1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスは、日本を代表する総合エンタテインメント企業グループです。「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」といった世界的に著名なロールプレイングゲーム(RPG)のシリーズを主力とし、これらを軸に多角的なコンテンツ展開を行っています。事業は主に以下の4つのセグメントに分かれています。- デジタルエンタテインメント事業: コンピュータゲームの企画、開発、販売、運営を行っており、家庭用ゲーム機、PC、スマートフォン向けなど幅広いプラットフォームで展開しています。
- アミューズメント事業: アミューズメント施設の運営、および業務用ゲーム機や関連製品の企画、開発、製造、販売、賃貸を行っています。代表的な傘下企業にタイトーがあります。
- 出版事業: コミック雑誌、単行本、ゲーム関連書籍などの出版、ライセンス供与を行っています。
- ライツ・プロパティ等事業: 主力IP(知的財産)を用いた二次創作物の企画、制作、販売、ライセンス供与を行っています。キャラクターグッズや映像化などが含まれます。
- 主力製品・サービスの特徴
「ファイナルファンタジー」シリーズや「ドラゴンクエスト」シリーズといった強力なIPが競争優位性の源泉です。これらのIPは長年の歴史と世界中に熱狂的なファンを持つことから、新作ゲームの販売だけでなく、スマートフォン向けゲーム、アミューズメント施設での展開、コミック・アニメ化、キャラクターグッズ販売といった多岐にわたるビジネスへと展開されています。特にライツ・プロパティ等事業では、主力IPの二次利用によるロイヤリティ収入が安定した収益源となっています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
スクウェア・エニックス・ホールディングスの最大の競争優位性は、世界に通用する強力なIP(知的財産)を多数保有している点です。「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」などは、国内外で高いブランド力と多数のファンを獲得しており、安定した収益基盤と新規コンテンツ展開の土台となっています。また、開発から販売、運営、さらにはアミューズメント施設や出版、キャラクターグッズといった多角的な事業展開ができる点も強みです。
一方、課題としては、デジタルエンタテインメント事業における新作ゲームのヒットサイクルへの依存度が高い点が挙げられます。特に家庭用ゲーム市場は開発費の高騰と開発期間の長期化が進む中で、期待通りのヒットが出ない場合や、発売時期のずれが業績に与える影響が大きくなるリスクがあります。また、競合他社も有力IPを保有しており、国内外での競争は激化しています。 - 市場動向と企業の対応状況
ゲーム市場は、PCや家庭用ゲーム機向けのパッケージ販売から、モバイルゲームやオンラインサービス型の「ライブサービス」ゲームへの移行が進んでいます。また、クラウドゲーミングやVR/AR技術の進化も市場に影響を与えています。企業は、強力なIPを活用し、主力タイトルをPC、家庭用ゲーム、スマートフォンなど複数のプラットフォームで展開することで、収益機会の最大化を図っています。また、ライツ・プロパティ等事業の拡大により、IPの二次展開によるロイヤリティ収入を強化し、事業の多角化・安定化を進めています。2026年3月期第2四半期決算では、ライツ・プロパティ等事業が大幅な増収増益を達成しており、市場ニーズに適応した事業展開が進んでいることが示唆されます。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
具体的なビジョンや中期経営計画の全体像は今回のデータには詳細が記載されていませんが、決算短信からは以下の戦略が読み取れます。- IPを軸とした多角的な収益化: デジタルエンタテインメントだけでなく、アミューズメント、出版、ライツ・プロパティ等を通じてIP価値の最大化と収益機会の拡大を目指しています。特にライツ・プロパティ等事業の好調は、この戦略の成果と考えられます。
- デジタルエンタテインメント事業の収益性改善: 新作の投入タイミングに依存する売上を補完するため、開発費償却や広告宣伝費の効率化、スマートフォン/ブラウザ向けコンテンツの課金手法改善による収益性向上に注力しています。
- 構造改革: 組織再編費用を特別損失として計上しており、経営効率の改善や事業構造の最適化に向けた取り組みを進めていることが伺えます。
- 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
データ中で中期経営計画の具体的な施策に関する詳細な記載はありません。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
2026年3月期第2四半期決算短信では、デジタルエンタテインメント事業において「新作の寄与不足」が売上減少の要因として挙げられています。これは、前年の同時期にSteam版タイトルの販売寄与があった反動であると説明されており、この中間期においては目立った大型新作の投入は少なかったと推測されます。MMO(多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)コンテンツは拡張パッケージの反動で減益となっていますが、既存のスマートフォン向けタイトルでは決済多様化・課金手法改善により収益性が改善しています。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
