以下は株式会社クルーズ(2138)に関する企業分析レポートです。
1. 企業情報
- 事業内容などのわかりやすい説明
クルーズは、IT人材サービス、EC事業、およびGameFi事業を展開する企業です。IT人材派遣サービス(System Engineering Services: SES)が主力事業となっており、ITエンジニアを顧客企業に提供しています。また、EC事業ではアパレルセレクトショップ「Ada.」をZOZOTOWN内で展開しています。祖業であったゲーム事業からは撤退し、現在の経営資源をITアウトソーシングと成長中のEC事業に集中しています。 - 主力製品・サービスの特徴
- ITアウトソーシング事業(SES): 顧客企業にITエンジニアを派遣し、システム開発やインフラ構築などのITソリューションを提供します。IT人材不足が深刻化する市場において、高いニーズに対応できるサービスです。2026年3月期第2四半期では、売上高が前年同期比63.6%増と急成長しています。
- EC事業(Ada.): ZOZOTOWN内でアパレルセレクトショップ「Ada.」を運営しており、オリジナル商品やトップブランドの商品を取り扱っています。過去には「SHOPLIST」を運営していましたが、2025年2月に譲渡済みであり、今後は「Ada.」の成長に注力しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
- 業界内での競争優位性や課題について
同社はIT人材アウトソーシング事業を主力としており、経済産業省の調査でも2030年に最大約79万人のIT人材不足が予測されるなど、市場は強い追い風を受けています。この潤沢な市場ニーズを背景に、ITアウトソーシング事業は大きく成長しています。競争優位性としては、IT人材の確保・育成能力が挙げられますが、競合他社との詳細な比較情報はありません。課題としては、IT人材確保における採用競争の激化や人件費の高騰が考えられます。 - 市場動向と企業の対応状況
- 市場動向: IT人材不足の慢性化とDX推進の加速により、ITアウトソーシング市場は拡大傾向にあります。
- 企業の対応状況: クルーズは、この市場環境を捉え、祖業のゲーム事業から撤退し、ITアウトソーシング事業(SES)へ経営資源を集中させることで、市場の成長機会を最大限に活用しようとしています。EC事業においても「SHOPLIST」の譲渡を行い、「Ada.」に注力するなど、選択と集中を進めています。
3. 経営戦略と重点分野
- 経営陣が掲げるビジョンや戦略
経営陣は、ITアウトソーシング事業を成長ドライバーとして位置づけており、経営資源をこの分野に集中させる戦略を明確に打ち出しています。これにより、将来の成長の柱を確立することを目指しています。 - 中期経営計画の具体的な施策や重点分野
決算短信には具体的な中期経営計画の数値目標の記載はありませんが、ITアウトソーシング事業(SES)の拡大が最重点施策であることが明記されています。EC事業では「Ada.」の継続的な成長が目標とされています。 - 新製品・新サービスの展開状況(決算短信参照)
決算短信において、新製品・新サービスに関する具体的な言及はありませんが、ITアウトソーシング事業におけるエンジニア派遣の拡大、EC事業における「Ada.」の成長が事業展開の中心となっています。
4. 事業モデルの持続可能性
- 収益モデルや市場ニーズの変化への適応力
ITアウトソーシング事業は、IT人材不足という根強い市場ニーズに合致しており、収益モデルの持続可能性は高いと考えられます。EC事業においては、市場のトレンド変化が速く、ZOZOTOWNというプラットフォームに依存するリスクも存在しますが、「Ada.」の成長を通じて適応を図っています。祖業であったゲーム事業から撤退し、成長分野へと経営資源をシフトする意思決定は、市場ニーズの変化への適応力を示すものと言えます。 - 売上計上時期の偏りとその影響
EC事業において、季節性による売上計上時期の偏りがあることが言及されています。これは一般的にファッション・アパレル業界に見られる傾向であり、特定の四半期に売上が集中する可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
- 技術開発の動向や独自性
決算短信や企業情報から、具体的な自社での技術開発の動向や独自性に関する詳細な記載は確認できません。ITアウトソーシング事業は、最新のIT技術を持つ人材を「提供」することで価値を生み出すモデルであり、常に市場で求められる技術トレンドを把握し、対応できる人材を供給する能力が重要となります。 - 収益を牽引している製品やサービス
現在の収益を牽引しているのは、ITアウトソーシング事業、特にSES事業です。2026年3月期第2四半期において、前年同期比63.6%増の売上を達成し、セグメント損失も大幅に縮小するなど、今後の利益貢献が期待される主力事業となっています。
6. 株価の評価
