武蔵野興業(9635)企業分析レポート
個人投資家の皆様へ
本レポートでは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する武蔵野興業株式会社(9635)について、皆様の投資判断の一助となるよう、多角的に分析した結果を分かりやすくご説明いたします。
1. 企業情報
武蔵野興業は、1920年設立の老舗企業で、東京・新宿を拠点に事業を展開しています。主な事業は、映画館の運営を行う「映画事業」、ビル等の賃貸・不動産売買仲介を行う「不動産事業」、自動車教習所の運営を行う「自動車教習事業」です。現在の連結事業構成(2025年3月期予想)では、売上高においては映画事業が34%、不動産事業が43%、自動車教習事業が22%を占めていますが、利益面では不動産事業が主要な柱となっています。
主力製品・サービスの特徴:
- 映画事業: 新宿の「武蔵野館」をはじめとする映画館の運営。近年はアート系作品の上映にも注力しています。
- 不動産事業: 都心部のテナントビル賃貸が中心で、安定した賃料収入を確保しています。不動産売買仲介も手掛けています。
- 自動車教習事業: 自動車運転免許の取得サポートや各種講習を提供しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
武蔵野興業は、東京・新宿という好立地に映画館や不動産を保有する老舗企業としての地位を確立しています。しかし、各事業セグメントにおける具体的な市場シェアや業界内での競争優位性を示す公開データはありません。
市場動向と企業の対応状況:
決算短信では、国内の所得環境改善やインバウンド回復が経済全体の下支え要因となるとしつつも、米国の関税政策等の不透明性や物価上昇が消費マインドに与える影響に注意が必要であると認識しています。映画事業では、上映作品の興行成績に業績が左右されやすく、シネマカリテの閉館など事業構造の変化も進行中です。不動産事業は都心立地という強みがあるものの、テナント動向は経済状況に依存します。
3. 経営戦略と重点分野
決算短信には、中期経営計画の進捗や具体的な戦略についての詳細な記載はありません。新製品や新サービスの展開についても、特に言及はありません。
当中間期においては、シネマカリテを2026年1月12日に閉館する予定であることや、投資有価証券の売却益を計上し、財務体質の強化を図っていることが主な動向として挙げられます。
4. 事業モデルの持続可能性
武蔵野興業の事業モデルは、映画、不動産、自動車教習という多角的な構成が特徴です。特に不動産事業が利益の柱となっており、安定的な賃料収入が全体の収益を下支えしています。この多角化は、特定の事業リスクを分散する効果を持っています。
市場ニーズの変化への適応力について具体的な言及はありませんが、不動産賃貸業は比較的安定的な収益源であり、立地選定やテナント誘致のノウハウが重要です。売上計上時期の偏りに関する具体的なデータは提供されていません。
5. 技術革新と主力製品
武蔵野興業の事業は、映画興行、不動産、自動車教習といったサービス業が中心であり、技術開発の動向に関する情報や独自の技術革新についての記載はありません。
収益を牽引しているのは、企業概要にもある通り「不動産事業」です。当中間期の実績でも不動産事業がセグメント利益の大部分を占め、全体の営業利益に大きく貢献しています。
6. 株価の評価
現在の株価2,177.0円に対し、PER(会社予想)は6.70倍、PBR(実績)は0.58倍です。
* 会社予想EPS 325.00円に対する株価は、6.70倍と低水準です。
* 実績BPS 3,769.14円に対する株価は、0.58倍と純資産価値に対して割安な評価となっています。
業界平均PER: 15.0倍、業界平均PBR: 1.2倍と比較すると、現在の武蔵野興業の株価はPER、PBRともに業界平均を大幅に下回っており、割安と判断できる水準です。
7. テクニカル分析
現在の株価2,177.0円は、年初来高値2,783円と年初来安値2,003円の中間よりも安値圏に近い位置にあります。52週高値2,783円、52週安値1,950円のレンジで見ても、現在の株価は安値寄りの水準です。
直近10日間の株価推移を見ると、概ね2,161円~2,220円の狭いレンジで推移しており、大きな値動きは見られません。