スクウェア・エニックス・ホールディングスの収益モデルは、ゲームソフトウェアの販売だけでなく、月額課金制のMMORPG、スマートフォン向けアプリのアイテム課金、アミューズメント施設の運営、出版物の販売、そしてIPを活用したライセンス収入まで多岐にわたります。特に「ライツ・プロパティ等事業」の安定的な成長は、強力なIPを軸にした収益の多角化と安定化に大きく貢献しており、市場ニーズの変化への適応力を高めています。ゲーム産業における近年トレンドである「ライブサービス型」ゲームへの対応や、IPの多角的な展開を強化することで、単発のヒット作に依存しすぎない持続可能な収益構造への転換を図っています。 - 売上計上時期の偏りとその影響
デジタルエンタテインメント事業においては、新作ゲームの発売時期や大型拡張コンテンツのリリース時期によって、売上が大きく変動する傾向があります。これはゲーム業界全体に共通する特性であり、特に年末商戦や年度末に大型タイトルが集中することが多いため、四半期ごとの売上や利益に偏りが生じやすいです。最新の決算短信でも「新作の寄与不足」が売上減少の一因とされており、新作の投入タイミングが業績に与える影響は依然として大きいと考えられます。ただし、ライツ・プロパティ等事業の伸長やスマホゲームの安定運営によって、この偏りを緩和し、より平準化された収益構造を目指しているものと推察されます。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
具体的な技術開発に関する詳細な情報はデータ中に記載されていません。しかし、ゲーム開発においては、リッチなグラフィック表現を可能にするゲームエンジンの活用や、オンライン機能、新しいデバイスへの対応など、常に最先端技術を取り入れる必要があります。同社は長年、最前線でゲーム開発を行ってきた実績から、一定の技術力を保持していると見られます。 - 収益を牽引している製品やサービス
決算短信のセグメント別情報と企業概要から、収益を牽引しているのは以下の製品・サービスです。- デジタルエンタテインメント事業: 「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」シリーズなどの大型ゲームタイトル。特にこれらの既存タイトルの継続的な運営や、過去作のリマスター・移植版、そしてモバイル版の収益が重要です。MMOコンテンツも安定した収益源です。
- ライツ・プロパティ等事業: 主力IPのキャラクターグッズ、映像・出版物等のライセンス供与によるロイヤリティ収入が収益を大きく牽引しています。このセグメントは高い利益率を特徴としており、中間期では売上・営業利益ともに大幅な増加を見せています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在株価: 2,861.5円
- 会社予想EPS(連): 46.88円
- 実績BPS(連): 924.22円
現在の株価はEPSに対して61.04倍(PER)となっており、純利益水準と比較してかなり高い評価を受けていると言えます。BPSに対しては3.10倍(PBR)となっており、これも解散価値と比較してプレミアムが乗っている状態です。
過去のEPS(2023年3月期137.21円、2024年3月期41.46円)と比較すると、2026年3月期予想EPS46.88円は低い水準にあります。過去最高益水準のEPSを基準にすると、現在の株価は割高に見えますが、足元の純利益が一時的な特別損失によって圧迫されている可能性があります。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 現在PER(会社予想): (連)61.04倍
- 業界平均PER: 23.2倍
- 現在PBR(実績): (連)3.10倍
- 業界平均PBR: 2.3倍
現在のPERは業界平均の約2.6倍、PBRは業界平均の約1.3倍と、どちらの指標で見ても業界平均と比較して割高な水準にあります。これは、同社が持つ強力なIPや将来の成長期待が株価に織り込まれている可能性、あるいは足元の利益水準が一時的に低迷していることが影響している可能性が考えられます。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
直近10日間の株価推移を見ると、2025年12月2日の3051円から下降し始め、本日(2025年12月15日)は2861.5円となっており、直近では下落トレンドにあります。50日移動平均線(3082.95円)と200日移動平均線(3045.53円)を下回っており、短期・中期的に売り圧力が強い状態です。 - 年初来高値・安値との位置関係
- 年初来高値: 3,862円
- 年初来安値: 2,023円
- 現在株価: 2,861.5円
現在の株価は年初来高値からは約26%低い水準にあり、年初来安値からは約41%高い水準にあります。レンジの中間よりやや下寄りに位置しており、年初来のレンジで見ると高値圏と安値圏のちょうど中間に位置すると言えます。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度
