荒川化学工業(4968)企業分析レポート
個人投資家の皆様へ
本レポートでは、東京証券取引所プライム市場に上場する荒川化学工業株式会社(証券コード: 4968)について、多角的なデータに基づき分析を行います。本レポートは投資判断の参考情報としてご活用いただけますが、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。
1. 企業情報
荒川化学工業は1876年創業の歴史ある化学メーカーです。製紙用薬品や印刷インキ用樹脂を主力としており、これらの分野では業界最大手の一角を占めています。その他、機能性コーティング剤、粘接着剤、電子材料向け材料など、幅広い特殊化学品を国内外に提供しています。近年の事業展開では、エレクトロニクス関連分野や中国市場への注力を強化しています。連結売上高の内訳は、機能性コーティング事業が21%、製紙・環境事業が28%、粘接着・バイオマス事業が35%、ファイン・エレクトロニクス事業が17%となっており、海外売上高比率は全体の43%を占めます。
2. 業界のポジションと市場シェア
製紙用薬品および印刷インキ用樹脂の分野では業界トップクラスのシェアを有しており、特定のニッチ市場で高い競争優位性を確立していると考えられます。長年にわたる技術蓄積と顧客との関係性が強みです。特にファイン・エレクトロニクス事業では、半導体関連先端材料やハードディスク用精密研磨剤などで増収を達成しており、技術志向の製品開発で成長分野に対応しています。
一方で、粘接着・バイオマス事業は利益面で課題を抱えており、収益改善が求められます。世界経済の不確実性や原材料価格の変動も、化学品事業全体にとって課題となる可能性があります。
3. 経営戦略と重点分野
同社は「第5次中期5ヵ年経営実行計画」において「KIZUNA経営の推進とKIZUNA指標の達成」を掲げています。具体的な施策としては、以下の分野に注力しています。
*   機能性コーティング事業: 今後の需要拡大を見込み、人的・設備資源を積極的に投入し、供給体制の強化と事業の成長を目指しています。
*   製紙・環境事業: アジア地域での需要創出に重点を置き、海外市場での展開を強化しています。
*   粘接着・バイオマス事業: 千葉アルコン製造における稼働率の改善を図り、ロジン系の粘着・接着剤用樹脂はアジア地域を中心に販売を強化することで収益性向上に努めています。
*   ファイン・エレクトロニクス事業: 半導体関連の先端材料やハードディスク用精密研磨剤など、将来の成長が見込まれる高付加価値製品の生産能力増強を進めています。特にエレクトロニクス分野は、技術志向の研究開発を推し進め、高機能化に対応しています。
4. 事業モデルの持続可能性
同社は製紙、印刷、塗料、接着剤、エレクトロニクスなど多岐にわたる産業へ特殊化学品を提供しており、特定の産業に収益が過度に依存しない分散型の事業モデルを構築しています。BtoBビジネスのため、顧客との長期的な関係構築が安定収益の基盤となっています。
市場ニーズの変化に対しては、環境対応型製品の開発や、デジタル化に伴うエレクトロニクス分野の先端材料への投資で適応を図っています。特にファイン・エレクトロニクス事業の強化は、今後のデジタル社会の進展に合わせた持続的な成長に貢献する可能性があります。
5. 技術革新と主力製品
長年の化学品開発で培った合成技術や配合技術が同社の技術基盤です。近年では、半導体関連先端材料、有機・無機ハイブリッド樹脂、ハイブリッドポリイミドフィルムといった高機能材料の開発に注力しており、エレクトロニクス分野での技術革新への積極的な姿勢が見られます。
収益を牽引している製品・サービスとしては、機能性コーティング事業と製紙・環境事業が安定的に貢献し、特にファイン・エレクトロニクス事業の半導体関連先端材料やハードディスク用精密研磨剤が大幅な増収となり、利益改善に大きく寄与しています。
6. 株価の評価
- 現在の株価: 1,114.0円
- EPS(会社予想): 90.73円
- BPS(実績): 2,912.68円
- PER(会社予想): 12.28倍
- PBR(実績): 0.38倍
業界平均PER20.4倍と比較して、同社のPER12.28倍は割安な水準にあります。また、業界平均PBR1.1倍と比較しても、同社のPBR0.38倍は非常に割安な水準にあり、企業が持つ純資産価値に対して株価が低く評価されている状態です。2025年3月期の通期業績予想EPS105.85円を基に計算するとPERは約10.52倍となり、さらに割安感が強まります。これは市場が同社の過去の業績不振や将来の見通しを慎重に評価している可能性を示唆しています。
7. テクニカル分析
現在の株価1,114.0円は、年初来高値1,210円、年初来安値898円の中間やや高値寄りの水準にあります。52週高値1,403円と比較すると約21%低い位置です。
