1. 企業概要

シードは、コンタクトレンズおよびそのケア用品の製造・販売を主事業とする国内大手メーカーです。主力製品は1日使い捨てコンタクトレンズであり、遠近両用レンズや乱視用レンズといった高機能レンズ、さらに特殊な治療用レンズであるオルソケラトロジーレンズなども手掛けています。収益モデルは、消耗品であるコンタクトレンズの定期的な購入に基づくストック型の側面を持ち、主に眼科やコンタクトレンズ専門店を通じて一般消費者へ提供するB2B2C形態を採用しています。技術的独自性としては、多様なニーズに応える広範な製品ラインナップに加え、スマートコンタクトレンズなどの次世代技術の研究開発にも注力しており、今後の参入障壁構築に繋がる可能性があります。

2. 業界ポジション

シードは国内系コンタクトレンズメーカーの中でも大手の一角を占めています。市場全体としては、1日使い捨てレンズのシェア拡大、遠近両用やオルソケラトロジーレンズといった高付加価値製品の需要増により、国内外で拡大傾向にあります。同社は、国内での高付加価値レンズの強化や生産能力増強、海外展開(特に東南アジア・インド)を通じてこの市場動向に対応しています。競合に対する強みとしては、自社で広範なレンズタイプを製造・販売できる製品力が挙げられますが、海外市場、特に中国での販売低迷は弱みとなっています。

【定量比較】業界平均との財務指標比較

指標 シード(7743) 業界平均(精密機器) 評価
PER(会社予想) 15.99倍 21.1倍 割安
PBR(実績) 0.95倍 1.8倍 割安
ROE(実績) 7.51% 7.51% (参考) 産業平均水準
営業利益率(過去12ヶ月) 5.84% データなし

ROEの業界平均は提供された情報には含まれないため、比較対象となる個別企業の平均ROEとして提示されている7.51%を参考値として記載しています。
【同一業種区分企業比較】 同一業種区分企業データは提供されていないため比較できません。

3. 経営戦略

経営陣は、中期経営計画(2024年4月~2027年3月)において、連結売上高500億円の達成、世界市場でのプレゼンス確保、そして生産基盤の強化(省人化・品質強化・ブランド再構築)を目標として掲げています。
重点投資分野としては、生産能力増強(鴻巣研究所4号棟の建設により月間生産能力を6,500万枚から7,900万枚へ拡大、将来的に8,950万枚を想定)と、海外事業の拡大、そしてスマートコンタクトレンズの汎用プラットフォーム公開に代表される研究開発投資が挙げられます。
最近の適時開示情報として、2026年3月期第2四半期決算短信が2025年11月10日に発表されています。決算では増収増益を達成し、特に国内での納期遅延解消、値上げ、歩留まり改善による利益率向上が示されました。一方で、海外、特に中国での販売低迷は継続しています。
これらの戦略や最近の動向が今後の業績に与える影響として、生産能力増強と利益率改善はポジティブな要因ですが、海外市場の不確実性や設備投資負担はリスクとなり得ます。新規連結子会社5社の追加に伴うのれん発生も財務への影響を注視する必要があります。

4. 財務分析

収益性

  • 営業利益率(過去12か月):5.84%(ベンチマーク:製造業では改善傾向だが、現状は低水準)
  • ROE(過去12か月):7.51%(ベンチマーク:10%は未達)
  • ROA(過去12か月):2.19%(ベンチマーク:5%は未達)

収益性指標はベンチマークを下回る水準にありますが、第2四半期決算では歩留まり改善や値上げにより利益率が改善傾向にあります。

財務健全性

  • 自己資本比率(実績):34.9%(目安:40%以上がより安定)
  • 流動比率(直近四半期):109%(目安:200%以上が理想だが、短期的流動性は確保されている)
  • D/Eレシオ(直近四半期):137.04%(Total Debt/Equity、借入に依存する度合いはやや高い)

流動比率、自己資本比率ともに改善の余地があるものの、短期的な流動性は確保されています。負債依存度はやや高めです。

成長性(年度別推移)