- 出来高(本日): 2,045,000株
- 売買代金(本日): 5,872,952千円
直近10日間の出来高は、本日の2,045,000株が最も多く、以前も4,097,800株といった高い水準の出来高を記録しています。平均出来高(3ヶ月: 1.18M株、10日: 1.52M株)と比較しても、本日の出来高は多く、市場の関心は比較的高い状況にあると言えます。特に12月10日には4M株を超える出来高を伴って株価が大きく下落しており、この下落局面で大きな売買があったことが示唆されます。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高 (Total Revenue): 2022年3月期の365,275百万円から、2025年3月期には356,344百万円、2025年12ヶ月実績で300,810百万円と減少傾向にあります。2026年3月期の会社予想では280,000百万円と、引き続き減少が見込まれています。
- 営業利益 (Operating Income): 2022年3月期の59,268百万円から、2024年3月期には32,565百万円まで大きく減少しました。しかし、2025年3月期には40,586百万円、2025年12ヶ月実績で46,688百万円と回復基調にあり、2026年3月期の会社予想は41,000百万円と、堅調な回復が期待されています。
- 親会社株主に帰属する当期純利益 (Net Income Common Stockholders): 2022年3月期の51,013百万円から、2024年3月期には14,912百万円と大きく落ち込みました。2025年3月期には24,414百万円、2025年12ヶ月実績では22,716百万円と回復しつつありますが、2026年3月期の会社予想は16,900百万円と再び減少が見込まれており、特別損失の影響が強く出ています。
- ROE (Return on Equity): 実績7.49%(過去12ヶ月6.89%)であり、一般的なベンチマークである10%を下回っています。これは、純利益が低水準であることと、自己資本比率が高い(=資本効率が低い)ことが影響している可能性があります。
- ROA (Return on Assets): 過去12ヶ月で7.10%であり、一般的なベンチマークである5%を上回っており良好です。総資産に対する利益創出力は比較的高いと言えます。
- 過去数年分の傾向を比較
過去数年間の傾向を見ると、売上高は減少傾向にありますが、営業利益は2024年3月期を底に回復傾向にあります。これは、売上減少にもかかわらず、コスト構造の改善や効率化が進んだことを示唆しています。しかし、純利益は依然として過去数年間の水準を下回っており、特に2026年3月期は特別損失の影響で低水準となる見込みです。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
2026年3月期第2四半期(中間期)の進捗状況は以下の通りです。- 売上高:133,895百万円(通期予想280,000百万円に対し進捗率47.8%)- 概ね中間点として順調。
- 営業利益:27,278百万円(通期予想41,000百万円に対し進捗率66.6%)- 通期予想に対する進捗が大幅に良好で、営業面での収益性改善が顕著です。
- 親会社株主に帰属する中間純利益:10,052百万円(通期予想16,900百万円に対し進捗率59.5%)- 特別損失(組織再編費用9,849百万円)の計上にもかかわらず、通期予想に対する進捗は良好です。ただし、この特別損失がなければ、純利益の進捗はさらに良好だった可能性が高いです。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率: 80.7%(実績)、直近四半期末81.3% — 非常に高い水準であり、財務基盤が極めて安定していることを示しています。倒産リスクは低いと言えます。
- 流動比率: 5.57(557%) (直近四半期) — 非常に高い水準であり、短期的な負債の返済能力に全く問題がないことを示します。流動資産が流動負債を大きく上回っており、資金繰りは極めて良好です。
- 負債比率: 22.7% (負債合計75,833百万円 / 純資産333,820百万円; 直近四半期末) — 低い水準であり、有利子負債への依存度が低いことを示しています。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率、流動比率ともに極めて高い水準であり、財務安全性は非常に高いと評価できます。潤沢な手元現金(Total Cash: 243.36B百万円)も保有しており、資金繰りに全く懸念はありません。 - 借入金の動向と金利負担
データ中に詳細な借入金の動向に関する記載はありませんが、Net Non Operating Interest Income Expenseがプラスであること(2,254百万円)、またInterest Expenseが比較的小さい(224百万円)ことから、金利負担は非常に小さい、あるいは実質的にネットでの金利収益を得ている状態と考えられ、健全な財務状況にあると言えます。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(実績): (連)7.49% (過去12ヶ月 6.89%)
