1. 企業情報
株式会社UACJは、国内トップ、世界第3位の地位を占める総合アルミニウムメーカーです。2013年に古河スカイと住友軽金属が合併して誕生しました。主な事業はアルミニウムの圧延板材の製造・販売であり、特に飲料缶向けの素材に強みを持っています。その他、自動車部品、航空宇宙・防衛材、押出・加工品など、多岐にわたるアルミニウム製品を国内外で提供しています。
事業構成 (2025年3月期 連結):
- 板製品：85%
- 押出・加工品：7%
- 自動車部品：4%
- 航空宇宙・防衛材：1%
- その他：3%
2. 業界のポジションと市場シェア
UACJはアルミ総合メーカーとして、圧延板材分野で国内トップ、世界第3位の市場シェアを有しています。特に飲料缶材においては強みを持っています。アルミニウムは、自動車の軽量化、電子部品、建築材料など様々な分野で需要があり、その特性から利用が拡大しています。市場内では、製品の品質、価格競争力、供給能力、顧客との関係構築などが競争優位性を左右する要素となります。
3. 経営戦略と重点分野
決算短信によると、同社は「アルミ製品事業」の単一セグメントとして事業を展開しています。世界経済の不確実性が高まる中、国内では個人消費とインバウンド需要に支えられた回復基調が見られます。アルミ製品業界の需要は、自動車関連が減少する一方で、缶材や半導体製造装置関連材が回復するなど、需要先の変化に対応することが重要となっています。同社は、北米の缶材需要回復や国内の特定産業向け需要に対応し、販売数量を増加させています。
4. 事業モデルの持続可能性
UACJの事業モデルは、多岐にわたる産業分野（飲料容器、自動車、航空宇宙、半導体製造装置など）にアルミニウム素材を提供することで成り立っています。売上収益の85%を板製品が占めており、この分野の市場動向が収益に大きく影響します。
市場ニーズの変化に対しては、自動車の軽量化ニーズに対応する高性能材料や、リチウムイオン電池向け部材、半導体製造装置関連材のような先端分野への供給実績があり、適応力を持っていると考えられます。一方で、アルミ地金価格の変動や為替の動向は、収益性に影響を与える要因となります。
5. 技術革新と主力製品
UACJは、多種多様なアルミニウム製品を開発・提供しており、その技術力は広範な分野に及んでいます。
* 主力製品・技術の例:
* 飲料容器向けアルミニウム合金板
* 自動車パネル、鉄道車両、構造材向けアルミニウム合金板
* リチウムイオン電池筐体用・封口材用アルミニウム合金
* 航空機用アルミニウム合金焼入板
* 高熱伝導性を持つ熱交換器用フィン材
これらの製品開発は、各産業の特定のニーズに対応するものであり、高機能性を追求する同社の技術開発の方向性を示しています。特に「缶材に強み」とされていることから、この分野が収益を牽引する重要な要素の一つであると考えられます。
6. 株価の評価
現在の株価は5,390.0円です。
* PER（株価収益率）: 会社予想EPS 441.90円に基づくPERは12.20倍です。業界平均PERが80.4倍であるのと比較すると、同社のPERは業界平均より大幅に低い水準にあります。
* PBR（株価純資産倍率）: 実績BPS 6,421.37円に基づくPBRは0.84倍です。これは同社の解散価値とされる1株当たり純資産価値を下回っており、業界平均PBRの0.8倍とほぼ同水準です。
これらの指標を見ると、現在の株価は純資産価値に対して割安な水準にあると評価されることがあります。
7. テクニカル分析
現在の株価5,390.0円は、年初来安値4,110円、年初来高値5,530円の範囲内で推移しています。直近10日間の株価は5,280円から5,480円の範囲で推移しており、本日終値は5,390円と、年初来高値に近い水準にあります。
50日移動平均線（5,014.30円）および200日移動平均線（5,072.08円）を上回っており、短期・中期的に見ると上昇トレンドを示唆しています。株価は年初来で大きく上昇しており（+40.05%）、強いモメンタムが見られます。
8. 財務諸表分析
損益計算書:
- 売上収益: 過去数年で見て、2022年3月期の約7,829億円から2025年3月期には約9,988億円へと増加傾向にあり、特に2025年3月期は前年度比で11.9%増と好調です。
- 営業利益: 2023年3月期には約95億円と一時的に低迷しましたが、2025年3月期には約574億円と、前年度比82.8%増と大幅に回復・増加しました。
- 親会社の所有者に帰属する当期利益: 2023年3月期は赤字でしたが、2024年3月期に黒字転換し、2025年3月期には約280億円と、前年度比101.9%増と大幅に改善しています。
キャッシュフロー計算書:
- 営業活動によるキャッシュ・フロー: 2025年3月期は約91億円の収入となり、前年度の約949億円の収入から大幅に減少しました。これは主に棚卸資産の増加によるものです。
- 投資活動によるキャッシュ・フロー: 約369億円の支出となっており、有形固定資産の取得による支出が増加しました。
- 財務活動によるキャッシュ・フロー: 約125億円の収入となっており、借入金の増加が要因です。
- 現金及び現金同等物期末残高: 前年度比で減少しました。
主要財務指標:
- ROE（自己資本利益率）: 実績で9.86%（過去12か月では10.60%）と、自己資本を効率的に活用して利益を生み出す能力は向上しています。
- 自己資本比率: 30.0%であり、財務の健全性は一定の水準を保っていますが、製造業としては注意深く見守る必要がありそうです。
- 売上高営業利益率: 2025年3月期は5.7%に改善しており、収益性が向上していることが伺えます。
9. 株主還元と配当方針
同社は株主還元に積極的な姿勢を示しており、配当を安定的に実施しています。
* 2025年3月期実績: 年間配当150.00円（中間70円、期末80円）
* 2026年3月期予想: 年間配当160.00円（中間80円、期末80円）
会社予想に基づく配当利回りは2.97%です。配当性向は25.60%と開示されており、利益の一定割合を配当に回す方針が見られます。
10. 株価モメンタムと投資家関心
UACJの株価は、年初来で約40%上昇しており、S&P 500の同時期間の上昇率10.61%を大きく上回るパフォーマンスを見せています。これは強い上昇モメンタムがあることを示しています。
直近の出来高は38,000株と比較的少ないですが、平均出来高は10万株前後で推移しています。信用取引の状況を見ると、信用買残が減少している一方で信用売残が増加しており、信用倍率は2.46倍と、極端な偏りは見られません。業績の回復・成長が投資家の関心を集めている要因の一つと考えられます。
11. 総評
UACJは、国内トップ・世界3位のアルミニウムメーカーとして、多様な産業分野に製品を供給する事業基盤を持っています。2025年3月期は売上・利益ともに大幅な改善を見せ、特に営業利益、純利益は前年度比で大きく伸長しました。これは、特定の需要（缶材、半導体製造装置関連材）の回復や、コスト構造の改善などが寄与した可能性があります。
財務面では、自己資本比率は30.0%を維持しつつ、ROEも改善傾向にあります。一方で、営業キャッシュフローの減少や、棚卸資産の増加といった点については今後の動向を注視する必要があるかもしれません。
株価は年初来で大きく上昇しており、テクニカル的には上昇トレンドにあると言えます。PBRは1倍を下回っており、純資産価値から見ると割安な水準にあると評価されることがあります。会社予想では次期も増収が見込まれるものの、利益は保守的な見通しを示しています。今後の世界経済の不確実性や、アルミニウム地金価格の変動、各産業分野の需要動向が、同社の業績に影響を与える主な要因となるでしょう。
企業情報
| 銘柄コード | 5741 |
| 企業名 | UACJ |
| URL | http://www.uacj.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 鉄鋼・非鉄 – 非鉄金属 |
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