1. 企業情報

共和工業所は、六角ボルト、JIS六角穴付ボルト、建設機械用・内燃機関用ボルト、自動車用冷間鍛造部品、特殊冷間・熱間鍛造部品などの製造・販売を行う企業です。特に建設機械用の高強度ボルトに強みを持ち、コマツ向けが主力となっています。自動車関連分野の育成にも注力しています。
主要な事業セグメントは建設機械部門が売上高の96%を占めており、次いで自動車関連、産業機械、その他事業が続きます(2025年4月期見込)。

2. 業界のポジションと市場シェア

  • 業界内での競争優位性や課題について: 共和工業所は建設機械用高強度ボルトの専業大手であり、特にコマツ向けを主力とするニッチトップ企業としての地位を確立しています。これは高い技術力と品質、顧客との強固な関係に基づく競争優位性と考えられます。一方で、特定の顧客や業界への依存度が高いことは、市場の変動が業績に直結する課題となります。
  • 市場動向と企業の対応状況: 建設機械業界の先行きについては、主要な市場である中国経済の減速や米国の追加関税等の地政学リスクにより、下振れする可能性が指摘されています。企業は、建設機械部門での堅調な需要回復を背景にコスト管理を徹底し、収益確保に努めている状況です。また、自動車関連部門の育成も進めており、事業分散によるリスクヘッジを図っています。

3. 経営戦略と重点分野

  • 経営陣が掲げるビジョンや戦略: 提供された情報から具体的なビジョンや中期経営計画の詳細は不明です。ただし、事業内容の記述に「自動車関連育成」とあることから、主力である建設機械向けに続く新たな収益の柱として自動車関連分野を強化する方針が見受けられます。
  • 中期経営計画の具体的な施策や重点分野: データなし。
  • 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照): 決算短信には新製品・サービスの具体的な展開状況についての記述はありませんでした。

4. 事業モデルの持続可能性

  • 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力: 共和工業所の収益モデルは、建設機械用高強度ボルトの製造・販売が中心です。主力顧客との長年の取引関係や特殊技術を要する高強度ボルトの提供は安定的な収益基盤となります。しかし、建設機械市場の変動が業績に与える影響が大きく、市場ニーズの変化への適応力が課題となる可能性があります。自動車関連事業の育成は、事業ポートフォリオの多角化を通じて持続可能性を高める試みと見られます。
  • 売上計上時期の偏りとその影響: 2026年4月期第2四半期(中間期)の売上高進捗率は通期予想に対して52.1%であり、季節性や売上計上時期に大きな偏りは見られません。これは事業運営において、極端な偏りによるリスクが少ないことを示唆しています。

5. 技術革新と主力製品

  • 技術開発の動向や独自性: 提供された情報からは、具体的な技術開発の動向や独自性に関する詳細な記述はありません。しかし、「建設機械用高強度ボルトの専業大手」という記述から、高強度・高品質なボルト製造における独自の技術やノウハウを有していることが推察されます。
  • 収益を牽引している製品やサービス: 圧倒的に建設機械部門向け高強度ボルトが収益を牽引しており、中間期の売上構成の約95.8%を占めています。

6. 株価の評価

  • EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較:
    • 株価: 7,500円
    • EPS(会社予想): 468.67円
    • BPS(実績): 12,552.90円
    • 株価はEPSの約16.0倍、BPSの約0.60倍となっています。
  • 業界平均PER/PBRとの比較:
    • 共和工業所 PER(会社予想): 16.00倍
    • 業界平均 PER: 11.3倍
    • 共和工業所 PBR(実績): 0.60倍
    • 業界平均 PBR: 0.5倍
    • PER、PBRともに業界平均を上回っており、現在の株価は業界平均と比較してやや割高な水準にあると評価できます。

7. テクニカル分析

  • 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か:
    • 現在の株価: 7,500円
    • 年初来高値: 7,530円
    • 年初来安値: 4,780円
    • 52週高値: 7,530.00円
    • 52週安値: 4,710.00円
    • 株価は年初来高値に非常に近く、52週高値圏で推移しています。
  • 年初来高値・安値との位置関係: 年初来高値7,530円に迫る7,500円であり、非常に高い水準に位置しています。
  • 出来高・売買代金から見る市場関心度: データが提供されていないため、判断できません。ただし、平均出来高(3ヶ月平均1.03千株、10日平均1.61千株)から見ると、市場全体から見て出来高は非常に少ない部類に入ると考えられます。