出来高は直近で600株、売買代金は1,312千円と非常に少なく、市場の関心度は低い状態が続いており、流動性が低い点には注意が必要です。平均出来高(3ヶ月)2.4k株、平均出来高(10日)290株と比較しても、直近の出来高は低くなっています。
8. 財務諸表分析
売上と利益の推移(年度別)
| Breakdown | 2025年3月期(予) | 2024年3月期 | 2023年3月期 | 2022年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,364百万円 | 1,282百万円 | 1,379百万円 | 1,290百万円 |
| 営業利益 | 69百万円 | 20百万円 | 51百万円 | 79百万円 |
| 経常利益 | 82百万円 | 16百万円 | 34百万円 | 78百万円 |
| 純利益 | 64百万円 | 4百万円 | 40百万円 | 50百万円 |
2024年3月期は、売上高がやや減少傾向にあり、営業利益、経常利益、純利益ともに大幅に落ち込みました。2025年3月期(予想)では、売上高は横ばいながらも利益は改善する見込みです。特に純利益は、後述する特別利益により大きく増加する予想となっています。
四半期決算の進捗状況(2026年3月期第2四半期)
通期業績予想に対して、売上高は50.3%、営業利益は58.3%、経常利益は65.0%の進捗ですが、親会社株主に帰属する中間純利益は326百万円で、通期予想340百万円の約95.9%に達しています。これは、当中間期に投資有価証券売却益376百万円を特別利益として計上したことが主因です。本業の収益(営業利益)は低い水準で推移しており、特別利益を除くと、通期純利益予想達成には下半期での収益改善が待たれる状況です。
ROE、ROA
ROE(実績)は1.78%でしたが、過去12ヶ月では9.84%となっています。ROA(過去12ヶ月)は0.57%と低い水準です。これは、資産規模に対し、利益創出力が低いことを示唆しています。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率(中間期): 63.0% (前期末59.5%)
- 流動比率(直近四半期): 4.40倍
- 負債比率(直近四半期、Total Debt/Equity): 7.38%
これらの指標から、武蔵野興業の財務健全性は非常に高いと評価できます。自己資本比率は安定経営の目安とされる40%を大きく上回り、流動比率も4倍を超える高い水準で、短期的な支払い能力に全く問題ありません。負債比率も極めて低く、有利子負債は中間末で約287百万円と比較的小規模です。金利負担もInterest Expenseが減少傾向にあるなど限定的です。現金及び預金も1,133百万円と潤沢に保有しており、財務安全性は極めて高い状態です。
10. 収益性分析
- ROE(過去12ヶ月): 9.84% (一般的なベンチマーク10%に近い)
- ROA(過去12ヶ月): 0.57% (一般的なベンチマーク5%に対し大幅に低い)
- Profit Margin(過去12ヶ月): 27.71%
- Operating Margin(過去12ヶ月): 1.22%
- 売上総利益率(中間期): 約52.5%
- 営業利益率(中間期): 約1.2%
売上総利益率は高いものの、販管費等の営業費用が大きく、営業利益率は非常に低い水準にあります。ROEはベンチマークに近いですが、ROAが極めて低いことから、資産の効率的な活用と本業の収益力向上に改善余地があると考えられます。特に、映画事業や自動車教習事業がセグメント損益で赤字となっている点も注目されます。
11. 市場リスク評価
- ベータ値(5年月次): 0.08
ベータ値が0.08と非常に低いことから、市場全体の動きに対する株価感応度が極めて低いことを示しています。これは、市場環境が悪化した場合でも株価変動が小さい可能性を示唆しますが、市場が好調な場合も恩恵を受けにくい傾向があります。
52週高値2,783円、52週安値1,950円に対して、現在の株価2,177.0円は安値圏に近い位置にあります。
決算短信に記載のリスク要因:
- 世界情勢の不透明性(例:米国の関税政策等)
