1. 企業情報
小池酸素工業は、1918年創業の歴史ある企業で、鉄鋼、造船、建設機械、自動車、電気、半導体、食品、レジャーなど幅広い産業向けに事業を展開しています。主な事業内容は以下の3つの柱で構成されています。
– 機械装置部門: 厚板切断機（プラズマ・レーザー・ガス切断機）、溶接装置、自動化システムなどを開発・製造・販売しています。特にプラズマ・レーザー・ガス切断機では業界内で高いシェアを持っています。
– 高圧ガス部門: 工業用・医療用各種ガスの製造、仕入れ、販売を行っており、ガス供給システムや関連機器も手掛けます。
– 溶接機材部門: 溶接ワイヤー、溶接棒、溶接機、ガス関連機器、環境関連機器などの仕入れ・販売を行っています。
これらの事業を通じて、鉄鋼加工業界における切断・溶接の自動化、効率化、高精度化に貢献しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
小池酸素工業は、厚板切断機や高圧ガスに特化し、「プラズマ・レーザー・ガス切断機で首位」にあるとされています。これは、長年の技術的蓄積とノウハウに裏打ちされた競争優位性を示唆しています。主な顧客は鉄鋼、造船、建設機械、自動車、電気製品メーカーなど多岐にわたり、特定の産業への依存度を分散しています。
課題としては、建設・産業機械業界の市況低迷や、原材料価格・物流コストの高騰などが挙げられます。これらの外部環境の変化に対応し、製品価格への転嫁やコスト削減努力が求められます。
3. 経営戦略と重点分野
同社は中期経営計画として「世界市場での顧客満足の実現と収益基盤の強化」を掲げ、以下の分野に注力しています。
– 機械装置部門:
– 「DBCファイバーレーザー切断機」の販売強化と性能向上。
– 顧客の課題解決に貢献する自動化、省力化、IT化製品の研究開発と販売。
– 海外市場（特にサウジアラビアなどの新規造船所設備）での拡販。
– 高圧ガス部門:
– 機械装置と一体販売による新規顧客獲得。
– 原材料・物流コスト上昇への価格改定対応。
– 将来を見据えたガス事業の構造改革、充填工場の再構築、配送の合理化、安全・安定供給と原価低減推進。
– 医療分野（酸素濃縮器、CPAPレンタル、院内感染防止対策機器）の強化。
– 溶接機材部門:
– 人手不足や脱技能化に対応する「ファイバーレーザー溶接機」などの新製品拡販。
– 資材・運送費高騰に伴う商品価格の改定。
– その他部門:
– カーボンニュートラル時代を見据えた水素を燃料とした排ガス処理装置の開発。
– ヘリウム液化関連機器や半導体市場向けヘリウム回収精製装置など、ヘリウムリサイクル事業の拡大。
これらの戦略を通じて、技術革新と市場ニーズへの適応を図り、持続的な成長を目指していると考えられます。
4. 事業モデルの持続可能性
小池酸素工業の事業モデルは、長年の経験と技術力に裏打ちされた装置製造・販売、安定的な需要が見込めるガスの供給、および消耗品である溶接機材販売の3つの柱で構成されています。
市場ニーズの変化への適応力としては、以下の点が挙げられます。
– 自動化・省力化・IT化: 製造業における人手不足に対応した、自動機やソフトウェア開発に注力。
– 環境対応: カーボンニュートラルや資源循環（ヘリウムリサイクル）といった環境トレンドに対応した製品開発。
– 医療分野の強化: 高圧ガス事業で医療用ガスや医療機器レンタルなど、安定的な収益源を確保。
多角的な事業展開と、各分野における先端技術への投資が、同社の事業モデルの持続可能性を高めていると考えられます。
5. 技術革新と主力製品
同社は、厚板切断機や高圧ガスにおいて業界をリードする技術を有しています。
– 主力製品: 厚板切断機（ガス/プラズマ/レーザー切断機）、溶接装置、各種工業・医療用ガス。
– 技術開発の動向:
– 高精度・高効率な「DBCファイバーレーザー切断機」の開発導入。
– 切断現場のニーズに対応するNCデータ自動プログラミング装置、CADシステム、CNC制御装置などソフトウェア開発力。
– 環境変化に対応した「水素を燃料とした排ガス処理装置」や「ヘリウム回収精製装置」といった新分野への挑戦。
これらの取り組みは、顧客の生産性向上や環境負荷低減に貢献し、同社の競争優位性を強固にしています。
6. 株価の評価
現在の株価は1,318.0円です。各種指標に基づく評価は以下の通りです。
– PER（株価収益率）: 会社予想EPS 151.79円（株式分割後）に基づくと、PERは8.68倍（1,318円 ÷ 151.79円）です。業界平均PERが10.7倍であることと比較すると、現在の株価は割安な水準にあると言えるでしょう。
– PBR（株価純資産倍率）: 実績BPS 2,018.71円（株式分割前価額）に基づくと、PBRは0.65倍（1,318円 ÷ 2,018.71円）です。業界平均PBRが0.7倍であることと比較しても、割安な水準にあります。
これらの指標から判断すると、現在の株価は企業の持つ価値や業界水準と比較して、相対的に低い評価を受けている可能性があります。
7. テクニカル分析
直近の株価推移を見ると、現在の1,318.0円は年初来高値1,386円に近づいていますが、高値圏にあるとは断言できません。年初来安値931円からは大きく上昇しています。
