1. 企業情報
白銅株式会社は、1932年創業の非鉄金属専門商社です。アルミニウム、銅、ステンレス鋼、特殊鋼、チタン、エンジニアリングプラスチックなど、多様な金属・樹脂素材の加工・販売を国内外で行っています。特に、加工済み製品を小口・短納期で供給する能力に強みを持っています。主要な顧客は半導体製造装置メーカーなど、精密部品を必要とする業界が多くを占めています。事業は金属販売が100%を占め、海外売上比率は15%（2025年3月期実績）です。
2. 業界のポジションと市場シェア
白銅は、非鉄金属商社として、特に「加工」「小口」「短納期」という顧客ニーズに特化することで競争優位性を確立しています。これは、多様な素材の在庫を抱え、顧客の要望に応じて即座に切断や加工を施して納品できる体制があるためです。主要な顧客である半導体・FPD製造装置業界は、景気循環の影響を受けやすい特性がありますが、高度な技術を要する分野であり、専門的な供給体制が求められます。
直近では、主力顧客である半導体製造装置業界の需要が一部で低迷しており、これが収益に影響を与える可能性が指摘されています。一方で、航空・宇宙業界など他の高精密分野への展開も進めており、特定業界への依存度を下げる動きも見られます。
3. 経営戦略と重点分野
白銅は、顧客満足度向上と事業領域の拡大を経営戦略の柱としています。具体的な施策としては以下の分野に注力しています。
* 顧客対応力の強化: アルミニウム・ステンレス薄板の拡販強化、滋賀工場でのファイバーレーザー加工機の導入による加工能力向上。
* 新規市場開拓: 航空・宇宙業界や自動車業界における新規顧客の開拓、休眠顧客の再稼働。
* デジタル化の推進: WEBサイト「白銅ネットサービス」の取扱品目拡充、ウォータージェット加工品やレーザー加工品の即時見積もり・注文機能の追加による利便性向上。
これらの戦略を通じて、事業基盤の強化と収益機会の拡大を目指しています。
4. 事業モデルの持続可能性
白銅の事業モデルは、多様な金属・樹脂素材の「加工」「小口」「短納期」供給に強みがあるため、多品種少量生産や迅速な部品供給が求められる産業においてニッチな需要を捉えています。特に、半導体製造装置のような精密機器産業は、高精度な材料と迅速な供給が不可欠であり、白銅の提供価値と合致しています。
しかし、原材料市況の変動が収益に影響を与えるリスクがあります。また、主要顧客である半導体製造装置業界の景況感に業績が左右される側面も見られます。直近の決算では、原材料市況による商品単価の上昇は売上増加に寄与したものの、半導体製造装置業界の需要低迷に伴う粗利益率の高い標準在庫品の販売減少が利益率を圧迫しています。市場ニーズの変化への適応としては、航空・宇宙、自動車といった新たな成長分野への参入や、オンラインサービスの拡充を通じて対応しようとしています。
5. 技術革新と主力製品
白銅は、金属・樹脂素材の専門商社として、提供する素材の種類と加工技術の多様性が特徴です。主力製品としては、アルミニウムチューブ、銅、ステンレス鋼板、棒材、伸銅品、特殊鋼、チタン、エンジニアリングプラスチックなどが挙げられます。
技術革新の点では、滋賀工場へのファイバーレーザー加工機の導入を進めており、これにより加工能力の向上と多様な顧客ニーズへの対応力強化を図っています。また、WEBサイト「白銅ネットサービス」でのウォータージェット加工品やレーザー加工品の即時見積もり・注文機能の導入は、デジタル技術を活用した顧客サービス向上と効率化への取り組みと言えます。収益を牽引しているのは、依然として半導体・FPD製造装置関連向けの金属材料販売が多いと推察されますが、多様な素材と加工技術で幅広い産業を支えています。
6. 株価の評価
現在の株価は2,352.0円です。
過去12ヶ月のEPSは197.23円です。
会社発表の2026年3月期通期業績予想に基づく親会社株主に帰属する当期純利益は1,690百万円、発行済株式数11,343,300株で計算した予想EPSは約149.0円です。
この最新の予想EPSに基づく現在のPERは約15.78倍 (2,352.0円 ÷ 149.0円)となります。
実績PBRは1.12倍です。
業界平均との比較では、業界平均PERが12.1倍であるのに対し、最新の会社予想EPSに基づく白銅のPERは約15.78倍と業界平均を上回っています。業界平均PBRは1.0倍であるのに対し、白銅のPBRは1.12倍とこちらも若干上回っています。
7. テクニカル分析
現在の株価2,352.0円は、年初来高値2,626円（52週高値2,642円）と年初来安値1,800円（52週安値1,800円）の間に位置しています。
直近10日間の株価推移を見ると、8月初旬までは2,600円台で推移していましたが、本日（2025年8月8日）は2,308円から2,371円の範囲で取引され、前日終値2,602円から大きく下落しました。この日の出来高は65,900株と、過去10日間の平均出来高（約19,530株）を大きく上回っており、投資家の関心が高く、株価変動が活発であったことを示しています。