8. 財務諸表分析

  • 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価:
    • 売上高: 過去3年間(2022-2024)は116億円から132億円の間で推移後、直近12か月は107億円と減少傾向にあります。2025年、2026年予想も減収見込みです。
    • 粗利益: 売上高の変動に概ね連動して推移しており、直近12か月は21.5億円です。
    • 営業利益: 2022年4月期15.0億円から2024年4月期10.2億円へと減少傾向でしたが、2025年4月期は8.2億円へさらに減少予想です。直近12か月は9.5億円で、やや回復基調です。
    • 経常利益/税引前利益: 2024年度は一時的な要因(Total Unusual Items Excluding Goodwillが691,320千円)により大幅に増加しましたが、それ以外は営業利益と概ね連動しています。
    • 純利益: 2024年度は同様に一時的要因で高くなっていますが、それ以外の年度は10億円前後で推移していました。直近12か月は8.2億円です。
    • ROE(実績): 4.54% (過去12ヶ月平均: 5.23%)と、一般的なベンチマーク(10%)を下回っています。
    • ROA(過去12か月): 3.29%と、一般的なベンチマーク(5%)を下回っています。
  • 過去数年分の傾向を比較: 売上高と利益は2023年をピークに減少傾向にありましたが、2026年4月期中間決算では売上高回復・利益率改善の兆しが見られます。損益計算書を見る限り、2024年4月期にPretax Incomeが大きく伸びているのは一時的なUnusual Items (約6.9億円)の影響が大きいと推測されます。
  • 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較): 2026年4月期第2四半期決算は、通期予想に対して売上高が52.1%とほぼ計画通りに推移しています。しかし、営業利益67.1%、経常利益68.3%、純利益70.2%と、利益面では通期予想に対する進捗が著しく高く、会社予想の上振れが期待できる内容です。過去同期間と比較しても、売上・利益ともに回復・改善傾向にあり良好です。

9. 財務健全性分析

  • 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価:
    • 自己資本比率(実績): 86.3% (中間期 87.4%) と非常に高く、極めて強固な財務基盤を有しています。
    • 流動比率(直近四半期): 8.65(864%)と非常に高く、短期的な支払能力に優れています。
    • 負債比率: 自己資本比率および流動比率の高さから、負債は非常に少ないと推測されます(負債/総資産 約12.6%)。
  • 財務安全性と資金繰りの状況: 自己資本比率、流動比率ともに極めて高い水準にあり、財務安全性は非常に優れています。潤沢な現金及び現金同等物(直近四半期3,416.8百万円)と営業キャッシュフロー(過去12か月1.5B)により、資金繰りも安定しています。
  • 借入金の動向と金利負担: Interest Expenseが極めて低い(過去12か月594千円)ことから、借入金は非常に少なく、金利負担はほとんどありません。

10. 収益性分析

  • ROE、ROA、各種利益率の評価:
    • ROE(実績): 4.54% (過去12ヶ月平均: 5.23%)
    • ROA(過去12か月): 3.29%
    • Profit Margin(過去12ヶ月): 7.70%
    • Operating Margin(過去12ヶ月): 7.14%
  • 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較: ROE、ROAともに一般的な優良企業とされるベンチマークを下回っており、収益性に関しては改善の余地があると言えます。ただし、第2四半期決算では営業利益率が約9.9%に改善しており、今後の推移に注目されます。
  • 収益性の推移と改善余地: 過去数年の実績では収益性がやや低調でしたが、2026年4月期中間期は売上総利益率20.3%、営業利益率9.9%と改善傾向にあります。コスト管理の徹底や生産性向上、高付加価値製品へのシフトが収益性改善の鍵となるでしょう。

11. 市場リスク評価

  • ベータ値による市場感応度の評価: ベータ値(5Y Monthly)は0.29と非常に低く、市場全体の変動に対して株価が連動しにくい、比較的安定した銘柄であることを示しています。
  • 52週高値・安値のレンジと現在位置: 52週高値7,530.00円、52週安値4,710.00円に対して、現在の株価7,500円は52週高値圏に位置しており、大幅な上昇後の水準にあります。
  • 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等):
    • 建設機械需要の変動(中国経済の減速、米国の追加関税等の海外経済動向)
    • 原材料・エネルギー価格の変動
    • 有価証券評価損益の変動(投資有価証券の評価差額金が包括利益に与える影響)

12. バリュエーション分析

  • 業種平均PER/PBRとの比較:
    • PER(会社予想)16.00倍は業界平均11.3倍と比較して割高です。
    • PBR(実績)0.60倍は業界平均0.5倍と比較してやや割高です。
  • 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用):
    • 目標株価(業種平均PER基準): 7,144円
    • 目標株価(業種平均PBR基準): 6,276円
  • 割安・割高の総合判断: 現在の株価7,500円は、業界平均PERおよびPBRに基づいた目標株価レンジ(6,276円~7,144円)を上回っており、バリュエーションの観点からは割高感があると言えます。ただし、企業固有の強みや今後の成長期待が織り込まれている可能性もあります。