- EPSやBPSに基づく計算等を用いて、現在の株価との比較
- 現在の株価: 544.0円
- EPS(会社予想): (連)-17.77円のため、PERは算出できません。
- BPS(実績): (連)937.53円
- PBR(実績): (連)0.58倍
現在のBPS937.53円と比較すると、株価544.0円は純資産価値を大きく下回る水準にあります。
- 業界平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PBR: 1.6倍
- 同社PBR(実績): 0.58倍
同社のPBRは業界平均と比較して大幅に低い水準にあり、純資産価値から見ると割安と評価できます。PERは会社予想が赤字のため算出できません。
7. テクニカル分析
- 直近の株価推移を参照して、現在の株価が高値圏か安値圏か
- 直近の株価は544.0円(2025/12/26終値)です。
- 50日移動平均線: 566.52円
- 200日移動平均線: 594.48円
現在の株価は、50日および200日移動平均線を下回っており、短期および中期のトレンドは軟調です。
- 年初来高値・安値との位置関係
- 年初来高値: 722円
- 年初来安値: 444円
現在の株価544.0円は、年初来高値からは約-24.6%低い水準にあり、年初来安値からは約+22.5%高い水準です。年初来レンジの中間よりやや安値圏に近い位置と言えます。
- 出来高・売買代金から見る市場関心度
- 出来高: 31,100株
- 売買代金: 17,094千円
- 平均出来高(3ヶ月): 23.4k株
- 平均出来高(10日): 30.46k株
直近の出来高は平均出来高(3ヶ月)を上回っていますが、売買代金は17百万円程度であり、市場全体の関心度としては比較的低い水準に留まっています。
8. 財務諸表分析
- 売上、利益、ROE、ROAなどの指標を評価
- 売上高: 過去12か月で12,562百万円、2025年3月期予想は14,191百万円、2026年3月期通期予想は11,821百万円(前年同期比△16.7%)と減少傾向にあります。これは主にSHOPLIST譲渡の影響によるものと見られます。
- 営業利益: 過去12か月で△309百万円、2025年3月期予想は△1,025百万円、2026年3月期通期予想は30百万円(黒字化見込み)となっています。直近の2026年3月期第2四半期では△138.8百万円と損失幅は前年同期から大幅に改善しています。
- 最終利益: 過去12か月で△351百万円、2026年3月期通期予想は△170百万円と赤字が継続する見込みです。
- ROE: (連)-5.34% (過去12か月は-3.75%)
- ROA: (連)-0.66% (過去12か月は-0.66%)
ROE、ROAともにマイナスであり、収益性は低い状況です。
- 過去数年分の傾向を比較
過去数年間は売上高が横ばいから減少傾向にあり、利益は不安定で、特に2025年3月期と2026年3月期予想では営業損失・純損失を計上しています。ただし、2026年3月期第2四半期では、ITアウトソーシング事業の成長により営業損失の幅が大幅に縮小しており、利益構造の改善に向けた動きが見られます。 - 四半期決算の進捗状況(通期予想との比較)
- 2026年3月期第2四半期の実績(中間期):
- 売上高: 5,382百万円(通期予想11,821百万円に対し45.5%進捗)
- 営業利益: △138.8百万円(通期予想30百万円に対しマイナス進捗)
- 親会社株主に帰属する中間純利益: △184.2百万円(通期予想△170百万円に対し既に通期予想の損失を上回る)
売上高の進捗率は概ね中間期として妥当ですが、営業利益および純利益は中間期で既に通期予想を大きく下回る赤字となっており、下期での大幅な収益改善が通期予想達成には不可欠な状況です。
9. 財務健全性分析
- 自己資本比率、流動比率、負債比率の評価
- 自己資本比率(実績): (連)31.1% (直近四半期も31.1%)。一般的に安定水準とされる40%を下回っており、やや低めの水準です。
- 流動比率(直近四半期): 約252%(流動資産12,205,116千円 / 流動負債4,830,942千円)。200%以上で流動性は良好とされ、短期的な支払い能力に問題はないと評価できます。
- 負債比率: Total Debt/Equity (直近四半期): 182.81%。負債が純資産に比べて高い状況を示しており、財務レバレッジが高いと言えます。
- 財務安全性と資金繰りの状況
自己資本比率はやや低いものの、流動比率が良好であるため、短期的な資金繰りに大きな懸念はないと見られます。しかし、有利子負債(長期借入金9,762百万円、社債4,000百万円)が高水準であり、金利負担や社債償還に関する動向は注視が必要です。 - 借入金の動向と金利負担
長期借入金が9,762,552千円と増加傾向にあり、利息費用も増加しています(Net Interest Income 過去12ヶ月: △186,027千円)。財務キャッシュフローは、前年の資金調達から当期は減少に転じています。高水準の有利子負債と金利負担は、今後の収益に影響を与える可能性があります。