決算期 売上高(百万円) 増減率(前年比) 営業利益(百万円) 増減率(前年比)
2022年3月期 28,835 N/A 1,177 N/A
2023年3月期 30,593 +6.1% 629 -46.5%
2024年3月期 32,396 +5.9% 2,050 +225.9%
2025年3月期 33,231 +2.6% 1,562 -23.8%
2026年3月期(予) 37,000 +11.3% 2,000 +28.0%

売上高は着実に増加傾向にあるものの、利益は2023年3月期に一時的な落ち込みがあり、2025年3月期も前年比減益となりました。2026年3月期は増益回復を予想しています。

キャッシュフロー(当中間期:2025年4月1日~2025年9月30日)

  • 営業CF:+1,760百万円(前年同期+1,750百万円)
  • 投資CF:△1,017百万円(前年同期△3,257百万円)
  • 財務CF:△2,108百万円(前年同期△175百万円)
  • フリーキャッシュフロー(FCF、過去12か月):947.88百万円
  • 営業CF/純利益比率(過去12か月ベース):2.17(S: 優良)
  • 配当カバレッジ比率(過去12か月営業CFから算出):2,990百万円 / 454百万円 = 約6.59倍(配当余力は高い)

営業CFは安定してプラスを維持し、フリーキャッシュフローも創出されています。営業キャッシュフローが純利益を大きく上回っており、利益の質は非常に良好です。投資CFは前年同期から大幅に減少しましたが、引き続き設備投資は行われています。財務CFは借入金返済等によりマイナスとなっています。

セグメント別分析(当中間期:2025年4月1日~2025年9月30日)

  • コンタクトレンズ・ケア用品セグメント
    • 売上高:17,100百万円(前年同期比+2.0%)
    • セグメント利益:2,125百万円(前年同期比+33.8%)
    • コメント:国内では1dayPure等の高付加価値製品(乱視・遠近両用)が回復を牽引し、オルソケラトロジーレンズも好調に推移しました。一方で、国内単焦点レンズは競合激化の影響を受けています。海外輸出は中国景気減速の影響を受け、前年同期比3.2%減となりました。歩留まり改善や値上げが利益率向上に寄与しています。新規連結子会社の追加に伴いのれん729百万円が発生しています。
  • その他セグメント
    • 売上高:43百万円(前年同期比△36.3%)
    • セグメント利益:4百万円(前年同期比+35.4%)
  • 成長ドライバーと課題セグメントの特定
    • 成長ドライバーは「コンタクトレンズ・ケア用品」セグメント内の高付加価値製品及びオルソケラトロジーレンズです。
    • 課題セグメントは「コンタクトレンズ・ケア用品」セグメントの海外事業、特に中国市場の回復が重要です。

四半期進捗(2026年3月期 第2四半期)

  • 通期売上高予想37,000百万円に対し、中間売上高17,144百万円で進捗率 約46.4%。
  • 通期営業利益予想2,000百万円に対し、中間営業利益1,132百万円で進捗率 約56.6%。
  • 通期親会社株主に帰属する当期純利益予想1,100百万円に対し、中間純利益831百万円で進捗率 約75.5%。

売上高進捗率は会社想定ペースに近いものの、営業利益と純利益の進捗率は売上高を上回っており、上期において利益体質が改善したことを示唆しています。通期目標達成への期待が高まります。

5. 株価分析

現在の水準

  • PER(会社予想):15.99倍
  • PBR(実績):0.95倍
  • 業界平均PER:21.1倍、業界平均PBR:1.8倍

シードのPER/PBRは共に業界平均と比較して割安な水準にあります。

  • EPS(会社予想): 36.34円、BPS(実績): 610.28円
  • 業種平均PER基準の目標株価: 958円
  • 業種平均PBR基準の目標株価: 1098円

