1. 企業情報
株式会社パピレスは、1995年設立の電子書籍販売・配信の先駆的存在です。電子コミックを中心としたレンタルサイト「Renta!」を主力事業として運営しており、国内外への電子書籍配信、販売システムの開発も行っています。近年では、オリジナルIPの企画・制作や、縦型コミック（タテコミ）、モーション付きコミック（アニコミ）といった次世代コンテンツの開発・提供にも注力しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
パピレスは、電子書籍市場における先駆者としての実績と、独自の電子貸本サービス「Renta!」という明確な事業モデルで市場に存在感を示しています。「Renta!」は会員数1,000万人を突破し、一定の顧客基盤を確立しています。
一方で、電子書籍市場は参入企業が多く、競争が激化しています。コンテンツの仕入れ費用（版権費用）や広告・販促コストが増加しており、収益性への圧力が課題となっています。個人情報保護法の改正に伴うターゲティング広告規制の強化も、今後の販促活動に影響を及ぼす可能性があります。具体的な市場シェアの数値は提供された情報からは不明です。
3. 経営戦略と重点分野
パピレスの経営戦略は、「Renta!」を中心とした電子書籍事業の強化と、将来の成長を担うIP制作事業の育成にあります。
重点施策として以下を掲げています。
* 電子書籍事業の強化: コンテンツの拡充、割引・クーポン施策などの販促活動、TVCMや動画・SNSを活用した集客、アプリ・サイトの機能改善、タテコミ・アニコミといった次世代コンテンツの開発、英語版・繁体字版サイトの運営や取次を通じた海外直販の強化。
* IP制作事業の推進: セガサミーホールディングスとの合弁会社（JadeComiX）を通じて、オリジナルIPやWebtoonなどの企画・制作を進めています。現在は制作段階であり、先行投資フェーズにあります。
これらにより、ブランド力の強化、ユーザー数の拡大、新たな収益源の確立を目指しています。
4. 事業モデルの持続可能性
パピレスの主力である「Renta!」は、電子書籍の「レンタル」という柔軟な課金モデルを提供しており、消費者の多様なニーズに対応しています。Webtoonやアニコミといった次世代コンテンツへの積極的な取り組みは、多様化する市場ニーズへの適応力を示しています。また、海外展開にも意欲的であり、国内市場の成長鈍化リスクに対応しようとしています。
しかし、電子書籍市場の競争激化、コンテンツ仕入価格および広告・販促コストの増加は、収益性を圧迫する要因となり得ます。IP制作事業は将来的な収益源となる可能性を秘める一方で、現在は先行投資期間であり、収益化までの道のりが持続可能性への課題となる可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
パピレスの主力製品は、電子書籍レンタルサイト「Renta!」です。このプラットフォームは、幅広いジャンルの電子コミックを中心に提供しており、ユーザーが手軽に電子書籍を楽しめる環境を整備しています。
技術革新への取り組みとしては、縦読み形式の「タテコミ」や、音声・動きが加わった「アニコミ」といった次世代の電子コンテンツ開発に注力しています。これらの取り組みは、新しい読書体験を提供し、市場の変化に対応するパピレスの独自性を高めています。また、電子書籍販売システムの自社開発も、技術的な強みの一つです。
6. 株価の評価
現在の株価945.0円に対し、会社予想EPS25.41円に基づくとPERは約37.11倍です。PBRは実績BPS1,036.97円に基づくと約0.91倍です。
業界平均PERが17.6倍であることと比較すると、パピレスのPERは大幅に高い水準にあります。これは、2025年3月期に純損失を計上する見込みであることや、翌期以降の急激な利益回復への期待が反映されている可能性があります。一方、PBRは業界平均1.6倍と比較して0.91倍と割安な水準にあり、資産価値に対し株価が低いと見ることができます。利益水準が低迷しているため、現時点ではPERの水準は市場の期待値を織り込んでいると捉えられます。
7. テクニカル分析
現在の株価は945.0円です。年初来高値が1,000円、年初来安値が781円であるため、現在の株価は年間変動幅の中で高値圏に近い位置にあります。
50日移動平均線913.92円、200日移動平均線900.39円を共に上回って推移しており、株価は直近で上昇傾向にあると見られます。過去10日間の株価推移も小幅ながら上昇傾向を示唆しています。出来高は4,900株と比較的低く、流動性は限定的である可能性があります。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去からの推移を見ると、2022年3月期の20,700百万円をピークに、2023年3月期18,626百万円、2024年3月期17,175百万円と継続して減少傾向にあります。2025年3月期予想も15,768百万円、2026年3月期予想では15,365百万円と、売上高は減少が続く見通しです。