- 物価上昇による消費マインドへの影響
- 事業別リスク:映画興行の作品依存、自動車教習事業の設備更新費用、不動産事業のテナント動向など
12. バリュエーション分析
- 現在の株価: 2,177.0円
- PER(会社予想): 6.70倍 (業界平均15.0倍)
- PBR(実績): 0.58倍 (業界平均1.2倍)
業種平均PER/PBRと比較すると、武蔵野興業の株価は大幅に割安な水準にあります。
提供データによる目標株価レンジは以下の通りです。
* 目標株価(業種平均PER基準): 931円
* (※注記:この値は、過去12ヶ月のEPSである62.09円に業界平均PER15.0倍を適用した場合の近似値と考えられます。会社予想EPS 325.00円に業界平均PER 15.0倍を適用した場合、目標株価は4,875円となります。)
* 目標株価(業種平均PBR基準): 4,522円 (実績BPS 3,769.14円 × 業界平均PBR 1.2倍)
PER基準の目標株価は過去実績ベースと会社予想ベースで大きく異なる点に注意が必要です。会社予想EPSに基づくPER評価と、堅固なBPSに基づくPBR評価は、現在の株価が割安である可能性を示唆しています。ただし、PER基準の目標株価がなぜ931円と低く算出されているかについては、特別利益が予想EPSを大きく押し上げているため、本業収益力で評価すると低くなる、といった判断が働いている可能性も考えられます。全体としては、現在の株価は純資産価値や本業の利益予想(特別利益を除く場合)に対して割安感があると言えます。
13. 市場センチメント分析
- 信用買残: 3,500株
- 信用売残: 0株
- 信用倍率: 0.00倍 (信用売残がないため)
信用取引の状況は信用売残が0株であるため、需給バランスは信用買いに偏っていますが、総じて信用取引の規模は小さく、市場全体への影響は限定的と考えられます。
株主構成を見ると、経営陣による持株比率が高いことが特徴です。「% Held by Insiders」が56.44%と過半数を占めており、筆頭株主である河野義勝氏(代表取締役社長)が31.01%を保有しています。これは経営の安定性につながる一方、市場に流通する株式(浮動株)が少ないことを示しており、低い流動性の一因とも考えられます。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回り(会社予想): 0.00%
- 1株配当(会社予想): 0.00円
- 配当性向: 0.00%
武蔵野興業は、現在のところ配当を実施しておらず、株主還元策として配当金は提供していません。自社株買いや株式報酬型ストックオプションといった他の株主還元策に関する情報は提供されていません。
15. 最近のトピックスと材料
2026年3月期第2四半期決算短信より:
- 特別利益の計上: 当中間期において、投資有価証券売却益376百万円を特別利益として計上し、親会社株主に帰属する中間純利益が326百万円と大幅に増加しました。これは通期純利益予想の大半を占めるものであり、財務体質強化に寄与しています。
- シネマカリテ閉館: 映画事業の一環である「シネマカリテ」を2026年1月12日に閉館する予定です。これは映画事業の再編と見られ、今後の事業構成に影響を与える可能性があります。
これらのトピックスは、特に特別利益の計上が足元の純利益を大きく押し上げている点で注目されます。一方で、本業の収益改善が課題として残る中、映画事業の構造変化も今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。
16. 総評
武蔵野興業は、映画、不動産、自動車教習という多角的な事業を展開する老舗企業です。
強み:
- 安定的な不動産収入: 不動産事業が利益の柱であり、都心部に優良な不動産を保有していることで、安定的な収益基盤を確立しています。
- 極めて高い財務健全性: 自己資本比率、流動比率、負債比率のいずれも非常に良好な水準であり、強固な財務体質を持っています。
- 低ベータ値: 市場変動からの影響を受けにくい特性があります。
- 純資産価値に対する割安感: PBRが業界平均と比較して低く、純資産価値から見て割安に評価されている可能性があります。
弱み:
- 本業の収益性の低さ: 売上総利益率は高いものの、営業利益率が低く、特に映画事業や自動車教習事業はセグメント利益で赤字となるなど、本業の収益創出力には課題が見られます。
- 低い株主還元: 配当を実施しておらず、株主還元への積極性は低い現状です。
- 市場流動性の低さ: 出来高が非常に少なく、投資家の売買機会が限られる可能性があります。
- 映画事業の不透明性: 作品への依存度が高く、シネマカリテの閉館など事業の再編も進んでいます。
機会:
- 不動産市場の安定性: 都心部の不動産賃貸市場が安定していれば、主要な利益柱を維持できます。
- インバウンド回復: 経済活動の正常化やインバウンド需要の回復が、映画事業や不動産事業にポジティブな影響を与える可能性があります。
- 割安な株価: 業界平均と比較して割安なバリュエーションは、中長期的な株価上昇の可能性を秘めています。
脅威:
- 物価上昇と消費マインドの低下: 消費者物価の上昇が、映画観賞や自動車教習への需要に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 映画興行の競争激化: ストリーミングサービスの台頭や競合との差別化が求められます。
- 設備投資負担: 自動車教習事業での教習車買い替えなど、定期的な設備投資は費用負担となります。
武蔵野興業は、非常に強固な財務基盤を持つ割安銘柄と言えます。特に純資産価値に対するPBRの低さは注目です。ただし、本業の収益力は限定的であり、利益の多くを不動産事業に依存している点や、特別な要因がない限り現在の水準での株主還元は期待しにくい点が課題です。流動性が極めて低いため、売買のしにくさも投資判断においては考慮すべきでしょう。特別利益で純利益が大幅増となった足元の決算は、企業価値の評価に一時的な影響を与える可能性があります。
17. 企業スコア
| 評価観点 | スコア | コメント |
|---|---|---|
| 成長性 | D | QonQ売上成長率-3.50%、通期売上予想△8.0%。映画事業の不振やシネマカリテ閉館から、全体的な成長性は低いと判断。 |
| 収益性 | C | 粗利率は高いものの、営業利益率(過去12ヶ月1.22%)が低く本業の収益創出力に課題。ROA(0.57%)もベンチマークを大幅に下回る。 |
| 財務健全性 | S | 自己資本比率63.0%、流動比率4.40倍、負債比率7.38%と極めて良好な水準。現金も潤沢。 |
| 株価バリュエーション | A | PER(会社予想6.70倍)、PBR(実績0.58倍)ともに業界平均(PER15.0倍、PBR1.2倍)を大幅に下回っており、割安感が高い。 |
企業情報
| 銘柄コード | 9635 |
| 企業名 | 武蔵野興業 |
| URL | http://www.musashino-k.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – サービス業 |
バリュー投資分析(5年予測・参考情報)
現在の指標
| 株価 | 2,177円 |
| EPS(1株利益) | 325.00円 |
| 年間配当 | 0.00円 |
予測の前提条件
| 予想EPS成長率 | 3.0% |
| 5年後の想定PER | 6.7倍 |
5年後の予測値
| 予想EPS | 376.76円 |
| 理論株価 | 2,524円 |
| 累計配当 | 0円 |
| トータル価値 | 2,524円 |
現在価格での試算リターン
| 試算年率リターン(CAGR) | 3.00% (参考:低水準) |
目標年率ごとの理論株価(参考値)
| 目標年率 | 理論株価 | 安全域価格 | 現在株価との比較 |
|---|---|---|---|
| 15% | 1,255円 | 628円 | × 算出価格を上回る |
| 12% | 1,432円 | 716円 | × 算出価格を上回る |
| 10% | 1,567円 | 784円 | × 算出価格を上回る |
関連情報
証券会社
このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.4)」によって自動生成されました。
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