13. 市場センチメント分析

  • 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス):
    • 信用買残: 2,700株
    • 信用売残: 0株
    • 信用倍率: 0.00倍
    • 信用売残がゼロであるため信用倍率もゼロとなっており、直近の需給は買い方に傾いている状況です。ただし、出来高が少ないため、信用残高の影響は相対的に大きくなる可能性があります。
  • 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況):
    • 経営陣持株比率(インサイダー): 57.27%と高く、経営の安定性が確保されています。
    • 大株主には(有)ワイ・エム・ジィ (33.31%)、自社取引先持株会 (8.68%)、名古屋中小企業投資育成 (7.65%)などが名を連ねています。
    • 安定株主が多いと推測され、経営に対する外部からの影響は比較的受けにくい構造です。
  • 大株主の動向: 提供データに記載なし。

14. 株主還元と配当方針

  • 配当利回りや配当性向の分析:
    • 配当利回り(会社予想): 1.07% (現在の株価7,500円、予想配当80円)
    • 1株配当(会社予想): 80.00円
    • 配当性向: 12.65%
    • 配当利回りは市場全体と比較してやや低めです。配当性向も12.65%と低く、業績の安定性や良好な財務状況を考慮すると、将来的な増配や株主還元強化の余地がある可能性も考えられます。
  • 自社株買いなどの株主還元策: 中間期で小幅な自己株式の取得(124千円)が行われているのみです。
  • 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策: 提供データに記載なし。

15. 最近のトピックスと材料

  • 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等):
    • 2026年4月期第2四半期決算短信では、会社予想の修正はありませんでしたが、中間実績は利益面で通期予想に対して大きく上振れており、通期達成の可能性が高い状況です。
    • その他有価証券評価差額金の評価益が358百万円発生し、包括利益の大幅増(前年同期比+1,293.6%)に寄与しました。
    • 投資活動において、有価証券の取得・償還等が活発に行われており、投資による資金運用を積極的に行っている点が注目されます。
  • これらが業績に与える影響の評価:
    • 利益面での順調な進捗は、今後発表される通期決算への期待を高めます。
    • 有価証券評価益は一時的な要因であり、本業の収益改善とは直接関係しませんが、強固な財務体質と豊富な手元資金の活用を示唆します。
    • 建設機械市場の回復基調が維持されれば、本業の業績は安定的に推移すると考えられます。

16. 総評

共和工業所は、建設機械用高強度ボルトに特化したニッチトップ企業であり、コマツ向けに高いシェアを持つことが最大の強みです。極めて高い自己資本比率(86.3%)と流動比率(8.65倍)が示す通り、財務健全性は非常に優れており、安定した経営基盤を誇ります。
一方で、建設機械部門への高い依存度は、市場の変動が業績に直結する弱みとなります。売上・利益は過去数年で減少傾向にありましたが、直近の2026年4月期中間決算では、売上高は堅調に推移し、利益面では通期予想を大きく上回るペースで進捗しており、業績の回復・改善が見られます。しかしながら、ROEやROAといった収益性指標は業界平均や一般的なベンチマークを下回っており、更なる収益性の改善が課題です。
株価は年初来高値圏で推移しており、現在のPERやPBRは業界平均と比較して割高感があります。ただし、ベータ値が低い安定銘柄であることや、堅実な経営、豊富な手元資金は評価できる点です。自動車関連事業の育成や効率的な投資活動は、今後の成長機会となり得ますが、建設機械市場の不確実性(中国経済の減速、米国関税など)は潜在的な脅威として存在します。

17. 企業スコア

  • 成長性: B(売上高は直近減少傾向だが主力部門は回復基調、自動車関連育成に期待)
  • 収益性: C(ROE、ROA、各種利益率が一般的なベンチマークを下回るものの、直近中間期で改善傾向見える)
  • 財務健全性: S(自己資本比率86.3%、流動比率8.65倍と極めて高い)
  • 株価バリュエーション: C(PER、PBRともに業界平均を上回っており、割高感が指摘される)

企業情報

銘柄コード 5971
企業名 共和工業所
URL http://www.kyowakogyosyo.co.jp/
市場区分 スタンダード市場
業種 建設・資材 – 金属製品

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 7,500円
EPS(1株利益) 468.67円
年間配当 1.07円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 0.0% 17.6倍 8,244円 1.9%
標準 0.0% 15.3倍 7,168円 -0.9%
悲観 1.0% 13.0倍 6,404円 -3.1%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 7,500円

目標年率 理論株価 現在株価との乖離 判定
15% 3,567円 +3,933円 (+110%) △ 割高
10% 4,454円 +3,046円 (+68%) △ 割高
5% 5,621円 +1,879円 (+33%) △ 割高

【判定基準】○割安:現在株価≦理論株価 / △割高:現在株価>理論株価

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By ジニー

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