– 移動平均線: 50日移動平均線1,230.16円、200日移動平均線1,221.71円と、いずれも現在の株価を下回っています。これは短期・中期的な上昇トレンドを示唆しています。
– 直近10日間の推移: 1,272円から1,343円の範囲で推移しており、小幅な値動きの中、本日は上昇して引けました。出来高も平均を上回る日があり、一定の関心が見られます。
8. 財務諸表分析
- 売上高: 過去数年間で堅調に増加しており、2025年3月期（過去12ヶ⽉）は552億6百万円（前期比7.4%増）と増収を達成しています。
- 利益: 営業利益は2021年3月期の11億4,200万円から、2025年3月期（過去12ヶ⽉）には54億4,800万円へと大きく成長し、同26.3%増を記録しました。当期純利益も2021年3月期は6,100万円の赤字でしたが、2025年3月期には36億3,300万円（同18.9%増）と大幅な黒字転換を達成し、V字回復を遂げています。
- 収益性: 売上高営業利益率は2024年3月期の8.4%から2025年3月期には9.9%へと改善しています。ROEは9.51%、ROAは4.59%と、収益性も良好な水準にあります。
- キャッシュフロー: 営業活動によるキャッシュフローは36億6,700万円の収入で、本業で安定してキャッシュを生み出す力があることを示しています。
- 財務安全性: 自己資本比率は56.9%と高く、総負債/自己資本比率も15.87%と低い水準にあり、財務の健全性は非常に高いと言えます。流動比率も1.85と、短期的な支払い能力も十分です。
全体として、順調な事業拡大と利益成長に加え、強固な財務基盤を築いていることが分かります。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り: 会社予想の1株配当48.00円（※株式分割を考慮）に基づくと、配当利回りは3.64%です。これは比較的高い水準と言えるでしょう。
- 配当性向: 2025年3月期の配当性向は30.1%と算出されており、また過去12ヶ月のEPSと予想配当から算出される配当性向は25.79%です。無理のない範囲での株主還元を行っています。
- 配当実績: 2024年3月期は年間200.00円（分割前）、2025年3月期は年間260.00円（分割前）を予想しており、安定した配当を継続しつつ増配傾向が見られます。
自社株買いに関する明確な記述は見当たりませんが、株主情報に自己株式が存在することから、過去に自社株買いを行っている可能性はあります。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は、移動平均線が上向きであることから中長期的な上昇トレンドの中にあり、勢い（モメンタム）は前向きな状況です。
投資家関心としては、
– 株式分割: 2025年4月1日付で1株を5株に分割したことにより、最低購入代金が引き下げられ、個人投資家が購入しやすくなった点は、今後の出来高増加や流動性向上に寄与する可能性があります。
– 好調な業績: 特に機械装置部門が業績を牽引しており、今後の決算発表にも注目が集まるでしょう。
– 配当: 比較的高水準な配当利回りや安定した株主還元策は、長期投資を検討する投資家の関心を引きやすい要因です。
– 信用取引: 信用買残が信用売残を大きく上回る状況であり、信用倍率は非常に高いです。これは短期的な需給で株価が重くなる可能性もありますが、それ以上に買い意欲が強いとも考えられます。
11. 総評
小池酸素工業は、厚板切断機と高圧ガスを二本柱とし、多様な産業に展開する堅実な事業基盤を持つ企業です。世界トップクラスの切断機技術を有し、自動化、省力化、環境対応といった市場ニーズの変化にも積極的に対応しています。
直近の業績は、特に機械装置部門が牽引する形で増収増益を達成しており、過去の赤字からV字回復を遂げるなど、力強い成長軌道に乗っています。自己資本比率が高く、負債も少ないことから、財務体質は非常に健全です。ROEも良好な水準を維持しており、収益性も評価できます。
株価の評価においては、現在のPERやPBRは業界平均と比較して割安な水準にあり、企業価値に対して株価が過小評価されている可能性が指摘されます。配当利回りも魅力的な水準で、株主還元への意識も高いと言えます。
今後については、グローバル経済の不確実性や原材料コストの変動といったリスクは存在しますが、技術革新への継続的な投資や、多角的な事業展開が事業の持続可能性を支えると考えられます。株式分割による投資単位の引き下げは、個人投資家層からの投資家関心を高める要因となるでしょう。
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企業情報
| 銘柄コード | 6137 |
| 企業名 | 小池酸素工業 |
| URL | https://www.koike-japan.com/home |
| 市場区分 | スタンダード市場 |
| 業種 | 機械 – 機械 |
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