- 利益: 営業利益は2022年3月期957百万円から減少傾向が続き、2025年3月期は-309百万円の営業損失（予想）となりました。親会社株主に帰属する当期純利益も同様に減少して2025年3月期は-164百万円の純損失（予想）です。しかし、2026年3月期は営業利益435百万円、純利益219百万円と黒字転換を見込んでおり、直近の2026年3月期第2四半期（中間期）決算では既に営業利益154百万円と黒字に転換し、前年同期比で大幅に改善しています。
- キャッシュフロー: 2026年3月期中間期の営業活動によるキャッシュフローは+619百万円と、前年中間期の+109百万円から大きく改善しました。投資活動CFは+6百万円、財務活動CFは-87百万円であり、潤沢な現預金を維持しています。
- 収益性指標: ROEは-1.71%、ROAは-0.31%と、2025年3月期の赤字見通しを反映して低迷しています。しかし、2026年3月期の黒字回復予想により、今後の改善が期待されます。粗利率は中間期で約47.2%と安定しています。
- 財務健全性: 自己資本比率は実績で69.8%、直近中間期でも67.9%と非常に高く、財務基盤は強固です。流動比率も直近四半期で3.00と高く、短期的な支払い能力も極めて健全です。
9. 株主還元と配当方針
配当利回り（会社予想）は1.06%で、1株配当（会社予想）は年間10.00円（中間配当0.00円、期末配当10.00円）です。配当性向は45.64%となっています。
自社株買いについては、発行済株式数の15.95%に相当する1,646,700株の自己株式を保有しており、これは過去の自社株買いによる株主還元策と見られます。配当と自社株買いを通じて、株主への還元を行っています。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近10日間の株価は小幅ながら上昇傾向にあり、50日および200日移動平均線を上回るなど、短期的なモメンタムは強含んでいます。
しかし、出来高は低く（直近3ヶ月平均5.28千株、直近10日平均4.07千株）、市場の流動性は低い状態です。信用買残は150,600株に対して信用売残が0株であり、信用倍率0.00倍と、個人投資家による買い圧力が存在する一方で、空売りはほとんど入っていません。β値が0.33と低いことから、市場全体の動きに対する株価変動は穏やかであると見られます。
株価への影響要因としては、IP制作事業の進捗と収益化、電子書籍市場の競争環境、広告効率の変化、そして現在の業績黒字回復予想の達成度などが挙げられます。
11. 総評
パピレスは、電子書籍のレンタルモデル「Renta!」を主力とし、長年にわたり事業を展開してきた先駆者です。売上高は減少傾向にあり、2025年3月期は赤字に転落しましたが、直近の中間期決算で利益は改善し、2026年3月期は黒字に回復する見込みです。Webtoonやアニコミといった次世代コンテンツ、IP制作事業、海外展開への投資を通じた将来の成長戦略を模索しています。財務体質は極めて健全であり、自己資本比率や流動比率は非常に高い水準を維持しています。株価は高値圏にありますが、PBRは割安感があり、直近の利益水準が低いためPERが高い状態です。市場における流動性は低く、IP制作事業の収益化が今後の重要な株価変動要因となるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: D
- 過去数期にわたり売上高が継続的に減少傾向にあり、直近の通期予想でもこの傾向が続いているため。
- 収益性: C
- 過去数年間で利益率が低下し、一時的に営業損失・純損失を計上しています。直近の中間期では黒字転換したものの、依然として業界平均を大きく上回る水準とは言えず、回復途上にあるため。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率が約70%と極めて高く、流動比率も300%超を維持しており、盤石な財務基盤を有しているため。
- 株価バリュエーション: C
- 会社予想PERが約37倍と、業界平均（17.6倍）と比較して大幅に割高な水準であるため。PBRには割安感があるものの、現在の利益水準を考慮すると、PERの割高感が目立つと判断されます。
企業情報
| 銘柄コード | 3641 |
| 企業名 | パピレス |
| URL | https://www.papy.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – 情報・通信業 |
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