまだ限定的です。
財務健全性は自己資本比率が改善傾向にあり、流動性も確保されていますが、収益性の低下、特にROEやROAの低迷は課題です。株価は移動平均線を上回り、短中期的な上昇トレンドにありますが、PERは会社予想EPSが低いことから高水。PBRでは割安感があるものの、今後の利益回復と成長戦略の具体化が投資家の評価を左右するでしょう。安定配当と自己株式消却による株主還元は評価できますが、持続的な利益成長なくしては真の企業価値向上は難しい局面にあると言えます。

12. 企業スコア

  • 成長性: C
    • 2026年3月期第1四半期の売上高は前年同期比で18.5%減、過去12か月および直近の純利益も大幅な減少傾向にあります。事業規模は大きいものの、売上・利益ともに減少傾向を示すため「C」と評価します。
  • 収益性: D
    • 直近の過去12か月における営業利益率は-1.14%と営業損失を計上しており、ROE0.67%、ROA0.25%と非常に低い水準です。特に2026年3月期第1四半期で営業損失を計上していることから、収益性は「D」と評価します。
  • 財務健全性: B
    • 自己資本比率38.3%は、健全性の一つの目安である40%には届かないものの、前期末から改善傾向にあります。流動比率1.28、D/Eレシオ0.72倍も、著しく問題がある水準ではありません。全体としては「B」と評価します。
  • 株価バリュエーション: C
    • PER(会社予想)26.50倍は業界平均8.0倍を大きく上回り割高感があります。これは予想EPSが低いことに起因します。PBR(実績)0.79倍は業界平均0.9倍を下回り、割安感がありますが、直近の利益の急激な落ち込みを考慮すると、バリュエーション全体としては「C」と評価します。

企業情報

銘柄コード 5019
企業名 出光興産
URL http://www.idemitsu.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 エネルギー資源 – 石油・石炭製品

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By ジニー

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