テクニカル

  • 現在株価:581.0円
  • 52週高値:596円、52週安値:408円。現在株価は52週レンジの中で78.3%の位置(高値圏)にあります。
  • 移動平均線との位置関係:
    • 5日移動平均線(580.80円)を0.03%上回る。
    • 25日移動平均線(571.24円)を1.71%上回る。
    • 75日移動平均線(562.37円)を3.31%上回る。
    • 200日移動平均線(512.68円)を13.33%上回る。
  • トレンドシグナル:現在株価は全ての移動平均線を上回っており、短期線から長期線へと順に並んでいることから、明確な上昇トレンドが形成されています。現状はゴールデンクロスが形成された後の、上昇基調にあると判断できます。

市場との比較

  • 日経平均比:
    • 1ヶ月:+0.33%ポイント上回る
    • 3ヶ月:+0.27%ポイント上回る
    • 6ヶ月:-7.97%ポイント下回る
    • 1年:-41.56%ポイント下回る
  • TOPIX比:
    • 1ヶ月:-0.82%ポイント下回る

短期(1ヶ月、3ヶ月)では日経平均にやや優位ですが、中期(6ヶ月)および長期(1年)では市場指数に劣後しています。TOPIXに対しても短期で劣後しており、直近の日経平均との比較は好調ですが、相対的なパフォーマンスには波があります。

6. リスク評価

  • ベータ値(5Y Monthly):0.01
    • ベータ値が非常に低いため、市場全体の変動に対する感応度が極めて低いことを示しています。株価は市場全体の動きに比較的連動しにくい特性があります。
  • 決算短信記載のリスク要因:
    • 為替変動リスク:生産コストや海外売上高に影響を及ぼす可能性があります。
    • 海外需要の変動:特に中国市場の景気低迷は既に影響が出ており、今後の回復状況が不透明です。
    • 原材料価格の変動:主要原材料の価格高騰は収益性を圧迫する可能性があります。
    • 競合製品の導入:新たな競合製品の投入や価格競争の激化により、シェアや利益率が低下するリスクがあります。
    • 生産・物流の遅延:設備投資や生産体制の強化に伴うリスク、グローバルサプライチェーンの混乱による影響。
      -M&Aによる統合子会社の事業リスク:新規連結した子会社の事業運営やシナジー創出が計画通りに進まないリスク。
  • 事業特有のリスク:
    • 規制リスク:医療機器であるコンタクトレンズは各国の規制環境下にあり、承認プロセスや品質管理基準の変更が事業に影響を与える可能性があります。
    • 技術陳腐化リスク:スマートコンタクトレンズなど次世代技術への対応が遅れると、市場競争力を失う可能性があります。
  • 52週レンジにおける現在位置:78.3%
    • 株価は52週高値圏にあり、下落への警戒も必要です。

7. 市場センチメント

  • 信用取引の状況:
    • 信用買残:403,100株
    • 信用売残:3,400株
    • 信用倍率:118.56倍
      信用買残が非常に多く、信用倍率も高水準であるため、将来の売り圧力となる可能性があります。
  • 株主構成と大株主の動向:
    • 上位株主にはSMBC信託銀行(18.00%)、みずほ信託銀行(14.27%)、野村信託銀行(11.91%)などの金融機関が名を連ねており、安定株主が多いと推測されます。
    • 特定の株主による支配は限定的ですが、特定の信託銀行がカストディアンとして多数の機関投資家やファンドの株式を保有している可能性があります。
  • 経営陣の持株比率と安定株主の状況:
    • インサイダー保有比率が53.15%と高く、経営陣や関係者が多くの株式を保有していることから、経営の安定性が高いことと、株主と経営陣の利害が一致していると考えられます。

8. 株主還元

  • 配当利回り(会社予想):2.58%
  • 1株配当(会社予想):15.00円
  • 配当性向(会社予想):41.6%(提供データでは33.01%も記載あり、Yahooデータ採用)
  • 配当の継続性・増配傾向:
    • 過去の配当実績を見ると、2023年3月期に一時的に最終赤字となった年も配当は維持(12円)しており、安定配当を志向していることが伺えます。2024年3月期からは15円に増配しており、増配傾向も見られます。
  • 自社株買いの実績と方針:
    • 決算短信には自社株買いに関する具体的な記載はありません。当面は安定配当を基本方針としているようです。