- ROA(過去12ヶ月): 7.10%
- 売上総利益率 (Gross Profit Margin): (過去12ヶ月) 157,309百万円 / 300,810百万円 = 52.3%
- 営業利益率 (Operating Margin): (過去12ヶ月) 46,688百万円 / 300,810百万円 = 15.5% (企業財務指標のOperating Margin24.47%とは計算方法が異なる可能性があるため、損益計算書から算出)
- 純利益率 (Profit Margin): (過去12ヶ月) 22,716百万円 / 300,810百万円 = 7.55%
売上総利益率は50%を超えており、高付加価値製品・サービスを提供していることが示されます。営業利益率も15.5%(提供データでは24.47%)と比較的高く、本業での収益力はあります。しかし、ROEは7.49%と、後述するベンチマークの10%を下回っており、純利益の低迷と自己資本の厚さのために資本効率が課題となっています。ROAは7.10%とベンチマークを上回っており、資産の運用効率は良好です。 - 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
- ROE: 6.89% → ベンチマーク10%と比較して低い(普通)。
- ROA: 7.10% → ベンチマーク5%と比較して良好。
- 収益性の推移と改善余地
過去の損益計算書を見ると、営業利益は2024年3月期を底に回復傾向にあり、収益性は改善しています。特に中間期決算では、売上減少にもかかわらず営業利益が大きく伸びており、デジタル事業の費用効率化やライツ事業の高収益が寄与しています。
ROEがベンチマークを下回っている原因は、純利益の低迷と自己資本の比率の高さにあります。純利益の改善は今後の大型タイトルのヒットや開発費の効率化にかかっています。また、高すぎる自己資本比率は資本効率を低める要因となるため、株主還元策(自社株買い等)を通じた資本構成の最適化も収益性改善の一助となる可能性があります。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
- ベータ値 (5Y Monthly): 0.43
ベータ値が0.43と1を下回っているため、市場全体の動き(S&P 500)と比較して株価変動が小さい、市場感応度が低い銘柄であると言えます。これは、市場全体が株高の局面では市場平均よりもリターンが低くなる可能性があり、市場全体が株安の局面では市場平均よりも下落幅が小さくなる傾向があることを示唆します。株価の安定性を重視する投資家にとっては魅力的な要素となり得ます。
- ベータ値 (5Y Monthly): 0.43
- 52週高値・安値のレンジと現在位置
- 52週高値: 3,861.67円
- 52週安値: 2,014.00円
- 現在株価: 2,861.5円
現在の株価は52週レンジの中央付近に位置しています。年初来高値からは約26%の下落、年初来安値からは約42%の上昇という状況です。
- 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
決算短信には、以下のリスク要因が挙げられています。- 新作開発の遅延や不振: デジタルエンタテインメント事業は新作のヒットに大きく依存するため、開発が遅れたり、期待通りの売上を上げられない場合、業績に大きな影響を与えます。
- IPライセンス収入の変動: ライツ・プロパティ等事業の収益は有力IPのロイヤリティ収入に依存するため、ライセンス契約の状況や人気変動が影響します。
- 為替変動: 海外売上高比率が34%と高く、為替レートの変動は海外売上や利益に影響を与えます。
- 追加の構造改革費用や一時損失: 実施中の組織再編や構造改革に伴い、追加で特別損失が発生する可能性があります。
- 規制・市場環境の変化: ゲーム業界全般に影響する規制の変更(例: 課金規制)や、市場トレンドの急激な変化に対応できないリスクがあります。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- 現在PER(会社予想): 61.04倍
- 業界平均PER: 23.2倍
- 現在PBR(実績): 3.10倍
- 業界平均PBR: 2.3倍
現在の同社のPER、PBRともに業界平均と比較してかなり高い水準にあります。特にPERは業界平均の2.6倍を超えており、足元の純利益水準から考えると割高感が強いと言えます。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
- PER基準: 予想EPS 46.88円 × 業界平均PER 23.2倍 = 1,088.3円
- PBR基準: 実績BPS 924.22円 × 業界平均PBR 2.3倍 = 2,125.7円
上記に基づくと、目標株価レンジは1,088円~2,126円となります。
- 割安・割高の総合判断
現在の株価2,861.5円は、算出された目標株価レンジ(1,088円~2,126円)を大きく上回っています。ROEが業界ベンチマークを下回る現状と、特別損失が純利益を圧迫している点を考慮すると、現在の株価は割高と総合的に判断されます。これは、強力なIPによる将来の成長期待や、足元の営業利益の改善傾向が考慮されている可能性もありますが、現状のファンダメンタルズからはプレミアムが付いている状態と言えます。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