10. 収益性分析
- ROE、ROA、各種利益率の評価
- ROE(実績): (連)-5.34%
- ROA(実績): (連)-0.66%
- プロフィットマージン(過去12ヶ月): -2.79%
- 営業利益率(過去12ヶ月): -1.84%
全ての収益性指標がマイナスであり、全体としては赤字経営が続いています。
- 一般的なベンチマーク(ROE 10%、ROA 5%等)との比較
ROE、ROAともに一般的なベンチマークを大きく下回る水準であり、収益性は低いと評価されます。Piotroski F-Scoreでも healthy_roe: False, healthy_operating_margin: False と評価されています。 - 収益性の推移と改善余地
2026年3月期第2四半期では、営業損失が前年同期より大幅に縮小しており、ITアウトソーシング事業の成長が収益改善に寄与しています。この事業が計画通りに利益貢献を拡大できれば、全体の収益性が改善する余地は大きいと言えます。ただし、通期での黒字化を達成するには、下期におけるさらなる収益回復が不可欠です。
11. 市場リスク評価
- ベータ値による市場感応度の評価
ベータ値(5Y Monthly): -0.11。これは市場全体が上昇する際に株価が下落し、市場が下落する際に株価が上昇する(逆相関の)傾向があることを示しますが、マイナス値は一般的ではなく、低い絶対値は市場全体の値動きに対する感応度が低いことを示唆しています。 - 52週高値・安値のレンジと現在位置
- 52週高値: 722.00円
- 52週安値: 444.00円
現在の株価544.0円は、52週レンジの中間に位置しますが、高値からは離れており、安値に近いとまでは言えませんが、回復途上にあると見ることができます。
- 決算短信に記載のリスク要因(外部環境、為替、地政学等)
決算短信に記載のリスク要因は以下の通りです。- 下期での収益回復が実現できないリスク(通期営業黒字化の困難性)
- 高い有利子負債水準や社債償還に関わる資金繰りリスク
- EC事業の事業再編・譲渡に伴う収益構成の変化とそれによる影響
- IT人材の採用・維持における競争激化や人件費上昇のリスク
- EC事業(Ada.)における市場・季節要因による変動リスク
外部環境、為替、地政学などの一般的なリスク要因についての具体的な記述はありませんでした。
12. バリュエーション分析
- 業種平均PER/PBRとの比較
- 業界平均PBR: 1.6倍
- 同社PBR(実績): 0.58倍
PBRは業界平均と比較して大幅に低い水準にあります。 - 業界平均PER: 17.6倍
- 同社PER(会社予想): 赤字予想のため算出できません。
- 目標株価レンジの算出(業界平均倍率適用)
PBR基準で目標株価を算出すると以下の通りです。- PBR目標株価: BPS 937.53円 × 業界平均PBR 1.6倍 = 約1,500円
(提供データ「目標株価(業種平均PBR基準): 1501円」と概ね一致)
- PBR目標株価: BPS 937.53円 × 業界平均PBR 1.6倍 = 約1,500円
- 割安・割高の総合判断
現在の株価544.0円は、PBR基準で算出した目標株価約1,500円と比較して大幅に低い水準にあり、純資産価値の観点からは非常に割安と判断できます。ただし、PERは赤字のため評価ができず、今後の収益改善が実現できるかが重要な評価ポイントとなります。
13. 市場センチメント分析
- 信用取引の状況(信用買残、信用倍率、需給バランス)
- 信用買残: 565,500株
- 信用売残: 22,800株
- 信用倍率: 24.80倍
信用買残が信用売残を大きく上回り、信用倍率が24.80倍と高い水準です。これは、将来の値上がりを期待して買い建てている投資家が多いことを示し、将来的な売り圧力となる可能性を秘めています。需給バランスは売り方に比べて買い方が優勢であり、目先の株価上昇には重石となる可能性があります。
- 株主構成(経営陣持株比率、安定株主の状況)
- 自社(自己株口): 26.16%
- 小渕宏二(代表者): 24.66%
経営陣(小渕宏二氏)および自社(自己株口)で発行済株式の約50%超を保有しており、経営基盤は安定していると言えます。
- 大株主の動向
大株主には特定の個人投資家(清原達郎氏、田澤知志氏など)や証券会社(SBI証券、楽天証券)が含まれており、これらの大株主の動向も株価に影響を与える可能性があります。
14. 株主還元と配当方針
- 配当利回りや配当性向の分析
- 配当利回り(会社予想): 0.00%
- 1株配当(会社予想): 0.00円
- 配当性向(会社予想): 赤字予想のため「–」
同社は現在無配であり、会社予想でも無配を継続する方針です。
- 自社株買いなどの株主還元策