移動平均線を見ると、50日移動平均線が2,316.98円、200日移動平均線が2,299.61円となっており、現在の株価はこれらの移動平均線に近い水準にあります。本日の大幅な下落により、直近では高値圏から調整局面に入ったと見ることができます。
8. 財務諸表分析
白銅の損益計算書を過去数年分比較すると、総売上高は2022年3月期の554億円から直近12ヶ月で664億円と増加傾向にあります。しかし、営業利益は2022年3月期の42.5億円をピークに、2024年3月期には25.2億円まで減少しました。直近12ヶ月では29.8億円とやや回復傾向にありますが、過去最高水準には及んでいません。純利益も同様の傾向を示しています。
最新の2026年3月期第1四半期決算では、売上高は前年同四半期比8.3%増の170億円でしたが、営業利益は同55.6%減の3.8億円、純利益は同57.8%減の2.9億円と、大幅な減益となりました。これは、半導体製造装置業界の需要低迷により粗利益率の高い標準在庫品の販売量が減少し、製造原価の固定費率が上昇したこと、および販管費が増加したことが主な要因と説明されています。
財務安全性を示す自己資本比率は、直近四半期で53.8%と、前年度末の53.1%からわずかに上昇しており、良好な水準を維持しています。ROE（実績）は9.67%、ROA（過去12ヶ月）は4.30%であり、利益効率は一定の水準にあると言えます。営業キャッシュフローは過去12ヶ月で17.8億円とプラスを維持しており、事業活動による資金を創出できています。
9. 株主還元と配当方針
白銅は「配当性向45%メド」を株主還元方針として掲げています。
会社予想の1株配当は年間94.00円とされていますが、最新の2026年3月期第1四半期決算短信では、2026年3月期の年間配当予想を80.00円（中間27.00円、期末53.00円）と見直しています。
この最新の年間配当予想80.00円と現在の株価2,352.0円に基づくと、配当利回りは約3.40%となります。
Q1決算で示された2026年3月期通期純利益予想1,690百万円と発行済株式数11,343,300株に基づく予想EPS約149.0円で配当性向を計算すると約53.7% (80.00円 ÷ 149.0円)となります。これは会社が定める「配当性向45%メド」を上回る水準です。自社株買いなどの追加の株主還元策に関する情報は提示されていません。
10. 株価モメンタムと投資家関心
直近の株価は、本日（2025年8月8日）に大幅な下落を記録し、前日終値2,602円から2,352円近辺へと水準を切り下げました。これには、本日発表された2026年3月期第1四半期決算において、売上高は増加したものの、営業利益と純利益が大幅に減少したこと、および通期業績予想が下方修正されたことが影響していると推測されます。
出来高は本日65,900株と活発であり、これまでの平均出来高を大きく上回っていることから、決算内容に対する投資家の強い反応があったことが伺えます。
信用取引においては、信用買残が39,500株（前週比+13,600株）と増加傾向にあり、信用倍率は13.17倍と買い残が売り残を大きく上回っています。信用買いが多く積み上がっている状況は、株価下落時に投げ売りを誘発する可能性も考慮されます。
今後の株価への影響要因としては、メイン顧客である半導体製造装置業界の需要回復時期、原材料・エネルギー価格の動向、そして日本経済全体の景気動向などが挙げられます。
11. 総評
白銅は、非鉄金属商社として、加工力、小口対応、短納期を強みとし、特に半導体製造装置業界を中心に事業を展開しています。堅実な財務基盤（高い自己資本比率）と一定の収益性を維持してきましたが、直近の2026年3月期第1四半期決算では、半導体市場の低迷要因により大幅な減益となりました。これを受け、通期業績予想も下方修正されており、企業の収益状況は一時的に厳しい局面を迎えている可能性があります。
株価は本日の決算発表を受けて大幅に下落しており、高値圏から調整局面に入ったと見られます。最新の業績予想に基づくPERは、これまでの会社予想EPSに基づくPERや業界平均PERを上回る水準となる見込みです。株主還元については、配当性向45%メドという明確な方針があり、実績も概ねそれに沿っていますが、最新の配当予想は減益予想に伴い減額される見込みです。今後の業績動向、特に主力の半導体製造装置業界の回復と、多角化戦略（航空・宇宙、自動車産業への展開）の進捗が注目されます。
企業情報
| 銘柄コード | 7637 |
| 企業名 | 白銅 |
| URL | http://www.hakudo.co.jp/ |
| 市場区分 | プライム市場 |
| 業種 | 商社・卸売 – 卸売業 |
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