- 信用買残: 383,600株
- 信用売残: 342,700株
- 信用倍率: 1.12倍
信用買残と信用売残はほぼ拮抗しており、信用倍率1.12倍は需給が比較的安定していることを示唆します。信用買残、信用売残ともに前週比で減少しており、売り買いのポジション解消が進んでいる可能性があります。過度な買い越しや売り越しが見られないため、信用取引による需給面での大きな株価変動リスクは現時点では低いと考えられます。
- 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
- 福嶋康博氏が19.28%を保有する筆頭株主であり、福嶋企画も5.52%保有していることから、創業家が安定株主として一定の影響力を持っていると推察されます。
- 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)や日本カストディ銀行(信託口)も大株主であることから、機関投資家による保有も多く、安定した株主構成と言えます。
- 自社(自己株口)が1.91%保有しており、株主還元や市場の需給調整に活用される可能性があります。
- % Held by Insiders 1: 25.89%、% Held by Institutions 1: 37.42% と、経営陣と機関投資家で約63%を占め、比較的安定した株主構成とみられます。
- 大株主の動向
データ中に大株主の直近の売買動向を示す情報はありません。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
- 配当利回り(会社予想): 1.50%
- 1株配当(会社予想): 43.00円 (分割後表示)
- 過去12ヶ月の配当利回り: 1.54% (Forward Annual Dividend Yield)
- 過去12ヶ月のTrailing Annual Dividend Yield: 3.14% (前年の配当実績が今年より高かったため)
- 配当性向(Payout Ratio): 81.98%
会社予想に基づく配当利回りは1.50%であり、極めて高い配当性向(81.98%)を示しています。これは、純利益水準が低迷しているにもかかわらず、高水準の配当を維持しようとする株主還元への意欲と見ることができますが、現在の純利益予想(EPS 46.88円)に対して43円の配当は非常に負担が大きく、一時的なものか、利益の早期回復を見込んでいるのか、注意が必要です。分割前の情報では配当性向約91.8%とさらに高い水準でした。持続可能性については今後の利益回復にかかっています。
- 自社株買いなどの株主還元策
決算短信や提供データには、直近の自社株買いに関する記載はありません。自己株式(自社株口)の保有はありますが、それが直近の自社株買いによるものかの言及はありません。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
データ中には株式報酬型ストックオプションに関する記載はありません。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
- 2026年3月期 第2四半期決算短信(2025年11月6日提出):
- 売上高は減少したものの、営業利益は前年同期比で28.8%増と大幅な増益を達成。これは、デジタルエンタテインメント事業における開発費償却や広告宣伝費の減少、およびスマホ/ブラウザ課金手法の改善による収益性向上、高収益なライツ・プロパティ等事業の好調が主な要因です。
- 一方で、組織再編費用9,849百万円を特別損失として計上したため、当期純利益は減少しています。
- 2025年10月1日付で1株を3株に分割する株式分割を実施。
- その他、大型受注、新製品発表、拠点展開といった個別の適時開示情報は提供データにはありません。
- これらが業績に与える影響の評価
- 営業利益の改善: コストコントロールとライツ事業の好調は、売上以上に利益を押し上げる構造改革の成果を示しており、今後の収益性向上への期待を高めます。特にIP活用による二次展開の収益性向上は、事業モデルの安定化に寄与します。
- 特別損失: 組織再編費用の一時的な計上は、短期的に純利益を圧迫しますが、中長期的な経営効率改善につながる可能性があります。ただし、来期以降も同様の一時費用が発生しないか注視が必要です。
- 株式分割: 株式分割により、投資単位あたりの金額が下がり、個人投資家が株式を購入しやすくなる効果があります。これは流動性の向上や新規投資家の呼び込みにつながる可能性があり、株価へのポジティブな影響が期待されます。
16. 総評
スクウェア・エニックス・ホールディングスは、強力なIPを多数保有する日本の大手エンターテインメント企業です。足元ではデジタルエンタテインメント事業の新作ゲーム投入不足により売上高は減少傾向にありますが、費用効率の改善と高収益なライツ・プロパティ等事業の好調により、営業利益は回復基調にあります。一方で、組織再編に伴う特別損失が最終純利益を圧迫しており、足元のEPSは低水準です。