当期、自社株買いや特別還元に関する公告はありません。直近の自社株口保有割合は26.16%と高いですが、過去に実施された自社株買いによるものです。 - 株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策
決算短信や提供データからは、株式報酬型ストックオプション等のインセンティブ施策に関する具体的な記載は確認できません。
15. 最近のトピックスと材料
- 適時開示情報の分析(大型受注、新製品、拠点展開等)
2026年3月期第2四半期決算短信において、以下の重要なトピックスが挙げられています。- ITアウトソーシング事業の急成長: 売上高前年同期比+63.6%を達成し、セグメント損失も大幅に縮小(ほぼ黒字化)。この事業をメインに経営資源を集中していく方針。
- EC事業の再編と「Ada.」の成長: SHOPLIST事業を2025年2月に譲渡した影響で全体の売上は減少したが、ZOZOTOWN向けの「Ada.」事業は引き続き成長を継続(Ada.単独では前年同期比+42.2%)。
- ゲーム事業からの撤退: 祖業であったゲーム事業から事実上撤退し、今後の経営資源をITアウトソーシング事業とEC事業に集中させる方針を明確化。
- これらが業績に与える影響の評価
これらのトピックスは、経営資源を成長分野に集中させ、収益構造の転換を図る同社の戦略を示しています。特にITアウトソーシング事業の成長は、長期的な収益改善の鍵となるでしょう。一方で、SHOPLISTの譲渡により短期的な売上は減少しますが、収益性の高い事業への集中が将来的には利益率の改善に繋がる可能性があります。ただし、中間期の純損失が通期予想を上回っているため、今後の業績変動には注意が必要です。
16. 総評
クルーズ(2138)は、ITアウトソーシング事業(SES)を新たな成長の柱と位置づけ、事業構造を大きく転換している途上にあります。IT人材不足という追い風を背景にSES事業が急速に成長しており、これが今後の収益改善の主要因となることが期待されます。
- 強み(Strengths)
- 拡大するIT人材市場に対応したITアウトソーシング事業の急成長。
- 代表者と自己株口による安定した経営基盤と高いオーナーシップ。
- 流動比率が高く、短期的な資金繰りは良好。
- 弱み(Weaknesses)
- EPS、各種利益率がマイナスであり、現在も連結では赤字が継続している。
- 自己資本比率がやや低く、有利子負債が高水準。
- 無配であり、株主還元策が限定的。
- 売買代金が少なく、市場の関心度が低い。
- 機会(Opportunities)
- IT人材不足の深刻化に伴うITアウトソーシング市場の継続的な拡大。
- EC事業における「Ada.」の成長。
- 経営資源の集中による各事業の収益性改善。
- 脅威(Threats)
- 下期における収益回復が計画通りに進まず、通期黒字化目標が未達となるリスク。
- IT人材の採用競争激化や人件費高騰による利益率圧迫。
- 有利子負債の金利負担増加や社債償還に関する財務リスク。
- 信用買残が多く、潜在的な売り圧力が存在する需給状況。
- ITアウトソーシング事業の成長がどこまで加速し、全体の収益を黒字化できるか。特に下期の業績進捗が焦点。
- 有利子負債の推移と金利負担の管理状況、自己資本比率の改善。
- 現在のPBRが業界平均対比で大幅に割安であり、黒字転換が実現すれば株価の見直し余地が大きい。
- 無配であるため、インカムゲインを目的とする投資家には不向き。事業成長によるキャピタルゲインを狙う投資。
17. 企業スコア
- 成長性: A
- ITアウトソーシング事業は前年同期比+63.6%と急成長しており、会社はこれを今後の成長戦略の柱としている。EC事業も「Ada.」が成長を継続。全体売上はSHOPLIST譲渡で減少しているが、主力事業の成長性は高い。
- 収益性: C
- 過去12ヶ月および中間期ともに営業利益・純利益は赤字だが、中間期では営業損失幅が大幅に縮小し改善傾向にある。ROE、ROAは依然としてマイナスであり、一般的なベンチマークを大きく下回る。
- 財務健全性: C
- 自己資本比率は31.1%と、安定とされる40%を下回る。Total Debt/Equityも182.81%と高い。流動比率は252%と良好で短期的な流動性はあるが、有利子負債が高水準である点は懸念。
- 株価バリュエーション: S
- PBRは0.58倍と業界平均1.6倍に比して大幅な割安水準にある。EPSは赤字でPER評価はできないものの、純資産価値で評価すれば、株価は大きく割安と言える。
企業情報
| 銘柄コード | 2138 |
| 企業名 | クルーズ |
| URL | http://crooz.co.jp/ |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 情報通信・サービスその他 – 情報・通信業 |
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