1. 企業情報
会社概要
キッセイ薬品工業は、主に医薬品の研究開発・製造・販売を行う中堅製薬会社です。主力は高脂血症治療薬、排尿改善薬、透析関連薬、ヘルスケア食品など。泌尿器、腎・透析、未充足医療領域を重点分野とし、新薬開発や海外ライセンス展開にも注力しています。加えて、情報サービス、建設・施設メンテナンス、物品販売なども展開しています。
2. 業界のポジションと市場シェア
業界内ポジション
国内医薬品業界では中堅規模に位置し、特定領域（泌尿器科、腎・透析、希少疾患等）に強みを持っています。大手総合製薬企業と比較すると規模は小さいですが、ニッチ分野での専門性と新薬開発力、海外導出（ライセンス契約）で競争力を発揮しています。
課題
主力製品の特許切れリスクや、薬価改定による収益圧迫、研究開発費の負担増などが課題です。新たな収益柱の育成とグローバル展開の強化が求められています。
3. 経営戦略と重点分野
経営ビジョン・戦略
中期経営計画「Beyond 80」に基づき、
– 泌尿器・腎・透析・未充足医療領域での新薬開発
– 海外ライセンス収入の拡大
– 先進研究技術へのアクセスとオープンイノベーション（ボストン拠点開設）
– 配当性向40%以上、累進配当、自社株買いによる株主還元強化
具体的施策
- 新製品（ベオーバなど）の育成
- リンザゴリクス、ホスタマチニブ等の海外展開
- 新規パイプライン（CG0070等）の開発推進
- 資本効率向上を目的とした自己株式取得・消却
4. 事業モデルの持続可能性
収益モデル
主力の医薬品事業は、国内販売と海外ライセンス収入が収益源。近年は新薬の上市や海外導出で売上成長を実現しています。情報サービスや建設・施設メンテナンスなど非医薬品事業も収益を下支え。
市場ニーズへの適応力
高齢化社会に伴う腎・泌尿器疾患患者の増加、未充足医療ニーズへの対応力が強み。薬価改定や規制強化への対応、新薬開発力の維持が持続成長の鍵となります。
5. 技術革新と主力製品
技術開発の動向・独自性
- 過活動膀胱治療薬「ベオーバ」など新薬の開発・上市
- リンザゴリクス（子宮内膜症・子宮筋腫）、CG0070（膀胱癌）など先進的パイプライン
- ボストン拠点によるグローバルなオープンイノベーション推進
収益を牽引する製品・サービス
- ベオーバ（過活動膀胱治療薬）
- タブネオス（血管炎治療薬）
- コルスバ、タバリス、カログラなど新製品群
- 海外ライセンス収入（リンザゴリクス、ホスタマチニブ等）
6. 株価の評価
- 株価：4,205円（2025/7/18時点）
- EPS（会社予想）：287.35円
- PER（会社予想）：14.67倍（業界平均27.8倍）
- BPS（実績）：4,882.71円
- PBR（実績）：0.86倍（業界平均1.4倍）
評価
PER・PBRともに業界平均を大きく下回っており、株価は相対的に割安な水準に位置しています。
7. テクニカル分析
- 年初来高値：4,300円
- 年初来安値：3,480円
- 直近株価：4,205円（高値圏）
- 50日移動平均：4,053.40円
- 200日移動平均：3,833.62円
株価推移
直近10日間で株価は上昇基調を維持し、年初来高値圏にあります。移動平均線も上回っており、上昇トレンドが継続しています。
8. 財務諸表分析
売上・利益推移（過去3年）
| 年度 | 売上高（百万円） | 営業利益（百万円） | 純利益（百万円） | EPS（円） |
|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 67,493 | -1,129 | 10,528 | 228.31 |
| 2024/3 | 75,579 | 4,017 | 11,160 | 246.61 |
| 2025/3 | 88,330 | 5,773 | 11,961 | 274.21 |
- 売上高・営業利益ともに大幅増加。2023年度の赤字から黒字転換し、収益性が着実に改善。
- 営業利益率は6.5%（前年5.3%から改善）。
- ROEは5.58%、ROAは1.43%と安定。
- 自己資本比率85.6%と財務健全性が非常に高い。
- 営業キャッシュフローも大きく改善し、現金同等物も増加。
9. 株主還元と配当方針
- 配当利回り（会社予想）：2.85%（2026年3月期予想配当120円）
- 配当性向：36.47%（中計目標は40%以上）
- 累進配当政策：配当金総額270億円を計画
- 自己株式取得・消却：2025年5月に1,400,000株（発行済3.27%）を取得・消却
- 株主還元策：配当と自社株買いを組み合わせ、資本効率向上と株主価値向上を重視
10. 株価モメンタムと投資家関心
- 株価モメンタム：直近3か月で上昇基調、52週変動率+29.73%と市場平均（S&P500: +14.39%）を上回る
- 出来高：直近10日間で安定、流動性も十分
- 信用取引：信用買残・売残ともに小幅増加、信用倍率1.64倍と過熱感なし
- 株主構成：自己株式・信託銀行・地元銀行・機関投資家・経営陣等がバランスよく保有
11. 総評
キッセイ薬品工業は、泌尿器・腎・透析などのニッチ領域で強みを持つ中堅製薬会社です。新薬開発と海外ライセンス収入の拡大が奏功し、売上・利益ともに着実な成長を実現しています。財務基盤は極めて健全で、株主還元にも積極的です。株価は業界平均と比較して割安な水準にあり、直近では高値圏で推移しています。今後は新薬パイプラインの進捗や海外展開の拡大がさらなる成長のカギとなります。
企業情報
| 銘柄コード | 4547 |
| 企業名 | キッセイ薬品工業 |
| URL | http://www.kissei.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 医薬品 – 医薬品 |
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