財務健全性は自己資本比率81.3%、流動比率557%と非常に高く、資金繰りや安定性には全く問題がありません。資産をどれだけ効率的に使って利益を出しているかを示すROAは良好ですが、株主資本に対する利益率であるROEは、高い自己資本比率と純利益の低迷により、業界ベンチマークを下回っています。
現在の株価は、業界平均PER・PBRと比較して割高感があります。これは、同社が持つ強力なIPによる将来の成長期待や、営業利益の改善傾向がすでに株価に織り込まれている可能性を示唆しています。株式分割により売買の流動性は高まったものの、足元の業績とバリュエーションを考慮すると、慎重な見極めが必要です。
- 強み(Strengths)
- 「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」などの世界的に認知された強力なIP群。
- デジタルエンタテインメント、アミューズメント、出版、ライツ・プロパティ等による多角的な事業展開。
- 極めて高い自己資本比率と潤沢なキャッシュフローに基づく強固な財務基盤。
- ゲーマー向けタイトルからモバイルゲームまで多様なプラットフォームに対応。
- ライツ・プロパティ等事業の高い利益率と成長性。
- 営業利益率の改善傾向(コスト構造改善)。
- 弱み(Weaknesses)
- 新作ゲームのヒットサイクルに業績が大きく左右される傾向。
- 純利益が一時的な特別損失や税負担により低迷しており、EPSが低い水準。
- ROEが低く、株主資本の効率的な活用が課題。
- 高い株主還元性向の持続性に懸念(純利益に対する配当の割合が高い)。
- 機会(Opportunities)
- IPを活用した新規プラットフォーム(クラウドゲーミング、VR/ARなど)への展開。
- グローバル市場でのゲーム需要の拡大。
- ライブサービス型ゲームの強化による継続的な収益源の確立。
- IPの二次展開(映像化、グッズなど)を通じたライセンス収入のさらなる拡大。
- 脅威(Threats)
- ゲーム開発費の高騰と開発期間の長期化。
- 競合他社との激しい開発競争および有力IPの出現。
- 市場トレンドの変化やユーザーニーズの多様化への対応遅れ。
- 為替変動リスク。
- 法規制強化(例:課金に関する規制)。
17. 企業スコア
- 成長性: B (中立)
- 売上高は減少傾向にあるものの、ライツ・プロパティ等事業は大きく成長しており、営業利益も回復基調にあります。新作投入のタイミングに業績が左右される点は依然として存在します。
- 収益性: C
- 粗利率、営業利益率は高い水準ですが、ROEが業界ベンチマーク(10%)を下回っており、純利益も特別損失の影響で低水準にとどまっているため、効率的な収益性には改善余地があります。
- 財務健全性: S
- 自己資本比率81.3%、流動比率557%と非常に高く、負債比率も低く、極めて強固な財務基盤を誇ります。現金保有状況も潤沢であり、安全性には特段の懸念はありません。
- 株価バリュエーション: D
- PER(61.04倍)およびPBR(3.10倍)が、業界平均(PER 23.2倍、PBR 2.3倍)と比較して大幅に割高な水準にあります。現在の利益水準で評価すると、株価は高値圏にあると判断されます。
企業情報
| 銘柄コード | 9684 |
| 企業名 | スクウェア・エニックス・ホールディングス |
| URL | http://www.square-enix.com/jpn/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – 情報・通信業 |
バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)
将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。
現在の指標
| 株価 | 2,862円 |
| EPS(1株利益) | 46.88円 |
| 年間配当 | 1.50円 |
シナリオ別5年後予測
各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。
| シナリオ | 成長率 | 将来PER | 5年後株価 | 期待CAGR |
|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 0.0% | 46.0倍 | 2,156円 | -5.4% |
| 標準 | 0.0% | 40.0倍 | 1,875円 | -8.0% |
| 悲観 | 1.0% | 34.0倍 | 1,675円 | -10.1% |
目標年率別の理論株価(標準シナリオ)
標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。
現在株価: 2,862円
| 目標年率 | 理論株価 | 現在株価との乖離 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 15% | 936円 | +1,925円 (+206%) | △ 割高 |
| 10% | 1,169円 | +1,692円 (+145%) | △ 割高 |
| 5% | 1,475円 | +1,386円 (+94%) | △ 割高 |
【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価
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