株価は50日移動平均線(1,113.10円)とほぼ同水準であり、200日移動平均線(1,096.53円)を上回っています。これは、短期的なトレンドが回復基調にある可能性があることを示唆します。直近10日間の株価は1,064円から1,141円の範囲で推移しており、本日は比較的高い水準で取引を終えましたが、出来高は36,300株と極端に多いわけではなく、強い方向性を示すには至っていません。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 2024年3月期は減収でしたが、過去12か月では80,236百万円と回復し、2025年3月期の通期予想では82,000百万円と増収を見込んでいます。直近の第3四半期累積売上高も前年同期比12.1%増と、回復基調にあります。
- 利益: 2023年3月期、2024年3月期は営業赤字および純損失を計上しましたが、過去12か月では営業利益1,057百万円、純利益2,644百万円と黒字転換を果たしています。2025年3月期も黒字維持・改善を予想しており、業績の回復が見られます。
- キャッシュフロー: 過去12か月の営業キャッシュフローは5,340百万円と安定してプラスであり、事業からのキャッシュ創出力は維持されています。フリーキャッシュフローもプラスで推移しています。
- ROE(実績): 4.61%。過去の赤字から回復途上にあり、まだ高い水準ではありません。
- ROA(過去12か月): 0.37%と低い水準ですが、これは過去の赤字決算の影響が残っているためと考えられます。
- 自己資本比率(実績): 47.8%(直近四半期は45.8%)。化学メーカーとしては健全な財務基盤を保っています。
- 流動比率(直近四半期): 1.63。短期的な支払い能力に問題はないと判断できます。
- D/E Ratio(直近四半期): 73.25%。負債水準は自己資本に対して過度には高くありません。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り(会社予想): 4.49% は、市場平均と比較して高水準にあります。
- 1株配当(会社予想): 50.00円。
- 配当性向: 36.76%。利益の約3割強を配当に充てており、健全な水準です。
過去2期が赤字であったにもかかわらず、配当を維持または安定的に実施している点は、株主還元への意欲を示すものと考えられます。2025年3月期の黒字予想により、今後の安定配当への期待が高まります。
10. 株価モメンタムと投資家関心
株価は年初来で-16.17%と劣後していますが、直近では移動平均線を上回る水準で推移しており、回復の兆しが見られます。投資家関心としては、信用買残が信用売残を大きく上回り、信用倍率は7.83倍と高い状況です。これは、将来的な株価上昇を期待する投資家が多いことを示唆しますが、一方で信用買い残の累積は将来の売り圧力となる可能性も考慮する必要があります。平均出来高は3ヶ月で約4万株、10日で約6.3万株と、プライム市場銘柄としては流動性がやや低い水準です。
株価への影響を与える要因としては、製紙・インキ用樹脂の需要回復やエレクトロニクス関連材料の市場拡大、粘接着・バイオマス事業の収益改善がプラスに作用する可能性があります。一方で、原材料価格の変動、世界経済の不確実性、中国経済の動向などはマイナス要因となり得ます。
11. 総評
荒川化学工業は、製紙用薬品や印刷インキ用樹脂の分野で確固たる地位を築きつつ、ファイン・エレクトロニクス分野という成長市場への参入と技術投資を進めている化学メーカーです。過去2期は赤字に陥りましたが、直近の第3四半期決算および2025年3月期通期予想では黒字転換と業績回復が鮮明になっています。特にエレクトロニクス事業の成長が業績を牽引しています。財務基盤は自己資本比率が高く、比較的健全と言えます。株価は業界平均と比較してPER、PBRともに割安感があり、高水準の配当利回りも魅力です。ただし、特定の事業セグメントにおける課題や、世界経済の変動への対応が今後の成長に向けた重要なポイントとなるでしょう。
12. 企業スコア
- 成長性: A (過去の減収から直近12か月および2025年3月期の通期予想では二桁成長を見せており、回復基調が続いていると評価されます。)
- 収益性: C (LTMの営業利益率は3.43%と、化学品業界としては比較的低い水準にあります。過去2期に営業赤字を計上した実績も考慮しています。)
- 財務健全性: A (自己資本比率47.8%、流動比率1.63、D/E Ratio 73.25%と、主要な財務健全性指標は全て良好な水準を保っています。)
- 株価バリュエーション: S (PER12.28倍、PBR0.38倍は業界平均20.4倍、1.1倍と比較して顕著に割安であり、非常に低評価されていると判断されます。)
企業情報
| 銘柄コード | 4968 | 
| 企業名 | 荒川化学工業 | 
| URL | http://www.arakawachem.co.jp/ | 
| 市場区分 | プライム市場 | 
| 業種 | 素材・化学 – 化学 | 
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このレポートは、AIアドバイザー「ジニー (3.0.3)」によって自動生成されました。
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