9. 総合評価

【投資ポイント】

  • 利益率改善と好調な通期進捗:国内事業での歩留まり改善や値上げが奏功し、計画を上回る利益進捗を見せています。
  • 生産能力増強による成長基盤の強化:大型設備投資により将来的な需要増加に対応できる体制を構築中です。
  • 業界平均に対し割安なバリュエーション:PER/PBRともに業界平均を下回っており、株価上昇余地がある可能性を示唆しています。

【強み】

  • 国内大手としてのブランド力と広範な製品ラインナップ(1日使い捨て、高機能レンズ、オルソケラトロジー等)。
  • 生産体制強化とコスト改善努力による利益率向上。
  • 過去の赤字期にも配当を維持する安定した株主還元方針。

【弱み】

  • 海外事業、特に中国市場の販売低迷が継続しており、成長の足かせとなる可能性。
  • 流動比率が109%とやや限定的で、財務健全性には改善の余地がある。
  • 新規連結子会社の追加に伴いのれんが発生しており、今後の償却負担や減損リスクを注視する必要がある。

【機会】

  • 高付加価値コンタクトレンズ(乱視、遠近両用、オルソケラトロジー)の市場拡大。
  • 東南アジア・インドなど、成長著しい海外市場へのさらなる展開。
  • スマートコンタクトレンズなどの次世代技術開発と市場投入による新たな収益源の確立。

【脅威】

  • 激化する市場競争と価格競争の圧力。
  • 為替変動や原材料価格の高騰が収益を圧迫するリスク。
  • 海外経済の不確実性(特に中国の景気動向)が海外事業に与える影響。

【注目すべき指標】

  • 海外売上高成長率(特に中国市場の回復度合い)。
  • 生産能力増強に伴う投資効率の向上(ROAの改善状況)。
  • 自己資本比率および流動比率の継続的な改善。

10. 企業スコア

  • 成長性: A
    • 2026年3月期の売上高成長率予想が11.34%であり、当社の成長戦略と合致しています。
  • 収益性: B
    • ROE(7.51%)はベンチマーク8%以上に届かないものの、営業利益率(5.84%)は5%~10%の範囲内にあります。
  • 財務健全性: B
    • 自己資本比率34.9%は30%~40%の範囲にあり安定していますが、流動比率は109%であり150%以上には届いていません。
  • 株価バリュエーション: A
    • PER15.99倍、PBR0.95倍ともに業界平均(PER21.1倍、PBR1.8倍)と比較して割安な水準にあり、大幅な割安感を示しています。

企業情報

銘柄コード 7743
企業名 シード
URL http://www.seed.co.jp/
市場区分 プライム市場
業種 電機・精密 – 精密機器

バリュー投資分析(5年予測・3シナリオ参考情報)

将来のEPS成長と配当を3つのシナリオ(楽観・標準・悲観)で予測し、現在の株価が割安かどうかを試算した参考情報です。

現在の指標

株価 581円
EPS(1株利益) 36.34円
年間配当 2.58円

シナリオ別5年後予測

各シナリオの成長率・PER前提と、それに基づく5年後の予測株価・期待リターンです。

シナリオ 成長率 将来PER 5年後株価 期待CAGR
楽観 0.0% 19.3倍 700円 4.2%
標準 0.0% 16.8倍 609円 1.4%
悲観 1.0% 14.2倍 544円 -0.8%

目標年率別の理論株価(標準シナリオ)

標準シナリオに基づく参考値です。「理論株価」は、この価格以下で購入すれば目標年率リターンを達成できる可能性がある株価上限です。

現在株価: 581円

目標年率 理論株価 判定
15% 309円 △ 88%割高
10% 386円 △ 50%割高
5% 487円 △ 19%割高

【判定基準】○X%割安:現在株価が理論株価よりX%低い / △X%割高:現在株価が理論株価よりX%高い

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By ジニー

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